2020年1月31日金曜日

とあるエピソード

1月28日(火)は、ムーヴLv.0。
女性YOさん、MH夫妻。
本日で、3名ともジムリード講習に進んでO.K.といたしました。
ある日のランナウトにて、2人の会話。

Aさん(パッと見、5.10中盤で登れたり登れなかったり。)
「私、レストがよく分からなくって。出来てないね、って言われたり。」

Bさん(5.10後半も、オンサイト率が70%ぐらい?)
「肩から脱力する感じかな。あと、呼吸も大事。夜、寝る前に呼吸を意識したりするのも良いよ。」
その他にも、Bさんによる親切なレクチャー諸々。

さて、Aさんのトライ。
10mの薄被りメイン壁の5.10後半を、一度もレストせずに登り、5ピン目ぐらいで力尽きました。
クリップのときだけ、無理やり片手バランスを作る感じ。

僕が見ている限り、Aさんは1つ前のトライもノーレストでした。
普段から、ノーレストで登る習慣になってしまっているものと思われます。
ところで、Bさんはそれを見てどう思ったんでしょうね。
テンション後も、力尽きた直後のパートについて、「あーしたら?こーしたら?」ぐらいの会話だけに見えました。

①「口で言ったぐらいじゃ、分からないか。」
②「そのうち、慣れれば分かるかな。」
③「あんまり付きっ切りでアレコレ教えるのも、お互い疲れるしね。」
④「初心者ルートからレストの基礎練習した方が、良いかな。」

あるいは、
⑤アドバイス直後のトライで、ノーレストであったことに気づいていない。
という可能性もあります。

さてさて、このエピソードから何を思うでしょうか。
その場に居た僕も、考えを深めてもらうショートコメントを思案しましたが、何も思いつきませんでした。

2020年1月30日木曜日

安易に回答してしまいました

1月25日(土)は、岩場リード講習。
男性NSさん。
<アプローチ練習は、かなりの正確さ>

行きの道中で、ジムのリードにおける持久力不足について気にしているNSさん。

普段なら、「今のレベルでは、省エネとレスト技術ですよ。」と即答するところですが。
NSさんが、週1回に満たないクライミング頻度になってしまう仕事の多忙さだと知っているだけに、
「ある程度の頻度(例えば、週2回以上)で登っていると、(大して省エネを意識していないように見える人でも)そこそこパンプしにくいですからねー。フィジカルとか、慣れの要素もありそうですね。」

※NSさんは、仕事が連休のときはもっと登っているので、モチベーション云々ではなく、超多忙。

※慣れは、無意識にムーヴやレスト技術が少し洗練された、ということ。量を練習すれば、意識すべき点が分からなくても、ある程度まで良くなるはず。(ほとんど良くならない人も居ます。)

などと回答しつつ、岩場へ。
<ムーヴ練習>

しかし、実際に岩場でムーヴ練習すると、私の考えは変わりました。
というか、ちょっと安易に回答し過ぎたと反省。

「その登りの癖だと、パンプは相当早そうです。」
パンプが早すぎて、練習量が担保できないという循環になりそうにも見えました。
貴重な、週1回弱のトレーニングなだけに。
具体的に、何が気になったのかは置いておくとして。
(そこが最も大事なんですが、文章化が難しい・・・)

今回と同じようなことを道中で聞かれたら、
「現場でムーヴ見てみますよ。それから、検討しましょう。」
と回答しようかなと思います。
<落ちる練習>

これで、少しパンプしにくくなると良いですねー。
<シルクロード(5.7)を見事にO.S.>

2020年1月29日水曜日

トップロープ状態で少し登ったとき

1月24日(金)は、リード3回目。
男性AHさん、男性SHさん。
リードのビレイについて、よく話題に上がる話。

クリップ後、少し登ると、ロープが弛みます。
クリップ直後は、トップロープ状態なので、登った分だけロープが余るので。

この弛みを、どこまで巻き取るべきでしょうか?

①ほぼ完全に(テンションにはならない範囲だが)巻き取る派
・少しでもフォールの距離を減らしたい。
・クライマーは、墜落距離の計算をして登っているので、それが狂うのは困る。

②そこまで気にしない派
・どうせ、次のクリップをするときに繰り出すんだから、巻き取るだけ労力の無駄。そもそも、素早く登る人のビレイだと、巻き取るのは無理じゃないか?
・トップロープ状態で少し弛んだぐらいで、事故に繋がるほどのフォールは無い。

どちらも一理あるので、状況によって正解は変わってくるでしょうか。
次に、左図はロープがクライマー側に弛んだ状態、右図はビレイヤー側に弛んだ状態。
(弛みの長さは、同じ。)

今回は、クリップ後に少し登った状況なので、左図になりそうなものです。
ただ、ロープの重みで、自然と右図に移行することもあります。
また、ビレイヤーが意図的に弛みを自分側に引き寄せることも出来ます。(ブレーキハンドでない、補助の手でロープを引く)

で、先ほどの議論に戻って、
「左図みたいにビレイされたら、ちょっと嫌だな。」
と感じる人も多いと思います。

・ロープが、足置きや膝の邪魔になりそう。
・ダルダルのビレイをされてそうな気がして、不安を感じる。
などの理由が考えられます。

この話って、明確な答えは無いのですが、意識してビレイしているかどうか、すぐに見わけが付きます。
たぶん、巻き取らないという判断をするケースでも、左図にはならないようにするから?

私は超重量級なこともあって、個人的には右図でもなるべく巻き取って欲しいっすけどね。たとえ、次のクリップで繰り出しが遅れたとしても。

2020年1月27日月曜日

最近のこと

1月22日(水)は、岩場リード講習にて、湯河原。
男性HGさん。
<易しいクライミングで、足のスリップは避けられるはず>

書くことが思いつかないので、最近の自分のクライミング。

ここ1ヶ月、ジムボルダリング比率9割です。
色々と思うこと。
<安定とは何ぞや>

①自分が下手くそ

一番感じるのは、荻パンに行ったときです。普段、ランナウトとDボル八王子しか行かないので、年に1~2回ぐらいの話ですが。
行くたびに、毎回痛切に感じます。

3級とかがフィジカル的に全く歯が立たないのも悲しいですが、5級でもバンバン落ちます。

5級の感想。
・外傾スタンスが多さに対応できず、いかにも下手くそなスリップフォールで一撃を逃したものが複数個。
・コツ系の課題で、だいぶ打ち込んだものが2つ。ムーヴ解析能力の低さを感じる。

4級は、得意なものだけを2つ登っただけ。

まとめると、弱くて、雑で、読みも甘い。

1日で、ここまで全ての要素を感じさせてくれる機会も、あまり無いです。
土日の遠征ジムとかに選ばれやすいのも、よく分かります。

あとは、トップクライマーの登りを見学できるのも、魅力ですね。
アップから、得意系、トライの仕方、練習方法まで、複数人のものを見られるのは有難いです。

もう1つ、漠然とですが、ジムの雰囲気にも微妙にカルチャーショックを受けます。そして、帰宅して荻パンのHPを読み込んでしまうという現象。
②自分が教えていることは、クライミング能力のごく一部に過ぎないことの再認識

いつも書いていることですが、
・岩場で、落ちたらいけないセクションとどう向き合うかを考え抜く。
・クリップなどの安定姿勢を考える。
・省エネ、レストなどのリード戦略に適したムーヴを考える。
といったことは、ムーヴを教える上で大事にしていることです。

ジムボルダーだと、それが役立つ場面なんぞ1~2割に感じます。
(超上手い方々は、その1~2割も出来ているようには見えますが。)

テクニック面だけを見ても、クライミングって全容が見えないもんだなと、つくづく思います。
興味深いのは、コーディネーションに限らず、全般的なムーヴ能力の低さを感じる点。
<結び替えの練習>

③伸びを実感するサイクルも、ときどきある。

色々工夫して、それがハマっているときは、「先月より、ちょっと伸びたかな。」ぐらいには感じます。
反対に、「経験値が上がっただけで、ベースの能力は全然変わっていない気がする。」と感じるときも多いです。で、数ヶ月前の宿題で退化すら感じて、大いに落ち込むこともあります。
今だと、ランナウト1階の赤15番・・・。2ヶ月前に、バラしまで出来ているだけに、苦しい。

初級者の場合、伸びていない気がするだけで、実際は伸びていることが多い印象です。練習方法は工夫すべきだけど、マンネリ期間も割と許容されます。
でも、今の自分がそれに期待するのは、考えが甘すぎなんでしょうねー。

頑張って、工夫しましょう!

2020年1月22日水曜日

教える罪

10月17日(金)は、リード2回目にて、男性STさん、男性HTさん、男性MSさん。
18日(土)は、ロープワーク講習にて、女性STさん。
19日(日)は、ムーヴLv.0にて、MHさん夫妻、男性EDさん。
22日(火)は、リード1回目にて、新規男性KMさん、復習参加の女性KDさん、男性YSさん。
今さっき、クローズアップ現代+で、ジャパネットたかた&武田真一キャスターのプレゼンにかける情熱を聞いて、自分の甘さを痛感した石田です。
プレゼンが本業ではないけれど、それにしても色々と思うところがありました。
がんばろ。
さて、本題。

今回の講習生の中に、
「体を捻じれ!」というアドバイスを妄信して、不必要な場面でも捩じりまくっている方がいました。
クライミング初心者あるあるです。

「そこは、~~した方が良いよ。」という指示型アドバイスに比べて、
「○○っていうコツがあるよ。」というアドバイスは、ハマれば大変に有効です。

しかし、こういう初心者は量産されますし、それが矯正されるチャンス無く何年も(ときには10年以上も)過ぎ去ることすらあるでしょう。
これを、
「実験意識が低い初心者側の自己責任。」と見るか、
「初心者は小学生みたいなものだから、分かりにくい嘘教えたら信じちゃうよ。」と見るか。

良心あるベテランクライマーは、自分の発言に罪の意識を感じることがあるはずです。

ちなみに、当塾開業当時の私は
「△△のときは、~~した方が良いです。□□のときは、××した方が良いです。」
などと、場合分けによる説明を多用していました。

一見、分かりやすくてウケが良いんです。
でも、使い分けの基準がトップダウンなので、だいぶ経ってから誤解して記憶されていることに私が気づくことも多かったです。
しかも、私自身が経験値を積んで、場合分けを変更したくなることも、ときどきあって困ります。

で、これも良心の呵責で、徐々に使えなくなってくるという(笑)。
もちろん、方法の1つとして、今でも使いますけど。

そして、いよいよ本人に考えさせる色合いが一層強くなり、講習生の理解度を観察する眼も鋭くなってくる、という話。

教えることは罪の意識との葛藤、という色合いもありますねー。
そこまで考えても尚、アドバイスしたくなるのがサガなんでしょう。

2020年1月20日月曜日

フォームを教えるジレンマ

1月16日(木)は、岩場リード講習にて、湯河原。
女性KBさん、男性SNさん。
本日の講習では、指への負担が少ないホールディングやフォームについて、かなり時間を掛けました。
たぶん、『クライマーズバイブル』の手のスイッチ、と同じような概念です。

「なぜ、その動きが身体に優しいのか?」
「なぜ、自分は違うホールディングや姿勢を好んでしまうのか?」
というコンセプトで考えると、少しずつ自分の癖が分かってくるように思います。

ある程度の理解が出来てから、
「もっと早く知りたかった。出来れば、最初に知りたかった。」
というKBさんの感想。
私も指の故障で悩まされていますし、「初心者のうちに知りたかった。」という思いもあります。
しかも、私なりに指への負担がマシになるフォームというのは追求していて、それが副次効果として肩や他の関節への負担も軽減しているようでもあり、効果は実感しています。
で、「それを初心者に教えたい!」という老婆心は、日に日に強くなります。

そういう熱さをコンセプトにしたスクールもあるようですし、『クライマーズバイブル』とパンプアカデミーもまさにそこを狙ったものなのでしょう。
しかし、現実は厳しいものがあります。

①バタバタ登りの人は、フォームどころではない。
例:脇が締まっているかよりも、足が雑なことや、不必要な振られに耐えていることの方が問題。
ただし、例外的に他のスポーツを真剣にやってきた人などは、クライミング技術が初心者レベルでも、フォームだけが良いこともある。

②フォームの有難みは、初心者には理解しづらい。もっと、手っ取り早く上達したい。

③フォームの概念自体が、理解するのが難しい。習得にも、時間が掛かる。ただし、故障で悩まされる期間に比べたら、遥かに短い。

④「考える前に動け!」ぐらいの速度で登ることを推奨する指導者や先輩クライマーも多い。それに従う初心者は、ますます考える能力が下がる。

したがって、初心者にフォームを教えるということは、いばらの道だと思います。
しかし、目の前で“いかにも、故障に繋がりそうな登り方”をしていて、それを指摘しないというのも、心苦しいものがあります。
何年か後は、僕と同じ指になりそうに見えるだけに。

ただ、それでも結局は、まずは安定感のあるムーヴの癖を身に付けることからしか、講習は始められないのです。

足置きとかレストは、リードのために覚えましょうというコンセプトですが、遠い将来にフォームを直すことも見据えての前段でもあるのです。
と、そんな訳で、たまにはムーヴ講習や岩場リード講習(午前中はムーヴ講習)に復習参加されることをオススメしますよ。

2020年1月17日金曜日

ムーヴの癖と事故確率

1月13日(月、祝)は、クラックリード講習にて、城ケ崎。
男性NMさん。
危なっかしい登り、とは何なのでしょうか?
過去の講習生の発言で、関連しそうなものを再掲します。

・浮石をクリップホールドにして、手繰り落ち経験のあるAさん
私「浮石のチェック方法って、幾つかあるのは知っていますか?荷重方向に強めに引いてみたり、叩いてみたり。」
Aさん「知っていますけど、そんな余裕は無いです。」
私「確かに、そういう場面もありますよね。ただ、その場面が手繰り落ちしたら事故になるぐらいの状況で、ホールドにヒビが入っていたりしたら、チェックせざるを得ないし、手繰るのをやめざるを得ないんじゃないですか?」
Aさん「えー、そんな余裕は無いです。」
<本日は、5.4でクラック版のムーヴLv.0みたいなことを行いました>

・落ちたらどうなるかを考えずに突っ込んだ方が、怖くないと考えるBさん
私「ムーヴによっては、背中から落ちたりしますよね?」
Bさん「想像しきれないし、そんなこと考えてたら怖くなって登れないです。」
私「そうですね。でも、危ないと思いますよ。」

・ランナウトしている場面で、行き詰ったケースを思い出すCさん
私「落ちられる範囲まで、戻るしか無いんじゃないですか?」
Cさん「えー、そんな余裕は無いです。」
私「落ちられる範囲を超える段階で、戻れるムーヴで進むというのがよくやる手なんですけど、それは?」
Cさん「そんなこと、考える余裕は無いです。」
多くの講習生が言うには、「余裕が無い。」、「そんなことを気にしていたら、登れない。」という感じです。
たしかに、そういう発言が多い人は、“登りながら考える”ということが出来なさそうなムーヴの癖があり、考える暇が無さそうにも見えます。

このムーヴの癖は、何なのでしょうか?
今回は、その内容自体には触れません。ムーヴLv.0から、岩場リード講習、クラックリード講習と、長時間をかけて教えたい内容で、ある程度登れる人であっても復習に来て欲しいと思っているぐらいの深い話です。
僕の人生2~3割は、この項目の考察に充てているような感覚です。

とても一言では語れません。
5.10aを本気トライしていても核心部以外は安定して見える人もいれば、5.12aを本気トライしていてもバタバタ登りに見える人もいます。

つまり、バタバタ登りでも、ある程度までは登れることは間違いありません。
フィジカル要因、メンタル要因、反射的に身体が良いポジションに行くなどのテクニック要因、全てが絡んできます。

こんな話が煩わしければ、ジムのオートビレイ機や、高さの低いボルダージムだけで登っていれば、避けられるかもしれません。
リードとか、ボルダーでも岩場をやりたいなら、特に大事だという話。もちろん、クラックやマルチ、沢登りやバリエーションでも。

ただ、繰り返しますが、この考察は、緩やかにグレードとかにも効いてくるとは思うんで、馬鹿にしたものでもないですよ。

2020年1月11日土曜日

Aライン

1月5日(日)は、リード3回目にて、女性HNさん、男性THさん。両名とも、これにてジムリード講習は卒業といたしました。

1月8日(水)は、ムーヴLv.0にて、復習参加の男性SKさん、復習参加の男性MSさん。
当塾卒業生にしてランナウト常連のFKさんと雑談していたら、その日の講習でSKさんの質問から同じような会話になりました。

具体的には、
・一定時間を過ぎると急速に力が無くなる。
・これは、持久力というフィジカル不足だ。
という話です。

ちなみに、FKさんの友人「ムーヴの天才」は、持久力があるそうです。
これは、「省エネ技術&レスト技術ではなく、体重が軽いからだ!」というFKさんの見立て。
果たして、真相はいかに!?
<スワンガール見習い、HNさん>

さて、話を本題に戻しましょう。

パンプやヨレの進行に関して、私なりのイメージ図を書いてみました。
いつものパワーゲージの話で、スタート時点を100%とします。

※レストによる回復、などは単純化のため省略。
ここから、私の体感に基づく話。

Bラインより下の世界。
・腕がパンパン(orヨレヨレ)
・ホールドを持っている感覚も鈍く、手繰り落ちのリスクもある


SKさんからの質問は、
「Bラインより下のときに、どうしたら良いですか?」
というもの。
実際に、ジムの終了点でこれを迎えて、何とかシェイクを繰り返して終了点クリップを試みたものの、手繰り落ちしてしまったという体験談つき。

私の回答。
「その状態では、ある程度のレベルの人でも大ガバでないと回復できない領域。今のSKさんでは、ノーハンドレストでない限り回復不可能でしょう。」
(レストするには、手遅れ。)

続いて、Aライン~Bラインの世界。
・最大出力が出ないことが、明らかに実感できる。
・一手毎の消耗具合が、序盤の倍に感じる。(下降の傾きが大きくなり、そう長くは続かない。)
・滑らかさに、顕著な陰りが出て、ブレブレになる。

(一般的に、ルート難易度が上がると、Aライン~Bラインの世界でもムーヴが難しくてフォールします。)

「筋収縮による血流阻害によって、パンプが始まる。パンプが進行するほど、筋肉は膨れ、力を入れていなくても血流が阻害される。よって、パンプするほどパンプしやすくなる。」
という風に考えれば、傾きが急になっていく様だけは説明がつきます。

ただ、Aラインが生物的に何なのかは、私は知りませんが。
おそらく、FKさんが言うところの「一定時間を過ぎると・・・」、というのはAラインを下回った瞬間でしょう。
ちなみに、なぜ「一定時間」という感覚なのかは、考える価値があります。

私も、時間で感じるヨレがあります。
それは、レストできない構成の、ボルダーの本気トライです。
これに限っては、丁寧さを犠牲にしないギリギリのスピードで登ることが、大切だと感じています。
筋トレしているかのように力を抜くことが出来ない課題では、一定時間でガクンと出力が落ちるタイミングを感じます。
だから、同じ時間でも7手進むのと9手進むのでは、完登の可能性が違うという理屈です。

ただ、
①「被ったボルダーにおいて、10手ぐらいで起こる現象
②ジムリードにおいて、20手ぐらい+クリップ7回のルートを大レストせずに登った場合、3分の2ぐらいの高度で起こる現象

の2つは、果たして本当に同じ現象なのでしょうか?

さらに言えば、
③レストしながらゆっくり登って、それでもAラインを迎えたとき
と、上記2つは体感的には違います。

たぶん、生物的には全部違うんでしょうけど、体感としては①と②に大差ないです。
また、Aラインを越えてからの状況は
「①≒②、③が一番マシ」
と感じています。

まぁ、Aラインを越えてからのことより、Aラインより上を保つことの方が大事ですけど。

結局、Aラインって何なんでしょう(笑)。
<「パンプしていない序盤は、レストより上を目指しちゃうんだよなー。」by SKさん>

2020年1月10日金曜日

課題との距離感

12月31日(火)~1月2日(木)は、一人で豊田でボルダリング。
ムーヴが出来ない課題に直面したとき、自分にとってどのくらいの大変さなのかを把握しようと努めます。

まず、出来ないムーヴそのもの。
①全く無理そう。(コツ系であれ、パワー不足であれ。)
②コツ系で、分かっちゃえばパワー自体は大したこと無さそう。
③パワフル系で、そこだけバラしても、めちゃくちゃ大変。
④パワフルかつコツもので、コツを習得する前に力尽きる可能性や、繋げトライでミスをする可能性が高い。
など。

ジムと違って、岩場ボルダーはバラし(パート練習)が不可能なケースも多いです。それでも、SD(̪̪シットダウン)スタート、スタートホールド指定、トラバース、などの課題も多いので、結構できます。

①なら諦めるんですが、②~④だと、希望が残ります。
次に、そのムーヴ以外の流れ。

①他は簡単(or懸案のムーヴの前に休める)。そこさえ解決すれば、すぐにでも完登できそう。
②他も、なかなか大変。懸案のムーヴの直前でも一呼吸置くことが難しく、繋げるのに苦労しそう。
③他にも、未解決なムーヴがある。(この場合、核心ムーヴ2つの間に、休める場所があるかどうかなどの条件を考慮。)

レストポイント(腕は下せなくても、体幹の脱力が出来るだけでも違う)、繋げトライでコツもので失敗する可能性、などを勘案。
上記を総合的に判断して
①バラさないで、毎回下からで頑張ろう!
②バラして、1~2時間で登るように頑張ろう!
③今日は、バラすだけで力尽きそうだけど、次来たら登るつもりで、やるだけやろう!
④バラせても、今の自分には繋げられる可能性は無さそうだけど、練習のつもりでバラすか。(通えば良いんでしょうけど、私はモチベーション低下しがち。)

あとはトライを続けて、①のつもりが②になる(妥協)、③のつもりだったけど案外②の可能性が見えてきたりします。
この計算は、自分の経験上は大事です。
全く無理な課題を打ち込んでも、真剣さを失うか、燃え尽きるか、という印象なので。

でも、自分が小利口になるばかりで、偉業を達成できない典型的な性格になっていくような後ろめたさもあります。

安全管理は計算が大事な印象ですが、ボルダリングは「案外、登れちゃったよ。」が多い楽天家になりたくなる日もあります。
とは言え、もうこの作業は自分の中で自動化されているし、価値もあるので離れがたいのですよねー。

自分の性格が、クライミング向き(広く言えば、練習向き)になれているのか否か?
どうなんでしょうね。
以下、記録。
とりあえず、グレードとルート名は『日本100岩場』を参照。

1日目(12月31日):岩が濡れており、乾いた岩を求めてエリア散策に半日。最終的に、大給城址。
・名も無い課題 アップで何度も
・ムーンリバ(d) 数トライ
・月面(b) 数トライ
・ムーンサルト(e) 2時間ほどでムーヴばらしまで
・UFO 2トライ
・SFスラブ 1トライ
・鯉のぼり(dバージョン) 1時間ほどで完登(頑張った!)
・吹き流し(b) 1トライ
2日目(1月1日):レスト
起きたら、14時だったという爆睡っぷり。さらに、温泉に行って、2度寝する。
3日目(1月2日):太田城址
・苔太郎(a) 1トライ(アップにつき、何度も)
・北稜(a) 1トライ(すでに本気)
・パーマン(c) 絶望につき敗退
・ハーフドーム(b) 絶望につき敗退
・北壁(b) 絶望につき敗退
・インスタント(a) 1トライ
・ケンケン(b) 1時間ほどで完登(頑張った!)
・お手、おさらい、お手上げ、お手つき、ファット、ヒヤット、お手上げ、お上がり、お座り、などの周辺のaを一通り。たしか、1つだけ何度もトライしてようやく登れたのがあった。
・関取(a) 1トライ
・ドドンパ(a) 1トライ
・ドンパ(a) 1トライ
・ラード(d) 今の実力だと、リスクを感じて敗退
・パックマン(aバージョン) 1トライ
・シイタケ(b) 今の実力だと、リスクを感じて敗退(かなり惜しいところまで行くので何度もやったが、やはり怖くて敗退を繰り返した)
・マツタケ(b) 絶望につき敗退
・マイタケ(b) 1トライ(頑張った!)
・腕相撲、カチンコの2本のaで、クールダウン
1日目と3日目、ともにギリギリ登れたやつが何本かずつあって嬉しかったです。
ただ、3日目って、c以上は全て敗退しているんですね(笑)。我ながら、ショボい。
bでも、登れないのもチラホラ。まぁ、そんなもんですかね。

参考までにグレード
a:10~7級
b:6~5級
c:4~3級
d:2~1級
e:1級~初段

2020年1月6日月曜日

行く前提をやめる

念のために書いておきますが、1月9日(木)の21時より、2月分の予約受付を開始いたします。

12月29日(日)は、クラックリード講習にて、城ケ崎。
男性NMさん、男性KTさん、女性ISさん。
地上でのカムセット練習で、
「ちょっと不安が・・・」
という程度のセットがあります。

わずかばかりフレアしているとか、ちょっと欠けそうな岩に接しているとか。

そんなとき、講習生から
「とはいえ、ここしか決まらなかったら、仕方ないですよね?」
という意見が出ます。
理解は出来るんですが、ちょっと危ない発想とも言えます。

例えば、効きが甘いなら、
・クリップせずに、別のカムをセットする。
・上記で、パンプしてくるようなら、自らフォールor手前のカムまで戻ってテンション。
(手前のカム、つまり最終プロテクションの信頼度を覚えておらず、戻ることも恐怖であるようなら、あなたは危険極まりないクライミングをしていると思います。)

という選択肢があるはずです。

また、バチ効きを99.9%の信頼度と仮定すると、「もしかすると抜けるかも。」(例えば、10%のカム抜けリスク)と感じたときに、

①まず、固め取りする。(2個、90%ならば、99%になるというリスク計算。)
②さらに、次に確実なプロテクションが取れそうな場所までのムーヴで落ちる可能性を考慮。

→①と②を総合的に考えて、リスクが十分に低いと思えば、頑張って突っ込む
そういった、オプションを幅広く考えて、行くべきか、ギブアップするべきかの駆け引きがあります。

最初の発言だと、
「(出来ないムーヴで行き詰らない限り)登り続ける前提。取れる範囲でカムセット。」
という風に聞こえちゃうんですよね。

で、実際に5.7とか5.8とかだと、落ちずに登れちゃうことが多いだけに、それが実践できてしまうという。
(講習生の経験だと、そこまで確信犯では無いのは百も承知です。)

これって、ジムでのクリップでも同じことだと思います。
出来るタイミングでクリップするんではなく、すべきタイミングでクリップ出来ないなら、諦めてフォールなどのギブアップすべき、という場面は日常茶飯事ですよね。
実践本気トライ
KTさん:鬼ころし(5.7) O.S.
NMさん:鬼ころし(5.7) フラッシュトライにて、カムスタック、カム不足などありつつ、テンションかけてムーヴ解決してトップアウト。

ところで、ここ最近の城ケ崎で3件の重大事故があったようですね。

詳細が分からない中でも、考えうるシナリオを何通りか推測することで自分のリスク管理能力が向上すると思います。
講習生の皆さまは、自分なりに考えてください。
機会があれば、行き帰りの車などで話は聞きます。

山の遭難事故なんかも、本人が死んじゃったら、どういう思考でミスに至ったのかは推測するしかないです。
本人が生きていても、反省の方向性が、我々が求めるものとは違うこともあります。
①「もう、~~山には二度と行くまい。」(それはそれで、本人の自由ではある。)、
②「確率問題だから仕方ない。」(そういう部分は、否定できない。)
など。
そういう人に、詳細を尋ねても、得られるものが無かったりもします。

詳細は気になりますが、詳細を知ることだけが勉強ではないと、私は思います。

2月分の予約受付

明けまして、おめでとうございます。
昨年は、大変お世話になりました。今年も、どうぞよろしくお願いします。

さて、1月9日(木)の21時より、2月分の予約受付を開始いたします。

こちらも、どうぞよろしくお願いします。

2020年1月4日土曜日

ジムで落ちてはいけない場面?

12月25日(水)は、リード講習2回目にて、男性AHさん、男性SHさん。
28日(土)は、リード講習にて、女性NSさん、男性KBさん、女性THさん、復習参加の女性YIさん。
これにて、NSさん、KBさん、THさんは、ジムリードを卒業といたしました。もしよろしければ、岩場リード講習でも、復習参加でも是非。
リードでやってはいけない事例集(逆クリップ、手繰り落ち、など)について話していた場面。

講習生から「不意落ちはダメなんじゃないか?」、「落ちてはいけない場面で落ちるのも、ダメなんじゃないか?」という意見が出ました。

「じゃぁ、落ちてはいけない場面って何でしょう?」ということで、掘り下げてみました。

・岩場で、相対的に易しいのでボルトが打たれていないセクション
という話が分かりやすいのですが、今回はジム講習なので、それは一旦置いておくことにします。

最初に
・手繰り落ち
も分かりやすい例です。

次に、講習生からは
・クリップ飛ばし(イメージとしては、4本目を掛けずに5本目に到達する)
っていう例も上がりました。

ただ、これはそもそも4本目とかでクリップ飛ばしすること自体がNGなんじゃないか?ということになりました。
ジムでクリップ飛ばしが許されるのって、何本目くらいからなんでしょうか?
続いて、
・1本目を掛けてから、トラバースしている場合
という例も上がりました。(図①)

ただ、これも赤線のようにクリップすべきだったんじゃないか?という話になりました。

続いて、
・大きくトラバース している場面(図②)

これも、赤線のようにクリップすべきだったんじゃないか?という話に。

続いて、
・側壁に激突しそうな場面(図③)

左図のケースは、一見怖いけれど、実は激突しないんじゃないか?という話。
右図で、地点Aからフォールしたとして、実際には赤線ラインを辿るはず。Aの対岸側を越えて側壁まで行くことは、考えにくいです。

とはいえ、側壁が青線の場所にあったら、かなり近くまで行くのでリスク有でしょう。

続いて、
・大きなハリボテホールドが、飛び出している場面(図④)

たしかに、こんな状況なら足首捻挫、骨折が想像されます。
ただ、実際には一般的なジムでは、上図のようになっているイメージです。

ロープが多少擦れることはあっても、フォールラインに入るほどはホールドが突起していないような作りです。
さて、これらをまとめて、皆さんはどう思われたでしょうか?

「不意落ちは良くないけれど、手繰り落ち以外の不意落ちが許容されるようにクリップ戦略を立てるべき。」
というのが、1つのオススメできる結論だと思うのですが。
と、ここまで書いておいて。

ルート設定者側のミスで、ちょっと張り出し過ぎたハリボテ、とか言うケースも、全く有り得ない話ではありません。
よくよく考えたうえで、落ちるまで頑張ることが望ましい姿なのでしょう。

そして、それがリードの醍醐味ですかね。