例①
本チャンで、ランナウトしている場面。
ボルダーで、絶対に落ちたくない高さでムーヴを探って逡巡している場面。
ボルトルートで、落ちてはいけないセクションを慎重に探っている場面。
沢登りで、ロープ無しで易しめの滝を登っている場面。
こういった場面で、
「次のホールド(あるいはムーヴ)が思ったより悪かったら・・・。」
「抜け口が脆かったら・・・。」
「抜けられても、次で詰まったら・・・。」
などと想定しながら登ることは、必要なことです。
結果的には、
「なるべくスタティックなムーヴで、戻れる範囲で探りながら登る。」
というのがセオリーになってくるはずです。
(絶対に突破できるムーヴの読みに自信があり、かつ抜けた後の状況も確定的に生きて帰れそうな自信がある、などの例外的な状況判断は色々あると思いますが。)
ちなみに、こういう会話を聞くことが、よくあります。
Aさん「あそこまで、心配なんだけど。(90%以上登れるとは思うけど、落ちたら事故だし、どうしよう。)」
Bさん「大丈夫だよ。全然!〇〇っしょ!(Bさんなりの見立てを語ったり、Aさんの能力を褒めたり、自分が過去にそのルートをトレースしたことがあればホールド情報を伝えたり)」
Aさん「そうかなー。まぁ、行ってみます。」
Bさん「行ける行ける!大丈夫だよ。」
恥ずかしながら、私自身もAさん、Bさん、どちらの役回りも演じてしまったことがあります。
本来、Aさんは探りながら登って自分で進退判断をすべきなのを、曖昧な自信を持たせることで阻害してしまったと思います。
ちなみに、私個人が何かを判断するときも、脳内でAさんとBさんは意見を出し合っているように感じます。
当然ですが、Bさんの意見は話半分に聞き流し、冷静に戻れる範囲で探ることを推奨いたします。
例②
ジムリードのオンサイトトライのオブザベで、大きなインカットホールドがありました。
Aさん「グレード○○だし、大ガバっしょ!ってことは、あそこで大レストできるし、クリップもできるから・・・。次の2手ぐらいも楽だな。よしよし・・・。」
Bさん「あのホールド触ったこと無いからなー。大きいけど、スローパー気味だったり、マッチしにくいかもなー。だとすると、レストしにくいから、あそこで思考をフルリセットできるような将来を描くのは、ちょっと楽観的すぎるかな。と言って、次から数手も良いホールドでは無さそうだし、苦しい状況でフーフー言いながら高度上げる感じかも。」
実際にはガバかもしれないし、違うかもしれません。
Aさんの思考回路からすると、ガバだと思うのに、わざわざ悲観的シナリオを想定するのが労力の無駄使いなのかもしれません。
例えば、こういうストーリーが予想されます。
Aさんは、ガバじゃなければ早々にテンションコールして、「なんだよー。グレード辛いよー。」ぐらいのコメントを言いつつトップアウト。
次のトライで、サクッとR.P.し、「分かっちゃえば簡単だね。あそこは、ガバじゃないから素早く通過ね。」とコメントする未来が予想されます。
Bさんは、オブザベで神経を擦り減らしますが、ガバじゃない場合も想定内なので、どうにか頑張ってオンサイトを決める可能性があります。
これらの例は、日々見かけるので、まぁ間違いないと思います。
僕なりの考えは以下です。
・楽観的シナリオを信じると、リスクが高い場面がよくある。
・悲観的シナリオを想定し始めると、考えるべきパターンが増えるため、安易には取り付けなくなる。
・悲観的シナリオを考えた上で、リスクある場面なら敗退シナリオ想定、スポーツ的な場面なら別ムーヴなどのオプション想定、をやった方が良い。
今回のタイトルの意味を、最後にまとめます。
初心者のうちは、楽観的シナリオを語ることの多いノリの軽い人が「ポジティブシンキング」だと見えてしまうかもしれません。
でも、悲観的シナリオを想定した上で、「リスク判断による敗退もアリ」、「安全なら色々と手を尽くして登れないなら止む無し」ぐらいに腹を決めて取り付くのが、理想的だと思います。
そこまで考えた上で、敗退してもクヨクヨし過ぎない、オンサイト失敗しても次に繋げる、ぐらいが良いんじゃないでしょうか。
まぁ、人間なので多少は挫けますけどね・・・。