2018年8月10日金曜日

衝撃は吉と出るか

8月4日(土)は、マルチピッチ体験にて、瑞牆。
NSさん夫妻。
人生初のマルチピッチとなる2人。
「都岳連の沢講習みたいな、歩きっぽいところを登るような気楽な考えで来た。」
という奥様。

「いやいや、体験って言っても、それなりにヒーヒー言うメニューなんじゃないかなぁ。」
と勘ぐる旦那様。
普段なら、その中間ぐらい(最高グレード5.7~5.8ぐらいのクラックで、数ピッチ)で体験講習を行うことが多いです。

NSさん夫妻のように、5.8程度のクラックを何本かオンサイトしているぐらいの実力であれば、「いやはや、本気でした。」とか言いながらもノーテンでフォローはしてくる程度。

それで、じっくりシステムとか、考え方とかを整理していこうと。
が、最近の猛暑で、日陰中心のマルチという限定が付きました。

色々思案した結果、瑞牆にて講習。
いつものように、講習生が選んだラインになるべく沿うように、私がリードしていくという趣向です。
なので、ルートファインディング次第で各ピッチのグレードは変わります。
果たして結果。

1P目:講習生体感5.8、チムニー系。いきなり本気。しかも、オブザベとムーヴが全然違うので、とても疲れた様子。2人とも、ノーテン。
2P目:講習生体感5.8、チムニーとかハンドとか。やっぱり本気。でも、1P目よりはオブザベが当たって、少しは余裕があった。奥様が、岩から立木に乗り移るときに1フォールを喫する。
3P目:講習生体感5.5~5.6。木登りなど沢の高巻き風味。余裕を持ってノーテン。
4P目:講習生体感5.10a~5.10b、ハンド~チムニー。見た目より遥かに難しくて、大苦戦。奥様は、ムーヴ解決不可能にてエイド混じりで突破。旦那様は、テンションを多く掛けつつもムーヴで突破。
5P目:講習生体感5.8。一箇所チムニーがクライミングっぽいが、あとは概ね高巻き風味なワイルドな構成。 2人ともノーテン。
2人にとっては限界グレードの連続ですから、当然ながら全ピッチで荷揚げとなります。
(自分でサブザックを背負っているので、各自でちょっと荷揚げ。)

とにもかくにも、疲れ果てた様子。
そして、岩峰の頂上付近にトップアウト。

2人の口から出た言葉は、
「頑張った!」
「良かった!」
でした。
「なぜフリーなのか」、「なぜリードなのか」という以前に、とにかくトップアウト出来たら嬉しくなるという原始的な喜び。
これくらい追い詰められると、強く感じるものなのでしょう。

(だからと言って、「マルチは、なんでもアリだ!」は肯定しませんけど。)
今回は、ちょっと厳しすぎる設定の感は拭えません。
ただ、とにかく大きな衝撃の中で色々なものを感じたようでした。

例えるなら、ワンゲル上がりの学生が社会人山岳会に入って、最初っから冬壁に連れて行かれたようなカルチャーショックでしょうね。
これにめげず、コツコツやっていきましょう。
クラックも、ロープワークも、千里の道も一歩からです。