2021年3月12日金曜日

無いことが教えてくれる何か

先日書いた、GWの講習について。
現在連絡があったのが、GWの希望者が1名、むしろ平日に実施して欲しい方(1〜2ヶ月前なら、休みを調整できる)が1名です。
どちらも、もう1名いれば実施しても良いかなと思うので、考えている方はご連絡くださいませ。

3月27日(土)は、自分のクライミングにて、Y田さんと城ヶ崎の「ばったり」。
3月28日(日)は、アドバンスクラック講習にて、女性Mさん。
<懸垂下降してアプローチする、「ばったり」>

終了点も含めて、岩場に残置物がほとんど何も無いエリアがあります。

こういうエリアが、何か大切なことを思い出させてくれるように感じています。
<取り付きのテラスが狭く、ほとんどマルチピッチ>

ジムやスポートルートから入った講習生は、少なからず
「終了点が整備されてないなんて面倒臭い。」→毎回、懸垂下降するなんて、危ないし。
「アプローチの渡渉は完璧な橋、段差は完璧なハシゴ、などを設置すれば良いのに。」
といった思考があります。

確かに、それはそれで効率の良い岩場クライミングが楽しめる場所です。
昔風に言えば、「ゲレンデ」という言葉がピッタリです。

ジムで鍛えた心技体で成果を出すには格好のエリアですし、文字通り練習に適した岩場でもあります。
<「ばったり」は、そんなルートばかり>

それに対し、アプローチで1時間の登山があったり、フィックスロープで懸垂下降や登り返しや荷揚げがあったり、リード&フォローでないと回収できないルートがあったり。

マルチピッチと同等以上の労力を掛けて、登るのは10〜20mの壁という。

効率という観点では、間違いなく劣ります。
ただ、ここで言う効率は、
「1日に自分の限界付近をトライできる本数」 ÷ 「トライ以外に掛けた労力(時間、作業)」
になります。
<ビジョン・エッグ(5.7、コーナー系)を、フラッシュするY田さん>

こういう、手間が掛かるエリアの何が良いのかは、説明し尽くせる気がしません。
ただ、これまで自分自身に対しても、こういうエリアにお連れした講習生に対しても、ある程度起こっていると思われる変化があります。

①あるがままの自然を受け入れるしかないので、言い訳が減る。
ボルトルートは設定者が居るからこそ、ボルト位置に文句を言いたくなる。そして、その意見が正しいこともある(笑)。これは、ジムのルートも同じ構図。

②再度、ゲレンデ的な岩場に戻った際に、その便利さが身に染みる。結果、ゲレンデとして真に効率的な練習を心がけるようになる。

③後回しになりがちな、ロープワーク、ルートファインディング、登りながらのリスク管理、などを見直す機会になる。
<ピース・アクション '84(5.10-、OW)の取り付きへトラバース>

日曜に、講習でこういうエリアに行ったMさんも、初めて湯川にクラック講習で行ったときに、
「(ボルトが無いことが)なんて綺麗な岩場なんだ!」
と感動したことを繰り返し話していました。

クラックをやりに来たんだから、終了点以外にボルトが無いのは想像できるはずの情報です。しかし、百聞は一見に如かず、だったのでしょう。
<そして、こちらも登る>

僕自身にとっては、毎回何か発見があるとまでは言えません。

瑞牆、城ヶ崎、大堂海岸、などに時々ありますし、開拓ならもっと不便です。
さらに、沢登りや雪山に単独・トポ無しで行っていた時期を思えば、これでも便利な方という気もします。

ただ、この感覚は薄れるものなので、定期的に師匠に会いに行くような気持ちで、一生続けた方が良いような気がしています。
<そして、別のルートのために、もう一度懸垂下降>

<トポに載っていないライン(体感5.10a)>

具体的に登ったルート
ビジョン・エッグ(5.7、コーナー系) O.S.
・ピース・アクション '84(5.10-、OW) O.S.
    その後、回収のためにフォローでも登る。
・トポに載っていないライン(体感5.10a) O.S.
・トポに載っていないライン(体感5.8) O.S.

「こだわり無いんで。」と言って、全部オンサイト権をくれるY田さん。
まぁ、僕も「これは!」と思うライン以外は、フラッシュでも全然構わないんですけどね。