実は今回、相当「ヤバイ!」って思いました。
しかし、実際には事故には全く繋がらず。
いわゆる、ヒヤリハット体験というやつです。
この言葉の裏には、「1回事故があったら、その背後には9回のヒヤリハット体験がある」というメッセージがあります。
つまり、「事故に遭う人のほとんどが、そのヒヤリハットを見落として来たのだ」という理屈です。
登山では
・一瞬、滑落しそうになる瞬間
スポーツクライミングでは
・たぐり落ちしたけど、事故にならなかったとき
マルチでは
・ロープワークの致命的なミス(セルフビレイの取り忘れ、など)
なんかが代表的です。
それぞれ、
「確率は0にならないけれど、事故を減らす努力が足りなかったんじゃないかと自分を疑いなさい!」
って、警告と受け止める訳です。
今回が、どのくらいヤバかったかについては後述いたしますが、専門用語を沢山使いますので、ご容赦ください。
・場所
八ヶ岳石尊稜の右側壁
(一般的なラインでは無く、適当に登っていた)
顕著なリッジラインの2P目
(ボロ岩だが草付き豊富、という感じ)
・状況:一瞬、リードで落ちかける(というか、よく止まったというレベル)
これから垂壁のマントル的な乗り越しがあり、ダブルアックスを緩傾斜の草付きに刺している。
が、バランスも悪く、マントルするにはアックスの効きも甘いので何度も振り直す。
しかも、そこまでのプロテクションがイマイチだったので、とても心配。
安定したムーブを探りに探っている最中。(イボイボを、足下2mくらい下、その4mくらい下に甘めに決めた状態)
そのとき、アックスを振っていたら、保持している側のアックスが感触もなくすっぽ抜ける!
「エッ!?」という感じで、体はゆっくりと壁から離される。
その瞬間、アックスを手から離し、マントルしようと思っていた胸元左くらいのパーミングガバに渾身のデッド!
気合いで振られを止めて、事なきを得る。
「あっっ!ぶねー!」と、渾身の吠え。
(あとで聞いたら、パートナーも僕が壁から離されるのが見えて、「落ちるな」と思ったらしい。)
ちなみに、この日はシーズン最高レベルの大寒波で、大怪我をしたらレスキューされている間に死にそうな日。
しかも、ビレイ点も100%の信頼度ではなかったので、最悪のケースもあり得た。
しかも、悪いことにこれで完全にビビって脱力が難しくなった上、振られを止めたときにスタンスが欠けてクライムダウン敗退がさらに困難に。
「このマントルさえこなせば、少なくとも敗退できる支点はありそう」と踏んで突っ込んでいたので、必死に脱力してレスト。
あとは、数分だけ素手になったりしながら、ようやくマントルをこなす。
そして、なんとか支点を構築して敗退。
反省点
・草付き混じりの雪壁にアックスを刺していたのだが、抜けたアックスは草にはほとんど絡んでおらず、甘い雪に引っ掛かっていた。
・「あのマントルさえこなせば、大丈夫そう」と思って突っ込んだのだが、そもそも、これがこの日の天候の割には死亡リスクが高過ぎた。
自分の実力からすれば、2P目の途中で、敗退すべきだったかも。
・実は、マントルムーブのあとも、1mほど相当悪くて焦った。
「ヒヤリハット」の後に、頑張ってクライムダウン敗退した方が安全率が高かったかも。