前記事の湯河原ボルダーの話を、一般化して「クライミングでよくあるモヤモヤした感情」として捉えてみます。
当然、登山にも通じる話です。
①危なっかしい完登
例
・ジムで、逆クリップに気づいたが、そのままR.P.した。
・ジムで、明らかにグランドフォールするタイミングでクリップを行った。
・クラックで、ロワーダウン回収中に、核心部のカムが効いていないことに気づいた。
・落ちてはいけないセクションを、自分ながら危なっかしいと感じるムーヴで突破してしまい、「2度とやりたくない」、「生きてて良かった」と思った。
②自力感の低い完登
例
・ムーヴを指示されながらマリオネット状態で登った。
・トップロープを張ってもらったり、ヌンチャク掛けが自分でできないルートを登った。
・自分ではアプローチで迷ってしまうエリアに連れて行ってもらったが、ルートではO.S.やR.P.などの成果があった。
・トポや残置を追いかけて、山のバリエーションを登った。
・連れられ登山で、雪山、バリエーションルートを登った。
③グラウンドアップ感の低い完登
例
・トップロープリハーサルを行った。
・掃除などの都合で、ホールドやカムセット位置を分かった状態でリードした。
・怖そうなセクションでのカムセット位置を、あらかじめ聞いてしまった。
④初登者のライン、トポのラインと違いを感じる完登
例
・ボルトが意図するラインとは、少しズレたラインを登っただろうと自覚している。
・人気ルートなのに、明らかに触られていないホールドを使い、脆かった。
・限定ラインが趣味に合わず、自分で「限定なし」や「無理の少ない限定」として登った。
・SDスタートしかトポに載っていないが、届く範囲スタートの方が自然に感じて、そう登った。
番外編
⑤設定ムーヴと大幅に違う完登(主にジム)
例
・ランジ課題で、飛ばないで届いた。
・スローパー課題なのに、ホールドのフチをカチとして持った。
・マッチ設定なのに、飛ばすことができた。
・蛇行ラインなのに、まさかのショートカットができた。(結果、使わないホールドがいっぱい。)
さて、どう思いますか?
④について補足します。
ボルトルートで「そこ使ったらグレード下がるよ!」と他人に言っている人はイマイチとしても、ボルダーのような小さい岩でラインが判然としないときに人に聞いたり、動画で確認してしまう気持ちは理解できます。
④は試合で言えばルールに相当します。「ルールは正確に決めてくれなきゃ困る。」という気持ちも分かりますが、「ラインなんて自分の目で見て決めるものだろ。」というクライミング観には岩を登る姿勢が感じられます。
ちょうど、ロクスノ最新号でも話題になっていますね。
答えの無い問題提起ですが、私なりの考えは以下。
①危なっかしい完登
→程度にもよるが、ミスによるリスク増大は完登失敗と見なす。その方が、長い目で見て自分のリスクを下げるため。
ただ、リスクを分かった上で取った行動(悪天につかまる可能性5%と分かった上で突っ込んで登頂した、1%の背中から落ちる可能性を分かった上でマントルに踏み切った、など)に関しては、全否定してしまうとアルパインっぽい遊びの自由度が極端に下がる気もする。しかし、それを続ければ、いずれ必ず大事故になるのも確か。
②自力感の低い完登、③グラウンドアップ感の低い完登
→なるべく厳しく完登失敗と見なす。ただし、ボルトルートで他人がヌンチャクを掛けているものを使う、掃除した結果でグラウンドアップが無理、などは仕方ない。
一方、上級者の方々で、危険なルート(R/Xのもの、フリーソロ)を③に関しては妥協してリハーサルしまくって完登、といった文化もある。
また、トップロープリハーサルにも、「落ちたら怖い」、「ランナウト区間が安全に登れない」などの消極的な理由ではなく、純粋にバラしやすい方法の選択として、上級者がトップロープでのバラしを一部許容している場面も見かける。初級者のリード技術不足によるトップロープリハーサルとは事情が異なるため、一見問題は無さそうでもある。
ただ、私個人は、ボルトルートでも未だに落ちたら怖いし、フォール姿勢やランナウト区間の安定ムーヴにも課題ばかりだと感じるので、この方法は採用できない。
④初登者のライン、トポのラインと違いを感じる完登
→人間なのでモヤモヤするが、最終的には自分がラインだと思うものを登ることに真剣になるべき。つまり、グレードやルート名を気にせず、ラインを登るのが、結局は心の健康に良い。結果、その場にいるクライマーと話が合わなくなることは、甘んじて受け入れるべき。
不自然なラインと感じても、余興やトレーニングとしては登っても良い。
番外編
⑤設定ムーヴと大幅に違う完登(主にジム)
→課題によっては相当モヤモヤするが、最終的には自分が登りやすいように登るしかない。練習として登る場合は別だが、トライとして登る場合は、「ルール範囲内であれば何でもアリ」というのがムーヴ戦略だと思う。リーチがある私は「ズルい」と言われることもあるが、止む無し。
以下、まとめ。
価値観は人それぞれとは言うものの、「皆、似たような考えに落ち着くべき場所がある。」という部分も大きいように感じます。
トップクライマーの〇〇さんと××さんの中間ぐらいのスタイル、などという感じで何パターンかに落ち着くものでしょう。私を含め、ほとんどの人はスタイルを確立する道半ばで一生を終えるのかもしれませんが(笑)。
スポーツとしての本質の一つが能力向上にあるため、「グレードが気になる」、「他人と比較してしまう」のも仕方ないですし、良い面もあるでしょう。
ただ、「何のために登るのか?」という原点に還ると、リスク管理とか達成感と向き合うことがアウトドアスポーツの本質だと思います。
クライミング友達とも、「どのルートを登ったか?」よりも、「どう登ったか?」、「どう苦労したか?」を話した方が盛り上がると感じています。
モヤモヤは、本質を捉え直すチャンスなんですかね。
1月25日(火)は、ムーヴLv.0にて、男性WNさん、男性KIさん、女性THTさん。
1月26日(水)は、ムーヴLv.0にて、女性NJさん。
1月27日(木)は、リード1回目にて、女性HDさん、女性TNさん。2コマ目で、ムーヴLv.0にて、女性IGさん、女性YDさん、女性HUさん。
1月29日(土)は、アイスクライミング体験にて、女性HNさん、女性Mさん。
1月30日(日)は、クラックリード講習にて、女性YIさん。
2月1日(火)は、ムーヴLv.0にて、女性ONさん、男性UWさん、男性KTさん。
2月2日(水)は、岩場リード講習にて、男性NOさん、男性AHさん、男性SHさん。
2月3日(木)は、ムーヴLv.0にて、女性NJさん。2コマ目は、ムーヴLv.1にて、女性WNさん、女性MDさん、女性AMさん。
2月5日(土)は、自分のクライミングにて、湯河原ボルダー。カメチヨと。そして、この日は寒すぎて、一人で湯河原山頂へハイキング。
2月6日(日)は、岩場リード講習にて、男性MBさん、女性SHさん。
2月8日(火)は、リード1回目にて、男性KIさん、男性WNさん。
2月9日(水)は、ムーヴLv.0にて、女性NJさん。
2月10日(木)は、ムーヴLv.0にて、女性IGさん、女性HUさん。
2月12日(土)は、クラックリード講習にて、女性YZさん、男性SUさん、男性HDさん、男性NNさん。
2月13日(日)は、雨でロープワーク講習にて、女性YZさん、男性SUさん。
2月14日(月)は、雪上訓練にて、女性YDさん、男性MBさん。