2019年6月27日木曜日

撤退のタイミング

6月25日(火)は、リード1回目にて、女性DHさん、男性AHさん、男性SHさん。
6月26日(水)は、ムーヴLv.0にて、女性KDさん、新規女性GDさん、新規女性IHさん。
2コマ目で、女性ONさん、復習参加の女性KDさん。
もし、目の前に水の流れが速い川があり、あなたが渡渉したいとします。
しかし、足を救われて流された場合、最悪死亡のリスクもあるとします。
ここで、進退判断のタイミングを考えます。

①渡渉開始して、いよいよ急流に差し掛かるときに、下半身に強い水圧を感じて。
②浅瀬に数歩足を入れてみて、「やっぱ危ない。」と確認して。
③手を浅瀬に入れてみて、「やっぱ危ない。」と確認して。
④水の流れを視認して。
⑤前日に、友人から前評判を聞いて、怖さを想像して。
⑥前日に、天気予報を見て、普段より少し増水していると予想して。

もしかしたら①の後、より準備を整えて再トライして、それでも危険だと思ったら止めるというのもあるでしょう。

この話では、あなたが川を渡りたい事情(モチベーションの程度)、パッと見でどの程度危険そうなのかの状況描写、などは割愛しています。

ちなみに、一般人から見たら①とか②が馬鹿げた行動です(笑)。
一方で、登山やクライミングをやる上で「そのぐらいやんないと、何も登れない。」と感じることもあるでしょう。


次に、ジムであなたの目の前に、パッと見で無理そうなボルダリング課題があります。グレードは書いていません。
どのタイミングで、次の課題へと移動するでしょうか。

①20トライぐらいして、進捗がなくて。
②数トライして、絶望して。
③とりあえず、1トライだけはしてみて。
④スタートホールドを触って。
⑤見た目で判断。
⑥周りの人に、体感グレードを聞いて「それは無理そうだ。」と確認して。
⑦周りの強い人がトライしている具合を見学して、「やっぱ無理。」と確認して。

渡渉の例と同じく、「どのくらい無理っぽいのか?」という具合は割愛しています。

もちろん、諦めた課題はいつの日か再トライするのかもしれません。
進捗が微々たる課題を執拗にトライし続けるのがプラスになるのか、進捗があるぐらいの課題を少ないトライ数で落として行くことがプラスになるのか、という練習方法のテーマとも関係してきます。
だから、その場で他に丁度良い課題があるかどうかでも、判断が変わってくるでしょう。

前記事の勇者とは矛盾するようですが、早めに止めることが正解という場面も多いし、正解がなくて好みの問題かもしれません。

さて、本題。
リード中(orハングドッグ中)の講習生がギブアップ宣言している中で、「もうちょっと諦め悪く、あれやこれや試してみたら?」と私が促す場面は多いです。
これに対し、「その通りにやったら、より一層怖い目(あるいはツラい目)に遭った!」となることも、経験上多いです。
もしかしたら、それでリードが嫌いになるかもしれません。

川の渡渉問題で言えば、「このラインなら流れがマシかもしれないから、数歩だけ川に入って再判断しては?」と私が言っているような場面もあります(笑)。
一般人の感覚からすれば、狂った話だとは思いますが・・・。リードを教えるとは、そういうものだという気もします。

この話し合いでは、ムーヴの検討、ランナウト具合の再確認に加えて、判断のタイミングの個人差、さらには恐怖心・猜疑心などの感情が加わり、議論が成立しにくいと思います。

とても煩わしい話ですが、リスクコントロールと向き合う以上は、生涯テーマなんでしょう。
ジム講習ながら、マルチピッチリード講習のように深く考えた今週でした。

勇者

6月22日(土)は、岩場リード講習にて、小川山。
女性FIさん、女性YDさん、女性KDさん、男性SKさん。
この日は、残念ながら予報より早めに雨。
エリアによっては登れたようですが、我々は諦めてジム転戦でした。

そこで、せっかく空いたジムに行ったので、ゆっくりとボルダリングをやりました。
さて、そこで講習生が作った課題。
6級狙いだったそうですが、難しくなってしまったもの。

そのときの講習目的がオブザベ能力の向上なので、ある程度の「やっちまった課題」が頻発するのは織り込み済みです。
まず、2番のホールドが悪めです。
仮に、それを保持したとしても、3番のホールドが持ち替えに適さない上に、3→4はクロスムーヴがしにくい状況でした。

そこで、考えうる選択肢として。
①2を保持。3を右手の中継にして、飛ばしで4を右手。
 ただし、150cm前後のリーチだと、飛ばしで届いたとしても、左手の寄せムーヴが厳しくなる可能性大。

②1番のホールドから、いきなり4番を右手。
 ただし、やはり150cm前後のリーチだと、届いたとしても左手の寄せムーヴが厳しくなる可能性大。

③下段の垂壁をガバを繋いでトラバースして、やや勢いを付けたムーヴで一気に4番を狙う。
 狭い乗り込みムーヴで、ターゲットは遠いので、リーチ有利なのか小柄有利なのかは不明。
まぁ、私から見ても顕著にリーチ系の課題だなと思いました(笑)。

普通のジムなら、少しリーチ考慮されているでしょう。
例えば
・2番をもう少し右に寄せて、飛ばし→寄せの動きがしやすいようにする。
・3番をマッチや持ち替え可能なホールドを選ぶ。せめて、指が小さい小柄女性だけでも持ち替え可能なホールドにする。
・2番を排除して、1番と4番の中間に中間掛かりホールドを足す。
・③の作戦がしやすいように、勢いで乗り込みやすい足を配置しておく。
しかし、ここで果敢にトライを続け、イチ抜けを果たしたのは身長153cmのFIさんでした。

FIさんは、YDさん(女性にしてはリーチはある方?平均?)よりもテクニック的に優れている点も多いです。
ただ、それでも尚、私はYDさんが有利な課題だと思っていました。
というか、2人よりも経験が浅いながらも、圧倒的にリーチ有利な男性SKさんがイチ抜けする可能性すらある課題だと見えていました。

しかも、小柄な人にとって何かしらの抜け道を用意されたジム課題ではなく、「やっちまった課題」なので、その頑張りは徒労に終わる可能性が大きいのです。
だから、数トライで「さすがに無理っす。(今の私の実力では)」と言うだろうと思っていましたし、それも仕方ないと認めるつもりで私も心積もりしていました。

そんな訳で、登れたことそのものよりも、誰よりも果敢にトライを続けたということ自体に感動しました。
もちろん、「何とかなるんじゃないか?」という強いポジティブ思考を維持した状態で。

そして、帰り道の会話でも、他の講習生が刺激を受けている様子を感じました。
講習内容とは無関係な話ですが、各人が思うところあったんじゃないでしょうか。

2019年6月24日月曜日

トップロープ状態でギブアップしたい

6月16日(日)は、ムーヴLv.0にて、新規女性DHさん、男性EDさん。
これにて、2人ともジムリードに進んでO.K.としました。

6月19日(水)は、ムーヴLv.0にて、新規男性MDさん、新規女性TNさん。
こちらも、2人ともジムリードに進んでO.K.としました。

6月20日(木)は、リード3回目で、女性KBさん、復習参加の男性SKさん。
こちらも、KBさんはジムリードは卒業といたしました。

2コマ目で、女性NKさん、女性KSDさん、女性GTさん、新規女性YZさん。
こちらは、NKさん、KSDさん、GTさんは、ジムリードに進んでO.K.としました。

6月21日(金)は、リード2回目にて、女性ONさん、復習参加の女性KDさん。
さて、今回のSKさんの本気トライにて、トップロープ状態でムーヴに迷い、疲れてギブアップの「テンション」コール。

「いやいや、トップロープ状態なんだから、ガンバ、ガンバ!」と背中を押されて、そこのセクションを突破。
そして、そのやりとりが、ルート中間部でも再現。
さらに、ルート終盤でも再現。

垂壁で、レストすれば粘れるルートだったこともあり、3度のドラマを乗り越えて無事に一撃でした。
その後、別の機会に会話したこと。

私「トップロープ状態なんだから、頑張ってくださいよー。」
SKさん「でも、トップロープ状態だとギブアップしたとき、一番安全に止められるじゃないですか。」

たしかに、その通りです。
一方で、中上級者は本気トライ中にギブアップをすることは少ないと思います。
特に、ジムのような環境では。

とはいえ、仕方ないこともありますよね。

最終プロテクションが足首以上まで来ていて、それでも次のクリップ態勢が取れないような状況だと、
「手繰り落ちする訳にも行かないし、これ以上クリップせずに突っ込むのも結局危険だし。」と考えて、
「落ちまーす!」と言ってフォールすることはあるでしょう。

あとは、本当は右手で取るべきホールドを左手で取ってしまい、どうしても戻れない状況とか、落ちるまで頑張る意味が無くなったと判断して「テンション」コールをすると思います。
次がランジっぽい動きで、どうやっても体を反動を付けられない状況になってしまったとか。
この手のは、ボルダーでもよくありますよね。

もう1例挙げると、足がロープに絡んで、どうしても抜けなくなってしまったときも、安全上やむを得ないギブアップでしょう。
この差は、どこから来るのでしょうか?

ギブアップが許される場面、ギブアップしない方が良い場面。
本気で判別しようと心がけましょう。
クライミングは、リスクや恐怖との付き合いがあるため、他のスポーツと比べてギブアップに関して深く考える必要があります。

ただ、これを真面目に取り組んでおくと、岩場でも必ずや活かされることでしょう。
ガンバ!


2019年6月20日木曜日

副次効果

6月15日(土)は、雨天にてロープワーク講習。
女性WNさん、女性IUさん、女性HSさん。

色々と、マルチピッチに対して危機感を持ってきた面々による、熱い鉄続編!
前回の三ツ峠でのトラブルと、その対処方法を中心に講習しました。
<パワーポイントの延長あれこれ>

講習内容とは逸れますが、興味深い感想。

IUさん
「後方のロープの流れを気にせずに、前ばっかり見て登る。ロープワークで、ついつい考える前に手が動いちゃう。ボルダリングで、いつも足位置は本能だけで決めちゃっているから、足限定課題が作れないし、オブザベも出来ない。これらは、全て繋がっている気がした。」

さすがの反省の深さ!
もはや、登山とクライミングの反省というよりも、自分の性格を振り返るような一言です。
<簡易の登り返しと、完全な登り返し>

もう1件、クライミングというよりも性格にまつわる話。

雑談でWNさんが
「ボルダーで苦しい場面で手を出せなくて諦めて、またいつものヤツか・・・と思っていたら、先生から「そこは、別のムーヴです。」と指示された。そしたら、そんなに大変じゃなく出来たんです。なんか、ショックでした。」
という逸話紹介。

出来ないときというのは、
・諦めてしまっている(ムーヴを起こしていない)
・ムーヴの形が違う
・足位置が微妙に違う
・足置き、ホールディングに工夫や丁寧さが足りない
・微妙なバランスが違う
・パワー不足
・柔軟性不足
・心理的にダメな状態

などの要因のどれが原因なのか、出来るまで分からないと思います。
経験とともに、「これを改善したら、この課題には効果テキメンかも?」という読みが鋭くはなりますが・・・。

他の例だと、リードで怖くて突っ込めない自分のメンタルを責めていたら、普通に下からクリップできるムーヴが見つかったり。場合によっては、落ちそうも無いムーヴが発見されちゃったりすることも(笑)。

どちらにせよ、「何か、あるんじゃないか?」と思い続けることが、案外難しいんです。
よくあるのは、「自分は~~が無いから。」と毎回同じ原因を挙げて、諦めるパターン。

クライミングの初級者に限らず、「人間とは、そういう弱さがあるものだ!」みたいな話なんでしょうね。
まぁ、私にも思い当たる節がありまくりです。
<宙吊りからの登り返し>

クライミングを真面目にやると、ちょっと性格変わりそうですよね(笑)。

これも、良い副次効果だと信じて行きましょう!

2019年6月18日火曜日

意識すべき点が多岐にわたる

6月12日(水)は、ムーヴLv.0にて、女性TRさん、新規男性SGさん、男性EDさん、復習参加の女性Hさん。
TRさん、EDさんは、これにてジムリードに進んでO.K.です。
2コマ目のリード1回目は、女性ONさん、復習参加の女性KDさん、復習参加の女性Hさん。

6月13日(木)は、リード3回目で、女性OJさん、復習参加の男性NMさん。

6月14日(金)は、リード1回目にて、女性TRさん。
落ちる練習の意義は、色々あります。

・落ちる態勢の練習
・墜落距離の計算と、その補正
・ビレイの弛み調整
・ビレイ位置の良し悪し確認
・ビレイヤーへの衝撃の大きさ確認
・ヌンチャクが膝くらいなら落ちても大丈夫だ、という自信を付ける
・どの程度のトラバースまでは、振られ落ちというほどではないか
・手繰り落ちが如何にヤバいかの確認
などなど。

そのときの本人の意識レベルによって、フォーカスするポイントも異なるでしょうね。
ジムリード講習を卒業した人も、いま再度落ちる練習をしたら、きっとフォーカスしたくなるポイントが違ってくるでしょう。
ところで、下記動画は見られるでしょうかね。
https://photos.app.goo.gl/dRVtBMYRUfu8t5Zv8

ジムボルダーで、エリアに1人ぼっちになったときに、動画を撮ってみました。
赤テープ15番。推定3級。
40分ぐらい打ち込んで、ムーヴは全バラシした後の、繋げトライ中。

1回目は、下部はスムーズながら、中間部で手間取ってヨレ落ち。
2回目は、下部でミスって3回も微妙にグラつきながらも、中間部がスムーズに運んで完登。
なんとなく、自分の登りの特徴を再認識できました。

2019年6月17日月曜日

リングボルト脱落での減速効果を期待するか?

6月9日(日)は、雨天にてロープワーク講習。
新規男性SUさん、新規男性IKさん。
新規の方で、本チャン系の方だとよく話題に上がるのが、リングボルトやハーケンなどの信頼度について。
これについては、あらゆる所で動荷重への信頼度の低さが謳われておりますが。

とはいえ、クラックの固め取りと同様、沢山あれば「さすがに1本ぐらいは止まるんじゃないか?」という期待を寄せてクリップしてきた人も多いと思います。

そんな中、よく講習生が仰るのが、
「1本目が抜けたとしても、それが墜落速度の減速になるので、2本目への荷重は相当軽減されるんじゃないか?」
という話。

大雑把に、検証してみましょう。
<図1、1m間隔でリングボルトが打たれていた場合>

図1は、クライマーは1mのランナウト状態にあります。
大体、ボルトが足元になるぐらいで、ハーネスのエイトノット~ヌンチャクのカラビナまでが1m強でしょう。

そこでフォールすると、クライマーは最低でも2mは自由落下します。(ビレイヤーのロープ弛みを0mと仮定。)

で、ここでリングボルトが抜けたとしてます。
この際、減速の具合がどの程度かは、リングボルトがどの程度持ちこたえたかに依存します。
そして、僅かとは言え、減速されてはいるのでしょう。
10%とか20%ぐらいの減速なら、クライマーがフォール中に実感することもないかもしれません。

ここでは、極論として
①速度が0になった場合(あり得ないけど)
②速度が半減した場合
を考えます。

どちらの場合も、リングボルトが抜けた場合なので、+2mをフォールします。

①の場合であれば、ちょうど1本目と同じだけの速度で2本目に荷重することになります。
②の場合であれば、1本目のときよりは高速で2本目に荷重することになります。

(空気抵抗を無視すれば、高校物理でも速度は計算できるはずですが、本題とは逸れる上に、物理アレルギーの人もいるでしょうから割愛。)

という訳で、これだけ大きめに減速スピードを見積もっても尚、
「2本目が動荷重に耐えられなければ、結局は抜けるはず。」
という結論に至ります。
<図2、クラックの固め取り後の、フォール>

図2は、固め取りして突っ込んだケースです。
どちらのカムも、「バチ効き」とは言い難いです。

ただ、「1本目と2本目が近いので、1本目で仮に十分な減速がなされれば、2本目がプアプロでも行けるんじゃないか?」と思う人もいることでしょう。

私は計算はしませんので(笑)、興味がある人は計算してみてください。
例えば、減速10%、30%、50%、100%(速度0、というあり得ない仮定ですが)とか。
<図3、クラックの固め取り後の、テンション>

図3は、固め取り後のテンションです。

もちろん、フォールでは抜けるけれど、静荷重なら抜けないということはありますから、これ自体は意味があることです。
で、もしここで1本目が抜けると、2本目には1mフォール相当の動荷重が掛かります。

この場合、減速という考え方は当てはまらず、そもそも1本目が抜けた時点でフォールが始まるので速度0からのスタートです。


さてさて、皆さんどう考えるでしょうか。
私の場合は、「プアプロが抜けたことによる減速」は無視して安全管理を考えるという結論に至りました。

・動荷重に耐えるか、静荷重に耐えるか?
・動荷重に対して、何%ぐらいの信頼度か?
という2点のみで、シンプルに評価した方が、リード中の自分の思考回路がシンプルになるように思います。

2019年6月13日木曜日

“山度”がx%

6月8日(土)は、岩場リード講習にて、コクシネルロック。
女性YIさん、女性YYさん、復習参加の女性ISさん。
ISさんの中で、岩場毎にクライミングと登山要素の割合があり、それがかなり本人的には重要だという話。

感覚的ながら、直感的に理解しやすいので。
①天王岩、湯河原:ほぼ0%
②湯川、コクシネルロック:20%
③城ケ崎のフナムシ、ファミリー:30%
④小川山のお姫様岩:50%

その他の岩場は、聞きそびれたので不明。
大体、イメージできたでしょうか?

本人的には、こんなイメージです。
・アプローチが20分以上、時間に関わらずハイキング道のすぐ脇ではない ⇒ 山度が高め
・終了点が立木、終了点がトップアウトした場所から少し離れていて、ヌンチャクやカム回収などに工夫が必要 ⇒ 山度が高め
・ビレイヤーもセルフビレイが必要 ⇒ 山度が高め
・クラック(NPルート) ⇒ 山度が高め
ちなみに、このパーセンテージから推察するに。

・スポートルートの一般的なランナウト具合は、山度に含まれない。ジムの2~3倍のボルト間隔。
・残置ビナがなくて、結び替え1回でロワーダウンする程度は、山度に含まれない。
・湯河原のクリスマスローズなど、比較的条件の良い場所でセルフビレイを取ってリードのビレイを行うぐらいは、山度に含まれない。
たぶん、このパーセンテージは、本人がO.S.トライとかR.P.トライに集中したいという気持ちの表れなのでしょう。

で、山度が高いエリアだと、ある程度はそれ以外の要素に気を配らないと危ない目に合うので、心構えが必要だという気持ちの表れでもあります。
そういう気持ちは私にもあって、懸垂下降でアプローチするエリアなんかは、それだけでも緊張して、訪問初日は本気トライ無しもアリだと感じます。
アプローチが1時間以上かかるエリアだと、9割登れるぐらいのルートを数本オンサイトしただけでも満足して帰ること度々です。

いま、このエリアが自分にとって、どの程度ゲレンデ的に感じているか、というのはリスクを避けるために大事なんでしょうね。
また、このパーセンテージは、本人の技術と経験によって、大きく変動すると思います。
しかも、同じエリアに再訪すると、感覚的には大分下がるでしょう。(危険な慣れか、という要素も含まれますが・・・。)

ちょっとマニアックな例ですが、不動沢の摩天楼が山度60%に感じるか、20%に感じるか。
もちろん、こんな特殊用語を使わなくたって、自分なりの感覚で岩場と自分の距離感が掴めれば良いと思います。
実践本気トライ
ISさん:永い旅(5.11a) ハングドッグして、ムーヴ解決。トップアウト。

2019年6月10日月曜日

本日のトラブルを振り返る

6月6日(木)は、マルチピッチリード講習にて、三ツ峠。
女性IUさん、復習参加の女性KIさん。
ロープの流れに気を付ける、というのは案外難しいことです。

ロープの屈曲点、岩への擦れ、クラックや溝からロープを出すか否か、といった諸注意がありますが、ある程度の失敗経験がないと理解も出来ないでしょう。
(この手の図解は、過去にも何度かやったので、今回はパス。)
さて、リード中に「流れが重くなって来たな。」と思ったら、どうすべきでしょうか?

あるいは、「どこか1箇所で完全にスタックしたのか、積もり積もって流れが重くなりすぎたのか、どちらかは不明ながらロープが引き上げられない。」となったら、どうすべきでしょうか?
<1P目>

もちろん、そのときの状況によって、ベストアンサーも変わってくると思います。
参考までに、今回のトラブルを挙げてみます。

①状況

リード終了後、テラスの奥まったところでビレイ点を作成。ここまでは、ロープがなんとか引けた。
しかし、これ以上は引き上げ不可能。ダブルロープのうち、1本は引き上げ可能、1本がスタックなのか重いのか、本人には判別できない。

リードしたピッチは易しく、全セクションでクライムダウン可能なレベル。
<上部を直上ラインではなく、右の凹角へとトラバースした。ロープが引っ掛かり中。>

②本人の対応
一旦、テラスの端まで戻ってみると、ここならロープは引き上げ可能。しかし、そこにビレイ点を作れそうな支点は無い。

スタックを直すべきか迷った結果、ビレイ点を使って懸垂下降しようと、色々とロープワークを試行錯誤。
<ロープは、このように流した方が、無難>

③フォローの対応
1名は、ロープが引かれる状況なので、おそらくビレイされているであろう。
1名(石田)は、ロープが引かれない。おそらく、ロープの流れでミスをしたのだろうと判断。

ビレイされている側だけが先に登って、流れが悪い個所を解消してもらうという選択肢もあった。
ただ、易しいセクションだったので、石田がロープが引かれないのを承知で、ほぼ無確保状態でフォローすることに決定。
③その他の状況
・ロープは40m以上出ており、お互いの姿は20mくらいから全く見えず、声も届かない。

④その他の選択肢
・フォローは、フィックスロープの登行として登る選択肢がある。
・リードは、途中で重くなってきた気配が濃厚なら、クライムダウンして流れ修正、早めにピッチを切る、などの選択肢がある。
・今回も試行錯誤している最中だったが、リードが懸垂下降で戻り、ロープの流れを修正し、ビレイ点に登り返す選択肢もある。
・セルフビレイやビレイポイントをメインロープでテラスの端っこまで延長する、という選択肢もある。
<2P目>

ある程度の経験がないと、「何のこっちゃ」という状況描写だろうとは思います・・・。
ただ、IUさんはこれで相当にロープの流れを意識するようになると思います。
余談ですが。

IUさんは、ボルトで整備されたスポートルート的なマルチも何本か登ったことがあります。
そこでは、設定者がボルトを打つ際にロープの流れを考慮しているため、それほど深く考えなくても、ロープがスタックしなかったそうです。

しかし、残置無視でオールNPで登った場合、そういったお膳立てがなくなり、考えが浅い人はキッチリとスタックします。
そういう意味でも「登らされているんだなー。」と実感したそうです。
さて、色々な意味で自立した登山者・クライマーを目指して行きましょう!

<色々あった、最終テラス>

2019年6月7日金曜日

あんまりギリギリは良くない

6月4日(火)は、リード1回目。
男性AHさん、男性SHさん。
2人の本日の感想。
「リードは、途中で(クリップという)作業が入るから、余裕がなくちゃダメなんですね。」
「なんか、あんまりギリギリってのは良くないんだな。」

すごく、的を得ていると感じました。
まずは、その感覚で余裕とは何かを感じながら疑似リード練習を繰り返していただければと思います。

まぁ、言葉の上げ足取りをするなら、近い将来本気トライというものが出てきます。
その際は、クリップとか、レスト中に先を読むとか、そういうときは余裕が必要ですが、核心っぽいムーヴで落ちる可能性は十分にあります。
つまり、本気トライこそ余裕とか落ち着きとか安定感が必要なんだけど、それを十分落ちる可能性があるルートで行うことに、難しさがあります。

まずは、ガバの足自由ルートで、余裕・安定などを徹底的に考えてみましょう!本気トライは、それからです。

2019年6月5日水曜日

持久力は何なのか

5月29日(水)は、ムーヴLv.1。
女性HNさん、男性STさん、男性HGさん。

本日の話題からは逸れますが、よく「持久力が無くって。」という話を聞いたり、持久力トレーニングをしている人を見ますので。
しかも、何故か富士山ガイドの飲み会でも、クライミングの持久力の会話になったり。
リード中、パンプやヨレを感じた際に、「もっとコレが来るのが遅ければ!」と感じることがあると思います。
とりあえず、それを持久力としておきましょう。

これに対して、幾つかの疑問が沸きます。

①フィジカルの意味での持久力って何だ?
・毛細血管を発達させることにより、レスト中の血流を良くすることでしょうか?
・最大筋力の何パーセントで数十回×何セットをこなせるか、といった筋肉の話でしょうか?

②省エネ技術やレスト技術は、持久力に含めるか?
・レスト禁止ルールの持久力トレとかもありますよね。

③パンプしてきてからの渾身の粘りは、持久力に含めるか?
・ルート構成によって、後半に出力が高いムーヴが無ければ、どうにか乗り切れることもあり、この能力にも確かに差は出る。

実際、これらが全部合わさって、リード慣れというのは確かに発揮されています。
それだけに、持久力なるものを測ることは難しいものです。
ただ、これが曖昧だと、単に沢山登ることが持久力トレーニングだと勘違いしてしまいます。
(そうは言っても、目的意識が曖昧な質の低いトレーニングでも、量が効いて成果が出ることもある。特に、初級者は。)

次に、持久力は何のために使うのか、という問題があります。

・パンプのTUNAMIのような、どっかぶりロングルートのR.P.でしょうか?
・垂壁、薄被りで、レストポイントから数手先までを探って戻る、と言った「行きつ戻りつ」をして、O.S.を成功させるためでしょうか?
(強い人は、どっかぶりロングルートでも行きつ戻りつしますけど、私は出来ません。)

・単純に、壁に長時間滞在すること自体が目的でしょうか?
・もしかして、マルチで1日に5.11を5PほどO.S.で登るようなのをイメージしていますか?

何に主眼を置くかによっても、求める持久力の質が微妙に違うと思います。

もっと言えば、「1日に、本気トライを何回出来るか?」
みたいなことも持久力として語られたりしますが、これも質が微妙に違うでしょう。

「とにかく量を登れ!」というのは、半分は正しいとは思います。
ただ、オブザベをサボったり、トライ前の集中力高め損なったり、ヨレた状態では絶対O.S.失敗しそうなルートを安易に触ってしまったり、といった弊害もあります。

さて、どんな種類の持久力が欲しいのでしょうか?
そのためには、トレーニングが必要なのか、テクニック練習が必要なのか、あるいは集中した1本の本気トライが必要なのでしょうか?

2019年6月4日火曜日

岩場にヌンチャクが無い衝撃

5月26日(日)は、岩場リード講習にて、小川山。
女性KDさん、男性SKさん、男性FTさん、復習参加の男性NMさん。
ここ最近、岩場のルートにヌンチャクが掛かっていない(常設されていない)ことに驚く講習生、という構図もちょくちょく見かけるようになって来ました。
そういう講習生は、まだ1割に満たない印象ですが。

一方で、「岩場は、整備されたゲレンデだ。」という印象を強く持ちすぎる講習生は、過半数です。
その理解は、ある程度までは当たっておりますが、少し違うことを説明する場面は頻繁にあります。
例えば、ボルトの種類。

もちろん、現代基準のスポートルートに相応しいアンカーで設置されている方が、ほとんどの人にとって嬉しいものです。
(ミニマムボルト最右翼の方であっても、最小限のボルトは強固なもので打つ方が一般的かと思います。)
でも、実際は信頼性を疑うべきボルトって、結構散見しますよね。

あとは、ボルト間隔も初心者は最初ビックリするでしょう。
「整備された岩場」と言っても、スキー場ゲレンデみたいに誰かが責任を持って整備している訳ではありません。
(それに近いエリアも、一部あります。)

「相応のクライミング能力さえあれば、登れるようにルート作成してある。」という程度であって、「安全確保してくれている。」というのは9割方は誤りです。
(顕著な浮石除去などは、ある程度してあることが多い。というのが、残り1割のイメージ。)
ちなみに、クライミングジムでも、スキー場でも、「事故に関しては、一切責任を負いません。」といった文言があると思います。
リードジムで手繰り落ちしてグランドするにせよ、ボルダージムで捻挫骨折するにせよ、普通は本人の責任ですしね。

ただ、そうは言ってもジムボルダーでは、振られ落ちでマットから飛び出して行くような課題は作らないように配慮することが多いです。(ゼロでは無い。)
ホールドも、回り止めが打ってあることが多いです。

事故は自己責任ではあるけれど、事故が少ないように配慮されているのがジムだと思います。
こんなことを思うのも、育った畑という話でしょうね。

私は、山歩き、沢登り&雪山、クライミング、の順序で入りました。
なので、初心者ながらに、クライミングエリアにボルトがいっぱいあることが驚きでした。

ただ、一方で「こんなの山より簡単じゃん。」と生意気に思って、コテンパンにやられるタイプでした。
そんな訳で、私の育った順序を推奨する気にもなれません(笑)。

単に、私が不遜なだけかもしれませんが・・・。
とはいえ、今でも様々な入り方をする人はいますし、どう入っても理解が進めば問題ない話です。

最後に、現代初心者層のメリット。

最近のジムから入る初心者は、山岳部あがり、探検部あがり、フリーターくずれ、みたいな我々と違い、とてもとても常識人だと感じています。
電車賃、テント場代、駐車料金を嘘申告してきた学生、フリーターとは、まるで違います(笑)。

アウトローな感じが全然ないので、地元にお金を落としてくれたりして、地元とは良好な関係を築けそうな気がします。
これは、クライミング人口の爆発的な増加ということから考えると、都合の良い話ですね。
実践本気トライ
NMさん:小川山ショートストーリー(5.9) 下部を10トライぐらいして、R.P.。
FTさん:かわいい女(5.8) O.S.
    小川山ショートストーリー(5.9) 下部を数トライでR.P.。;