2024年3月18日月曜日

湯河原、サブウェイ

3月15日(金)に、湯河原のサブウェイ(2段)を登ることが出来ました。
紛らわしいのですが、秋にトライしていたのは小川山の延長サブウェイ(1級)です。

11月にトライして、2日目には惜しいところまで行ったのですが、結構苦しめられて、結局6日間のトライとなりました。

以下、苦労した点。

①トラバース課題なのでバラしは容易だが、ほとんどレスト出来なかったため、繋げにくかった。特に、1手ごとに複数の意識したいコツがあったりして、10数手の課題でも20ぐらいのコツがあったため、コツが自動化されるまでは前半パートの再現性が低すぎた。
数週間ぶりに行くたびに、手順足順は暗記していてもバラシ直しから始めざるを得ない。

※コツは、手順足順のシークエンス暗記ではなく、もっと細かい話。

②年末から1ヶ月以上に渡って、風邪が治りきらない時期があり、まともにトレーニングできなかった。講習の合間は、必死で休養を取るぐらい。むしろ、この時期はパフォーマンスが低下した。
風邪が治った直後に1回行ってみたが、やっぱりダメ。

③1月〜2月にかけて、5週連続で雪山講習というタイミングがあった。このときは、疲れが残ったり、準備や片付けがあるため、調子が落ちるのは止むを得なかった。ただ、地味なトレーニング自体は続けられたので、このタイミングが終われば調子が上がるのは予想されていた。
雪山の合間に1回行ってみたが、指皮が柔らかくなっており、トライ数が制限され過ぎて、やっぱり厳しい。

④日当たり良好すぎる面でホールドがヌメるため、夕方4時以降にならないとバラシ直しの練習すらできない。そのため、後半は午後出勤と決めて行くとことにし、繋げトライは基本ヘッデンで行うことにする。しかし、夕方以降は強風が吹くことがあり、マットが飛ばされたり、結構大変だった。
まぁ、僕より強い人たちは、昼間でも普通にムーヴを練習しているのだが、僕は全くホールドできない。



今回は、冬の間の練習をサボらないために、あえて調子が悪かろうが岩場に行く日はコレを打ち込みに行く、というルールでやってみました。
このルールは、僕の性格的にはツラいものだと思うんですが、さほど何も感じなくなったのは進歩だなと思いました。

もともとの性格は、オンサイトなどの戦略ゲーム好き、色々なルート・ジャンルで総合的に登りを楽しみたいタイプです。
たぶん、練習が昔よりも好きになったのか、自分の好きなことをやる時期との区分けにメンタルが慣れてきたのかと思います。

最近、地味な練習で成果を少しずつ感じているのもあるでしょうね。

2024年3月14日木曜日

デッドポイントの仕組み

デッドポイントの仕組みについて、自分なりの理解を書きます。
99%自己満足の文章です。

もともと出来ている人は、復習ぐらいには使えるんじゃないかと思います。

常々、この仕組みについて講習したいとは思っているのですが、岩場リード講習卒業以上ぐらいのレベル感の講習生でも、たぶんムーヴ講習を全10回ぐらいは掛かると思うので、なかなか実現しづらいですね。
他にも、フォームやらスタティックやら、講習すべきことは山ほどありますから、これだけ徹底的に行うのも非現実的ですし。

何人かの講習生には、触り程度は講習しているので、是非とも続けていただければと思います。


A:分類
①回転制御系
右手を離すと扉が回転する仕組みのときに、どうやって右手を離すか?というタイプ。
意図的に扉を揺らすことで、右手が無荷重になるタイミングを作る。このタイミングで、右手を出すことを基本とする。

広い意味では、コンプレッションで片手を離すときに、両手の力の釣り合いが崩れるためにスタティック不可能というパターンも含める。
正確には、後者は回転(モーメント)制御というよりも、「力の釣り合い」が無い状態の制御にあたる。
そういう意味では、物理的静止不可能系とでも言った方が正確。

ちなみに、物理的に静止不可能な状態で、かつタメも全く作れず、片手を離した瞬間に身体が振られる中で、その手でターゲットホールドを捉えて振られに耐える、というムーヴもある。
原理としては、タメを作るコツが分からない初級者のデッドポイントと同じになってしまうのだが、これが止むを得ないケースも、時々出てくる。

②強度補完系
物理的にはスタティックに手を出せるバランスだが、筋力不足などの影響で、スタティックが不可能(or非常に疲れてしまう)場合に行うタイプ。
初級者が「どっかぶりガバガバルート」で、「全てのムーヴがダイナミックで無いと手が出せない」という状態が典型。

一方で、片腕懸垂や片腕ロックができない私がキャンパムーヴを行う、完全保持ができないホールドで片手になれないためにスタティックを諦める(片手デッドポイントの練習と似た動き)など、ある程度のレベル感になっても(たぶん一生)、このムーヴから逃れることはできない。
ただ、経験上は故障と紙一重なムーヴであり、少しずつ減らしていく努力が必要。

B:様々なコツ
①腕の曲げ伸ばしだけで反動を作り出すことは難しいため、体幹部を効率的に揺らすことが原則。

足の移動時に使う「壁から身体を離す姿勢」と、手を出すときに使う「腰を入れた姿勢」を切り替えを主たる動力にすると、前後方向のスピード(本当に欲しいのは、発射時の慣性力)が付きやすく、発射の瞬間に足に力も込めやすくなるため、推進力が得やすい。また、この動きだとタメの際に体幹部の筋肉を軽く脱力することが行いやすいため、止める瞬間に体幹部に力を込めやすい。また、止める瞬間に腰も入り、胸も張り、背筋も伸びるため、あらゆる意味で良い。

ただ、実際問題として、ムーヴによって上記の手法が使えないことも多く、限られた部位だけでタメと発射の振り子軌道を作ることも多い。
胸の張りだけで軌道を作るイメージ、骨盤だけで、場合によっては腕だけで、サイファーの要領でフラッギングしている脚も連動させて、最終手段は首で、といったケースも起こりうる。ホールドやスタンスが悪くなったり、配置が悪くなると、タメを大きくすると手足がすっぽ抜けてしまうため、どんどんと状況は厳しくなる。その中でも、体幹部を一時的に脱力してタメる、ということが一つのポイントになる。

②前後軌道が重要なのは、何も考えずに手を出すと後ろ方向に飛んでしまうから。
そのため、横方向に出るデッドだとしても、斜め後方にタメを作る。真横にタメを作ると、ターゲットのホールドに届く頃には身体が相当後ろに流れてしまう。
この理屈は、ランジ(特にダブルダイノ)や横に歩くコーディネーションでも、顕著に感じられる。

③保持手は、発射のしやすいホールディングよりも、最終的に止めやすいホールディングを選択することが多い。ラップよりも普通のガバ持ち、オープンよりもピンチ気味、など。
取り手は、オープン気味にしておくことが多い。カチ持ちだと、タイミングよくホールドを離すことが難しい。

④発射前にスイングする回数は、小さいスイングで軌道を確かめるぐらいなら数回降っても良いが、大きめにタメるのは原則1回に限る。2回以上振ると疲れてしまうし、完璧なタメ軌道を作りに行くことよりも、発射するまでの最後の進行方向での軌道の中で、姿勢の微調整を行った方が良い。特に、スタティック主体のクライミングスタイルの我々は、恐怖心もあって完璧なタメ軌道を無限回数でも求めてしまう傾向にあるので注意。

⑤腕は軽く曲げておく。肩は下げておく。足は棒立ちを避けて、軽く曲げておく。全ては、スイング中の器用さを最大化すること、止める瞬間にフルパワーを出しやすくすること、に繋がる。

C:最後に
取れなかった場合のフォール姿勢のイメージ、リードであれば墜落距離の計算やロープと足との絡み解除、などは、スイング前(ジムのようにムーヴが見えるならばオブザベ中)のイメージ作りに含まれる。これが不安だと、結局は出られなかったり、出ても落ちることばかりイメージした発射になってしまう。

2024年3月8日金曜日

墜落距離の計算はしつつも、判断ミスは終わらない

3月のアイスクライミング講習にて、TGさんに摩利支天大滝をリードしてもらいました。
結論からすると、課題山積が明らかになり、非常にモチベーションが向上した様子でした。
                    →TGさんは、そこが素晴らしいです。
まず、トライそのものの終わり方としては、スクリューで1テンションしてトップアウト。
(講習では、アックステンション用のフィフィなどは禁止している。)

アイスクライミングでは、たとえランナウトしていない状況でも、フォールで怪我をするリスクがあります。アイゼン・アックスを装着していることと、多くの氷が90度未満であることが理由です。そのため、ギブアップのテンションコールは、スポートルートのように非難されるべきものとは限りません。
(安心してフォールできるのは、トップロープ状態や垂直以上の限られたケースのみ)

そのため、ノーテンションで登れなかったのは残念ですが、「安全にトライを終える。」という観点では、この結果には問題はありません。
私としても想定範囲内です。
しかし、問題は上記の「完登できたか否か?」ではなく、「安全にトライを終えたか?」です。

上の写真の1本目と2本目が、かなり離れているのが分かるでしょうか?

1本目が4mほどの高さ、2本目が7mほどの高さだと思います。
スポートルートやジムとは異なり、アイスクライミングは頭より高い位置のカラビナに手を伸ばしてクリップするようなことは、極めて稀です。
通常は、腰〜胸ぐらいの高さにスクリューセットして、そこにヌンチャクを垂らすため、クリップした段階で、「もうトップロープ状態の上限付近に居るなぁ。1歩でも上がればリード状態・・・。」という状況です。

そう考えると、2本目をセットした状況は、クリップ前にフォールしたらグランドフォールしたであろうランナウトという話です。

ビレイしていた私もハラハラしていて、
「さすがにプロテクション取らないと、ヤバ過ぎますよ。」と声がけして2本目をセットしてもらった次第です。

※当日の状況は、取り付き付近からして70度程度の傾斜があり、取り付きはスネ程度のフカフカ雪の雪田となっていたため、6mぐらいの高さからフォールしても、死ななそうではあった。しかし、骨折などの確率は高そう。
さて、次に本人の心境を後から伺いました。

①トライ開始時点
オブザベでは、割と易しそうに見えたが、登り始めると思った以上に難しかった。
基礎練習よりもムーヴがバラバラなのは自分でも感じていて、「ヤバイなぁ。」とは薄々思っていた。

②1本目〜2本目まで
ランナウト具合は、ものすごく意識していた。

「今、膝だ。怖いけど、まぁ落ちても多分・・・。」
「足首だ。いよいよ怖い。」
「(クリップ済みカラビナが)足下だ。まだ1本しかクリップしてないから、グランドの可能性も・・・。」
「スクリューが足下だ。ホントにホントにヤバい・・・。」→このぐらいのタイミングで、石田からの声掛け。

というぐらいに理解していた。

しかし、ついつい上へと登ってしまった。
講習では、「落ちてはいけないセクションは、戻れるムーヴで進むのが原則。戻れないムーヴで行き詰まったら、人生の詰みです。」と伝えています。
なので、易しいセクションをランナウトするなら、話は分かります。

これは、岩場リード講習、クラックリード講習、マルチピッチリード講習と卒業してきたTGさんにとっては、理論としても体験としても実感している内容でしょう。

冷静に考えれば、

A)辛くても、早めに2本目をセットする。
B)それすらヤバそうなら、1本目までクライムダウンしてギブアップのテンションコールする。
C)1本目のセットは、比較的足場が良かったので、頑張って頭ぐらいにスクリューセットして、以降のランナウトをマシにする。

などのオプションはありました。
それでも尚、上に活路を求めてしまった訳です。

その場だけでなく、下山路や帰りの道中で話を聞くにつれ、いくつかのヒントがありました。

1)ジムリードでは、Aに相当するクリップは行っている。

考えられる理由
・スクリューセットやカムセットに比べて、辛いスタティック態勢が10秒以内に終わることなどが原因?
・ジムの本気トライでは、直後のフォール確率が10%を超えるため、我慢してクリップすることのインセンティブが大きい。対して、アイスでは直後のフォール確率は常に1%未満だが、フォールした場合のリスクは大きいため、直感的にはインセンティブが把握しにくい
2)易しいクライミングで、プロテクションを取らないことを注意されがち。(上図を参照)

具体的には、易しいクライミング(5.7のクラック、マルチピッチの途中、Ⅳ級程度までのアイス、など)3mぐらいの垂直パートを登るときに、頻出します。
3mの垂壁を目の前にして、顔ぐらいの位置(Aの位置)にプロテクションをセットします。
そして、テラスまでのマントルが少々悪くても、そのまま押し切って、「テラスに上がる前に1本取っておかないと(Bの位置)、ミスったら下のテラスにグランドでしたよ。」と、講習中なら石田に、仲間内で登っているときならパートナーから注意されがち、という話です。

もちろん、テラスへのマントルが非常に易しければ、TGさんの戦略もアリだと思いますが、下から見ていて「プルプル」っとムーヴが乱れていたりすると、「一応、取れるなら取っておいて欲しかったなぁ。」という気持ちになります。

ただ、テラスに手が届いたぐらいのタイミングで、カム・スクリューをセットするという行動は、初級者心理にはなかなか難しいものです。
垂壁が始まる前は、ノーハンドに近い状態で立てるから、余裕でセットできます。
しかし、マントル直前は、まぁまぁ辛いのです。
しかも、マントルの先は、再びノーハンドに近い大レストという誘惑も大きいです。

また、こういう恐怖を押し殺してマントルをこなしたときに、妙に「やり遂げた感」があるのも事実です。「アルパインって、こういうもんでしょ!」という感覚(錯覚?)に陥るのも心情としては理解しますが、果たして必要な行動だったのでしょうか?
2の状況は、上に活路を求めると99%以上うまく行ってしまうことが、リスク習慣の見直しに繋がらないという話です。

一方、今回の摩利支天大滝は、上に活路を求めても、状況は悪化するケースです。
言い換えれば、「怖いから、ついつい上に上がってしまった。」というのはベテラン側からは意味不明な行動なのです。

1つの有力な仮説として、以下のものがあります。
2の状況を多く経験してきたからこそ、上に活路を求める負の成功体験を数々積んできてしまった。

「トップロープ癖がある人が、リードも並行練習すると、上に活路を求めがち。」という話と構造が酷似しています。
ただ、TGさんはトップロープ癖は無いのに、易しいリードを色々経験したことによる負の成功体験がある、という話です。
だからと言って、5.7のピッチ、Ⅳ級程度のアイスのリードで経験を積むことを全否定することもできません。それに、グレードが少々上がったところで、同じ構図は起こりえます。

先日の岩場リード講習で、「1トライ目にハングドッグしてムーヴ解決したら、2トライ目はムーヴに集中できてしまってランナウト具合を全然意識していなかった!」と思い悩んでいる講習生がおりました。(5.10aのスポートルート)
これも、理論的・体験的に墜落距離とフォール姿勢の予測ができること、実践の中でそれを活かして登ること、というバランスの難しさを現した一例です。

これらを修正するには、どうしたら良いでしょうか?
もちろん、僕なりにも様々なトレーニング方法の提案はありますが、本人なりの問題把握が肝になります。

「リード中の直感的判断が、客観的にはダメ」と書くと単純化しすぎですね。
もう少し、洞察力が試される問題かなと思います。
しつこく頑張りましょう!