4月16日(土)は、マルチピッチリード講習にて、越沢。
男性SRさん、男性FKさん。
<オブザベタイム>
発想の理解、というのは将来性を見る1つのポイントだと思います。
以前より私の卒業要件が厳しくなったとすれば、ここかなと思います。
<まずは、易しいピッチでシステム復習>
本日、他パーティに講習内容を説明する機会がありました。
若くて、やる気ありそうな人が、
「せっかくだから、リードの人が何を考えながら登っているか教えてください!」
という熱い質問を投げかけて来まして(笑)。
<懸垂下降>
「初登攀のつもりで登ってもらっているんで、オールナチプロで(ハーケン打ちはアリだけど)、トポも見ないでオンサイトトライです。」
「常に敗退できるか考えながら、レストしてムーヴやプロテクションを探って、ルートファインディングしているんです。今の場面では、具体的に・・・・。」
「立木はアリですよ。ビレイポイントも、自分で作ります。ちなみに、今回は渋滞を作らないために、立木は避けて隣の壁でカムで作ってくれるように、私が指定したんですが。」
<オンサイトトライ、1ピッチ目>
すると、その若いクライマーの感想は・・・
「開拓者って、そうやって登っている訳ですよね。5.11とかでも同じなんでしょうか?」
<ハンギングビレイ>
一方、その若者を連れて来ていた先輩は・・・
「色々ルールを作って、色々な課題練習をしているんだね。」
<2ピッチ目>
これは、1年後の成長差は歴然でしょうね~。
ただ、先輩の方も
「今度、三ツ峠で(一番易しいルートで)オールナチプロの練習してみっかな。」
なんて言っていたので、色々試そうという気持ちはありそうでした。
現時点では、カムをセットしてみるくらいの感じでしたが。
<だいぶサマになってます>
同じように、
“初登攀ごっこ”は、無謀な突っ込みではない。
という発想を、どのレベルで理解できているかが気にかかります。
<コーナークラック>
過去の卒業生10人くらいの中でも、その後の記録を見ると、ちょっと突っ込みすぎなオンサイトトライだなと見えたものもあります。
一方で、
「山では、残置を使うのも、フリーを諦めるのも、限界ルートの安全のためなら何でもアリ。」
という方向に走ってしまう人もいます。
何度も言いますが、残置を使うのが絶対悪でもないし、エイドも絶対悪ではないのですが、発想を勘違いしているとダメだと思うという話です。
<3P目の斜上クラック>
こういう話を聞くと、私の講習ミスも否めません。
「初登攀ごっこを、リスクを取り過ぎずに楽しむ。」
その発想が理解できるまで、もっとお付き合いするべきだったのではないか?
そんな反省の念に狩られます。
<落ち着いてリードするSRさん>
ただ、自力でその境地に至った卒業生も何人もいます。
もちろん、何度か失敗を繰り返した後に、という話です。
初期の頃の卒業要件が、
「基本的な初登攀ごっこのシステムは分かったし、そろそろ自力で1本か2本トライして欲しいな。」
というレベルでした。
それを考えると、本人の努力の賜物でしょう。
今よりも、敗退シナリオや危機回避の発想については、厳密に話してはいませんでしたし。
<今回は、明るい(笑)>
どこまで教えるべきで、どこからは自力で考えるべきか。
発想は、自力で盗むべきものか、指摘されないと気付けないものか?
最近、私にとっては重大な関心事です(笑)。
<完登!>
さてさて、本日でSRさんは、マルチピッチリード講習を卒業といたしました。
SRさんは、岩場リードの頃から敗退シナリオは得意分野だったので、マルチピッチの発想理解はさすがでした。
とはいえ、クライミング能力的にギリギリだったこともあり、実際のリード中の判断が良くなって来たのは、ごく最近です。
かなり安定して来たので、平日の三ツ峠あたりで、講習で使わなかったラインでもオンサイトトライしたら、相当楽しめると思いますよ!
<明るいうちに降りられました>
クライミング能力も、ロープワークも、現場判断も、そして考え方も、また少しずつ腕を磨いてくださいませ。
マルチ講習卒業は1つの区切りですが、ときどき講習に来て下さるのも良いでしょう。
「ルート名を付けるとしたら?」という問いには、
“越(こい)の花道”
だそうです。