2020年7月26日日曜日

岩登り基礎トレにおける、ニーズと欲求

7月11日(土)は、林智加子さん企画の岩登り基礎トレの講師として。
残念ながら、雨にてストーンマジック。
「登山のための岩場歩きを教える」というのは、奥が深いと思っています。

講習生は、恐怖心から、上へ上へと急いで登りたくなる人が多いです。
さらに、待っている人がいると急かされる心情も分かります。

さらに、見るからにイマイチな講師やガイドが、急かすような発言を数々浴びせている場面も、ときどき見かけます。
安全管理する側は、絶対的優位な立場なので、横柄になる人も多いです。

素人さんの中に、「岩場はサクサクと、スムーズに登らねばならない。」というマインドが育つのも分かります。
本来は、初心者ほど「ゆっくり、丁寧に登るよう心掛けるもの。」だと思いますが。
<理屈が分かってくると、目の色も変わってきます>

また、登り方のコツを教えるというのは、大変に地味なことです。

例えば、足を滑らせながらも、手掛かりが良いから落ちずに登った初心者が居たとします。

そこで、
①「なぜ、この足場で足が滑ってしまうのか?(滑らずに置ける人もいるのに。)」
(クライミング用語で言えば、外傾スタンスや小さいスタンスに無意識で乗っていたり、良い足でも雑に置いていたりします。)

②「そもそも、もうちょっと良い足場だけを繋いで登るライン取りがありそうじゃないか?それに、なぜ気づかなかったのか?」
(クライミング用語で言えば、直近の数歩分のオブザベ。)

③「(それ以前に、)そういう場面があったことを覚えていますか?」
(クライミング的に言えば、レストなどで冷静な判断力を保てているか。)

といった点を、考える必要があります。
しかも、講師が一方的に理屈を話してもダメで、講習生の顔色を見ながら対話していく必要があります。
<解説中>

一方で、講習生は、「せっかくハーネスも借りたし、(お金も払って)ガイドさんに連れてきてもらったんだから」とりあえずカッコいい岩を登ってみたい欲求があります。
これも、悪いことではありません。

「好きこそ物の上手なれ」と言うように、クライミングが好きであることは大きく見ればプラスです。
もちろん、スポーツとしてのクライミングと、登山のためのクライミング技術は、やや力点が違います。ただ、クライミングジムに積極的に通うような人は、それを凌駕します。
<外傾していることに気づいて乗っていますか?>

では、講習生のニーズに合わせた講習とは、何でしょうか?

・安定した登りとは何ぞや?
・ライン取りを観察しよう。
・クライムダウンできる範囲で様子を見ながら登ろう。
・足場のしっかりしたところで、腕だけでなく、気持ちもレストしよう。
・3点支持って、そもそもどういう意味か?

といった、言葉で書くと当たり前なんだけど、実際にはできない諸々のことに向き合う時間を作ることです。
<講習生が、大抵足を突っ込みたがるので、フットジャムも解説>

一方で、講習生の欲求に合わせた講習とは、何でしょうか?

・とりあえず、一番易しいルートをトップロープで登る。
・下から声援を送る。
・隠れたガバのある場所、休憩する場所などを、下から大声で指示。
・登れたら、もうちょっと難しいルートにチャレンジ。
<靴紐の締め方>

もちろん、目指すべきはニーズに合わせた講習です。
コンサルの講習生が、「顧客は、ニーズを把握していない。」と仰っていたのが、今でも心に響きます。

しかし、現実は多少の柔軟さも必要です。

トップロープで岩の上に立つ楽しさを味わってもらい、雰囲気を盛り上げたいとも思います。
長い目で見たら、クライミングが好きになるかもしれませんしね。

また、クライミング未経験者も居ますので、トップロープの仕組みや、ハーネスの仕組みなど、登山とは直接関係のない説明時間もそれなりに必要になります。
ビレイは、我々が行うとしても。
<山でよくある、凹角>

ニーズへの講習 : 欲求への現実的対応 = 8:2
だと、厳しめの先生。
僕は、これになりがちだな、とは自覚しています。

10:0だと、職人世界の厳格な師匠。
7:3~5:5だと、現実的路線?
2:8だと、たまに良いこと言う、接しやすい良い人。(本人はハイレベルなクライマーや登山者が、お客さんに求めるものが少ないと、こうなる?登れるジムスタッフって、こんな感じですよね。)
0:10だと、講師とは呼べない、単なる良い人。

ちなみに、ガイドというのは横柄になりやすいので、
-3:7とかいう、悪癖製造所のようなアドバイスを繰り返しているケースも、散見されます。
お互いに、気を付けていきましょう。