2020年11月2日月曜日

事故分析か、スタイル分析か

10月11日(日)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性IUさん、女性Mさん。

10月12日(月)は、自分のクライミングにて、太刀岡。
狂祖さま、本日は雲隠れ中の友人、の3人で。

10月13日(火)は、ムーヴLv.0。
女性GTさん、復習参加の女性KIさん。

10月14日(水)は、岩場リード講習にて、天王岩。
男性HGさん。本日で、卒業といたしました。
最近、身近なところで事故がありました。

①R.P.狙いのルートに対する「ヌンチャク掛け便」において
②一部をエイドで切り抜けようとした際に
③クリップ済みのカラビナがアンクリップされてしまった。

という状況です。

「3本目のボルトにクリップするため、2本目のボルトに対してエイド作業(いわゆるヌンチャクアブミ)をしていたら、2本目のクリップが外れてしまった。」⇨高さも低いため、グランドフォール。
しかも、「落ちる態勢などを意識する場面ではない不慮のフォールなので、岩もある地面に背中からグランドした。死ななくてラッキー、くらいの状況だった。」

という話。
<ようやく初回のマルチリード講習が実現>

この件について、本人を含めて数多くの意見を聞く機会がありました。

網羅的に紹介することは難しいのですが、考える切っ掛け程度に紹介してみます。
①作業方法の不備
・アンクリップに対する常日頃の警戒心の薄さ(その意識があれば、ヌンチャクアブミをやるにしても、もっと上手くやれたはず。)
・偶然スリングを持っていたのに、なぜヌンチャクアブミにしたのか?など

②時間的な焦り、パートナーへの気遣い、当日の体調不良、ルートに対する自責の念
本人じゃないと分からない部分が大きいので割愛。
ただ、考えれば普通分かるでしょ、という程度のリスクだったので、精神状態の分析は最重要項目の1つ。

ただ、各自が別々のルートに取り組んでいる状況なら、「3本目行けないんで、いったん降りまーす。」と気軽にロワーダウンできたというのはあるはず。セッション効果の功罪も要考慮。
<2P目でライン探し>

③スタイル妥協の選択
具体的には、
・パートナーにヌンチャクを掛けてもらえば良い。(自立の妥協)
・チョンボ棒に類する物を使えば良い。(グランドアップの妥協)
というものです。

スポートルートとは何か?と問いかけられているような論拠の数々なので、参考までに挙げます。
意見1つ1つが、このブログに記事にできるくらい考えさせられます。

・そもそもスポートルートのR.P.には、マスターというのは一般的では無いのだから、ヌンチャク掛けなどは「どうでも良い作業」に過ぎない。(O.S.トライは、嫌でもマスターになってしまうことも多いが、とりあえず無視する。)

・スポートルートは、低身長者へのボルト位置の考慮が足りない場面があるため、こだわること自体が危険なルートを増やすことになる。また、初登者がボルト位置をミスることだってあるはず。

・高グレード(5.14〜5.15など)のスポートルートの場合、そもそもマスタートライを考慮せずに打ってあるボルトがあるのではないか?(私の友人内では、ほぼ誰も知らない世界だけど)そう考えると、私たちが初中級のグレードであってもマスターでトライすることに価値を見出すことが馬鹿馬鹿しく思えてくる。

・スポートルートは落ちるのも大して怖くないし、クラック・マルチ・沢登りなどのような冒険性は求めるべきではない。そもそも、トップロープで登ったら完登、という風にルール変更して欲しいぐらいの気持ちもある。(極論すると、スポートでのリードはめんどくさい作業だ。)
⇨中上級者の論理(?)。トップレベルのアルパインクライマーだからこそスポートの垂壁ではトップロープリハーサルを全く辞さない場面を見かけるなど、うなずける部分もある。

・隣のルートからロワーダウン中にヌンチャク掛けするのと、チョンボ棒でヌンチャクだけを掛けて「クリップだけはしない」と自主規制すれば、やっていること自体は同じではないか?(ヌンチャクだけは掛かっているものとして、トップロープリハーサルせずにグランドアップトライする、という意味で。)
⇨チョンボ棒を使わなくても、実質的にチョンボができる場面は結構ある。あくまで、チョンボ棒を持つか持たないかは、自主規制をする際に分かりやすいラインの引きどころに過ぎない。

一方で、やはりマスターでトライしたい気持ちも幾つか挙げられます。

私個人は、そちら側の人間なので、論拠は割愛します。
(私個人は、「隣のルートからヌンチャク掛けをすることはある。」という程度のスタンスですが、それ以上に厳しいスタイルを採用する人が居たら、それも理解できます。案外、初心者の講習生の方が私以上にマスターに拘っていたりして、興味深いと思うこともある。)

この手の議論に、明確な答えは無いと思います。
めちゃくちゃ考えた方が良い問題だけど、最後は好みも出ます。
<クライムダウンを考慮しながらライン検討>

さて、ここで一歩引いて考えてみます。

一番話が盛り上がるのは、③のスタイル論争です。
ただし、GPSを持たない登山者が道迷いしたとして、「GPSを持たないなんて!」と非難を浴びたとしたら、登山とクライミング業界の未来は暗いような気がします。
そもそも、スタイルによってリスク管理の方法や、リスク許容度も違うからです。

フリーソロ、R/Xルート、冬の一ノ倉、セラック崩壊におののきながら登るライン、みたいに明らかにリスクがあると分かってやる人たちも、止めないでしょう。

そこまでじゃなくても、ノーマット、残置無視、GPS持たない、遡行図を見ない沢登り、くらいの登り方は、ちょくちょく見かけるくらいの市民権はあります。このあたりは、十分に戦略的に取り組めば、スタイル妥協している人たちと同レベル以上に安全に取り組めると感じます。
(私はマットを使いますが。)
以上より、事故の本質は①、②の話だと思います。

①は割とシンプルに反省できて、②は本人以外は理解しにくいものがあるので、話のネタとしては長続きしません。

なので、私も延々と③の話を友人たちとしちゃったりします。
で、人によってちょっとずつ違うスタイルにメスを入れ合うことになるので、実際にはストレスもあります。
でも、なぜか口を付いてしまう魅惑の話。

突き詰めると、「私は(あなたは)、クライミングをどう取り組みたいか?」という話は面白いのでしょうか。

<太刀岡>

<ハッピーバースデイ(5.11a)に取り組む>

10月12日(月)に登ったルート
・義理チョコ(5.9、クラック)をトップアウトまで延長 再登
・ハッピーバースデイ(5.11a) 再登
・おさわがせしました(5.11d) 2便目でR.P. 昔登ったような気もするが記憶が曖昧
※ボルトは腐食しているので、トライする方は、それなりの心構えで。
※「出だしは木を使わない。」と書いてあったが、プリクリルートとは書いていなかった。
ただ、出だしで木を使わないムーヴだと明らかに核心ムーヴになり、しかもフォール時に木に激突するため、私は勝手ながらプリクリルートだと解釈した。
スタート時、カリスマと同じように木を使って1本目をクリップする。その後、地上に戻ってから木を使わずに再スタートするという方法を採用した。
これが、初登者の登り方かどうかは不明なので、「それじゃダメ」と言われれば仕方ない。

・カリスマ(5.13a) 数年ぶりに封印解除して、ムーヴ探り。とりあえず、パートはできた。
・ハッピーバースデイ(5.11a) トレーニングで再登

<終了点作業の練習>

<落ちる練習>