2026年9月5日土曜日

急がば回れ

ワイドクラックのムーヴ講習を頼まれて、瑞牆ボルダー。
しかし、午前中はフェースでのムーヴ基礎講習を行うことが多いです。

「ワイド講習を頼んだのに、半日はフェース?」と思う方もいるでしょうから、少し意図を説明します。
<午前中、ウォームアップを兼ねた基礎練習>

理由①
フェースとクラックは、基本的には同じ動きが多い。

例)
・ホールディングがジャミングに変わるだけで、ムーヴ自体の仕組みは変わらないことが多い。
・「手を出すときは〇〇な姿勢で」、「足を動かすときは△△な姿勢で」といった基本中の基本は同じ。
・「岩場ではスタティックで、戻れるムーヴが基本」、「リードは、省エネが重要」などの基本も同じ。
・フォーム(脇を締める、背筋を伸ばす、骨盤、などなど)も基本は同じ。

ちょっと最初は分かりづらいのですが、クラックこそ上記の基本が大切です。

ムーヴもへったくれもない「ガムシャラに、もがき上がる」といった身体操作では、こちらから何かを指摘しても、講習生に変化は見えません。
<午後は、いよいよワイドボルダー>

理由②
課題になっていないフェースの10級を見つけることはできるが、クラックボルダーの10級を見つけられないことも多い。

低負荷で無限に登り続けられるぐらいの課題を繰り返し登り、基本を習得することが大切です。

午前中は、ウォームアップを兼ねて、低負荷の課題を何十回も登ります。
10級ぐらいの課題が何本もあるなら、途中で課題を変えることも可能です。
その際、クライムダウンも行い、さらに基本の理解を深めてもらいます。

午後は、お目当てのクラックボルダー。
しかし、1本登るごとに体力を消耗するので、1回ごとに10分以上のレストを挟んだり、動画を撮ったり、私の解説をメモしたりして、時間を有効活用していきます。

それでも、数時間も講習すると筋肉や体力の限界が訪れ、講習終了となります。
<この手の形状では、外足のヒール&トウが肝になることが多い>

ちょっと補足します。

クラックがフェースと同じというのは、
・ジャミング
・フットジャム
・アームロック
・ニーロック
・ヒール&トウ
・バック&フット
などの技術はありつつも、ムーヴの組み立ては概ねフェースと同じであるという意味です。

もちろん、典型的なOW(オフウィズス)のように、一つ一つの技というよりも技のコンビネーションが大切な形状もあります。

しかし、コンビネーションを教えるのは一朝一夕には行かない、ということが私も講習経験で痛いほど分かりました。

個別の技も不安定な初心者に、コンビネーションを教えようとしても、意識すべきことが多すぎて大混乱に陥ります。
また、コンビネーションの解説を理解してもらうためには、手足を動かす順番を正確に意識できるという能力が必要になります。

かと言って、1つだけの技(例えば、ヒール&トウ)を教えても大して楽にはならず、講習の意義を感じてもらうことが困難です。

そういう意味でも、初心者講習では典型的OWや、真っ向ジャミングのルートは、それほど必要ないように思っています。
スタンスやホールドがあって、クラック技術を交えつつ登れるぐらいのルートの方が、基礎練習には向いていると思うのです。

※講習生が、真っ向ジャミングのルート、真っ向OWのルートを登れるように指導して欲しいと思っているのは分かっています。それにより、コミュニケーションに齟齬が生まれ、講習を続けられない方が多いのも理解しています。しかし、それらを最初から教えるのは全然効率的じゃないと思うに至りました。
<さすがに、結構上手!>

ちなみに、今回参加してくれたHSさんは、上記の基礎講習を何度も何度も受講した上で、今では真っ向OWでの反復基礎練習が可能なまでに上達しました。

それでも、1本トライするごとに5〜15分のレストは必要そうです。
「1つアドバイスして、最低でも数回は反復してもらう。」
という流れを考えると、1日に多くの技術習得はできないことがイメージできるかもしれませんね。

2026年8月23日日曜日

反省の思考プロセス

講習生が「落ちてはいけないセクション(落ちたら事故になる可能性が十分あるセクション)」でフォールしたとします。
本来、講習では避けたい事態ですが、残念ながら起こることもあります。

事故に至らなければ、私は最初に以下の質問をすると思います。

A)
「落ちてはいけないセクション」であると認識していなかったんですか?

B)
「落ちないだろう」と思っていたムーヴで落ちたんですか?

原則、考えられるミスは、この2パターンです。

3つ目のパターンとして
★落ちてはいけないセクションに入る際に、戻れないムーヴで突入してしまい、最終的に「落ちるかも(ちょっと怖いな)」と薄々感じつつも、ついつい進んでしまった。
というのもあるでしょう。

これは、「落ちないだろう」と甘く考えて戻れないムーヴを選択したと見なして、Bに含むことにします。
講習生に考えて欲しいこと
  (反省の思考プロセス)

①「ちゃんと再発防止したい。」
    ↓
②「私の場合、AとB、どっちだんたんだろう?」
    ↓
③「Aだとすると(Bだとすると)、今後どういう風に取り組めば改善するんだろう?」
    ↓
④「具体的な取り組み改善は、
・トライ前、トライ中の思考の話だろうか?
・易しいムーヴの基礎練習の話だろうか?
・ジムで登るときの意識改革が必要なんだろうか?」
    ↓
⑤「自分なりに考えた反省点を石田さんに聞いてもらって、ブラッシュアップしてみよう。」
当塾では、素人さん相手であっても④と⑤をちょっとずつ教え込もうとしています。

改善案は突き詰めると
 ⚫︎ムーヴの安定感
 ⚫︎戻れるムーヴの選択
 ⚫︎考える余裕
 ⚫︎リスク管理も含めたオブザベ
といった内容になって来ます。
ただ、ときどき思うのは、講習生は①〜⑤のような反省の思考プロセスに慣れていないことも多いです。
「落ちちゃったから、次は気をつけよう。」くらいの会話で、「近いうちに、また落ちそうですね。」と私が感じてしまう場面もあり、議論の温度差を感じるものです。

登山関係者は、事故・ヒヤリハットがあるので、反省の思考プロセスは頻出項目です。
山岳会のリーダークラスであれば、「この思考に慣れていないなら、怪しいですね。」と私は思います。

講習生でも、お医者さん、消防士さん、弁護士さん、経営者さん、コンサル業の方など、明らかに慣れてそうな職業の方もおりますが、そうでもない方も沢山います。
思考プロセス自体を講習で説明することも、ときには有効だと思います。

ただ、この思考プロセスがなかなか馴染まない人も、本当に多いです。
彼らには、その思考方法に慣れている人と積極的に関わり、色々な議論をするが最良だと感じます。

・プロ意識を学ぶなら、その業界の本物と思われるプロに付いて修業せよ。
・トレーニング意識を学びたいなら、トレーニング意識が高い集団に入れ。
とかと似ています。

師匠に付いて一定期間を学ぶ意義は、意識改革にもあります。
しかも、この手の意識改革は、若い人でも数年間かかるのだということも理解しておいた方が良さそうです。

教わる側と教える側、どちらも長期戦の覚悟を持って接し、焦らず前を向き続けましょう。
ちなみに、今回の講習では「落ちてはいけないセクション」でフォールしたのではありません。
もうちょっと、話は微妙です。

「落ちても安全」なセクションと、「落ちてはいけない」セクションの中間ぐらい、「多分、落ちても大丈夫だけど、落ちない方が良いだろう」というセクションでの出来事でした。

具体的には、
「垂壁面でランナウトしていないんだけど、落ちたらぶつかりそう岩とか立木が見えている」
などの状況です。
実際、ランナウトしていないので、ちょっと痛いけど怪我しないで済む確率は高いように思います。
なので、「落ちてはいけないセクション」よりは、「わずかに落ちる可能性を感じつつも進む」という選択も、考えられます。

とはいえ、この状況で頻繁に落ちているようだと、怪我をする日も近いです。
実際、悩ましい点は多いのですが、ちゃんと考えたい話だなと思います。

2026年8月16日日曜日

ムーヴ用語は、基礎からつまづきやすい

本当は、動画にした方が分かりやすい内容なのですが、ご容赦ください。
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「ダイアゴナル」、「振り」という2つの概念をちゃんと理解している人は、結構少ないです。
私は「振り」は、用語には適さないと思っています。理由は後述します。

①ダイアゴナル

対角線という意味の英語です。
何が対角線かと言うと、右手&左足(あるいは左手&右足)。
つまり、身体の対角線上の2つの支点です。
  ※「右手と右足は、同則(対角線ではない)」と見なします。

典型的には、「右手でホールドを持ち、その真下ぐらいにスタンスがある場合は左足で踏む」2点支持で(右足はスタンスを踏まなくても)バランスが取れる、という意味です。
考え方としては、保持手+踏む足
  ※この際、右足は壁スメアor空中に投げ出す、というパターンが多い。

注)この説明を、「左手でホールドを取るときに、右足を遠くに投げ出す(壁スメアor空中に投げ出してバランスを取る)。」つまり出す方の手+投げ出した方の足だと考えても、対角線(ダイアゴナル)であると説明できます。
その方が、絵面として対角線っぽい(左手と右足を伸ばす写真を見ると、一本の線に見える)ので初心者が理解しやすいのでしょう。
しかし、ムーヴ選択のオブザベ、R.P.のためのムーヴ暗記、など実用上は不便だと思います。
右手でホールドを持ち、その真下ぐらいにスタンスがある場合は左足で踏むようにする。」
というムーヴを選んだ結果として、右足を遠くに投げ出すことになる訳です。


⭐︎初心者が混乱しやすいポイント
⚫︎「左手を出すのに、左足で踏んだら同則なんじゃないの?」
 → 保持手+踏む足で考えるべきところを、出す方の手+踏む足で考えると、真逆になってしまう。

⚫︎「もはや、自分がどのタイミングで何をしたのか全然意識していない。」
 → ムーヴ用語の以前に、登り方の基礎中の基礎(考えながらゆっくり登ること、など)を教えた方が良さそう。

⚫︎「右手保持、右足で真下のスタンスでもバランスが取れますが、何か?」
 → 実際に、同則のバランス(逆足:ぎゃくあし、などと呼ぶ人が多い)であっても、フラッギングなどを使うことでダイアゴナルと同レベル(あるいは場面によってはダイアゴナル以上)の安定感を得られることがある。そのため、「ダイアゴナルって、安定して結構便利だね!」という有り難みが感じられず、ムーヴ用語を理解する意味が感じられない。
とは言え、本来は2点支持を行うたびに、「ここはダイアゴナル、ここは敢えての逆足。」という具合にムーヴを理解した方が良い。
実用的には、オブザベや、R.P.のためのムーヴ暗記に使えます。

②振り

「そこは身体を振って(次のホールドを)取りに行った方が良いよ。」とアドバイスしている人がいますが、この「振る」というのが用語ではなく、イメージを表しているようです。

私の知っている範囲でも、3種類の意味で使われます。

A)側対
壁に正体するのではなく、レイバックなどの要領で、壁に対して腰を横に向ける。
正確には、「サイドホールドが保持手の場合に、保持手に対して正体する」ことで、壁に側対することになる。

B)ツイスト
次のホールドを取りに行く最後のタイミングで、身体を捻ることで距離を稼ぐ方法。
特に、強傾斜(大きくハングした壁)で使うことが多い。
これは、正体している場合も、側対している場合も使うことがある。

C)ダイナミックムーヴの「タメ」
典型的には、デッドポイントやランジに入る前の、身体をスイングする動作。

⚫︎個人的な印象では、30年以上のキャリアのあるクライマーはAのイメージで使う人が多いです。歴史的に、そういう使われ方をしていたのもあるでしょう。彼らは明確にAのイメージで使っているからまだ良いのですが、彼らに習った初級者たちは結構グチャグチャなイメージで使っているように思います。

⚫︎ボルダラーは、Cのイメージで使う人が多いです。「タメ」の動作について、方法論を喋りながらセッションするので、「もっと振って!」と言いたくなるのは自然なことでしょう。

⚫︎側対とツイストを区別していない人も多いので、Bで使っている人も多いです。

基本的には、A〜Cのどの意味で使われたとしても、文脈から理解できます。
ただ、文脈から理解できずに混乱している人も見かけます。

結論として、「振り」という言葉は、クライミング用語としてはイマイチだと思います。
動きのイメージを、なるべく誤解ないように伝える」には不便なので、私の講習中は極力避けています。

側対ツイストタメの3つの方が、まだ用語として使いやすいです。
「振る」についても、擬態語みたいな位置付けで、場面と相手を選んで、伝わりそうな状況のみの限定的使用はセーフかなと思います。

2026年8月12日水曜日

9月、10月分の予約受付 & 今年の富士山

8月14日(金)の夜21時より、9月および10月分の予約受付を開始いたします。
いつもより、開始のタイミングが大幅に遅れて申し訳ありません。

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今年も、富士山に3週間ほど行ってきました。

富士山は、学びも多く、本当に刺激的な場所です。
毎年、富士山ガイドに熱中できる理由を書いていますが、あえて今年は「富士山ガイドの大変さ」について振り返ってみようと思います。

①事故

詳細は、事故当事者の許可を得づらいので割愛します。
今年は、私の遭遇率が高く、自分のツアーで1件、他の登山者で2件を対応しました。

落石、落雷、体調不良で突然倒れた、などの「想定トレーニングを積んでいた内容」とは言っても、やっぱり大変です。

  ⚫︎所属の異なるガイド同士、関係者同士も、以前より仲良くなってきた。

という時代変化を考えると、他の登山者への対応は、確率的に増加するような気がします。

②連続勤務

「富士山ガイドと言えば、連勤」と登山関係者に知られるほど、結構有名な話です。
午前中に五合目に下山してきて、昼から出発のツアーを再び担当するというものです。

特に、山頂御来光ツアーは山小屋で数時間しか寝られないパターンも・・・。

幸い、私の所属する太子舘では「山頂御来光ツアー」+「山頂御来光ツアー」という組み合わせの連勤は、原則行わないことになっています。
通常は、「山頂御来光ツアー(仮眠のみ)」+「山小屋2泊で日中のみ登山するツアー(通常の睡眠時間)」などの組み合わせです。

それでも、雨で濡れて下山してきたり、事故対応などで心身が疲れて降りてきたり、トラブル対応で睡眠不足が想定を超えている場合が結構多いです。
私は弱いので、「本当に連勤しなきゃダメですか?」という気持ちで五合目でバタバタ準備することも多いです。

※不思議なほど耐久力の高い同僚、睡眠不足に強い同僚などもおり、全員が連勤に苦しんでいるわけではありません。

私は、もうちょっと人手を増やして、連勤の頻度を減らしたいのですが・・・。

③新人教育

私の所属する太子舘ガイドは、山岳部・ワンゲルなどの大学生、山関連のフリーター(私もそうでした)などが多く在籍しているため、毎年多くの若者が新人として入ってきます。

「ガイドとは何か?」について、技術的にも職業倫理的にも常に考えさせられる機会なので、私自身にとって学びの多い場です。
これは、本当に良いことです。

ただ、前述の通りバタバタなので、新人や若手とのフィードバックなどの教育に注力するほど、忙しくなります。

④緊急交代

こんな状況なので、ガイドも発熱したり、寒暖差で体調を崩したりが、割と頻繁にあります。
そうなると、交代要員が必要になります。

⚫︎須走口五合目に昼前に下山するツアーを終えて、昼過ぎにスバルライン五合目スタートのツアーを担当するべく移動。
⚫︎宿泊中の山小屋で発熱したガイドの代わりに、深夜に五合目から山小屋へと出勤し、翌朝からガイドとしてお客さんの前に登場。

など、武勇伝になりそうな話も、ちょくちょく誰かが犠牲者になると、対策を考えたくなります。

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こうして書いてみると、私は個別の仕事の大変さ(大人数ツアー、素人さんが多い、天候の不安定さ、など)よりも仕事の合間が少なくて、休息と準備が不足するのが一番苦手なのかなと思います。

私は、のんびり生きたい大型動物なんでしょう。
(クライミングや日常生活でも、日々痛感しています。)

いやー、思い出しただけでも怖いし、気もそぞろになります。
それでも熱中してしまう富士山には、8月も働き続ける同僚たちが頑張っています。

本当に、お身体に気をつけて!

2026年7月7日火曜日

「手繰り落ち」について考える

「手繰り落ちしやすい人」について考えます。
私自身も、手繰り落ちしたことはあるのですが、確率は最小化したいと常々考えています。

・手繰り落ちしてしまった方
・手繰り落ちしそうなクリップが多いと自覚している方
に役立てば幸いです。
<マルチピッチリード講習@小川山>

パターン①
そのルートに対して、安定して登る技術が追い付いていないため、そもそもクリップ態勢が全体的に怪しい。

例)
・ボルダー出身で、5.12aでも核心ムーヴは突破できてしまうが、5.11後半でもクリップ態勢の安定度が圧倒的に怪しい人。
・トップロープ出身で、5.11でも核心ムーヴは突破できてしまうが、5.10でもクリップ態勢の安定度は圧倒的に怪しい人。

→自分が安全にトライできるレベルのルートを選びましょう。
 安定度や省エネ技術が低ければ、少しグレードを下げても十分に本気トライになります。(オンサイト失敗する、など。)
 易しい課題を安定して登る基礎練習を積んで、将来的には今やりたいレベル(核心部はこなせるので、いつか完登はできそう)のトライができるように目指しましょう。
<2P目>

パターン②
クリップして安心したい気持ちが強すぎる。

クリップを終えると、トップロープ状態になります。
そこでフォールしても、大した墜落距離にはならず、安心です。
また、怖がりな初心者にとっては、「テンション」とギブアップできるメリットも大きいでしょう。

クリップを諦めることは、その場で「落ちます」とコールしてフォールすることを意味します。
これが、ジムのボルト間隔ですら怖いという人は、結構多いです。

「2X+α」で考えるところの、X=50cmであっても、初心者には怖いものです。

しかし、それが故に無理してでもクリップに突っ込んでしまい、かえって事故に遭いやすくなります。
<3P目で敗退を決めて、下降に入る>

パターン③
2本目(3本目)神話。

「2本目(3本目)さえクリップしてしまえば、あとはグランドフォールすることは無い。」という迷信を信じている人は、結構います。

しかし、3本目をクリップする際に手繰り落ちすれば、グランドフォールする方が一般的でしょう。
また、4本目をクリップする際に手繰り落ちすれば、十分にグランドフォールする可能性があります。

要するに、単なる事実誤認です。

<残った時間は、登り返し技術の練習>

パターン④
足のスリップ、身体の回転に無頓着。

手繰り落ちのリスクを十分に把握していれば、保持している手がパンプで限界のときや、指が抜けそうな感覚のときに無理してクリップしたくないと感じるでしょう。

そのため、保持手が限界を迎えて落ちるリスクに関しては、自覚的になります。

その一方で、恐怖心を感じずに足がスリップすることがあります。
ある程度のムーヴ原理の理解が伴ってはじめて「ここで背伸びすると、足がスリップする可能性があるな・・・。」などと予見できます。

登り込んでいるだけでは、全くムーヴ原理を理解できない人も、かなり多いです。
入門書を読んでも、やっぱり理解できない人も、かなり多いです。

独学が難しい人は、年数をダラダラやってもダメだと思います。
習いましょう。
<登り返しの練習>

最後に。

実際は、パターン①〜④だと自己認識しつつも、なかなか抜け出せないという残念なパターンも多いです。

例)
パターン①だと半分くらい自己認識しつつも、自分が核心ムーヴをギリギリこなせるルートをやりたくて仕方ない人。

・「高グレードを登っているところを人に見せたい」という見栄っ張り
・グレードへの執着(自尊心を保ちたい。低グレードで登れずに苦しんでいる自分を認められない弱さ。)
・自分の限界と向き合うアドレナリンが好き(基礎的能力に裏打ちされたチャレンジであれば、尊敬されるべき態度かもしれないが・・・)
・「危険なことを恐々やるのがクライミングだ!」という意識が強過ぎ(少なくとも、ジムでこれは「やり過ぎ」)

などという、自己認識が必要かもしれません。

ときどき、講習生にこれらを熱弁されることがあるのですが、「ダメな生活習慣から抜け出せない理由を、延々と聞かされている」みたいな気持ちになります。
マンツーマンの日などは、ゆっくり気持ちを聞くのは構いませんが、「気持ちの整理をするのは自分自身です。」とは言えますね。

2026年7月2日木曜日

用心深くフォールする

残念ながら、講習中に怪我を負った講習生は何人もおります。
中でも、「リードで落ちる練習」はリスクが高めです。
<結び替えの練習>

個人的には、「リードの落ちる練習」はリスクの前借りという側面があると感じています。

「リードに不慣れな人にフォールさせる訳なので、着地ミスなどで怪我をする可能性アリ。」
という話です。

落ちる練習により、
・墜落距離の計算に現実味が湧く
・フォール姿勢への慣れ
・落ちたらいけないセクション、手繰り落ちの危険さが身に染みる
・ビレイ技術に現実味が湧く
など、様々な効用があります。

また、「ここでのフォールは、さすがに怪我しないでしょう!」という自信があるからこそ、勝負の一手が出せます。

だからこそ、テンション癖がこびり付く前、なるべく早期の段階で落ちる練習をしてもらいたいものです。
<午前中のムーヴ練習>

一方で、落ちる練習のリスク管理をすることは、非常に難しいと感じています。

講師がコントロールできるもの

①墜落距離
一般的に、墜落距離は「2X+α」(最終プロテクションからの距離の2倍、+α)で表されます。

初級者であれば、X=50cm程度(ハーネスの腰とクリップ済みカラビナの距離)で落ちることが問題なくなれば、ジムでは本気トライが楽しめそうです。

ジムの中級グレードや岩場リードを見据えると、X=80cm程度までは落ちられると、だいぶ楽しめます。

また、トラバースに関しては、X=0で構わないので、100cm強のトラバース(ジムで隣のボルトラインに入るぐらい)で振られ落ちするぐらいは、あまり恐怖心を感じないぐらいまでに慣れると良いでしょう。

講習の初期段階では、X=0(トップロープ状態)から初めて、少しずつ距離を増やしていきます。
<やわらかソラマメ(5.8?)>

②壁の傾斜

一応、ハングしている方がフォールは易しいのです。しかし、多くの講習生はハングのガバガバルートを登るだけで疲労するため、講習生がXの距離を考える余裕がありません。
そのため、理想は垂壁ガバガバルートだと考えています。

とはいえ、様々な事情(講習生の能力、ジムの空いている壁、垂壁にガバガバルートが無い場合、など)からスラブで行わざるを得ないこともあります。

特に、岩場では垂壁ガバガバルートは滅多に存在しないため、原則としてスラブでXの距離を小さめに抑えて行います。
<ロングロングアゴー(5.10b)>

講師がコントロールしづらいもの

A)フォール姿勢

もちろん、フォール姿勢は教えますが、講習生はある程度の確率で失敗します。

「ハーネスに腰掛けるように。」
「足は壁を押すために、少し高めに。」
「懸垂下降の姿勢。」
「オートビレイで降りる際の姿勢。」
「ロワーダウンされる際の姿勢。」
「スタンスに頼らず、コンパネでも押せるぐらいの足の高さを意識する。」

などと、様々な表現があります。

また、「テンションを掛けた状態で後方にジャンプを繰り返して着地姿勢に慣れる練習」などの独自メニューも色々とあります。

さらに、トラバースの振られ落ちでは、可能な限り「振られる方向(最終プロテクションの方向)に腰(おへそ)を向ける」と言ったアドバイスをすることも多いです。

しかし、こういった「動き」へのアドバイスは、1回聞いて納得しても体現できるものではありません。
数百回のフォールの中で、慣れて行く必要があります。
<マルチピッチリード講習@小川山>

B)着地の脚力

スクワットの能力、骨密度です。

・低めのボルダリングジムで、ゴール落ちができる。
・テント装備などを背負って、冬山登山ができる。
のどちらかが可能な脚力であれば、問題ないでしょう。

※「スクワットのフォームが悪いと、長期的には膝を痛める」と言った話は、一旦脇に置くとして

スクワットのフォームのコツなどは、ある程度は伝えられます。しかし、姿勢矯正みたいなおのなので、一朝一夕には治りません。
骨密度に至っては、クライミング以前の生活習慣によるところも大きいでしょう。

ほとんどの場合、講習生の「もともと持っている能力」に依存して落ちる練習を実施することになります。
<根性のルーファイで道を切り拓くNNさん>

C)講習生の心理

最終的には、「講習で落ちる練習するんだから、大丈夫でしょ。」という気持ちもあるかと思います。
私もある程度はリスクを考えてメニューを組んでいるので、信頼してもらいたいし、その信頼の上に講習生が踏み出せる一歩もあります。

しかし、リスクがあるのも事実です。
具体的に、事故が起こりそうなパターン(実際のものを含む)を考えてみます。

⚫︎「この講習生は、このぐらいの距離なら、フォール姿勢は問題ないだろう。(絶対ではないが、リスク低い)」と、私が判断したが、実際には着地姿勢を大きく失敗した。

⚫︎「Xが50cm以下なら、フォール姿勢を少々ミスっても怪我をしない。」という経験則はあるが、その講習生の骨密度が低かった。

⚫︎「本日は、Xが30cm以下のフォールだけを練習してください。」と私が指示していたが、講習生がうっかりX=100cmでフォールした。

⚫︎「手繰り落ちは、絶対にしないでください。」と私が指示していたが、講習生がうっかり手繰り落ちの練習もするものだと勘違いして、意図的に手繰り落ちした。

⚫︎講習生が、何か他のことを考えたり、講習という安心感に惑わされて、フォール姿勢を意識せずに落ちた。

そして、実際には単一の条件で事故が起こるとは限らず、複数要素が絡んでいる場合もあります。
<こちらで敗退>

落ちる練習は、やっぱり必要なので止める気は全くなく、ムーヴ講習と並んで当塾の根幹をなすメニューだとすら考えています。

講習生におかれましては、用心深くメニューへの参加をお願いします。
もちろん、「今日は体調が悪い」、「今日は頭がボーッとする」などの理由で、落ちる練習や本気トライの辞退(別メニューを私に依頼する)を申し出ていただくことは、全く問題ありませんし、数多くの講習生がそのようにされています。

体調の良い日に、改めて行いましょう。

用心深さは、落ちる練習に留まらず、実際にリードやボルダーで「落ちそうなとき」に考慮すべき項目への気配りです。
落ちる練習が不十分な人は、本気トライもダメダメです。

そして、この「リードクライミングの用心深さ」が、巡り巡って滅多に落ちることのないマルチピッチや登山におけるリスク管理にも役立つと思います。
<兜岩>

皆さま、用心深く、そして長期継続力という「しぶとさ」を胸に頑張りましょう!

<クラックリード講習@小川山>

<斜上クラックの理解を深めるISさん>

<岩場リード講習@小川山>

<立木でプロテクションを取ったり、ボルト足元でフォールしたり、盛り沢山>

<クラックリード講習@小川山>

2026年6月2日火曜日

7月、8月分の予約受付

6月5日(金)の21時スタートで、7月および8月分の予約受付を開始いたします。

⚫︎7月10日〜8月4日までは、富士山ガイドに行って来ますので、通常の講習はお休みとなります。

⚫︎ジム講習は、これまで通り、Dボル立川とランナウトを基本としております。
ストーンマジック、ベースキャンプ入間で講習を希望される方は、ご相談ください。

⚫︎岩場での講習は、小川山と瑞牆山を基本としています。
岩場リード講習、クラックリード講習、マルチピッチ講習、など。

どうぞよろしくお願いします。