2022年6月30日木曜日

ランナウトのクラック課題 2022.6バージョン

最近、配置替えが行われた、ジャミング・レイバック練習壁。
とにかく素晴らしいのは、程よいフリクションが板クラックよりも皮膚に優しく、微妙な凹凸でジャミングポイントをしっかりと考えさせることでしょう。
いつもながら、ヤマタケさんの工作力に感嘆です。

今回は、中間部がチムニーサイズながら奥行きが浅く、ワイド登りがしにくいです。
課題設定されていないので、自分なりに遊んでみます。

今回の自分ルール:
中間部の浅いチムニーを登る。右のクラックは、無し。
クラックの外側の縁、ホールド上面をスタンスとしての使用、ホールド上面のラップ持ちは、禁止。
登り方①:
レイバック&ニーロック。
ニーロック+下足の補助で、ノーハンドレストも可能です。
小さい人なら、また別のノーハンドレストも可能でしょう。
レイバックからニーロックで正対に復帰するのは、岩場でも頻出パターンです。これが見通せないと、レイバックに入るのが怖いこともあります。

登り方②:
上半身は、アームロック+ガストンor両手ガストン。
浅いグルーヴ登りをイメージして。
浅いオフィズスは時々ありますが、浅いチムニーは珍しいので、岩場ですら珍しいムーヴになりました。

先日、小川山でのボルダリング体験で、講習生の一人から
「出来てしまえば、やったことあるムーヴ、と思うものばかり。」
というコメントがありました。
その日は、小川山でフェース系を中心にやっていたため、「分かっちゃえばジムで体験したことあるムーヴばかり。」というのも納得できます。
なんせ、もともとジムは岩場を模してスタートしていますし、フェースというのはジムのホールドで再現しやすいので、岩場にあるフェースムーヴでジムで再現できないものを探す方が難しいでしょう。

では、岩場のボルダリングがジムと同じかと言えば、そこまでは思えません。
・ムーヴを探す過程
・落ちたらどうなるか、落ちられない場合の敗退ムーヴは確保できそうか?などのリスク管理
の2点があるだけで、だいぶ遊び方は違うように思います。

ただ、初体験で、そこに夢中になるまでには至らないのも理解できます。
(そこにフォーカスしやすいように、講習メニューを組んではいますが、奥深いテーマですしね。)

そこで、即興で楽しんでもらうべく、帰り際にジムには珍しいチムニーのボルダーをご案内しました。
すると、その課題は10級ながら3人とも一撃ならず、全員二撃で大盛り上がり。
さらに、僕が裏から抜けるルーフチムニーのラインを掃除して、そこも遊んでもらいました。

帰りの車中、「岩場でしか体験できないムーヴに惹かれる」という講習生に、ジムでは再現しにくいムーヴについて話しました。

・スラブ(ジムのスラブと、花崗岩のスラブは、かなりコツが違う。もちろん、ジムのスラブも練習になるが。)
・ジャミング(ジムでは、スペースの都合上、ジャミング課題は少ない。)
・オフィズス〜チムニー(奥行きがあった方が使えるテクニックが豊富なため、やはりスペース問題になる。)
・洞窟などの穴抜け(チムニーと同じ)
また、「天井に頭を抑えられるようにようにしてルーフ下の緩傾斜を這うようなムーヴ」とかも再現しにくいでしょう。

上記を踏まえて、岩場に行くときは、以下の取り組みをオススメしています。

・ムーヴ探し、リスク管理(この場合、終了点作業とかではなく、クライミング中の判断力)などの習得こそが、岩場の醍醐味。
・ジムで練習しにくいムーヴ主体の岩場を積極的に選ぶのも、有効なトレーニング方法であり、岩場らしい楽しみ方の1つ。

これは、特にマルチとか本チャンを意識して登りたい人には、強くオススメしたいですね。

トップロープで難しいフェースを触らせてる山岳会の人達をよく見かけますが、目的と方法のミスマッチを痛切に感じてなりません。

2022年6月22日水曜日

8月分の予約受付

梅雨の晴れ間が続くという状況に、ホッとしている方も多い最近でしょうか。

6月27日(月)の夜21時より、8月分の予約受付を開始いたします。
富士山ガイドからは8月2日には帰ってくる予定ですので、以降は通常通りの申し込みが可能です。
小川山での岩場リード講習は、復習参加に是非ともオススメです。スラブが苦手という方も多いので。

また、先日ボルダリング体験を行った日は、スラブ、フェース、ワンポイントのハンドクラック、ワイドと1日の中で複数の代表的な形状を楽しめたので、なかなか良かったです。
マルチピッチ体験も、岩場リード講習を頑張るモチベーションになったそうで、私としても嬉しいことでした。

では、どうぞよろしくお願いします。

2022年6月16日木曜日

リードルートの封印タイミング

どんなにR.P.できなくても諦めず、打ち込み続ける姿はカッコいいという気持ちもあります。
一方で、「果たして打ち込み続けることだけが、上達への道なのか?」という疑念もあります。

ジムでトレーニングも兼ねて「ちょうど良い課題に打ち込みたい。」という話に絞ってみます。
(岩場に関しては、「人生観の違い」みたいな踏み込んだ話になってしまいやすいので。)

いくつかのタイミングを考えます。

①核心ムーヴができない
・1トライ目でできない
・数トライハングドッグしてもできない、
・フレッシュな状態でガバでアプローチして核心部だけを練習してみてもできない
・それを数回繰り返してもできない(まぁ、普通あきらめますかね?)
といったグラデーションはあります。

⇨ムーヴの練習という観点では、ボルダーの方が効率が勝ります。
 ジムでの長時間ハングドッグは難しいし、空いている時間帯などで可能な雰囲気だとしてもボルダーのように地上で体幹をリラックスさせて休憩できるよりは出力が低下していきます。ムーヴを聞いたり、他人の登りを見るのも、チャンスが少ないです。
 「どうしてもボルダーが好きになれない。」、「リードで落ちる練習、ビレイヤーの練習という観点も考えて、困難なムーヴに打ち込む練習を、実験的にやってみたい。」、「怪我などの理由で、ボルダーがほぼ不可能。」といった理由がない限り、一つの大きな目安だと思います。
 
②トップロープ、チョンボクリップ(ルート外のガバを持つなど)に頼らないと、R.P.への道のりが絶望的
「ちょうど良い課題」を登ることによって、得られるものは何か?という問いに繋がると思います。

●リードの基礎(安全管理、岩場や登山への練習という広い視野で)
落ちる態勢、墜落距離の計算を考慮しながら、オンサイトトライやハングドッグする緊張感で得られるものがあります。ビレイヤーも、それによって磨かれます。

●リード技術の目標(登るため)
ムーヴができるルートを、少ない回数で完登できれば上手い。ムーヴができるのに、トライ数が多いほど下手。(同じボルダー能力であれば、リード技術でトライ数が決まるはず、という話。)これを磨けるならば、リードの練習になっていると感じます。

これらの技術習得という点では、「どんな手を使ってでも、どんなに日数をかけてでも、1本最高グレードを登れば良い。」とは限りません。
繰り返しますが、反論として「これはトレーニングではなく、生き甲斐なんだ。」と言われる可能性も、特に岩場では十分にあると思います。

③繋がる気がしない
「核心ムーヴはテンション直後ならできるが、下から繋がらない。」というパターンです。

ボルダーの「できないけれど、打ち込めば可能性を感じるムーヴ」と同じ状況で、最後は嗅覚みたいなものに頼らざるを得ないと思います。

「核心ムーヴは相当ギリギリだけれど、その直前にレストポイントがあるから、R.P.の可能性は十分。」
「核心の1手は、テンション直後でも5分5分の域を出ず。その直前5手も、全くレストできない。合計6手の区間だけを、仮にボルダーとして取り出しても、自分の限界ボルダーグレードにすら感じるので、スタートから繋がる望みは薄い。」
「レスト、クリップに困りすぎて、核心云々じゃなく、とにかく疲れて上まで持たない。(そもそも、このルートに要求される静止能力が足りないので、基礎練習に戻るべき?)」

などといった、総合的な評価にならざるを得ません。


<終わりに>
こうやってまとめると、自分にとっても再発見がありました。
①、②は、まだまだ打ち込めばR.P.の可能性はあるけれど、別トレーニングを優先する判断、という話。
③は、R.P.できるかどうかの判断と、トレーニングとしての判断が、ほぼ一致するパターン。

「とは言え、限界グレードを更新したときの高揚感やモチベーション向上を考えると、ハードプッシュも捨てがたい。」という一般論は分かった上での、トレーニング方法の提案です。

「じゃぁ、今通っているジムは封印ルートばっかりで、もうトライするのは無いじゃん。」と思ったら、そこが工夫のスタート地点のはずです。
ボルダーやっても良いし、基礎の反復練習やっても良いし、フィジカル的なメニューを考えても良いし、と思います。色々な別メニューを練習してみて、次のホールド替え後に、「ちょうど良い課題」で腕試しするのも、一つの方法のはずです。

2022年6月13日月曜日

ヒヤリハットから学ぶ難しさ

GWツアー終盤は、5月5日(木)、6日(金)で、京都笠置。
最近、ボルダーにハマっているという狂祖さまに案内していただいて。
<1日目の偵察>

1日目はレスト日がてら偵察、2日目にちゃんと登るという計画です。
このとき、一緒に行った2人に反省すべき出来事がありました。
ともに、2日目のこと。

1件目は、カメチヨ。
朝イチで登った課題で、下降路の確認をしておらず、ボルダーの上で降りられなくなるという事態に。
この課題は、1mちょっと登ったところまでで核心終了。後は、易しいスラブを数歩登ると、ガバを取って岩の上に立てるというものです。
で、この岩では、この課題が最も易しく、かつ裏から歩いて降りられるようなラインもありません。

僕も、この課題は少し前に登っていました。ただ、そういう課題だと思って取り付いたので、最後の数歩はクライムダウンできるムーヴで登り、完登してから降りられるところまで降りて(そのムーヴを逆再生して)、1mほど飛び降りました。

その後、カメチヨは岩の上で途方に暮れつつ、30分以上経った頃に、ようやく数歩のクライムダウンムーヴを成功させ、飛び降りました。
高さ数mの岩なので、その気になれば何かしらの救助も可能な気はしましたが、自力解決できて何よりでした。

そして、「〇〇さんとかと一緒に来てたら、めちゃくちゃ怒られて、馬鹿にされまくったのは間違いない。」みたいな雑談混じりの反省会。
高さが低い岩だったのと、最近トライしている多くのボルダーが裏から回れるので油断したのでしょうね。
<転がる狂祖さま>

2件目は、狂祖さま。

1つ目の動画の落ち方も、やや無用心気味ですが、これぐらいは時々やってしまうのも分かります。
2つ目、その課題の完登動画。こちらが問題です。
マントル直後、本人が予期しない形で足がスリップしたため、「こえっ!死んだと思った今。」と解説しています。
おそらく、ここで予期しない形でコントロールできない落ち方をしていたら、マット外に落ちるでしょうし、態勢も悪くなって怪我していた可能性もあります。
僕とカメチヨも、ドキッとしたことが音声からも伝わってきます。

しかし、その直後、完登を確信した途端に、大喜びへと変わります。

あそこは、警戒してトライをやめるべきだったのか、足のスリップは許されないという覚悟を持って慎重に登るべきだったのか、行きつ戻りつできるムーヴでのみ進むべきだったのか、足がスリップした場合のフォール姿勢やマット位置を考慮して突っ込むべきだったのか、反省はシンプルではありません。

しかし、それ以前に「喉元すぎれば熱さ忘れる」という人間心理を、奇しくも見事に捉えた動画になってしまいました(笑)。
<同じ課題を登る私>

この人間心理、自分の過去と照らし合わせるまでもなく、日常的に見かけます。

・危うい手繰り落ちしたら、本来はクリップ中止の判断を誤ったという話なのに、「次は〇〇すれば登れそう。」といったR.P.への道のりにフォーカスしてしまう。「さっきはパンプしていただけだ。パンプさえしなければ、手繰り落ちしない。」という別のルートに活きない言葉を口に出す人もいます。

・ロープをかなり危うく足に絡ませて登ったのに、「やったー!」と喜んでいる人には、誰も注意しづらく、本人もすっかり忘れている。

・クリップ忘れして注意されてどうにか事なきを得て、それから次のムーヴでテンションが入ると、トライ終了後もテンションしたムーヴの検討会をしてしまう。

・カムが抜けて、グランドすれすれまで落ちた上、落ちなければもう数歩上がるつもりだった(つまり、もう数歩上がってから落ちていたらグランドだった)パーティが、「やっぱクラックって怖いね。」と一言二言交わしただけで、落ちたムーヴの検討会をしてしまう。
(プロテクションセット技術の見直しとか、固め取りをサボったことへの反省とかは、無い。)

あえて挙げませんが、山でこそ、ちょっと危ない目にあったけど登頂(登攀、遡行)を完遂できたから「やったー!」みたいな話は、際限なく出てくるでしょう。
<オマケで、狂祖さまの勇姿>

少し俯瞰して、ヒヤリハットから学ぶ難しさの要素は何でしょうか?
講習で、そんな話ばかりをしているので、講習生のつまづきポイントを並べてみます。

①そもそも指摘されないと、それが危険なことに気付けないこともある。

②気付いても、喉元すぎれば熱さ忘れる。

③「もう登れたんだから良いじゃん。」、「次のトライで登れそうだから、そんな細かい話は良いじゃん。」といった、思考に陥る。
クライミングは、登れた登れないがルールとして明確なのが良いところでもあるが、それしか見ないという浅はかさも生み出す傾向がある。
→講習生には、このタイプは少ない。それ以外の登山者・クライマーに、よく見かける。

④「こんなことを繰り返していたら、確率問題で事故る!」という問題意識まで至ったとしても、的を得た分析をして、次のルート、似た状況に活かすことが難しい。
初級者の場合、メンター的な存在がいないと現実的には困難。

⑤誰かを責める議論、あるいは責められている気分になりやすく、あまり突っ込んだことを言わない方が、人間関係に傷が付かない。
この数日前に、僕自身が足を切株に打ちつけたという反省がありました。
日々ヒヤリハットだらけで大丈夫なのかと不安にもなりますが、細かいことを気にしまくればこそ今日まで生き延びている部分もあり、何とも言えません。

完登を本気で目指しつつも、リスクを学んだり、故障しにくい登り方を学んだり、ムーヴを考えたり、本気トライの心構えを学んだり。
実際、完登はオマケなのかもしれません。
<偵察中>

●追記
数日後、狂祖さまは反省を活かし、この課題を考えうる限り安全に再登し、色々なことを噛み締めたそうな。
午後から雨になりそうな日に、一人で向かったというから、さすがですねー。
<クラシックな河原エリアも見に行く>

<顕著なクラック>

<シットダウンしないと意味がないくらい短い4番サイズ>

<レスト日じゃないときにトライしてみたいのがゴロゴロ>

<傾斜の寝たハンドクラックくらいは、登っておきます>

<2日目の本気トライ(スラブ)>

<諦めて自らフォール。その後、完登しました。>