2026年2月18日水曜日

ジム講習の3本柱

今回は、講師側の思考整理(一人で行う講師会議、みたいなイメージ)です。

ごく一部の講習生には面白いかもしれない、ぐらいの内容です。
一般公開する意味は、不明です・・・。

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ジムで、ムーヴやリードを講習する際に、3つの柱があると考えています。

①丁寧さ、姿勢、小技       ( = 繊細な技術、身体感覚)
②回転の理論、力の釣り合いの理論 ( = 手順足順の理解、オブザベ)
③ルート攻略における作戦     ( = 全体的な作戦)

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

①丁寧さ、姿勢、小技( = 繊細な技術、身体感覚)
丁寧さ:
ホールドを握り過ぎない、足を丁寧に置く、ちゃんとフィットさせる、スタティックを正確に行う、などなど

姿勢:
肩を下げる、脇を締める、背すじを伸ばす、腰をいれる、などなど

⇨究極的には、「〇〇の筋肉を効かせるように・・・」と言ったムーヴの理解になってくる。

小技:
踏み替えを丁寧に行う、「ヒールのときは、ちょっと〇〇な感じにすると掛かりが良くなるよ」などのプチアドバイス、など

②回転の理論、力の釣り合いの理論( = 手順足順の理解、オブザベ)
三角形のバランス(講習中は、「軸またぎ」と呼ぶ)、ヒール・トウなどが要求される場面、デッドが要求される場面、足デッドを最小化するための足順やプッシュの活用、など

⇨究極的には、手順足順の意味を理解することが目標です。
 これにより、一挙手一投足に至るまでのオブザベができるようになることが目標です。

  ※オブザベなので、当然はずれることはあります。
   とはいえ、手順しか読んでいない初心者オブザベよりは相当に役立ちます。

③ルート攻略における作戦( = 全体的な作戦)
・墜落距離の計算
「あのムーヴで落ちても、せいぜいこのぐらいまでしか落ちないから、頑張って手を出してみるか。」
「2本目は、あのホールドまでにクリップしないと危なすぎるかな。」
「3本目までは真っ直ぐのラインでクリップ、4本目と5本目は左のラインにクリップするのが一番ランナウトしないだろう。」

・ロープの足絡み問題
・レストポイントの読み、核心部の予想
・どのセクションは丁寧に行き、どこは思い切り良く行くべきか?
・トライ前に、ちゃんと緊張して、心拍数が下がるのを待ってからトライする。(緊張する前に焦ってトライすると、より悲惨な結果になる、など。)


①〜③は相互に関連しています。

①:一般的なオブザベより、細部の話 
②:一般的なオブザベ(手順だけでなく足順も含めるため、初級者のオブザベではない)
③:一般的なオブザベより、大枠の話

という具合に、整理し直しても良いでしょう。

例)
②が初心者レベルだと、ムーヴ選択や足位置がメチャクチャなので、常に回転力を腕力・握力で抑え込んでいる状態になります。
したがって、①のスタティックや姿勢を意識しようにも、相当な無理が加わります。

「何が最優先だ!」という項目は存在せず、一つずつ改善していく必要があります。
相互に関連しているので、「自分が改善したい」と感じている項目を上達させようにも、他の項目の弱点が「足かせ」になっている場合もあります。

ジム講習では、私の判断で「本日は、この項目を少し改善してみよう!」と話を振って行きます。

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最後に、私が日々感じている感想を書いてみます。

②を苦手とする人が、圧倒的に多い。

要因:
最もパズル的なため、大枠を理解するレベルに達すると(自力で問題が解けるようになるため)非常に面白い。
しかし、入門するのが難しく、ストレスを感じやすい。
典型的には、「こんなことやって、意味あるの!?」などと、ちょっと怒る人もいる。

①は、身体感覚の話なので、パズルが苦手な方でも反復練習しやすい。
典型的には、性格が丁寧&怖がり&パズル的なことは苦手という3拍子揃った女性。このタイプの講習生は一定数おり、彼女たちは①に特化していく傾向にある。

③は、ビレイ中にも考えることになる。
③は、岩場リード、クラックリード、マルチピッチリード、アイスなどを志向する当塾講習生にとっては、必修項目になる。(リスク管理の作戦が立てられないなら、岩場でリードができないため。)

当塾の進級システムによる影響:
初心者レベルにおいては、①を講習することが短期的に成果が出やすい。
            ↓
①が最低レベルに達したら、ジムリード講習をスタート。
以後、リード講習の実践中は③を中心に講習していく。
            ↓
②は、岩場では教えづらい。
⚫︎岩場の下部でのムーヴ練習 ⇨ ①が中心(丁寧さ、スタティックの精度アップに注力)
⚫︎リードトライ       ⇨ ③が中心(クラックで言えば、墜落距離の計算、どこで固め取すべきか?などの話題が中心になる)
            ↓
この傾向は、岩場リード、クラックリード、マルチピッチリード、と連綿と続く。
 ※アイスクライミングだけは例外。
  アイスにおいては、②の重要性が高いため。

講習生の気持ち:
半数以上の講習生は、岩場リード講習やクラックリード講習と並行してムーヴ講習を受講しないため、②を講習するチャンスが少ない。
しかも、1〜2回のムーヴ講習受講では概念の理解に至りづらいため、継続受講する必要がある。
(ときどきムーヴ講習を受講するぐらいであれば、①を講習した方が成果は出やすい。)

つまり、理想的には卒業後のムーヴ講習の継続受講によって「フリークライミングの技術向上!」を願っているわけだが、実践できる講習生が少ない。

「卒業したら、一旦は離れたい。」、「フリークライミングの本格的な技術向上は、別のインストラクターに習いたい。」、「グレード向上は、あとは自力で練習すれば良いかな。」
などの様々な思いがあるだろうし、それも一理ある。

ただ、②に自力で到達できる人は非常に少ない。
しかも、②こそがムーヴの本質とすら思う。
(クライミングの本質、と言うと①や③も含むし、ムーヴ以外の諸々も含みそう。)

②を学ばないことは、もったいないように思う。

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まとめると、講習生は全体的に①と③が得意になりがち、ということです。
「では、どうすべきか?」という答えは出ていません。

考えてみると、
  構造的な問題:50%
  講師の工夫の余地:25%
  講習生の意識レベルの高さ:25%
みたいな感覚になってきて、②の大枠まで学んでくれる講習生は一部になるのも止むを得ないかという気もしてきます。

それでも、折に触れて②を講習しようとしていますが、不快感を露わにする人が現れたりして、かなりの困難さを感じています。

とはいえ、私にできることは、
・講習方法の工夫
・タイミング選び
・言葉がけ
などの、一般論の組み合わせでしかないのかなぁ、と思っています。

2026年2月14日土曜日

「レストが苦手」という人の思考

クライミング中のレストは、当然大切です。

ただ、レストが苦手な人、あるいは苦手であることを自覚していない人が、講習生の中でも相当おります。
<湯河原>

最初に、レストの目的を思い出してみます。

①回復
ダラリンと降ろしている方の腕の血流を流す。

・チョークアップして、ヌメりの予防。
・深呼吸をして、心拍数を下げる。
なども含む。

②時間稼ぎ
作戦を立てる時間を取る。

例)
・O.S.トライであれば、直近のムーヴを読む。
・R.P.トライであれば、直後のムーヴを脳内で再確認。
・ジムリードであれば、クリップの計画を再考。
・岩場であれば、リスク要因やランナウト具合の予想。
・クラックであれば、プロテクション戦略を考える。
などを含む。
これで、「レストやんなきゃな。」ぐらいの気持ちにはなるのでしょうが、実際のトライではレストしない人が相当います。

そのパターンを見ていきます。
<ロープレスキュー>

パターン①
常に焦っていて、早く上に行こうという思いが強過ぎる。

対処法)
これは、厄介です。
まずは、自覚を促すことです。
練習方法の提案、言葉がけ、本人が登っている動画チェック、などなど。
<クラックリード講習>

パターン②
早く登った方が省エネである、という思いが強過ぎる。

対処法)
部分的には正しいだけに、厄介です。
少々時間をかけても、省エネムーヴを選択していくことがパンプ抑制につながる、辛抱強くレストすることがルート攻略につながる、という実感を持たせる工夫が必要です。
<こちらも城ヶ崎>

パターン③
過去に、ゆっくり登ってみたり、レスト多用して登ってみたことはあるが、かえってパンプしたので不採用にした経験がある。
(パターン②の強化バージョン)

対処法)
これも厄介です。
「新たな登り方に身体が馴染むまでは、かえって成績が落ちる」という一般原則があるため、この考え方だと一生自分の登り方を変えることができません。

つまり、自分のスタイル「特攻隊のようにガンガン突っ込んで、ダメなら落ちる。」のまま、伸びられる限り成長し、そこで行き詰まったら成長は終わり、という生き方になります。

ある特定のジャンルでは成果を残せるかと思いますが、オールラウンダーを目指すのは厳しいでしょう。
パターン④
できるだけ長い時間、4点支持で居たい気持ちが強い。

補足)
レストというのは、片手をフリー(ホールドから離した状態)で滞在する必要があるため、これが精神的に落ち着かなかったり、疲れると感じてしまったりする。

彼らの主張A)
片手フリーよりも、4点の方が支持支点が多いから安定する(落ちる確率が低い状態)じゃないか?

彼らの主張B)
片手フリーの状態は、ホールドを持っている方の手が消耗するから、4点の方が片手ごとの負荷は小さいから楽じゃないか?

もちろん、AもBも論破することはできるのですが、何となく腑に落ちないという彼らの気持ちも理解できます。

対処法)
・1点フリーの状態で安定させる練習。(手も足も全てスタティックで登る練習、など。)
・全てのホールドでレストする練習。
など
 ※どちらも、十分に易しいルートで行うこと。
<再び湯河原で、岩場リード講習>

パターン⑤(中級編)
全身脱力できるぐらいのレストポイントでしか、レストできない。

例)
ハングの場合:
ジムの5.10cを登っていて、5.9のような大ガバが出てきたタイミングでのみ、レストする人。
  酷い人になると、5.11をトライしていても、レスト技術は5.9の大ガバのみ、という状況になる。

垂壁〜スラブの場合:
スタンスが非常に良く、手の負荷が非常に軽くなったタイミングでのみ、レストする人。

考え方)
5.10cをトライするなら、5.10aぐらいのホールドでもレストできた方が良い。
5.12aをトライするなら、5.11bぐらいのホールド(あるいは微妙な体勢)でもレストできた方が良い。
レスト中、ダラリンと降ろしている方の腕は脱力しているが、体幹部をナマケモノのように脱力するのは非推奨。

※「体幹部は脱力し過ぎず、レストしている腕は脱力する」という感覚に慣れるのが難しいのですが、これができないとグレードが上がると全くレストできなくなっていきます。
<こちらも湯河原>

パターン⑥(中級編)
レストによく使うムーヴ技術の向上に、興味が薄い。

例)
・省エネのためのヒールフック。
・凹角でのワイド技術。(バック&フット、ニーロック、など)
・ステミング。
・微妙なバランスでのノーハンドレスト全般。

もう少し初心者向けに言うなら、ガバ足でも足指でスタンスを捉えた方が楽だとか、そういうレベルです。

補足)
本人の心理としては、省エネ技術なんかよりも、「突破できなかった、あそこのムーヴを教えててくれよ!」という話です。
実際には、省エネ技術が高ければ登れるルートも相当増えるのですが、そこには目が向きづらい人もいます。

「そういう思考なら、ボルダラーになれば?」という気もしますが、別の理由でリードが好きだったりするので、やっぱり直して欲しいところです。

対処法)
・ウォームアップを兼ねた基礎練習で、様々なテクニックを試行錯誤&反復練習。
・ワイドクラック、凹角課題、スラブ課題、ヒール課題、などに対して積極的に取り組む。
など
<城ヶ崎でワイドボルダー>

パターン①〜④は、ちゃんとできないとバタバタ登りにすぐになります。
ジムならともかく、岩場やクラック、マルチ、アイスなどでは、危険と言っても差し支えないでしょう。

速やかに、改善の必要があります。
<若干のインバージョン>

パターン⑤、⑥は、できなくてもそこそこ登れます。
岩場でも登山でも、危険というほどのケースは少ないかもしれません。

ただ、それゆえに「自分は、レストには自信がある方だ。」などと考えてしまう人も多いのです。
しかし、実際には同グレードをO.S.トライしている人たちに比べて、レストできる場所が少なかったりして、これこそが最大の伸びしろである可能性もあります。
<クラックリード講習>

他にも、
・パンプするまでレストしない人
⇨序盤は、まだパンプしていないので、レストを交えながら登る気持ちになれない。

・パターン①〜⑥の複数に弱点が散らばっている人
⇨「特定の1つが、徹底的にダメ」というほどではない。

など、色々いますよね。
<今回、ようやく手足の位置関係理論が腑に落ちたHSさん>

「キャリア後半に、ちょっとずつでも伸びる人」というのは、こういう弱点分析に長けた人なんだろうと思います。

<懸垂エリアの「あかね」>

<フィストクラックをO.S.するODさん>

2026年2月10日火曜日

4月分の予約受付

2月13日(金)の21時より、4月分の予約受付を開始いたします。

ジム講習はこれまで通り、Dボルダリングプラスリード立川、ランナウトを基本として行います。
ストーンマジック、ベースキャンプ入間などでの実施を希望される場合は、お問い合わせください。

①岩場リード講習
湯河原、天王岩、兜岩、小川山が主な候補です。
直前の天気予報により、気温を見て決定します。

②クラックリード講習
城ヶ崎、瑞牆が主な候補です。

③マルチピッチリード講習
つづら岩、越沢バットレス、三ツ峠、小川山が主な候補です。

ちなみに、マルチピッチリード講習・マルチピッチ体験講習は、3月から開催可能です。

では、どうぞよろしくお願いします。

2026年2月7日土曜日

アイスクライミングのフォーム談義

今シーズン、現時点で5日間のアイス講習を行いました。
そこで、TGさんからの熱い突っ込みにより、非常に奥深いフォーム議論がありました。

このブログは、リスク管理の話が多めですが、たまにはフォーム(良い姿勢)の話も面白いかなと思います。
<状態が悪く、私はリードで相当苦労した南沢大滝>

「アイスクライミングでは、一般的に“腰をいれる”ことが推奨されているが、腰を入れてしまったら体幹に力が入らないからダメなんじゃないか?」
というTGさんの疑問が、スタート地点です。

結構、ハイレベルな問いです。
TGさんは、ここ何年もクライミングのフォームについて当塾とは異なる場所で学ばれているので、それと反するのではないか?という話。

この話をする前に、フリークライミングの前提知識が必要です。

①一般的な初級者に対する教え

A)足を動かすときは腰を壁から離す(スタンスを見やすくする、足の移動を行いやすくする)
B)手を動かすときは腰を入れる(腰を壁に近づけることで、スタンスに体重を乗せる)

注)アイスクライミングに変換すると、Aはアイゼンでキックステップするときの姿勢、Bはアックスをスイングするときの姿勢、になります。

②典型的な“理想のフォーム”

肩を下げる、骨盤は立てる、脇は締める、胸は若干開く、背筋は伸ばす(猫背の禁止)、顎は引く、腰を落とす(足は若干のスクワット状態、棒立ちしない)

注)いわゆる、体幹部に最も力を入れやすい姿勢と考えると良いです。
体幹部はしっかりと動ける状態(いつでも力を発揮できる状態)を保ちつつ、無駄な力を抜いてリラックスした状態です。
スポーツ全般、武道や演劇、さらには高齢者の生活姿勢(膝、腰、肩、などの故障予防)にまで当てはまる、美しい姿勢という考え方です。
ただ、スポーツによって、背中を丸めた姿勢で行うもの(スキー、野球の守備、など)もあるなど、状況に応じた応用はあります。
<アイスギャラリーでリードする、TGさん>

TGさんの質問は、

①を行うと腰が反ってしまい、②の「骨盤を立てて、若干のスクワット状態」が維持できないのではないか?
結果として、上半身だけで姿勢をキープしようとしても、いまいち力が入らず、チグハグになるのではないか?

と読むことができます。
<三ツ峠の堰堤>

私の回答としては、「腰を入れたとしても、ほぼ問題なく体幹部の固定力はキープできる」となります。

※私なんかより遥かに登れるけど、暇つぶしに記事を読んでくださった方へ。
とりあえず、ジムでも岩場でも実験してみてください。
大体の人は、やれば分かると思います。

※私と同レベル以下の方へ。
申し訳ありませんが、文章で身体感覚を説明するのは困難すぎるので書きません。
詳しくは、ムーヴ講習やアイス講習を受講してください。
継続受講によってしか見えない世界ですが、絶対に理解した方が良い話だと思います。
<金ヶ窪沢の滝をリードするTGさん>

一応、この問題のまとめ。

⚫︎垂直以下のアイスであれば、何回かキックステップすれば腰を入れて、重力方向に荷重しても壊れないだけのスタンスを作れることが多い。
    ↓
⚫︎これに対して、腰を離して理想のフォームだけを追求するのは、やっぱり不合理。
パンプが最大の敵であるアイスクライミングにおいては、特にそう。
    ↓
⚫︎腰を入れることで、理想のフォームが少々崩れたとしても、やはり腰を入れて省エネ登りをしたい。
    ↓
⚫︎実際に腰を入れるとき、理想のフォームに相当近い感覚で体幹部の安定感をキープし、アックスをスイングする姿勢が存在するので、実質的に問題にはならない。

これって、クライミングで比較的良好なスタンスに乗っているときと、全く同じ話です。
何なら、5.11ぐらいまでの持久系ルートでは、ほとんどのスタンスは重力方向に加重できると思うんですよね。
(1つ前の記事の、「Cの姿勢で懸垂力をサポートするのが、私は割と得意である」という話に通じます。)

この議論と同じ構図を、もう2例。

例1)
理想のフォームだと、究極的には「腕は伸ばすな!」ってことになるんですが、一般的な初級者に対する教えだと「腕は、曲げない方が楽」となります。
典型的には、大レストしているときに保持している方の腕です。

実際、めちゃくちゃ姿勢の良いトップクライマーだって、腕を伸ばしている場面はある訳ですから、悩ましいですね。
ここの両立についても、真剣に考えてみると、かなり興味深いですよ。

例2)
「若干のスクワット状態」VS「棒立ちでの脚力の省エネ」

こういう問題は、考えれば何個も作れると思います。
考え方のヒントは、下記になります。

「理想のフォーム」 VS 「体幹部の省エネ姿勢」という構図で考えて、使い分けを説明しやすい場合もあります。
※「理想のフォームだけで登ってもは、5分でクライミングの決着が付くなら、ほとんど問題は無いのだが、実際は・・・」という考え方。

「理想のフォーム」VS 「ムーヴへの適応(このムーヴは、あえて背中は丸めた方が良い)」という風に考えた方が自然な場合もあります。

書いていても、難解だなぁと思います。
理想のフォームだけでも他のスポーツを相当やり込んだ人でないと身体感覚が難しく、私自身も「理解した」とは一生ならない予感がしています。
そんな中でも、「応用まで考えないと、クライミングでは実用的でない」、というジレンマ。

ただ、クラミングを長く楽しむ上で、フォーム問題は故障問題とも直結し、本来は避けて通れません。
もちろん、中上級者にとっては、強くなるために避けて通れません。

でも、このパズル的な難しさがクライミングの面白さで、考えるべき項目も多岐に渡るだけに一生飽きないのかな、とも思います。

2026年2月6日金曜日

センチュリーフォーカラーズ敗退、高熱隧道R.P.、など

12月12日(金)は、昇仙峡。
A君に誘われて。
<気は優しくて力持ち>

センチュリーフォーカラーズ(5.12b)は、傾斜の緩いフィンガークラックです。
垂直〜垂直以下。
ただ、足が悪いので、持久系です。

一応、2回ハングドッグして、突破ムーヴだけはバラせたのですが、カムセット態勢が全然ダメで、A0クリップを何ヶ所か行っています。

「今の実力では、R.P.は遠い。(現状の能力で登れる可能性もあるが、日数が全然読めない・・・。)」
という気配なので、トレーニングしてから出直すべしという感覚です。
<A君は、強い・・・>

トレーニング課題

①ロックオフ能力 ジャミング系のルートだと毎度のことですが・・・。

足が悪いので、デッド気味に手を出したい状況に陥りがちで、次のジャミングを決める余裕が生まれません。

A)単純に、脇を締めた状況での懸垂力
B)足が悪い状況で、手をスタティックに出すための全身の連動性

個人的には、
C)足が良い(鉛直荷重が可能)な状況で、手をスタティックに出すための全身の連動性
は同グレード帯の人と比べて得意で、かなり懸垂力不足を補えている感覚があります。

Cは低グレードをスタティックに登る練習とか、アイスクライミングとかで使用頻度の高い技術なので、これまで最も重点的に鍛えてきた技術とも言えます。

苦手のAとBも相当意識して数年以上は取り組んではいるのですが、なかなか難しいです。
特に、懸垂力のトレーニングは自分にとって故障リスクが相当高いように感じるので、かなり気を付けてチョコチョコ行うことにしています。

とは言え、トレーニング方法の見直しが必要なのかもしれません。
ヨセミテでも、これには散々苦しめられましたし。

<モデル仕事もいける店長>

②フィンガージャム

指の変形が酷くなって以来、タイトハンド〜フィンガーの課題を避けがちなので、どうしてもジャミングの精度は落ちます。
登れなくてツマラナイというより、トライすると指が炎症するからです。

かなり頑張ってスタティックに手を出しても、ジャミングが決まるのに時間が掛かり過ぎるという悲しさ。
実際に、不利な部分も大いにあるのですが、かなりの時間を掛けてジャミングすると効くことも多いので、「下手なんだなぁ」とも思い知らされます。

ただ、これも「そういう課題を重点的に取り組む」をやろうとすると、指の炎症がヤバすぎるので、サジ加減が絶妙です。
<私に足りない2つを、完璧に備えているA君>

これらのトレーニング意識が間違っているのか、このトレーニングを今後数年続ければ結果が付いてくるのかは、いつもながら微妙な判断ですね。

今後の課題です。
<見事にR.P.を決めたA君>

12月30日〜1月1日は、狂祖さまに誘われて、再び関西ツアー。
初日は、滋賀の千石岩。
私は、翌日の高熱隧道に備えてレスト。

こじんまりしていて、講習生のオールNP練習には非常に良さそうな岩場だと思いました。
小川山の「フェニックスの大岩」とか、奥多摩の「つづら岩」みたいな感じで、マルチピッチリード講習なんだけど1ピッチで終わるかな、ぐらいのスケール。

「講習で使いたい・・・」という気持ちにさせる岩場。

<「すごいんです!」と観客に何度も言われたら、そういうルート名だった>

12月31日は、京都笠置山の高熱隧道(グレード未確定らしい、ワイド系)。

11月に、1日トライして、前半パートが抜けられなかったルートです。

が、こちらは勝算が50%ぐらいありました。
理由①
11月のハングドッグにおいて、まだムーヴを試し足りない部分があった。

理由②
この手のルートは、腹筋、足上げの筋力(おそらく腸腰筋)主体なので、オーバートレーニングリスクが低い。
数週間の直前トレーニングでも、ちょっとは成果が出て、楽になる。
(普段が甘いだけ、という話もある。)

※懸垂力とか、指系のトレーニングのように、数年単位でちょっと成果が出たら喜ぶ、みたいなタイプとは真逆。
<中間部のチムニートラバース>

とりあえず、この日はムーヴ解決して終了。

ここから、オンサイト注意。
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5.11bぐらいの短いインバージョン、5.9ぐらいのチムニートラバース、5.10ぐらいの普通のワイド、というのが私の印象。

ちなみに、分割部分では相当ちゃんと休めますから、バラシ終えた私にとっては下部勝負のルートです。
ただ、「オンサイト」とか「バラシなし」で頑張れる強い人にとっては、相当な持久系ルートとなり、最終セクションが結構キツいと予想されます。
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オンサイト注意は、ここまでで終了。

この日は1トライ(ハングドッグ)だけだったので、翌日の元旦は珍しく連登。
ここで、ようやくR.P.できました。(通算3日間)

このルートは、完全なルーフなので、回収もエイドダウンで行いました。
なので、1日に1〜2トライでも、私にとっては大変です。

個人的には、威圧感もスケールも相当なルーフで、かなりオススメなルートです。
三つ星です。
<狂祖さまを探せ>

この後、午後は笠置ボルダー(河エリア)をやったのですが、ほとんどの4級以上の課題に全く歯が立たず・・・。
そこら辺にいるボルダラーは、今日も強く、輝いて見えます。

我ながら
・作業(毎回エイドダウン回収、など)
・行きづらさ(ルーフクラックで、ヘッデン欲しい、など)
・表面ポロポロ(プロテクションが危険というほどでは無いが、気を遣う)

などでは、それなりに頑張れます。
が、普通のクライミング能力は低い!

という毎度の感想を、今日もさらに深めました。

どちらも大切な能力だと思うので、ちょっとずつ頑張りましょう。
<1月に行った、城ヶ崎ボルダー>

2026年1月30日金曜日

「ご注意」ページの文言を変更

 皆さま、HPの「ご注意」ページを書き換えました。


また、この機会にHPの一部をブログに移転しております。
管理者の方に依頼することなく、私が直接に文章を変更することを可能にするためです。

ブログ上段に、「講習申し込み方法」、「問い合わせ」などが並んでおりますので、そちらから「ご注意」ページに入ることができます。

以下が、「ご注意」の内容です。
リード講習、岩場での講習、山での講習は、危険を伴います。
ご理解の上、ご参加ください。
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登山およびクライミングは常に危険を伴います。

本講習は、自立した登山とクライミングをおこなう際の、危険に対する安全性を高めることをひとつの目的としておりますが、危険をゼロにするものではないことをご了承ください。そのような危険に1つ1つ対処していくからこそ、どのようなレベルの登山者にも「小さな冒険」を味わうチャンスがあり、そこが登山の素晴らしいところでもあります。

当塾としても、可能な限り危険は回避したいと考えており、適宜アドバイスや注意も行います。その一方で、いわゆるガイド(本人の力では登れない山・ルートに、可能な限り安全に連れて行ってくれる業者)のように、リスク因子をお客さんから遠ざける(リードさせない、判断させない、ガイドが先回りして予防策を講じておく、など)、あるいは、リスクの大部分を事前に網羅的にご説明する、ということは、実際には困難ですし、また、それは「自立した登山者・クライマーを育てる」という当塾の趣旨に合致しません。
そのため、アプローチやリード、ロープワークに至るまで、原則は自己責任の山行という心構えで来ていただくようにお願いします。

講習に参加される場合は、必ず山岳保険に加入していただきます。加入の方法が分からない場合は、お問合わせください。ただし、ジムの講習は必須ではありません。

2026年1月19日月曜日

WMA(ウィルダネス メディカル アソシエイツ)の講習に参加しました

だいぶ前の話ですが、以下の講習に参加して来ました。
https://www.wmajapan.com/
私が参加したのは、「3日間の現地講習+事前のオンライン学習」というカリキュラムで、WAF Aというクラスです。
非常に素晴らしいカリキュラムなので、オススメです。

私なりの理解を説明すると、まず野外救急法(WFA)というものが存在します。
登山、海、僻地などでの救急法です。

ちょっと理解しづらいと思うので、2つ例を挙げます。

①パートナーが、クライミング中に着地にミスって足を骨折したかもしれない。
本人は、這ってでも自力で降りたい様子。(大ごとにしたくない!)
しかし、少なくとも「普通には自力歩行できない」様子。
患部は、腫れている。

→こんなとき、どうしますか?

・悪化リスク覚悟で、這ってでも降りてもらう?or大事を取って搬送?
・搬送するとして、背負い?担架?(救助要請?自分たちや周囲のパーティで降ろす?)
・骨折部位の悪化を防ぐために、固定するためには、どうするのがセオリー?
・骨折以外に見落としている怪我を探す方法ってある?
・骨折が原因で、死ぬことって本当に無いの?
など、様々な判断を迫られると思います。

これらに対して、包括的に理解するためには、傷病者を評価するシステムが必要です。

医者で言うところの診察にあたる行為ですが、
A)我々一般人は、絶対的に医学的知識に乏しい。
B)医師であっても、レントゲンなどの器具が無い状況で診察は不可能。
という状況なので、考え方が結構違います。

別の言い方をすれば、診察と「野外救急法における傷病者評価システム」は、似ているけれど相当異なる部分もあります。
どこかで基準を決めて(当然、この基準はすでに決めてくれている)、
「これを越えるぐらいなら、緊急搬送。これ以下なら、固定して搬送。これ以下なら、自力歩行させる。」
という風にします。

また
・その基準を採用している、大雑把な理由(傷病者に聞かれるので)
・固定法
・傷病者保護(保温など)
などの周辺知識を補強学習していくイメージです。

※「悪化してでも救助隊を呼びたくない。」という強い信念を持つ人の場合は、尊厳死の問題と同様に認めざるを得ません。自力下山は山屋の美徳ですから、山屋・クライマーにはよく見られる考え方だと思います。とは言え、救助者側は、このシステムを理解した上で、傷病者本人と話し合うことが大切だと思います。

②雪山で、ロープワークにミスって高さ10mから滑落。
奇跡的に生きている様子だが、出血もあり、打撲か骨折かよく分からない痛みも何箇所も訴えている。

こんなとき、どうしますか?

・寒いので、保温して低体温症対策?
・とにかくハーネスを脱がせて楽にしてあげる?
・出血の止血?
・痛がっている場所を特定して、固定する?
・楽で安全な場所まで運んでしまう?(動かして良いのか?という迷い・・・)
・とにかく、救助隊に連絡?

他にも、思い付くことは色々あると思います。

この中で、優先順位のセオリーはどうなっているんでしょうか?
日赤や消防の救命講習であれば、
「人が倒れています。→声かけ(意識の確認)→救助要請(119)→気道確保→呼吸の確認→なければCPR」
みたいな手順書があります。

しかし、山では寒い中で救助隊を待っているだけでも傷病者は死亡します。
救助隊が到着するまでの時間を考えても、出血の止血の優先順位も高そうだし、「どこまで動かして大丈夫なの?」という問題にも直面しやすいです。

何から順番に手をつけるべきなのか、もう少し(実際には10倍くらい?)詳しい手順書が欲しいところです。

これに指針を与えてくれるのも、前述の傷病者を評価するシステムです。

また、これを補強する意味で、
・脊椎損傷の可能性がある人は、どの程度は動かしても大丈夫?
・大出血の止血法は?
などの知識を学んでいくイメージです。



野外救急法(WFA)の講習は、私も以前にスリップストリーム(現在は日本から撤退)という別会社のものを何度か受講したことがあります。
元データ(北米のお医者さん団体が、野外救急法のために論文を色々出してくれているページは、Web上では誰でも閲覧できる。)は同じなので、大筋は変わりません。

スリップストリームも、当時としては素晴らしかったと思うのですが、WMAは更に素晴らしいです。

具体的には、
・カリキュラムの完成度が高い。
(多くの人間で練っている点、多くの講習での反省点改良、が伝わってくる。)

・教科書、補助資料の完成度が高い。

・医師などの専門家が監修に入っており、WFAの元データのアップデートを反映させている。
(英語の論文を読めるメンバーが、何人もいる。)

・講師の質が高い。
(これまで、5人ほどの講義を受けましたが、全員がしっかりしています。複数の講師の質を担保するというのは、本当に難しいことだろうと思います。)

非常にオススメなので、プロ系(ガイド、インストラクター、野外活動の引率者、など)の人のみならず、一般の方も要検討ではないかと思いますよ。