2019年9月30日月曜日

動きで安全性を出す

9月25日(水)は、1コマ目がUDさん親子へのリード講習。
2コマ目が、ムーヴLv.0にて、男性MBさん、新規女性YOさん。

26日(木)は、リード2回目で、男性AHさん、男性SHさん。
リードを覚えるにあたって、ムーヴの省エネと、ムーヴの安定感が求められます。

トップローパーに比べて、リードクライマーの方が、そういう登りになる必要性があるのです。
当たり前すぎるような話ですが、初心者の中には意外だと感じる方も多いです。


①「腕力が足りない、指の力が足りないから途中で疲れちゃうだけで、持久力さえあれば大丈夫ではないか?」(周りから見たら、ムーヴがぐちゃぐちゃであったとしても。)

②「ガバを持っていれば、安定しています。」(周りから見たら、バタバタ登りであっても。)

③「ロープクライミングは、システムで安全を守ってくれるから、ムーヴを安定させる必要とか無いんじゃないか?」(ジムですら、手繰り落ちなどのリスクはありますが。)
同じことをやっても、初心者と中上級者では消費エネルギーも安定感も全く違います。

それを追求するのが、リードにおけるムーヴ練習ではないでしょうか?
それぐらいすることで、ようやく持久系のルートで戦えるようになったり、外の岩場のランナウトに対応できるようになったりするのではないでしょうか?

ボルダリングの場合、そもそも難しいパートで、出来ないor出来るを追求する要素が強いので、基本は出来たら終わりだと思います。
バタバタ登りで完登したとしても、より楽に、より安定してを追求して反復練習するのは稀だと思います。
実際、ジムボルダラーの皆さんは、8級~6級でそんな感じでも私なんかより強かったりするので、そこは重要じゃないのかもしれません。
いつも同じ話ですが、本日の皆さんに伝わりやすいように、言葉を少々変えてみた感じです。
ちょっとずつ、考えていきましょう。


2019年9月25日水曜日

ジムのルートを6分割

9月21日(土)は、雨天にてジムのムーヴ講習。
男性NSさん、男性KTさん、女性YIさん。
講習という限られた時間内に、R.P.戦略を扱うことは、案外難しいと感じています。

色々と口頭では語ってみても、やはり実践が伴わないと伝わっていない、ということを後々感じる日々です。
今回は、ちょうどNSさんに宿題の5.11a(壁面を大トラバースする持久系ルート)があったので、それを使って以下のように実践してみました。

①スタートから、最初のレストポイント(全体の6分の1)までをオブザベ。
手順の読み、クリップ位置を、私に口頭で説明。
私は、レーザーポインターでホールドを指しながら、「こういう意味ですか?」と色々と確認。

②NSさんに、そのパートを実践してもらう。
もし、別手順があって、そちらの方が楽な可能性がありそうなら、そこを再確認。

これを、ゴールまで繰り返します。

(まだハングドッグに不慣れで、疲れてしまうので、2分割ごとに一度地上に戻って大休止。前回の最終到達点までは、適当なガバを使ってアプローチして、再スタートするという方法。)
今回、NSさんの分け方だと、ルートが6分割されました。
<5.10bをO.S.するYIさん>

そして、1時間ほどの休憩後、R.P.トライ。

すると、流石に迷うムーヴは少なく、順調に高度を上げていくことが出来ました。
結果は、それでも今回は6分割目に入るあたりで力尽きてしまいましたが。

まぁ、リードを始めて2日目のボルダラーとしては、十分に上出来なR.P.戦略だったと思います。
本人は、「こんなに細かくバラさせてもらったのに登れないなんて、不甲斐ない。」と仰っておりました。
ボルダラーって、やっぱり自分に厳しいっすねー(笑)。
<5.11aのR.P.トライ>

岩場に自力で行くには、とりあえずO.S.戦略の方が大事だとは思います。

とはいえ、R.P.も技術、文化、成長方法などの色々な意味で、結局はおざなりに出来ないものだと思います。
闇雲に便数を重ねないように、考えて行きましょう。
<頑張ってます>

ところで、ボルダー中心の人に
「リードの人って、1回テンション掛けてから、散々バラシをやっておいて、次のトライで登れたら2撃って言うじゃん。あれって、変じゃない?」
と言われたことがあります。

その人の感覚だと、コンペみたいに毎回下からトライしたものだけを2撃とか3撃とか言うのであって、バラした場合の記録は「いっぱいトライした。」ぐらいでトライ数は関係ないんじゃないかと。

これって、リードに置き換えると、最初の数トライはハングドッグ禁止でやらないと2撃、3撃と言えないという話になってきます。
すごく分かるんですが、「O.S.トライ失敗後にすぐにバラさないと、どうせ2撃は無い。」と確信してバラしているような気もします。

答えは無いんですけど、こういうルールに対する感覚を語り合うものも、クライミングの面白さでしょうか。

2019年9月24日火曜日

戒め

9月20日(金)は、岩場リード講習にて、小川山。
女性KBさん、男性SKさん、女性YYさん、新規男性KTさん。
KBさんとYYさんは、せっかちを自認しております。
本来的には、何も考えずにポンポンと勢いよく登っていくのが好きだそうです。
それが、講習に来ると
「ランナウト具合によって、落ちる距離が違う。最終プロテクションが、膝下と足首だけでも全然違う。」

「一挙手一投足ごとに、バランスの良し悪しを考えましょう。」

「レストして、じっくり考える時間的な余裕を作りましょう。」

「落ちてはダメな場面では、クライムダウン敗退できるかどうかを考慮しながら進みましょう。」

などなどの、注意事項を意識せざるを得なくなります。
YYさんの言葉。
「石田塾には、自分を戒めるために来ているんです。」

KBさんの言葉。
「石田さんは、自分とは真逆のアプローチで物事を覚える人だから、良い影響がありそうだなと思っています。」

2人とも、なかなかストイックな御発言です。
ところで、私自身は何を戒めにクライミングしているのでしょうか。

とあるブログの心構えの記事を見るたびに、自戒を新たにしているような気もします。
ロクスノなどのトップクライマーの記事を読むたびに、その心意気の違いに戒められているような気もします。
ジムのボルダラーの行動を見るにつけ、自分に足りないものを突き付けられているような気もします。
自分自身の発言やら、ブログ記事に責任を感じて、極力腐った行動を取らないようにしいている気もします(笑)。
ときどきですが、強い人と登ることで、色々とサボって生きていることに自責の念に駆られたりもします。
そう考えると、いつでも自戒ばかりで疲れそうですが(笑)。

割と得意なことに関しては、自戒とかしなくても改善案が思いつくんですけどね。
たぶん、成長曲線に乗っているから、苦しまずに考えられるんでしょう。

ということは、1年後にはもう少し楽に反省できる日が訪れるのでしょうか!?
そうだと良いっすねー。
実践本気トライ
SKさん Song of Pine(5.8) O.S.トライで、ハングドッグしてムーヴ解決。(ここで、初のチャレンジ落ちを果たしました!)
               2トライ目で、R.P.。

2019年9月17日火曜日

エイド講習

9月14日(土)、15日(日)は、エイド講習にて湯川。
女性IUさん、男性UDさん。
<まずは、復習>

なんとなく、一人前のクライマーの条件として、エイドが出来ることが含まれると感じていたIUさん。
そして、行ってみたいボルトラダーのルートも1本あると言います。
<足に立っているようだが、テンション中>

私なりに、エイド技術は必要だと感じています。
クラックであれ、マルチであれ、行き詰った時の敗退の選択肢として。
あるいは、オールナチュラルなルート(もしくは残置無視)であれば、エイド混じりで突破するのも、「登った」ことにして良い範疇だと感じています。
一方で、ボルトラダー(残置ハーケンでも同じ)は自力で登った感の疑わしさ、リングボルトなどの安全上の疑わしさ、の2点から、もう2度とやらないつもりです。
(やりがいがあって、リスクがある程度コントロールできるなら、結果的にある程度危なくても面白いとは思いますが。)
<働くインストラクター>

そこで、カムを使って落ちても大丈夫な支点を確保した上で、エイドを講習することにしました。
<いかにもエイドが上手そうな先生>

まずは、クラックリード講習でもやっている

①テンションを掛けた状態で次のカムをセット
②セルフビレイをとって、ロープを緩めてもらい、クリップ
③ポンプアップで最上部に上がる

を繰り返す方法の復習。
<スリング使用>

次に、セルフを取っていたヌンチャクを、フィフィに交換して練習してみます。

3回目は、60cmスリングを足掛かり(簡易アブミ)にして、1カム毎の距離出しをしてもらいます。
<アブミ使用>

4回目は、スリングの代わりにアブミ1台。

そして、2日目。
アブミ2台にして、ビレイヤーにテンションしてもらったり、ポンプアップしてもらうことなく、一人で黙々とエイドする方式。
(一般的に、エイド前提でリードする場合は、こうすると思いますが。)
<ゲゲゲの鬼太郎>

いい加減に頭が疲労してきたので、1本ずつフリークライミングを楽しむ時間を設けます。
<このあと、フォールを喫する>

<UDさんは、大和屋をO.S.>

最後に、薄被りや凹角でエイドの動きがしにくくて疲れそうな“大和屋”をトップアウト。
この際、アブミを他のメーカーのものと使い比べてみたり、スリング2本で作る簡易アブミを使ってみたり。

※ここまでは、無名フィンガーの下部で行っていました。傾斜が寝ており、フェースに走ったクラックで、かつサイズも変化するので、色々と易しい。
<自作アブミで、チャレンジするIUさん>

まだまだ、やっておきたいことは色々ありました。

本当ならプロテクションが悪い(1~2mに1個は効くが、エイド間隔では悪いのも含んでしまう程度)ルートで、ドキドキしながらソッと乗り込む動きまでやっていただきたかった。
岩の形状も、せめて何種類か体験してもらいたい感じがします。

あとは、2日間という時間枠だと反復練習の余裕が無さ過ぎて、1回登るごとに内容を微妙にプラスアルファしてしまったので、ちょっと講義法っぽくなってしまったことでしょう。

そして、今回でIUさんの中に芽生えるものがあったらしく、何かを深く考えた様子でした。
きっと、そちらの方が、1つの技術習得以上に大事なことだと思いますよ。

2019年9月12日木曜日

手間を惜しみました

9月8日(日)は、マルチピッチリード講習。
女性HSさん、男性ITさん。
1P目をリードしたITさん。
ビレイ点を作りましたが、ちょっと細めの立木が1本でした。

私が到着して、どうにも不安を感じて、近くのクラックからバックアップで補強。
<1P目>

さて、ITさんに話を聞くと、バックアップは考慮したそうです。
しかし、一番近いクラックは脆い音がしたのと、もう数十cm先のクラックからだと遠いので、諦めたそうです。
たしかに、120cmスリング1本とかでは、立木まで届きませんでした。

ここで、ITさんの思考を振り返ってみましょう。
①後から検証すると、そのときの手持ちギアで言えば、120cm+60cm+60cmで連結できました。
正直、手間を惜しんだそうです。

②そのスリング連結をメインロープで代用する方法も思いついたそうですが、やっぱり手間が掛かるので却下。
<懸案のテラス>

③今回のテラスは、2mぐらい上に上がれば明確なクラックもありました。
そこでビレイ点を作って、セルフを延長するという方法も考えたそうですが、手間が掛かると思って、止めたそうです。

④今回のテラスより下には明確なクラックもありましたが、そこにはテラスがありません。
ハンギングビレイ、という方法も一瞬チラついたようですが、これも手間が掛かるので却下。
<2P目の出だし>

こう書くと何ですが。
実際に足場の良いテラスで、ギリギリ妥協できるか迷うぐらいの立木1本があったら、こう考えるのも理解は出来ます。
帰りに、ITさんに聞いてみました。
「なんか、ちょっと不安だと思いましたよね?しかも、僕が上がってきたら絶対なんか言われそうだなと思いましたよね?」

すると、
「思いました!でも、手間を惜しんだねー。」
とのこと。
<綺麗なライン>

そして、続けて
「なんか嫌だなー、っていうのは自分の経験から、安全とか何かしらのフィルターに引っ掛かっているっていうことですよね。だから、本当はそれが何かを考えなきゃいけない。」
という至極真っ当なコメント。
<マルチピッチらしい1枚>

手間を惜しむな、というのは無理があります。
省力化とは、手間を惜しんだ末の技術だとすら思います。

私も、そもそもの人間性は怠惰そのもので、自宅のカビも酷いです。

ただ、それは今ではありませんでした!
ビレイ点作りは、気持ち悪さが抜けるまで、追求すべきでした。
①~④のうち、手間が掛からない方法を選択すべきだったでしょう。
手を抜くか、手を掛けるか。それが問題だ!

練習意識でも、安全意識でも、何事にも共通する話なんでしょうね。
<3P目は、ルーフの5mほど下をトラバース>

さてさて、本日で2人はマルチピッチリード講習を卒業といたしました。

またよろしければ、何かの講習に来てくださいませ。
<4P目。今回は、シングルロープ+バックロープの方式。>


2019年9月11日水曜日

届かないホールド

9月7日(土)は、岩場リード講習。
女性YIさん、復習参加の女性Hさん。
<Song of Pine(5.8)にトライするYIさん>

上の写真、実は行き詰っているシーンです。

1本目をクリップする前、まだ地上1mそこそこで着地も可能なぐらいです。
しかし、左足に思い切って乗り込むのにはリスクがあります。(トップロープ状態なら、ヒョイっと乗り込んで次のホールドを掴むだけですが。)

とはいえ、このまま手を伸ばしても掛かりの良いホールドまで数cm届きません。
具体的には、上の図になります。
今の態勢からだと、「両方とも小さいが、しっかり持てそう」な2つのホールドのどちらにも数cm(!)届かない様子です。

さて、このとき、どうやって距離を出すための工夫をすれば良いのでしょうか?

①まだ身体が伸びていない可能性を考える。
リーチの限界を決めているのは、右足です。ただ、右足が最後のガバ足なので、ここから離れると途端にバランスが難しくなります。
ただ、写真の通り、まだ身体が縮こまっているようにも見えます。
これを解消すれば、右足を残したまま、次のホールドに届くかもしれません。

②右足に、もう少し高めのスタンスを利用する。
これは、図からも明らかにリーチの限界を押し上げます。
一方で、ガバ足より上の足は、図に書ききれないほど沢山ありますが、いわゆる外傾で、身体が伸び切ることにリスクがあります。(壁から身体が離れていることで、スタンスを押す力が入って滑らない。)
そういう意味では、5cm上の外傾スタンスに上げても、5cmのリーチは出ません。15cm上げれば、5cmぐらいはリーチが出そうですが。

③左足の踏み心地を再調整して、スタティックに乗り込むことを考える。
実際、乗れそうな気配もあるレベルで、本人も試行錯誤していました。

④別ムーヴの検討。
実は、先々週の女性STさんは、上図の左手で持っているホールドを右手で使い、少し左寄りのラインからガバに至りました。

⑤着地技術を意識することを検討。
実際、今の状況が地上1mだとすれば、左足にヒョイっと乗り込んでフォールしたとしても、そのときの高さは地上1.5m程度でしょう。
足場は土で、割と平らなのですが、木の根が生えており、ボルダーと見ればランディングはやや難しめかと私は感じます。
とはいえ、普段から外で登っていらっしゃるボルダラーの皆さんなら、普通に着地できそうにも見えます。
何度か地上に戻り、ムーヴやラインの再検討を繰り返しましたが、日暮れも近いため本日は断念。
その後、Hさんが同じルートをフラッシュしました。

幸い、YIさんとHさんは身長が同じだったため、全く同じ場面で逡巡。大変に参考になったようでした。
この状況だと、ちょっとでも身長が高いと、ガバ足から普通に届いてしまいますからね。

ただ、大幅に身長が高い場合、そもそも同じ手と足の位置関係ではバランスが悪い、ということも頻発するので、全く別ムーヴになってしまいます。
(左足が狭すぎる、など。)

同様に、2人よりも小柄な方だと、それはそれで別ムーヴになったりもします。
こういう場面で、ホールドの配置や身体の状態を図示することは出来ても、私が実践することは決して出来ません。
ジムなら、他のホールドを使って、私の身長バージョンで同じ状況を作って説明することは出来るんですけどね。
ところで、たまに勘違いされる方がいるのですが、大柄な人はこの状況になったことが無く、いかにリーチを出すかを考える機会が無い、と思われていたります。

たしかに、150cmの方よりは機会が少ないかもしれませんが、私の感覚では頻繁にやっています。
おそらく、身長185cmの私にとっては、160cm~175cmの一般的な身長よりも下のスタンスがバランスの都合が良いからだと思います。
で、その足からだと次のホールドに届かないことも多く、そのときにアレコレ考えると。

なので、今回のようなケースは、私自身が頻繁に向き合っている印象なのです。
不思議に思うかもしれませんが。
この手の場面で、私が①~⑤のどれかを提案してみたりします。

が、もしも本人は「どうせ石田さんは届くから、全然違うスタンスでしょ。」と言う感じに返答されると、会話になりません。

そういう風に返す人って、過去に大柄な人から「俺のムーヴ」の押し付けを食らって嫌な思いをしたのかもしれないし(環境が悪い?)、リーチを言い訳にして楽になりたいのかもしれません(本人が甘い?)。
そうなったら、もう私も提案は諦めるしかないので、黙って見守るぐらいでしょうか。

YIさんは、そういうネガティブな感じは全くなく、色々と試して考えてくださいました。
態度の真摯さには、定評がありますから。流石ですねー。
<今回で、人生初の結び替えを行ったYIさん>

実践本気トライ
YIさん:Song of Pine(5.8) 1本目に辿り着けず、今回は撤退。
Hさん:Song of Pine(5.8) フラッシュ

2019年9月3日火曜日

鶏冠谷

10月の予約受付は、開始しております。
一応、載せておきます。

9月2日(月)は、一人で沢登り。
奥秩父の笛吹川にある鶏冠谷。

以後、日記。
4時半過ぎに家を出発し、6時20分に駐車場を歩き始める。
<7時ごろ、鶏冠谷出合>

午前中は晴れ、午後は大気不安定という予報なので、早めに終わりたい気もする。
一方で、滝をまともに登っていたら、日帰りは厳しめかなという気もする。
<なぜかテンションが上がりまくる、小ゴルジュやナメ歩き>

<第1核心の10mぐらいの滝。右のコーナークラックを登る。>

今回は、カムも持ってきたので、こういう滝も登れます。
1時間半ぐらい悪戦苦闘して、無事にリード。

抜け口が案の定悪く、中盤で使い切ったカムをクライムダウンして回収したりして、めちゃくちゃ疲れました。1セットだと足りないと感じるような、プロテクション良好でクライミングを楽しめる滝ということか・・・。
単独システムに不慣れなのもあります。

傾斜もあるし、5.8とかグレードが付くんだろうか?
<ハンドクラック。ユマーリング回収。>

ユマーリングを終えて、2時間越え。
「もう帰っても良い!」というぐらいに充実した気持ちで、歩くのも疲れを感じていましたが、さすがに9時半なので、ボチボチ休憩しつつ歩くことに。
<落ち着いたゴーロ>

つい先ほどまで、あんなにテンションが上がっていたナメ歩きも、もはや興味が沸かない。精神の休憩がてら、行程を稼いでいるような感覚にすらなる。

疲れというよりも、滝のインパクトが強すぎるのだ。
一度知ってしまうと、戻れない。
恐るべき、滝の思い出。
<第2核心。パッと見は緩いが、下段だけで10m以上の高さがあり、無理っぽい。>

お次は、3段のナメ滝。
左を巻く。
<かなり嫌らしいトラバース。浮石疑惑の岩にカムを決めながら。>

苦手の泥壁トラバース。
リードに苦戦した挙句、トラバースなのでフィックス回収の登り返しも苦労する。

11時くらいに終えて、目の前には次の滝が。
<3つ目の核心>

ちょっと嫌気も射すなか、気を取り直してオブザベ。

水流すぐ脇に、切れ切れのクラックがあり、プロテクションは良好そう。
ムーヴも、ヌメリもそこまで悪くはなさそう。
ただ、抜け口が思ったより悪いと、クライムダウン敗退でめっちゃ疲れそう。

逡巡しまくった挙句、これをやりに来たようなものなので、カッパの下も着込んでクライミングスタート。
<無事にリードを終えて、フィックスで懸垂下降してきたところ>

終わってみると、実に興味深いクライミングだった。
水流、プロテクション、ホールド、ジャミング、あまりヌメっていない状況、全てが丁度良く揃っていて、まるで創られた課題のようだ。
「Ⅳ級ごときで、何を言っているんだ。」という声が聞こえてきそうだが、グレードとは無関係に楽しい。
<ユマーリング回収>

すでに12時を過ぎ、歩いた距離はあまりに短い・・・。

敗退とエスケープを視野に入れつつ、歩を進める。
<再び、落ち着いたゴーロ>

<ようやく二股>

二股に着き、地形図からエスケープしやすそうな右股を選ぶ。
右股は、200mほど右斜面を登れば尾根筋に登山道が走っているので、一応はどこでも逃げられるはず。
<早々に目に入って来た、登れなさそうなデカい滝。これの巻きが第4核心。>

ここで、明らかに登れなさそうで、かつ小さく巻くことも出来なさそうな20m越えの滝が目に入る。

「あちゃー。」と思いつつ、高巻き。
1時間ぐらい掛けて、尾根を登り、懸垂下降で沢に戻る。
<さらに、デカい滝。5つ目の核心。>

そして、しばらく歩くと、もう一発。もう5回目の核心部で、さすがに時間的にマズイ。
すでに14時。

大高巻き、左右の壁をブッシュ沿いに登攀、同ルート敗退、右斜面にエスケープ、の5択。

この先は、地形図から察するには渓相は穏やかになるはず、と踏んで登ることに。
右壁ブッシュ沿いというか、泥のルンゼというか。

が、抜け口で行き詰る。
非常に手間がかかる方法しか敗退手段が無い、という悲しい状況。
途中の灌木まで10mのリードでクライムダウン。
そこから、懸垂下降1発で取り付きに戻る。

残念ながら、すでに16時前。
ビバークがチラつく時間を、嫌な場所で迎えてしまった。
同ルート敗退、右斜面にエスケープ、の2択。

暗くなっても、どうにか行動を続けられるという意味で、右斜面を選択。
傾斜は、嫌らしい土壁の可能性を語りかけてくるが、5~10m間隔で太い立木があるので、リードも敗退もどうにかなりそうだ。

1ピッチ目は、どうにも嫌らしい土壁があり、数m上の立木に投げ縄からのゴボウで突破。
そこから、数ピッチ伸ばしているうちに暗くなるが、真っ暗になってしばらくすると、ノーロープでも上がれる程度の斜面になってきた。

そこから、30分ほどで登山道に到着。19時15分。

もう1~2時間早く入山するか(2時起きか・・・)、最後の滝を見た時点でエスケープする温厚な判断をするか、どちらかにしていれば大分マシな展開だった。
遡行図を見ないで行くのは、時間読みがほとんど出来ないのが難しいところでもあり、駆け引きの面白さでもある。難所1つで、2時間ぐらいはコロッと変わってしまう。

20時55分に、駐車場に到着。
そんなに無茶苦茶な時間にはならなかったが、ビバークすれすれだったなぁと反省。
こういう登山をするなら、予備日を常に設けるのが現実的なのかもしれない。

とはいえ、今回は2つの滝で大満足のクライミングが出来たし、ルートファインディングで自然を大満喫できたので、自分としては面白い限り。
こういうことは、僕にはときどきしか出来ないけれど、やっぱり面白いと思う。