2020年2月5日水曜日

「自分は安全」という神話

3月の予約受付開始は、2月7日(金)の夜21時スタートです。
念のため。

2月2日(日)は、岩場リード講習にて、湯河原。
女性HNさん、女性YYさん。
事案①
10年以上前のことです。
とあるジムで、どっかぶりガバガバのルート。やや苦しそうにアップしている人を見かけました。

すると、クリップ態勢が上手く取れないらしく、3ピン目、4ピン目を掛けずに登り続けます。
そして、5ピン目でクリップ。そのまま、登り続けて行きました。

「あそこで、クリップ飛ばさない方が良いんじゃないですか?」
と声を掛けても
「危なかったら、無理しないから大丈夫です。」
という返事。
(この人とは、それっきり会話していません。)
事案②
つい1ヶ月ほど前に、ランナウトのお客さんで、明らかに墜落距離の計算をしていない人に話す機会がありました。

「今、トップロープ状態なのか、膝くらいなのか、足首なのか、足元なのか、意識しないと危ないですよ。」
すると

「たしかに、意識してないです。他の人を見ていたら、色々思うのにね。意識した方が良いよね。ただ、危ないと思ったら、他のホールド掴んだりして、無理はしないから。」
という返事。

この人は落ちるのが苦手です。
・トップロープ状態で周りからガンバコールが飛んでいる状況
・明らかにクリップ遅れで周りが心配して見ている状況
どちらも、無関係に落ちそうなら他のホールドを持っている印象です。

事案③
トップロープでは5.11を積極的にトライしていても、リードになると5.10前半という人。

私から見ていると、ロープと身体の位置関係、墜落距離の計算が今一歩に見えて、不安に感じます。

一方、本人は
「リードで無理はしないから、大丈夫だよ。」
と仰います。

たしかに、5.11ではバンバン落ちながらムーヴ探りしているが、5.10bでは疲れたらすぐさまチョンボクリップしているように見えますから、フォールする回数(確率)自体が少ないのでしょう。

※ランナウトは、オートビレイで気軽に難しい課題に触れる。まぶし壁なので、チョンボクリップは容易。そういう甘々な環境の一方で、課題自体は特に5.10台がピリ辛な印象。

さて、皆さんはどう考えるでしょう?

リードでフォールする確率が低い、という意味ではリスク管理になっています。
一方で、「安全なフォールが出来るように、要素を考え抜く習慣付け。」という意味では悪癖が常習化しています。
だから、たまにしかフォールしないけど、フォールしたら事故る可能性は、一般のリードクライマーよりは高めです。

※要素は、墜落距離の計算、ビレイヤーの弛み・体重差・立ち位置、落ちる態勢、ロープと身体の位置関係、岩の形状、など。

リードのフォール回数と、フォール1回あたりの事故確率で、事故確率が決まると仮定すると・・・。
トップローパー気味でときどきリードをする人と、恒常的にリードする人では、どちらがリスクが高いかは厳密には分かりません。

ただ、多くの場面で気になるのは、
「無理しないから大丈夫だよ。」
という回答で、それ以上に議論が深まらないことです。

「~~さえ守っていれば、自分は安全だ。」というのは、自分自身を思考停止させる麻薬的なフレーズなのかもしれません。
これは、私を含めて全員気を付けるべきことですけどね。