2017年3月21日火曜日

何を俯瞰すべきか

3月16日(木)は、マルチピッチリード講習にて、越沢バットレス。
女性HMさん、女性HSさん。
<シーズン初め>

①地上でハーケン打ちの練習について。

「これ、効いてると思いますか?」
という会話をチラホラして、実際に静荷重を掛けてみるという実験も交えて。

10cmのハーケンが、2cmくらいしか入っていない状態でも、
「効いてます。」
とおっしゃるHMさん。

不思議に思って、よくよく真意を問いただすと
「足場の良いところで、ちょっと寄りかかるくらいなら精神安定剤くらいにはなる。」
ということでした。
<ハーケン打ち練習>

②2ピッチ目のリードについての反省ディスカッションにて。

「最後のカムは効きが甘かった訳ですが、たしかにアレは仕方ない場所だとも思うんですが、その1個下のプロテクションがどうだったかは覚えていますか?」
と尋ねてみました。

質問の趣旨としては、
「最後のカムは、一応クリップはしているけれど落ちたくはない。だから、1個前のプロテクションの善し悪しが安全上メチャクチャ大事だと思うんですけど。」
というもの。

しかし、どうも話が噛み合わず。
1個下ではなく、2ピッチ目の出だし付近のプロテクションの話になってしまったりして、話が収集つきません。

どうも本人的には
「なるべく沢山プロテクションは決めたし、バッチリなのもあった。出来る限りのことはしたし、ムーヴも慎重に登った。だから安全だと思う。」
ということらしい。
(ただし、リード中にどのプロテクションはバッチリで、どれはテンションならギリギリセーフ、など色分けはしていない様子。)
<オブザベタイム>

③2ピッチ目が終わったビレイ点作成にて。

カム4個で作成しているビレイ点ですが、連結が上手くいっておらず、結構危ない状況。
(なぜか、セルフはカム1個だけ。)

「どのカムは信用していて、どれはバックアップっていうつもりなんですか?それを意識して、連結しなおしましょうよ。」
と尋ねるも、

「このカムは、効いてそうだけど小さいから。このカムは一番危ないと思うけど、大きいから。・・・」
と、本人なりの言葉で色々と喋ってくれるのですが、収集がつきません。
<1P目>

さて、この3つの話、どうも私には根っこが一緒だという気がしてなりません。
皆さん、どう考えるでしょうか?

あえて、私なりの回答は書かないでおきますが、関連しそうな話題を少し挙げておきます。
<青空>

過去の講習生に、
・カムが効いているかどうかよりも、ランナウトしているかどうかが一番気になる
という人もおりました。

特に、マルチピッチではバチ効きでないプロテクションを取ることも多いため、頭が混乱するようです。
<フォロー>

また、同じように
・ビレイ点は、カムの効き具合よりも、カムが3つ以上であることが大事。
と思いこんでいる人もいました。

実際には、ビレイ点を複数支点から取っているのは、リスク分散という意味合いなので、各支点の効きの善し悪しが重要。
<セカンドのビレイ>

で、こんな話を散々してからの3ピッチ目。

HSさんのリードで、いわゆる突っ込み過ぎ!
「テンションくらいしか掛けたくない。」っていうプロテクションを足首くらいにした状態で、進むことも戻ることもムーヴ的に落ちる確率を感じる、という危機的な状況に。
仕方ないので残置にクリップしてもらいましたが、本人も反省しきり。

「あれで、残置が偶然あったから良かったけど、無い場所だったら大怪我してました。」
と。
ちなみに、その数メートル下には信用できるプロテクションを決めており、そのことも本人は分かっておりました。
なんで、HMさんよりは少し俯瞰的に状況把握ができております。

でも、
「もうちょっとだけ進めば、良い足場とか、良いプロテクションが取れて、安心できるんじゃないか?」
という期待やら

「このくらいは頑張らないと、ダメなんじゃないか?」
という心理的なもので、判断ミスに繋がった様子。

心理的要素で判断ミスするのは、どんなに上級者でもやることなので、ちょっとずつ覚えるしかないことでしょうけど。
<3P目>

判断ミス自体はダメなんですが、ちょうどHMさんの話とも関連していて、講習的には充実したものでした。

講習ルール上は、残置にクリップしたので完登ではありません。
でも、HSさんにとっては、大怪我する前に反省できたので良いチャンスだったでしょうね。
<この後、ハマることに>

色々と問題点はありますが、とても粘り強く反省を続けてくれる2人ですから、徐々によくなることでしょう。