6月9日(日)は、マルチピッチリード講習にて、二子山中央稜。
またまた補習(卒業以前に予約した分ですが・・・)、男性ONさん。
常連女性TZさん。
<今回は、TZさんもアプローチを覚えており、楽勝のアプローチ!>
今回は、技術的な話。
リード中、死なないためにプロテクションを取ります。
プロテクションという言葉に馴染みがないなら、中間支点、ランニングビレイ、ランナー、なんて言えば分かるでしょう。
(厳密には、ニュアンスがちょっと違うと思いますが。)
<ビレイ点作業も、少し慣れてきたONさん>
さて、プロテクション(カム、ナッツ、ハーケン、立木、など)を、どこで取るべきか?
1m間隔とかで取れたら、ジムみたいで怖さはなくなるでしょう。
が、そしたら40mロープを伸ばすのに、39個のプロテクションが必要です。
それは、現実的じゃないんで、作戦としてメリハリをつけます。
基本
①自分が落ちそうなムーヴの直前に、確実なプロテクションを取る
②階段状で、登山道に近い感じなら、プロテクション節約
③その中間くらいの難しさや、簡単だけどクライムダウンは無理そうなら、その都度でリスク判断
<核心のクラック(5.7)をリードするONさん>
じゃあ、問題です。
・この先1m行けば、絶対にプロテクションは取れそう
・でも、その1mがちょっと難しいそうで恐い
・しかも、そのムーヴのためのプロテクションは取れない
・今なら、まだ安全に敗退できる自信がある
って状況なら、あなたはどうします?
<ザックを背負っても、ノーテンションで核心部を突破できたTZさん>
講習中に、よくある解答例
①とにかく、集中して、気合で登る
はい。
それは、「ノープラン」ってやつです。
「行くしかない」って思考です。
行き詰まったら死ぬ、ってことは念頭に置いてくださいね。
<左右にダブルロープが分かれ、理想的なロープさばき>
②様子を見つつ、1歩、2歩だけ行ってみる
クライムダウン出来る範囲で様子を見る、っていう意味ではナイスです。
ただ、敗退できるギリギリを見極めないと、戻れなくなって死ぬ可能性もあるので気を付けて。
<ビレイ点で、ギアを受け渡したり、次のピッチの相談したり>
③迂回路を考える
④ちょっと離れた場所からプロテクションが取れないか考える
それが出来たら、楽になりますね。
ナイスです。
<高度感のある終盤>
最後に、あんまり口頭で思い付く人はいないんですが、実際よくやる作戦。
⑤その1mが、絶対に落ちそうもないと確信があるなら、クライムダウンはできないけど行っちゃう。
「もう戻れない!」
という恐怖はあります。
①と結果的には同じ行動です。
が、リスクが計算されているかどうかが違います。
<微妙に左右のロープが交錯気味。右下のクリップは、赤ロープにすれば良かったかな?>
こんな感じで考えて、
「落ちたら死んじゃう上に、戻るに戻れない状況になっちゃった!」
ってことに、ならないようにします。
この状況は、将棋で行ったら「詰み」の状況ですね。
昔は、そういうクライマーの窮地を「蝉(せみ)」なんて呼んだそうです。
そうなるぐらいなら、
⑥敗退できる今のうちに、敗退を決断する
っていうのも、充分にアリでしょう。
<マルチピッチを終えて、頂上稜線>
ただ、詰んでからも、決死の思いでクライムダウンor上へのオンサイトクライミングを敢行します。
そうすると、10回のうち9回以上は助かります。
僕も、例に漏れず、こういう目にあったことはあります。
「本当に、死ぬ可能性充分、と思ったこと」
「ちょっとだけ、死を覚悟したこと」
を合わせれば、10回以上はあるんじゃないでしょうか。
<山頂にて>
でも、これって、やっぱり失敗だったと思うんですよ。
詰んでしまってからのサバイバルゲーム、ってのは我々一般人は辞めた方が良いと思います。
やはり、リスクは計算範囲内に納めるのが基本。
そういうリスクコントロールを分かった山の友達でも、毎年平均1人くらいは死んでおりますので。
(ただ、やっぱり不確定要素の高い、冬が多いです。)
<下山も、ためしにTZさんに先頭を任せてみましたが、今回は迷わずバッチリでした>
行動記録
7:50 駐車場出発
8:10 取り付き
8:50 スタート
15:40 トップアウト
16:15 西岳頂上
16:50 取り付き
ローソク岩を見学してから帰る
18:35 駐車場
講習内容
・ロープさばき、カムセット、プロテクション間隔、などについてアドバイスをしていく
クライミングのリスクは、ゼロにはなりません。
あとは、どこまでリスクをコントロールできるか。
オブザベーションの段階で、それを予測して作戦を立てておくことが、1番のリスク低減だと思います。