2022年10月28日金曜日

12月分の予約受付

12月分の予約受付を、10月31日(月)の夜21時よりスタートします。

事情により、アイスクライミング講習だけは2日間の開催が決まっております。
12月もマルチピッチ講習も可能ですが、寒波が入った場合は湯河原や城ヶ崎での講習に変更になることをご承知下さい。

では、どうぞよろしくお願いします。

2022年10月24日月曜日

大レストポイントの活用

10月14日(金)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性ISさん、男性MKさん。

10月15日(土)は、クラックリード講習にて、小川山。
女性YIさん、男性HDさん。

10月16日(日)は、マルチピッチリード講習にて、三ツ峠。
女性Mさん、男性KBさん。
<はじめてのダブルロープ>

岩場でリードする際に、大レストポイントがちょくちょく現れます。

今回、大レストポイントの定義としては、
「左右の手を交互に何度もシェイクしたり、チョークアップできる場所」
としましょう。
とは言え、この中にも相当なグラデーションがあります。

①座れる。
⇨テラスなど。シューズも脱げるので、体幹部も含めて、ほぼ完全回復できる。

②ノーハンドで立てる。
⇨緩傾斜で、良いスタンスがある場合。ちょっとしたテラス。割と良いスタンスでのステミング。チムニーの中でスタンスがあり、背もたれで休める場合。などなど。

③ノーハンドにはなれないが、ほとんど時間制限を感じない。
⇨垂壁で、足も良く、手もガバに近い場面。など。

④とりあえず休めるが、時間制限を感じる。
⇨被った壁で大ガバ。垂壁で手はガバ、足は悪い場面。など。
<初登攀ごっこを楽しむ>

この活用を上手にできるかどうかは、O.S.、少ないトライ数でのR.P.、あるいはクラックでのリスク管理を冷静に行う上で、とても大切だと思います。

例えば①〜③は、
・少し上のホールド、ムーヴを探りに行ってから戻る(偵察)
・プロテクションをセットしてから戻る(登山で言うなら、FIX張り、荷物デポ、雪山での前日のトレース付けに相当)
・カムのバッククリーニング(ロープの流れ、カムのタマ数補充)
などが可能になります。

とても時間の掛かる行為ですが、安全に登る上でも、少ないトライ数で完登を勝ち得るためにも必要です。
<今回のテーマになった場面。どうにか大レストできるが、足が悪い。>

一方で、④で同様の戦略を採用すると、徐々に疲れてきます。
いざ作戦が決まって出発したくても、もはや出力が下がってしまい、「テンショーン・・・」と情けなくコールする姿も、よく目にすると思います。

状況にもよりますが、
「行きつ戻りつをするにしても1〜2回程度、できればレストポイント内で作戦を整理してGOだ!」
といった覚悟を決める必要があります。
<フラッシュするHDさん>

一般的には、女性に多い持久力型の初級者には①〜③の活用が上手な方が多く、④なのに行きつ戻りつし過ぎてギブアップするパターンも多く見られます。
(今回、女性YIさんは、まさにこれで何度かハマっているように見えました。)

当然ながら、男性でボルダー出身の方、トップロープ癖が抜けない方、などは反対になります。
大レストしている風でも、行きつ戻りつは非常に少ない、など。
意識して、①〜③を上手に使えるようになる必要があります。
ちなみに、これはマルチピッチでも重要です。

例えば、入門マルチ専門のような方(フリークライミングを真面目にやる気持ちになれず、そうなるパターンなど)だと、①や②はある程度使いこなせても、③は全然ダメと言う人が多そうです。
2m〜5mに1回とかの割合で、①や②が出てくるのは確かですが、やっぱり③が使えないとリスク管理は甘くなるように思います。

健全な判断は、健全なレストに宿る、ということです。
<あいにくのガス>

当然ながら、ジムでの本気トライで重要になるのは、④の活用です。
①〜③は、入門的なグレード、凹角、緩傾斜を除くと、なかなか出来ないように作ってあると思います。

これは、
・持久力差が出るルートを作る上では、完全レストポイントはなるべく避けたい。
・岩場のように1トライに時間が掛かると、順番待ちが酷いことになる。
などの事情があります。

実際、利用者の一人としても、その方がトレーニングには向いているとも思います。
<「意外と悪いですねー。」>

まぁ、トップクライマーはルーフのオンサイトトライでも、凄まじい行きつ戻りつをしている、などの例外事象はいくらでもあると思います。
彼らは、強傾斜の中でさえも、条件の良いレストポイントに戻れば回復できるということなのでしょうね・・・。
<真っ向ハンドの数手をこなしたMさん>

ムーヴそのものの上手さをブログで解説することは困難ですが、こういった戦術面は解説に適しているかもしれませんね。
<遅くなるけど、あとは緩傾斜なのでトップアウトを目指します>

2022年10月10日月曜日

ときどき落ちる、は可能か?

1つ前の記事と関連して、昔から興味深く考えている点です。
僕自身の中で整理しきれていない部分もありますが、書いて整理する意味も込めて。

落ちることは、一般的に怖いし、変な落ち方をすれば怪我をするリスクもあります。
そこで、“滅多に落ちない人”というのが初級者には散見されます。

これは、あんまり良くないでしょう、というのは前提として良いかと思います。
リードなら「テンション癖がある人」と言われますし、ボルダーなら「あんまり頑張らない人」と思われます。
ただ、彼らの多くは絶対に落ちない訳ではなく、ときどき落ちているように見えます。
これは、どういうメリットとデメリットがあるのか、という問題です。

彼らの気持ちを代弁してみます。
①単純に怖いから落ちたくない。
②落ちる時は、気づいたら落ちているから怖くない。
③たまにしか落ちないことは、落ちて怪我をするリスクを下げている。
④山では落ちないんだから構わない。(主には、マルチピッチや沢登り雪山をやる人の言い分)

僕の中で、一番興味深いのは③です。
一応、①、②、④についても簡単に触れます。

①を解消していく方法は、僕も様々な講習生相手に向き合ってきた課題ですが、今回は割愛。
②は、気持ちは十分に理解できますが、考えてみればリスクがあります。
「落ちるかも」と覚悟して一手出している人は、落ちた場合の脳内シミュレーションを繰り返してチャレンジしています。
が、気づいたら落ちている人は、シミュレーション無しなので、不意落ちという印象です。
数回前の、手繰り落ち問題でも書きましたが、不意落ちは反省し、チャレンジ落ちを許容するというのが、リスクを下げるコツだと思います。
④は、安全に行きつ戻りつできるムーヴを練習することも大切にしつつ、本気トライでは落ちるまで頑張る、という両輪を忘れないことが、リスクあるクライミングをする人のジム練習では重要だと思います。この問題も、ほとんどの初級者はできていないように思いますが、割愛。

さて、本題の③は、「状況にもよる」というのが現時点での私の結論です。

車の運転を例にしてみます。
運転の回数が少ないことは、生涯における交通事故リスクを下げると思います。
確率×回数という考え方によります。
一方で、たまにしか運転しない人の車に乗ることは、結構なリスクを感じると思います。
つまり、習熟度が1回あたりの事故リスクを下げている、という状況です。

つまり、よく落ちる人がよく怪我をする人かどうかは、相当難しい問題です。
実際、落ちたがらない人がたまに突っ込んで怪我をする、というパターンも見かけますし。

しかしながら、車の運転で以下の状況はどう考えるでしょうか?
A)運転の回数は多いけれど、荒っぽい運転の人には注意もしにくく、運転の回数を減らして欲しいと感じる。
⇨よく落ちるけど、フォール姿勢やリスク管理思考がイマイチなら、ダメです。

B)首都高速、都心部など、技量が低いとリスクが高いと思う道路は、なるべく運転を避けるようにしている。
⇨ボルト足下よりさらに進んだ状況でのフォール回数を減らすことや、岩場ボルダーで高めの場所からフォールする回数を減らすことも、良いことだと感じます。
ただ、ボルトが膝くらいでフォール、低いボルダーでのフォールを繰り返している人がそれをするからこそ説得力がある、という点は考慮すべきかと思います。

個人的に、このジレンマをすごく感じるのが、岩場ボルダーでのノーマット練習です。
ほぼ落ちる気がしないところで行っても、リスク管理能力やフォール姿勢の強化につながらない気がします。色々と慎重になるので、多少の意義は感じますが。
一方で、頻繁に落ちる課題でやると、そのうち足首を捻りそうだったりします。また、相当低い課題でも、膝やら腰にダメージが蓄積される感じも、困ります。
一撃は相当厳しいが、少ないフォール回数で完登できそうな課題、というのが色々とバランスが取れている気がしています。
もちろん、そのぐらいの課題でもマットを敷いてトライすることもあります。ギリギリの一撃を狙いたい場合など、特に。
僕の中で、ノーマットはスタイルではなく、技術的な練習方法なので。

他人にこの話をするときも、自分自身の練習を考える意味でも、なかなかスッキリしない問題です。
ただ、この問題を意識しているか否かで、リスクも取り組み方も変わるような気がします。

2022年10月5日水曜日

ときどき良いスタイルで登る、ということは可能か?

10月2日(日)は、マルチピッチリード講習にて三ツ峠。
女性Mさん、男性KTさん。
<ピッチを切る場所に迷うMさん>

先日、ある講習生からされた質問。
「マルチピッチ講習で残置無視なのは、いざというときにビレイ点をカムで作れるようになるためですか?」

僕の回答は
「そういう部分も一部にはありますが、本来の趣旨ではありません。」
<色々と延長して、完成>

残置無視で登ると、ビレイ点をどこに作るかも自分で考えます。

立木が見えなければ、カムの残量を気にしながらリードしなければなりません。
先の見通しが悪い場合などは、ほとんどカム1セットを丸々温存するような形でリードを終えるべき場面も多くあります。
クラック自体は豊富な岩場でも、ビレイ点で使いたいカムのサイズは、行かないと分かりませんので。

また、残置ビレイ点はテラスのある場所や次のピッチのリードビレイがしやすいように作られていますが、ビレイ点を自分で構築すると、何を優先すべきかを考える必要が出てきます。

さらに、ビレイ点が作れなければ、クライムダウンしてカムを取りに戻るのか、手前でピッチを切るのか、周辺で右往左往してビレイ点作りをするのか、などの判断は全て自分に委ねられます。

これらの戦略的な判断そのものを楽しみ、反省していくのです。
<丁寧な登りでフォローするKTさん>

つまり、リード中に即興でカムのビレイ点を作っているのではなく、あらゆる事態を想定しながらリードする点が、根本的に異なります。

そのため、途中でギブアップのように残置を使ってしまうことを前提とした残置無視は、本来の趣旨とは異なると思います。
(少なくとも、初登攀ごっこ、リスク管理を真摯に捉えたゲームでは無い。)
<ハンド〜フィストのクラック>

この考え方に、
「自分の実力次第で、どんな壁でも登れる方法なんて夢がある。」
「既成ルートでも、そうやって楽しめば本当のクライミングなのかな。」
「それぐらいやらないと、リスク管理能力は上がらない気がする。」
などと直観された方は、是非とも当塾講習へどうぞ。
<フォローを迎える>

では、普段はトポを熟読し、残置を追いかけている方が、こういったクライミングを「ときどき」することは可能でしょうか?
とにかく上へとリードしてしまい、パニックに陥るだけの非常に危険なクライミングをすることになりそうです。上へと向かえばビレイ点がある、という負の成功体験が、リスク管理としては悪癖につながってきます。
これを仮に、初級残置使用者と呼びます。

もちろん、一部には既成ルートも楽しく登り、人跡未踏の岩場で冒険的なクライミングもこなす人がいることも分かっています。
そういう人は、日によって、あるいはエリアによって、自分なりに本日やるべきことスイッチを切り替えられるのでしょう。
こちらを仮に、上級残置使用者と呼びます。

初級から上級へのステップアップは、何が鍵になるのでしょうか?
実際、それを成し遂げた人もいるでしょうが、あまり数は思い浮かびません。

それとも、まずは残置無視から入るべき(初級残置使用者は成長過程として経由しない)で、残置無視に十分慣れてから、ボルトを打たないとどうしようも無い壁などでの残置使用を行うというステップを踏むべきなのでしょうか?
こちらは当塾の方針ですし、探検部出身者、人里離れた沢登りを好む方などは、こちら寄りかと思います。

初心者にとってどちらが正しいかという議論もありますが、「私、実際問題もう初級残置使用者になっちゃっているんですけど、どうしましょう。」という話もあります。
<荷上げしたいザックがテラスに置いてある>

初級の習慣が悪癖となり、上級へのステップアップの弊害となる一方、いきなり上級の習慣でスタートを切ることに難しさがある事例を挙げてみます。

●ガイド登山と、仲間内での登山
  ⇨山岳会などで、ガイド登山出身者が煙たがられる話は、数え上げればキリが無い。ガイド登山ではないが、連れられ登山が好きな人というのも多い。ただ、ガイド登山には金銭的負担が大きいため、現在のところ少数派。

●トップロープリハーサルと、グラウンドアップのリード
  ⇨自分でも嫌気が差すほどブログに書いている。ガイド登山と異なり、金銭的負担が無いため、もはや広く一般化している。ちなみに、トップロープリハーサル好きな人が、あるルートに対してだけ、「オンサイトしたい!」などと言うと、僕などは危なっかしいトライをしている構図しか頭に浮かばず、あまり応援する気持ちになれない。
<ワイドっぽいコーナー>

この話は、スタイルの話に限らず、上級者の習慣を身に付けることの全般的な難しさを物語っているように思います。

スポーツとしてクライミングを考えても、最初に身に付ける練習習慣って間違いも多いです。
リスク管理にしても、怖さとリスクを全く分離して考えられないまま、10年20年と過ぎている方も多く見かけます。
<富士山が近いのは三ツ峠の魅力の1つ>

厳しいことばかり書いたようですが、普通のことも書いておきます。

オンサイトは楽しい!
残置無視・トポ無視の初登攀ごっこは楽しい!
リスク管理の反省会は楽しい!
現在の練習習慣を見直し、日々自分を変化させるのも楽しい!

楽しいからこそ、甘さをグッと堪えることに達成感があります。
ちなみに、この翌日は一人で小川山に行き、先日のフィロソフィーをやろうとしたら、体力的に疲れ切っていたようで、まるで力が入らずに昼に下山しました。
本日はノーカウントとして、また再訪しようと思います。

できないムーヴと向き合うのは、ツラいっすね!
でも、これをやらないと、講習生に上記4点をやれとも言えないですしねー。
頑張ろ。
<最上部の緩傾斜帯>


<色々と工夫したビレイ点>

<お疲れさまです>

2022年10月2日日曜日

岩場基礎トレ

11月20日(日)に、林智佳子ガイドとのコラボ企画で、岩場基礎トレを行うことになりました。
登山道難路などを想定して、クライミング講習を行います。
場所は、城ヶ崎を予定しております。
普段の当塾講習とは異なり、トップロープですので、初心者の参加も可能です。
クライミングと登山の理解も深まるので、多少クライミングの心得がある方にも興味深いかと思います。

また、11月の予約受付は明日からですが、上記によりまして11月20日が通常の講習ができなくなりました。直前で申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。