2022年12月25日日曜日

追記

2月に関しても、アイスクライミング講習を早めに予約受付しておきました。
前後に岩場での講習が入ると、私の準備・片付け・運転が持たないので、あらかじめ前後日を休業やジム講習に限定するためです。
スケジュールに反映させておきましたので、予約メールを送る前に、どうぞ御確認ください。

2月分の予約受付

急で申し訳ありませんが、明日の12月26日(月)の夜21時より、2月分の予約受付を開始いたします。

先日、河又の順子ルーフに再訪して、どうにかムーヴ分解はできました。
最終パートは、忍吉98の1本目ボルト付近まで一旦クライムダウンし、忍吉98の右側の緩傾斜を登るというラインで何とか突破できました。このラインは汚いですが、傾斜が緩いので無限レストが随所で可能なので、落ち着いてムーヴを探りながら登れます。
一般的なフリークライミングルートとして考えてマイナス要素を挙げればキリがないのですが、充実感が凄いのは何とも山っぽいボルダーですね。

繋げに再訪したいと思います。

2022年12月21日水曜日

修正力とは何か?

11月17日(木)は、マルチピッチリード講習にて、越沢。
女性Mさん、男性KBさん。

12月3日(土)は、マルチピッチリード講習にて、越沢。
女性Mさん、男性TGさん。
KBさんのリード中、ちょっと危ういシーンがありました。
いわゆる「上に活路を求める」登りで、プロテクションセット態勢を作るのがちょっと大変なので、どんどんランナウトしてしまいました。

クラックの5.10aとかで行ったら、誰が見ても危険行為です。(余裕な人がランナウトするのとは、見た目にも明確に違う。)

しかし、マルチの傾斜の寝た壁で、RCCグレードⅣ級〜Ⅴ級(体感で、岩場の5.7〜5.9
レベル)でやってしまう人が多いのは、理解できます。
ちょっと苦しい態勢でプロテクションセットしているより、数歩進めば楽になる可能性が高い、という「経験値」(カッコ付きの経験値)を積んでしまうのもあるでしょうし、「経験値」は無くても傾斜が寝ているが故に誘い込まれます。
そして、稀に非常に恐ろしい目に遭います。
この手の失敗は、過去の卒業生も多くが行っており、復習参加で来た卒業生も全く直っていないことも数多くあり、私も胸が痛みます。

とても根深い問題で、これを修正したいという強い思いが、私の講習スタイルを日々変える原動力にもなっています。
実際、ムーヴLv.0や岩場リード講習で教えるムーヴの基礎も、昔よりも相当ボリュームが増えました。
しかし、こういった事態は、未だに散見されます。
実際、KBさんも前回講習でも同様の指摘をしたところでした。

誰でも1度や2度の失敗は必要なので、講習中での事故可能性は受容せざるを得ないとしても、こういったヒヤリハットの回数を最小化して欲しいとは思います。
ここで、「修正力とは何か?」という問いを立ててみます。

①課題発見能力
そもそも、ジムの5.11とか4級とかが登れる運動能力がある人が、Ⅴ級レベルでプロテクションセットの静止ができない(別の例を挙げると、「Ⅳ級レベルで逆再生可能ムーヴを貫けない」)のは変ではないか?
このまま登攀能力を上げていっても、マルチピッチを安全に登るという当初目的の1つは、達成できないのではないか?
いつの間にか、「グレードを上げたい、〇〇という課題を登りたい」ということだけにフォーカスしてしまっていないか?
②練習方法の立案能力
ジムでの練習方法、ボルトルートやクラックのショートルートでの取り組みを、再考する。

ジムでの練習例)
・グレード〇〇までは、全てのホールドで5秒レスト
・グレード〇〇までは、デッド禁止
・グレード〇〇までは、足音を立てたらムーヴやり直し
・グレード〇〇までは、逆再生可能ムーヴだけで登る
・グレード〇級までは、ボルダーのようにクライムダウンが厳しい状況であっても、行きつ戻りつをしてでも一撃に拘る

グレードと一括りにしましたが、課題の特性で、デッド禁止に無理があるルートが低グレードで存在することもあります。
ここにも、一定レベルの考察力が要求されます。

自分が、岩場での登りが危なっかしいと感じる方は、たとえ主戦場がボルトルートであったとしても、この手の練習方法を追求してみる時間を作ることをオススメします。
③いわゆるPDCAサイクルを何度も何度も回す
問題意識が間違っていても、練習方法が間違っていても、目的の能力はほとんど伸びません。
①〜③の何か1つが欠けても、修正は難しいです。

講習生の中で修正力が高い人は、①の問題意識を私が投げかけたら、②と③を色々と試せる人だなと思います。
行き帰りの車中や、宿での会話だけで、練習方法を見事に修正していくのです。

そういう人は、ロクスノを読んでも、トップクライマーの記録を読んでも、我がこととして練習方法を微調整していくのでしょうね。
そう考えていくと、私自身の修正力の低さ、意識の低さも突きつけられる心持ちです(笑)。
もちろん、そう出来ないのが凡人なので、②や③についても講習でお付き合いしたいと感じています。

何年も講習を続けていただく方は、こういった考え方そのものも身に付けていただきたいです。

これは、今回挙げたようなリスク管理に限らず、
・特定ムーヴを覚えたい
・特定のフィジカルを上げたい
・苦手を克服のための原因分析したい
・オブザベ能力を上げたい
などの、あらゆる場面に必要な思考方法だと感じます。

もはや、クライミングに限った話じゃない気もしますが、クライミングで実践するにはクライミングの基礎が無いと不可能でもあります。

10年前に講習を始めた頃は、まさかこういう考え方こそが講習すべきこととは、思っていませんでしたねー。

2022年12月1日木曜日

フィロソフィー

明日の21時からの、1月分の予約受付もよろしくお願いします。
重複投稿したため、気付かれない可能性を感じました。

11月25日(金)は、自分のクライミングにて小川山ボルダー。
ようやく、フィロソフィー(初段)トラバース課題、が登れました。
10年前は、全く歯が立たず。

以下、秋シーズンの振り返り。
今年の初日で可能性を感じ、2日目にムーヴ解決するも繋がる気配ゼロ、3日目は疲労困憊で触らず帰宅、4日目は繋げ練習するが完登イメージ湧かず。

しばし封印して、延長サブウェイにフォーカスする日を2日間。
こちらも、今一歩ですが、秋も深まってきて周辺にあったスラブの宿題とかが回収されました。
タイムトンネルというワイドも面白かったです。

で、3週間のトレーニングを経て、本日行ったら好調の兆し。
アップしていても、3週間前とは、できるムーヴの幅が違います。

30分でムーヴをバラし直して、1時間ほど繋げトライしたら完登できました。1トライごとに5〜10分は休憩する感じです。

以下、トレーニングで良かった点。

①15分程度だが、ランニングが続いた
これまでは夜に走っていたので、岩場帰りの日も、夜のジム講習の日も走れず。
結果的に、平均週1回だった。
これだと、完全レスト日を無くす程度のコンディショニングのみ。

今は、レスト日と午後からジムの日には、起床後に朝食前に走るスタイルに変えたので、2日に1回は走れるようになりました。
温熱蕁麻疹なるものが自分にはあるらしく、しばらくぶりに走ると全身が痒くなります。初期の緊急事態宣言中のように、毎日走っていれば平気なのですが、週1回走るというのは色々苦痛でもありました。

②ウォームアップの強度を上げた
腕や指を疲れさせないようにしつつ、体幹部に与える刺激を漸進的に増やすことを意識して取り組んでいました。
これに関しては、この秋始めた訳ではなく、何年もそうやって来たのですが、かなり効果を感じました。
部分的に体幹トレをするのではなく、じっくりと身体を動かすことでクライミングに必要な様々な部位の弱さを感じることができるので、非常に興味深く、個人的には趣味レベルとして楽しんでいます。

③ウォームアップ後にトレーニングを入れることにした
主には、ガバでの片手足ブラ。この態勢での静止練習です。
これを何セットかやると、腕も指も疲れてしまうので、その日の本気トライにも悪影響が出るのですが、こういう時期も必要かなと思ってやりました。
「トレーニングあるある」で、このトレーニングだけは強くなりましたが、実際の足ブラ、ロック系の動き、などにどの程度のプラスがあるかは、計測が難しいと感じています。
ただ、感覚的には伸びしろはありそうです。
本当は、片腕ロックがやりたいのですが、まだまだ無理そうです。

④就寝前のストレッチを、動的ストレッチ主体に変えてみた
主には、この2つ。
https://www.youtube.com/watch?v=kpg5oRGFXns
https://www.youtube.com/watch?v=Ezj0ot3UWVE

運動前が動的ストレッチの方が良いのは、まだ感覚的にも分かるのですが、風呂上がり就寝後は未だに半信半疑。
ただ、ストレッチによる腰痛が軽減されたので、ちょっと良さそうです。
これを覚えたことにより、岩場で身体を動かして暖め直す動きにもバリエーションが出てきたのは、効果が大きそうです。

⑤ここ2ヶ月間以上、リードを封印して、ボルダー主体
これは、ちょくちょくやることですが、そういう時期を作るとフィジカルに目を向けやすくて良いですね。
リードの場合、「ムーヴはできるぐらいの内容を、いかに少ない回数でO.S.やR.P.に持ち込むか?」というゲームを頑張ることで、リード技術が伸びると考えています。そうなると、必然的に、心技体のうち心技に目が向くので。
あとは、リードをやるとリスク管理の話が、脳内の半分くらいを締めますし。それはそれで、すごく大切な時間で、今後も一生続くとは思います。

①、③、④は、ごく最近(1〜数ヶ月)の話ですが、全部ちょっとずつ効果を感じるので、なかなか楽しめています。

延長サブウェイは、風が抜けて寒すぎたので来年ですかねー。

2022年11月29日火曜日

1月分の予約受付

12月2日(金)の夜21時より、1月分の予約受付を開始いたします。

岩場リード講習は、湯河原。
クラックリード講習は、城ヶ崎。
マルチピッチ講習は、1月および2月はお休み、となります。

また、昨年より雪山講習の前後日に岩場での講習を入れることを辞めたため、あらかじめ雪山関係の講習を申し込む方には打診してもらいました。
参加希望に当たっての問い合わせなど、ご質問があれば何なりとメールしてください。

では、どうぞよろしくお願いします。

2022年11月9日水曜日

形状を言語化する

10月29日(土)は、マルチピッチリード講習にて小川山。
NSさん夫妻。
<1P目>

講習生同士でラインの検討をしたり、敗退戦略を話し合ったり、リード中の判断ミスなどを話し合ったりする際、言語化能力が肝になります。

例えば、上の写真は1P目です。

「ちょっと難しいところで奥まったクラックにカムを決めるところが悪くって、そこで何度もカムを挿し直したらスタックしそうになって。」
という状況を説明したいとします。
「ちょっと難しいところ、って〇〇のところ?」と聞いたときに、チンプンカンプンな回答をする方が多いのです。

例えば、
「手をプッシュっぽくしたら、ギアラックがカムに干渉して、それを外すのが大変で・・・」
などと、そのときの状況を熱く語ってしまい、場所の説明になっていないとか。

おそらく、
「出だしの易しいスラブを越えて最初の立木プロテクションを取った後の、数メートルのハンド〜フィストのコーナークラックを越えた乗っ越しで、ちょっとバランスが難しいところ。」
と言えば、写真を見た多くのクライマーがポイントを同定できるでしょう。
この能力は、何なのでしょうか?

他にも、
「ナナメのとこにあった立木が・・・」
といった感じで場所の同定を終えたつもりになる講習生も多いです。

おそらく、
「3P目の中盤に出てきた斜上バンドの終点付近、そこから上のスラブに移る地点にあった、太いけど枯れている立木。」
と言えば、登ったことがあるクライマーなら、ほとんど同定できるでしょう。
もっと言えば、この能力はジムでも垣間見られます。

青いガバを繋げたラインセット(同色で統一したルート)の5.10aがあったとしましょう。
「ヌンチャクの隣にあるの青いガバが・・・」
と言って会話を始める人は、散見されます。

「いやいや、何本目のヌンチャクよ!?」
「ってか、ほとんど青いガバだから。」
と、何度も友達に突っ込まれているのに、その癖がなかなか抜けない人がおります。

おそらく
「5本目のヌンチャクの右上にある、右手ガストン気味のガバ。」
とか
「7本目のヌンチャクの真下にあるアンダーガバがあるじゃん。その左下にあるガバ。」
ぐらい言わないと、会話が始まりません。

ただ、ジムだと相手が意を汲んで色々と聞き返してくれたりして、どうにか伝わることが多いものです。
しかし、岩場では
「あの大きな岩の先にある、デッカいポコっとした岩が・・・」
とか言われても、相手も困る訳です。
さらに、全く別の場所を同定してしまい、話が噛み合わないまま会話を続けているケースも散見されます。
<紅葉の小川山>

これがまた、家族だと何となく伝わることも多いんでしょうね。

そして、これに得意不得意があるのも、様々な講習生を見て、しみじみと感じます。
根本的な性格みたいなものは一旦置いておき、まずは意識してみると良いと思います。

実際、元の性格はノンビリさんでも最低限チャキチャキできないとマルチピッチは大変とか、元は雑な性格でも最低限丁寧さを身に付けないとクライミング全般危なっかしいとか、趣味を本格的にやるなら避けて通れないものって、色々あります。
<傾斜の寝たコーナークラック>

これが出来ると、何が良いのかを再確認しておきます。

①登攀ラインの検討、懸垂下降ラインの検討などが言語化できる。
②ムーヴの検討が、言語化しやすくなる。
③様々なヒヤリハット、事故原因を、言語化しやすくなる。
など。

副次効果として、会話のストレスが減り、中身のある会話が増えるというのもありそうです。
言語化能力が低いと、ついつい当たり障りの無い会話しかしなくなる、という初級グループも多いと思うので。

ジムでのオブザベも、こういう能力が大事なんでしょうねー。
<ビレイヤーから見えない場所で核心となる、嫌な形状>

<立てるバンドで、アルパインクイックドローを作る>

<無事にトップアウト>

<とても楽しそう>

2022年11月7日月曜日

秋の自分のクライミング

ここ最近は、小川山でボルダーをやっております。
「フィロソフィー」(初段)で、初日にムーヴが出来ず敗退し、もう1日行ったら疲労困憊でホールドすら触らず帰宅したところまでは書きました。

その後、フィロソフィーに2日間通って、ムーヴは解決したものの、繋がる気配なし。
僕の手順で実質15手のトラバースで、3、4、6、7手目が、自身最高強度のムーヴに感じるため、繋がる気がしないという状況。
加えて、15手目が微妙にヨレているだけで失敗しやすいムーヴ。

とりあえず、7手目をスタートとして15手目まで繋げるという分解練習を行い、そこまでは半日がかりで成功。
これを持って、ひとまず封印中です。
10年前はムーヴも全くできなかったので、辛うじて進歩していると考えましょう。

そこから、「延長サブウェイ」(1級)という課題に2日半くらい通いました。
こちらも、ムーヴは解決したものの、やはり強度が高過ぎて繋がらず。
SDスタートのトラバース課題という、超地味な課題ですが、これも10年前の宿題でした。
こちらは、惜しいところまで行ったトライもあったのですが、決めきれず。

実質4手目までが核心で、そこからレストらしいレストなく、5.11cぐらいのトラバースに入ります。
最初の4手が成功したのは、通っていて2回だけ。しかも最終日は、一度も成功せず・・・。
この手のムーヴに関しては、ほとんど進歩していないことが明らかになりました。

ただ、できないなりに学ぶ点もあり、基礎練習の方向性も少し変化できそうに思いました。
傾斜壁での外傾スタンスの足残し、右手でのぶら下がり(例えば、左手での片手足ブラはガバならできるが、右手だと出来るには出来るが右肩の関節に違和感を感じている)が、一つの肝だと感じました。
で、夕方近くにワイドボルダーへ。
タイムトンネル(3級)。
こちらは、4トライで完登できました。
フィジカル的には、十分に一撃狙いできるものだったのですが、この手の課題はオブザベが本当に難しいです。

30度ほど下開きのチムニーで、天井のハンド〜フィストサイズのクラックが、所々にジャミングが効いたり、縁が持てたり、といった形状です。
ただただ、珍しいタイプのムーヴに興奮して、ついついオブザベ不十分で取り付きたくなってしまうのも、一つの難しさだと感じています。
多くのワイド系課題は低いので、リスクによる緊張感を利用して、オブザベに真剣になる手法も使いづらいです(笑)。
ただ、実際に背中から落ちる課題もあるので、低くないと困るのですが。

でも、なかなか勉強になったので、再登したり、逆方向のトラバース課題として2回登ってみたりして、楽しめました。
この手の課題は、まだフィジカル不足よりもテクニック不足・戦略不足を感じられるので、登ること自体が練習という感覚です。

フィジカル不足を感じる課題は、
登れなかった→「次に、この課題に来るまでに何をすべきか?」
という構図に瞬時になりますよね。
そして、それが失敗すると、次に来ても何もさせてもらえないという惨状に。
登ること自体は、クライミングの一部でしかないという現実を突きつけられて、結構ツライものもあります。

しばらくは、ジムで登る数週間になりそうなので、また少し考えてみます。
小川山は、来シーズンかもしれませんが・・・。

2022年10月28日金曜日

12月分の予約受付

12月分の予約受付を、10月31日(月)の夜21時よりスタートします。

事情により、アイスクライミング講習だけは2日間の開催が決まっております。
12月もマルチピッチ講習も可能ですが、寒波が入った場合は湯河原や城ヶ崎での講習に変更になることをご承知下さい。

では、どうぞよろしくお願いします。

2022年10月24日月曜日

大レストポイントの活用

10月14日(金)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性ISさん、男性MKさん。

10月15日(土)は、クラックリード講習にて、小川山。
女性YIさん、男性HDさん。

10月16日(日)は、マルチピッチリード講習にて、三ツ峠。
女性Mさん、男性KBさん。
<はじめてのダブルロープ>

岩場でリードする際に、大レストポイントがちょくちょく現れます。

今回、大レストポイントの定義としては、
「左右の手を交互に何度もシェイクしたり、チョークアップできる場所」
としましょう。
とは言え、この中にも相当なグラデーションがあります。

①座れる。
⇨テラスなど。シューズも脱げるので、体幹部も含めて、ほぼ完全回復できる。

②ノーハンドで立てる。
⇨緩傾斜で、良いスタンスがある場合。ちょっとしたテラス。割と良いスタンスでのステミング。チムニーの中でスタンスがあり、背もたれで休める場合。などなど。

③ノーハンドにはなれないが、ほとんど時間制限を感じない。
⇨垂壁で、足も良く、手もガバに近い場面。など。

④とりあえず休めるが、時間制限を感じる。
⇨被った壁で大ガバ。垂壁で手はガバ、足は悪い場面。など。
<初登攀ごっこを楽しむ>

この活用を上手にできるかどうかは、O.S.、少ないトライ数でのR.P.、あるいはクラックでのリスク管理を冷静に行う上で、とても大切だと思います。

例えば①〜③は、
・少し上のホールド、ムーヴを探りに行ってから戻る(偵察)
・プロテクションをセットしてから戻る(登山で言うなら、FIX張り、荷物デポ、雪山での前日のトレース付けに相当)
・カムのバッククリーニング(ロープの流れ、カムのタマ数補充)
などが可能になります。

とても時間の掛かる行為ですが、安全に登る上でも、少ないトライ数で完登を勝ち得るためにも必要です。
<今回のテーマになった場面。どうにか大レストできるが、足が悪い。>

一方で、④で同様の戦略を採用すると、徐々に疲れてきます。
いざ作戦が決まって出発したくても、もはや出力が下がってしまい、「テンショーン・・・」と情けなくコールする姿も、よく目にすると思います。

状況にもよりますが、
「行きつ戻りつをするにしても1〜2回程度、できればレストポイント内で作戦を整理してGOだ!」
といった覚悟を決める必要があります。
<フラッシュするHDさん>

一般的には、女性に多い持久力型の初級者には①〜③の活用が上手な方が多く、④なのに行きつ戻りつし過ぎてギブアップするパターンも多く見られます。
(今回、女性YIさんは、まさにこれで何度かハマっているように見えました。)

当然ながら、男性でボルダー出身の方、トップロープ癖が抜けない方、などは反対になります。
大レストしている風でも、行きつ戻りつは非常に少ない、など。
意識して、①〜③を上手に使えるようになる必要があります。
ちなみに、これはマルチピッチでも重要です。

例えば、入門マルチ専門のような方(フリークライミングを真面目にやる気持ちになれず、そうなるパターンなど)だと、①や②はある程度使いこなせても、③は全然ダメと言う人が多そうです。
2m〜5mに1回とかの割合で、①や②が出てくるのは確かですが、やっぱり③が使えないとリスク管理は甘くなるように思います。

健全な判断は、健全なレストに宿る、ということです。
<あいにくのガス>

当然ながら、ジムでの本気トライで重要になるのは、④の活用です。
①〜③は、入門的なグレード、凹角、緩傾斜を除くと、なかなか出来ないように作ってあると思います。

これは、
・持久力差が出るルートを作る上では、完全レストポイントはなるべく避けたい。
・岩場のように1トライに時間が掛かると、順番待ちが酷いことになる。
などの事情があります。

実際、利用者の一人としても、その方がトレーニングには向いているとも思います。
<「意外と悪いですねー。」>

まぁ、トップクライマーはルーフのオンサイトトライでも、凄まじい行きつ戻りつをしている、などの例外事象はいくらでもあると思います。
彼らは、強傾斜の中でさえも、条件の良いレストポイントに戻れば回復できるということなのでしょうね・・・。
<真っ向ハンドの数手をこなしたMさん>

ムーヴそのものの上手さをブログで解説することは困難ですが、こういった戦術面は解説に適しているかもしれませんね。
<遅くなるけど、あとは緩傾斜なのでトップアウトを目指します>

2022年10月10日月曜日

ときどき落ちる、は可能か?

1つ前の記事と関連して、昔から興味深く考えている点です。
僕自身の中で整理しきれていない部分もありますが、書いて整理する意味も込めて。

落ちることは、一般的に怖いし、変な落ち方をすれば怪我をするリスクもあります。
そこで、“滅多に落ちない人”というのが初級者には散見されます。

これは、あんまり良くないでしょう、というのは前提として良いかと思います。
リードなら「テンション癖がある人」と言われますし、ボルダーなら「あんまり頑張らない人」と思われます。
ただ、彼らの多くは絶対に落ちない訳ではなく、ときどき落ちているように見えます。
これは、どういうメリットとデメリットがあるのか、という問題です。

彼らの気持ちを代弁してみます。
①単純に怖いから落ちたくない。
②落ちる時は、気づいたら落ちているから怖くない。
③たまにしか落ちないことは、落ちて怪我をするリスクを下げている。
④山では落ちないんだから構わない。(主には、マルチピッチや沢登り雪山をやる人の言い分)

僕の中で、一番興味深いのは③です。
一応、①、②、④についても簡単に触れます。

①を解消していく方法は、僕も様々な講習生相手に向き合ってきた課題ですが、今回は割愛。
②は、気持ちは十分に理解できますが、考えてみればリスクがあります。
「落ちるかも」と覚悟して一手出している人は、落ちた場合の脳内シミュレーションを繰り返してチャレンジしています。
が、気づいたら落ちている人は、シミュレーション無しなので、不意落ちという印象です。
数回前の、手繰り落ち問題でも書きましたが、不意落ちは反省し、チャレンジ落ちを許容するというのが、リスクを下げるコツだと思います。
④は、安全に行きつ戻りつできるムーヴを練習することも大切にしつつ、本気トライでは落ちるまで頑張る、という両輪を忘れないことが、リスクあるクライミングをする人のジム練習では重要だと思います。この問題も、ほとんどの初級者はできていないように思いますが、割愛。

さて、本題の③は、「状況にもよる」というのが現時点での私の結論です。

車の運転を例にしてみます。
運転の回数が少ないことは、生涯における交通事故リスクを下げると思います。
確率×回数という考え方によります。
一方で、たまにしか運転しない人の車に乗ることは、結構なリスクを感じると思います。
つまり、習熟度が1回あたりの事故リスクを下げている、という状況です。

つまり、よく落ちる人がよく怪我をする人かどうかは、相当難しい問題です。
実際、落ちたがらない人がたまに突っ込んで怪我をする、というパターンも見かけますし。

しかしながら、車の運転で以下の状況はどう考えるでしょうか?
A)運転の回数は多いけれど、荒っぽい運転の人には注意もしにくく、運転の回数を減らして欲しいと感じる。
⇨よく落ちるけど、フォール姿勢やリスク管理思考がイマイチなら、ダメです。

B)首都高速、都心部など、技量が低いとリスクが高いと思う道路は、なるべく運転を避けるようにしている。
⇨ボルト足下よりさらに進んだ状況でのフォール回数を減らすことや、岩場ボルダーで高めの場所からフォールする回数を減らすことも、良いことだと感じます。
ただ、ボルトが膝くらいでフォール、低いボルダーでのフォールを繰り返している人がそれをするからこそ説得力がある、という点は考慮すべきかと思います。

個人的に、このジレンマをすごく感じるのが、岩場ボルダーでのノーマット練習です。
ほぼ落ちる気がしないところで行っても、リスク管理能力やフォール姿勢の強化につながらない気がします。色々と慎重になるので、多少の意義は感じますが。
一方で、頻繁に落ちる課題でやると、そのうち足首を捻りそうだったりします。また、相当低い課題でも、膝やら腰にダメージが蓄積される感じも、困ります。
一撃は相当厳しいが、少ないフォール回数で完登できそうな課題、というのが色々とバランスが取れている気がしています。
もちろん、そのぐらいの課題でもマットを敷いてトライすることもあります。ギリギリの一撃を狙いたい場合など、特に。
僕の中で、ノーマットはスタイルではなく、技術的な練習方法なので。

他人にこの話をするときも、自分自身の練習を考える意味でも、なかなかスッキリしない問題です。
ただ、この問題を意識しているか否かで、リスクも取り組み方も変わるような気がします。

2022年10月5日水曜日

ときどき良いスタイルで登る、ということは可能か?

10月2日(日)は、マルチピッチリード講習にて三ツ峠。
女性Mさん、男性KTさん。
<ピッチを切る場所に迷うMさん>

先日、ある講習生からされた質問。
「マルチピッチ講習で残置無視なのは、いざというときにビレイ点をカムで作れるようになるためですか?」

僕の回答は
「そういう部分も一部にはありますが、本来の趣旨ではありません。」
<色々と延長して、完成>

残置無視で登ると、ビレイ点をどこに作るかも自分で考えます。

立木が見えなければ、カムの残量を気にしながらリードしなければなりません。
先の見通しが悪い場合などは、ほとんどカム1セットを丸々温存するような形でリードを終えるべき場面も多くあります。
クラック自体は豊富な岩場でも、ビレイ点で使いたいカムのサイズは、行かないと分かりませんので。

また、残置ビレイ点はテラスのある場所や次のピッチのリードビレイがしやすいように作られていますが、ビレイ点を自分で構築すると、何を優先すべきかを考える必要が出てきます。

さらに、ビレイ点が作れなければ、クライムダウンしてカムを取りに戻るのか、手前でピッチを切るのか、周辺で右往左往してビレイ点作りをするのか、などの判断は全て自分に委ねられます。

これらの戦略的な判断そのものを楽しみ、反省していくのです。
<丁寧な登りでフォローするKTさん>

つまり、リード中に即興でカムのビレイ点を作っているのではなく、あらゆる事態を想定しながらリードする点が、根本的に異なります。

そのため、途中でギブアップのように残置を使ってしまうことを前提とした残置無視は、本来の趣旨とは異なると思います。
(少なくとも、初登攀ごっこ、リスク管理を真摯に捉えたゲームでは無い。)
<ハンド〜フィストのクラック>

この考え方に、
「自分の実力次第で、どんな壁でも登れる方法なんて夢がある。」
「既成ルートでも、そうやって楽しめば本当のクライミングなのかな。」
「それぐらいやらないと、リスク管理能力は上がらない気がする。」
などと直観された方は、是非とも当塾講習へどうぞ。
<フォローを迎える>

では、普段はトポを熟読し、残置を追いかけている方が、こういったクライミングを「ときどき」することは可能でしょうか?
とにかく上へとリードしてしまい、パニックに陥るだけの非常に危険なクライミングをすることになりそうです。上へと向かえばビレイ点がある、という負の成功体験が、リスク管理としては悪癖につながってきます。
これを仮に、初級残置使用者と呼びます。

もちろん、一部には既成ルートも楽しく登り、人跡未踏の岩場で冒険的なクライミングもこなす人がいることも分かっています。
そういう人は、日によって、あるいはエリアによって、自分なりに本日やるべきことスイッチを切り替えられるのでしょう。
こちらを仮に、上級残置使用者と呼びます。

初級から上級へのステップアップは、何が鍵になるのでしょうか?
実際、それを成し遂げた人もいるでしょうが、あまり数は思い浮かびません。

それとも、まずは残置無視から入るべき(初級残置使用者は成長過程として経由しない)で、残置無視に十分慣れてから、ボルトを打たないとどうしようも無い壁などでの残置使用を行うというステップを踏むべきなのでしょうか?
こちらは当塾の方針ですし、探検部出身者、人里離れた沢登りを好む方などは、こちら寄りかと思います。

初心者にとってどちらが正しいかという議論もありますが、「私、実際問題もう初級残置使用者になっちゃっているんですけど、どうしましょう。」という話もあります。
<荷上げしたいザックがテラスに置いてある>

初級の習慣が悪癖となり、上級へのステップアップの弊害となる一方、いきなり上級の習慣でスタートを切ることに難しさがある事例を挙げてみます。

●ガイド登山と、仲間内での登山
  ⇨山岳会などで、ガイド登山出身者が煙たがられる話は、数え上げればキリが無い。ガイド登山ではないが、連れられ登山が好きな人というのも多い。ただ、ガイド登山には金銭的負担が大きいため、現在のところ少数派。

●トップロープリハーサルと、グラウンドアップのリード
  ⇨自分でも嫌気が差すほどブログに書いている。ガイド登山と異なり、金銭的負担が無いため、もはや広く一般化している。ちなみに、トップロープリハーサル好きな人が、あるルートに対してだけ、「オンサイトしたい!」などと言うと、僕などは危なっかしいトライをしている構図しか頭に浮かばず、あまり応援する気持ちになれない。
<ワイドっぽいコーナー>

この話は、スタイルの話に限らず、上級者の習慣を身に付けることの全般的な難しさを物語っているように思います。

スポーツとしてクライミングを考えても、最初に身に付ける練習習慣って間違いも多いです。
リスク管理にしても、怖さとリスクを全く分離して考えられないまま、10年20年と過ぎている方も多く見かけます。
<富士山が近いのは三ツ峠の魅力の1つ>

厳しいことばかり書いたようですが、普通のことも書いておきます。

オンサイトは楽しい!
残置無視・トポ無視の初登攀ごっこは楽しい!
リスク管理の反省会は楽しい!
現在の練習習慣を見直し、日々自分を変化させるのも楽しい!

楽しいからこそ、甘さをグッと堪えることに達成感があります。
ちなみに、この翌日は一人で小川山に行き、先日のフィロソフィーをやろうとしたら、体力的に疲れ切っていたようで、まるで力が入らずに昼に下山しました。
本日はノーカウントとして、また再訪しようと思います。

できないムーヴと向き合うのは、ツラいっすね!
でも、これをやらないと、講習生に上記4点をやれとも言えないですしねー。
頑張ろ。
<最上部の緩傾斜帯>


<色々と工夫したビレイ点>

<お疲れさまです>

2022年10月2日日曜日

岩場基礎トレ

11月20日(日)に、林智佳子ガイドとのコラボ企画で、岩場基礎トレを行うことになりました。
登山道難路などを想定して、クライミング講習を行います。
場所は、城ヶ崎を予定しております。
普段の当塾講習とは異なり、トップロープですので、初心者の参加も可能です。
クライミングと登山の理解も深まるので、多少クライミングの心得がある方にも興味深いかと思います。

また、11月の予約受付は明日からですが、上記によりまして11月20日が通常の講習ができなくなりました。直前で申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。


2022年9月28日水曜日

11月の予約受付

10月3日(月)の夜21時より、11月分の予約受付を開始いたします。

11月は、岩場リード講習は天王岩、クラックリード講習は湯川or城ヶ崎、マルチピッチリード講習は越沢、といった可能性が高くなります。

ではでは、皆さまよろしくお願いします。

2022年9月26日月曜日

手繰り落ち、ケース解説

9月25日(日)は、自分のクライミングにて、小川山ボルダー。
10年以上前に合計6日間以上は通ったであろう、三日月ハング(1級)を登ることができました。
アップ後に11時に再開して、15時30分にムーヴ完成(スタートが低いため、、バラシが可能)、16時に登れました。
最近、自分なりに意識しまくっているフィジカル系の練習が活きたように思えて、本当に良かったです。

さて、話は変わりますが、最近手繰り落ちについて会話することがあり、ここ何年かで見かけたパターンをお話ししようかと思います。

この際、
①パンプの限界付近やホールドが持てない状況で、無理にクリップに行き、案の定の手繰り落ち
②普段から足置きが雑過ぎて、スリップの手繰り落ち
といった超典型のパターンは除外します。

これはこれで見かけるし、上級者でも確率0にはならない問題だと思います。

(追記)僕自身も、手繰り落ち未遂(バランスを崩したタイミングで、慌ててヌンチャクorジムのルート外のホールドを掴み、事なきを得た)は、何回かあります。

今回は「そういうことは、ある程度注意している自覚のある方」が、不意に起こしてしまう手繰り落ちというケース紹介です。

●ケース1
<図1>

図1は、軽いレイバック状態でのクリップです。
右下方向に抑える力(A)と、左下方向に張る足の力(B)の均衡により、バランスが保たれています。
ちなみに、Aはスローパー気味、Bはインカットしたサイドカチ、Cで自重のほとんどを支えるスタンスはガバ足、傾斜は薄被り(100°程度)です。

クリップは若干高く、左手でクリップするために、右手でロック(腕を曲げた状態で固定)したくなります。
その際、左足に乗り込んで行くため、左足に掛けていた力が鉛直(重力方向)の力が掛かってしまい、見事にスリップするという仕組みです。
 ※その後、その方は右手をロックするだけで左足には乗り込まず、若干のツイストをしながらクリップする態勢を発見していました。

私自身、目撃した訳ではないのですが、ホールド配置からしても手繰り落ちしやすい場面ではあったと思います。

ここで、反省点をいくつか考えてみます。

①そもそも、力方向(力の釣り合い)を考えていたか?
あまり考えていなかった。どちらかと言うと、左足はわずかな荷重しか掛けていないため、そこまで重視していなかった様子。
   ※右足に自重のほとんどが掛かっているので、心情は理解できる。
また、外傾スタンスに対して鉛直荷重を掛けたくなる状況だったことも、無自覚だった様子。

②チャレンジしてフォールするのは良いが、落ちるつもりが無い場面で不意に落ちるのは反省すべき、という理解はあったか?
本人なりに、これまで手や足がスリップしてフォールする機会が多いことを自覚した様子。

③足置き(足裏感覚)への注意
シューズが、岩場ではもう使えないヘタった物を使用していたが、穴が空いているなど、少々酷過ぎて課題のレベルに合っていなかった。

①、②に関して、もう少し考察を深めます。
ある講習生の発言を、私なりに要約すると。
「そもそも、ムーヴ中はバランスの限界を攻めるものである。なので、このケースでも左足に鉛直方向の力を掛けてもギリギリの摩擦で滑らないことは十分に考えられる。なので、仕方ないんじゃないか?」

実際、今回の当事者は力の釣り合いなどでムーヴを考えるタイプというよりは、バランスの限界を攻めることによって上達してきたタイプです。
また、怖がりゆえにデッドなどで落ちることは少ない一方、スタティックを追求していく過程で②が多くなったのもあるでしょう。

そういう登り方を完全否定することも難しいです。
これに関しても、
「クリップ中は普段のムーヴ中よりも安全マージンを大きめに取るべき。」
という当たり前の結論にしか至りませんし、そのサジ加減を誤って手繰り落ちすることは中上級者でも十分あり得るでしょう。

一方で、
・今回が3本目での手繰り落ちだったためビレイヤーが一瞬でロープを引かなければグラウンドフォールと予想されること
・手繰り落ちで指を切断した例は私が知るだけで2件あること(ロープが指に絡んだのか、カラビナに指を挟んだのか、などは不明)
といった事実は抑えておきたいです。

●ケース2
<図2>

図2は、もう少し単純な事例です。
手はガバを鉛直より若干手前に効かせ(A)、アンダーホールドの上面を押すように乗り(B)、バランスを取っておりました。

これを、背伸びしてクリップに行き、見事に足がスリップしました。
  ※この場面は、私も目撃しました。

反省点として
①上述の状況を理解していなかった。
②クリップ動作を、通常の指が届けばクリップできるタイプではなく、手のひら全体が届かないタイプ(強傾斜などで有利になりやすいタイプ)のクリップ練習をやっている最中で、この場面でも行った
③パンプした状態の中、思考停止気味で急いでクリップした。

などが考えられます。

●ケース3
<図3>

図3は、右手保持で左でクリップする場面です。
右手の真下のラインを、赤点線で示しました。

この際、左足がスリップし、手繰り落ちになったそうです。
(講習生に「最近、こんなヒヤリハットに遭いまして」と聞いた話なので、状況は推測も含む。)

左足は、普通に乗れるぐらいのスタンスではあったものの、ガバ足やインカットカチなどの「よく掻き込みの効くスタンス」では無かった様子。
<図4>

比較のために、図4を書きました。
こちらは、赤点線をまたいでいます。
そのため、右足・左足ともにスタンスには明確な荷重が掛かり、スリップしにくいものです。

一方で、図3では右足には自重が掛かるものの、左足は回転を止めるための軽めの荷重しか掛かりません。
しかし、軽い荷重ではあるものの、一度スリップして回転が始まってしまえば、フォールは避けれれません。
つまり、図3の状況でクリップに行く場合、左足がスリップしないように細心の注意を払うか、右足のスタンスを左足に踏み替えて片足バランスでクリップした方が良かったと思われます。

ちなみに、このヒヤリハットは、ジムの4本目だったため、やはり本人は「やっちまった。これは事故だな。」と覚悟したそうです。が、やはりビレイヤーが渾身の1引き+1歩後ろに下がることをしたのでしょうか、グラウンドフォールは避けれらたそうです。

以上が、私なりの分析です。
本人なりの「落ちそうも無いという感覚」も大切ですが、ムーヴの仕組みを理解すること、不意落ちを極限まで減らす意識、なども大切だろうと思います。

練習方法としては、以下3点を推奨します。

安全な状況であっても不意落ちした場合は、なぜ予想外に落ちたのか、なるべく原因究明する習慣を付ける。
②ウォームアップなどでは、過剰なまでに丁寧に登る練習を織り交ぜる。(これは岩場対策にもなる)
③チョンボクリップ(ルート外のホールドなどを使ってのクリップ)は、避ける。クリップできない場合は、潔く敗退し、次のトライでクリップムーヴを今まで以上に真剣に探る。

 ※チョンボクリップしてトップアウトを繰り返す人も多いです。核心ムーヴよりはクリップムーヴの方が易しいため、トライ数を重ねると「いつの間にか」できるようになることが多いものです。そして、その方法はR.P.戦略としては最短経路です。しかし、なんとなく出来るようになったことには危うさがあると私は考えるため、毎回クリップムーヴのリスクと向き合う覚悟を持って欲しいのです。

2022年9月20日火曜日

マルチピッチはマルチタスク

9月16日(金)は、自分のクライミングで小川山ボルダー。
10年以上前に全然できなかった、フィロソフィーをトライしに。

120度のトラバース課題で、カチと第二関節スローパーのサイドorガストンという構成。
ガバ足が少ないので、足技でフィジカルをカバーする方法も取りづらく、どうやっても真っ向勝負の連続になるタイプ。

結果は、まだ全然ダメでした。
ただ、10年前よりは進捗を感じる程度にはなったので、ツライほどのトライ状況にはならず。
もう少し行くのもアリかもしれません。
<夕方、、隣のクラックで、レイダウンスタートの練習>

翌日は、NSさん夫妻のマルチピッチリード講習で小川山。

ここで、なかなか興味深い話が出ました。
1P目で、ピッチを短く切りすぎた奥さま。
もう5m伸ばせば、2P目のリードをビレイする位置として適切でした。
本人としては、「せっかく良い立木も現れたし、ここで切ればフォローの姿も見やすいし。」という判断。

結果的には、5mの移動のために30分のタイムロスが発生しました。(慣れたパーティでも、10分は掛かりそうな状況。)
続く2P目で、今度は旦那さまがピッチを伸ばし過ぎ、枯れ木をビレイ点にしてしまいました。

本人としては、
「ちょうどロープの屈曲点にあるビレイ点で、ありがたい。難しいセクションの手前で切るのが原則なので、歩きっぽいセクションが終わるところまで伸ばせるのも、グッド!」
ぐらいの感覚でした。

ちなみに、枯れ木であることは気づいており、このままピッチを伸ばす場合のプロテクションとして使用することに不安を感じたそうです。
が、ビレイ点として使う際には、その不安をいつの間にか忘れてしまったそうです。

5mほど手前に、割と元気そうな立木があり、カムでもバックアップが取れる「ビレイ点の適地」があったのですが。
この出来事、なかなか興味深いなと思いました。

1点目は、1P目の反省を活かそうと考えて、裏目に出た点です。
岩場リード講習などで、ロープと足の絡む関係を講習し、次のリードトライで意識したら多少マシになる、という入門型の学習過程を踏みづらいのです。

マルチピッチリード講習は、仕事で言うところのオンザジョブトレーニングに近い状況です。
全ピッチ出てくる状況は異なるため、様々な原則(※)を押さえつつ、何を重視すべきかを本人なりに判断する必要があります。

※今回で言えば
・難しいセクションの手前でピッチを切ると、リードのビレイがしやすくなる。(見やすさ、ベストなビレイ位置を選べる、など)。易しいセクションは難しいセクションの後半部として登ってしまうことでピッチ数の削減にもなる。

・ビレイ点は、ラインが大きく屈曲するところに設定すると、ロープの流れが良い。

・ビレイ点は、安全マージンを大きめに取ることで、パーティ全滅のリスクを低減させる。

など、全ては理解済みの内容でも、総合的にその場で判断することは難しいようです。

2点目は、枯れ木であることに気付きつつも、いつの間にか忘れてビレイ点としていた点。

1点目の総合的判断と関わりますが、マルチピッチは非常に頻繁に情報処理の限界を超える場面が出てきます。
リードや作業そのものは、全く焦る必要はなく、ゆっくりと考えながら取り組んでいただいていますが、それでも情報処理の限界があるようです。
最初は、マルチピッチのシステム理解やら、作業の流れに不安を感じていた2人ですが、本当に考えるべき核心に迫ってきた、とプラスに捉えたいと思います。

以前の講習生に、「マルチピッチは、マルチタスクだ!」と言っていた方がいたのが思い出されます。
その後も、3P目、4P目とドラマが続き、キャンプ場に降りたのは21時となってしまいました(笑)。

でもまぁ、トップアウトできたし、学びも大きそうだったので、何よりでした。
引き続き、ゆっくり行きましょう。