今年は、富士山もないので、7月も講習を行います。
つきましては、7月、8月分の予約受付を、6月17日(水)の夜21時よりスタートいたします。
6月11日(木)、12日(金)は、またまた仕事の偵察で山梨の低山。初日の午後は、結構な雨でツラかったです。
雨にちなんで、富士山ガイドの1泊2日ツアーでのことです。
※夜中に山小屋を出発して、頂上で御来光を迎える行程。
2日目の天気予報が悪いと、中止・決行の判断について、ガイド同士で必死の検討が行われます。
バス登山ツアーだと思って、私も当初ナメていたのですが、相当なドシャ降り、飛ばされない程度の強風なら、登頂することは結構あります。
参加者も、「遠方から来ている」、「せっかく8合目まで登ったのだから」など、様々なモチベーションで、ギリギリ決行の日ですら7~8割の方は付いて来ます。
(8合目で、リタイヤも可能)
そのため、ガイド同士の検討会は、
・決行した場合のリスクは、受け入れ可能な範囲か?(低体温、転倒、強風による滑落、など)
・頂上直下で好転すると見込んで出発した場合など、好転しなかった場合のエスケープは、受け入れられる労力か?また、そういった徒労感に終わる確率は?
などを天気図、ヤマテン予報、ウィンドプロファイラ、などを見て、意見を擦り合わせます。
そして、中止と判断したとき、その旨をお客様にお話しします。
このとき、説明とは何かを考えさせられます。
①中止せざるを得ない根拠を、要点だけを報告。
例)残念ながら、低気圧が逸れることなく富士山に向かってきています。時間帯から
見て、山頂直下で今より激しい台風のような大雨や風に遭遇する可能性が、とても高いです。それでも、悪天につかまったら撤退する前提での出発も検討しました。しかし、いずれにしても豪雨の中で8合目まで降りてくる可能性が高く、危険が大きいと判断しました。明るくなってから下山を開始しますが、その際は予報通り豪雨かもしれません。ただ、それでも頂上で豪雨に遭うよりはマシで、下へ降りるほどに小ぶりになって行くことも予想されます。
②中止の心構えを説く
例)私ガイドの役目は、皆さまを登頂させるのではなく、安全に下山させることです。皆様にとっても、家には大切な家族など、帰りを待つ方がいらっしゃるはずです。そうでなかったとしても、あなたの命はあなた自身にとって大切なものです。そして、山は逃げません。こういうときは、山が登るなと言っているのです。
個人的に、②は気持ち悪いと思っています。
命を盾に、道徳心に訴えかけてくる感じです。
だから、なるべく①を行います。
「なんで行けないの?」という気持ちの方に、極力ちゃんと回答したいという気持ちもあります。
「なぜ登れないのか?仮に、どの程度条件がマシなら登れたのか?」ということを、1人の登山者としてガイドと共有して欲しいのもあります。
ただ、中止と聞いたら、細かい理由には興味がほとんど沸かない方も一定数いらっしゃいます。
次に来るとしてもガイドツアーであれば、中止判断を自分で下すことは無いですからね。
なので、②の道徳心型の説明を完全にゼロにはしていません。
それで、中止の正当性を感じて、心が落ち着く方もいることでしょう。
ただ、それでも罪悪感は残ります。
お客さまを「永遠にリスク判断力を持たない登山者」として、見放しているような気分が残るのでしょうか。