2026年8月12日水曜日

9月、10月分の予約受付 & 今年の富士山

8月14日(金)の夜21時より、9月および10月分の予約受付を開始いたします。
いつもより、開始のタイミングが大幅に遅れて申し訳ありません。

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今年も、富士山に3週間ほど行ってきました。

富士山は、学びも多く、本当に刺激的な場所です。
毎年、富士山ガイドに熱中できる理由を書いていますが、あえて今年は「富士山ガイドの大変さ」について振り返ってみようと思います。

①事故

詳細は、事故当事者の許可を得づらいので割愛します。
今年は、私の遭遇率が高く、自分のツアーで1件、他の登山者で2件を対応しました。

落石、落雷、体調不良で突然倒れた、などの「想定トレーニングを積んでいた内容」とは言っても、やっぱり大変です。

  ⚫︎所属の異なるガイド同士、関係者同士も、以前より仲良くなってきた。

という時代変化を考えると、他の登山者への対応は、確率的に増加するような気がします。

②連続勤務

「富士山ガイドと言えば、連勤」と登山関係者に知られるほど、結構有名な話です。
午前中に五合目に下山してきて、昼から出発のツアーを再び担当するというものです。

特に、山頂御来光ツアーは山小屋で数時間しか寝られないパターンも・・・。

幸い、私の所属する太子舘では「山頂御来光ツアー」+「山頂御来光ツアー」という組み合わせの連勤は、原則行わないことになっています。
通常は、「山頂御来光ツアー(仮眠のみ)」+「山小屋2泊で日中のみ登山するツアー(通常の睡眠時間)」などの組み合わせです。

それでも、雨で濡れて下山してきたり、事故対応などで心身が疲れて降りてきたり、トラブル対応で睡眠不足が想定を超えている場合が結構多いです。
私は弱いので、「本当に連勤しなきゃダメですか?」という気持ちで五合目でバタバタ準備することも多いです。

※不思議なほど耐久力の高い同僚、睡眠不足に強い同僚などもおり、全員が連勤に苦しんでいるわけではありません。

私は、もうちょっと人手を増やして、連勤の頻度を減らしたいのですが・・・。

③新人教育

私の所属する太子舘ガイドは、山岳部・ワンゲルなどの大学生、山関連のフリーター(私もそうでした)などが多く在籍しているため、毎年多くの若者が新人として入ってきます。

「ガイドとは何か?」について、技術的にも職業倫理的にも常に考えさせられる機会なので、私自身にとって学びの多い場です。
これは、本当に良いことです。

ただ、前述の通りバタバタなので、新人や若手とのフィードバックなどの教育に注力するほど、忙しくなります。

④緊急交代

こんな状況なので、ガイドも発熱したり、寒暖差で体調を崩したりが、割と頻繁にあります。
そうなると、交代要員が必要になります。

⚫︎須走口五合目に昼前に下山するツアーを終えて、昼過ぎにスバルライン五合目スタートのツアーを担当するべく移動。
⚫︎宿泊中の山小屋で発熱したガイドの代わりに、深夜に五合目から山小屋へと出勤し、翌朝からガイドとしてお客さんの前に登場。

など、武勇伝になりそうな話も、ちょくちょく誰かが犠牲者になると、対策を考えたくなります。

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こうして書いてみると、私は個別の仕事の大変さ(大人数ツアー、素人さんが多い、天候の不安定さ、など)よりも仕事の合間が少なくて、休息と準備が不足するのが一番苦手なのかなと思います。

私は、のんびり生きたい大型動物なんでしょう。
(クライミングや日常生活でも、日々痛感しています。)

いやー、思い出しただけでも怖いし、気もそぞろになります。
それでも熱中してしまう富士山には、8月も働き続ける同僚たちが頑張っています。

本当に、お身体に気をつけて!

2026年7月7日火曜日

「手繰り落ち」について考える

「手繰り落ちしやすい人」について考えます。
私自身も、手繰り落ちしたことはあるのですが、確率は最小化したいと常々考えています。

・手繰り落ちしてしまった方
・手繰り落ちしそうなクリップが多いと自覚している方
に役立てば幸いです。
<マルチピッチリード講習@小川山>

パターン①
そのルートに対して、安定して登る技術が追い付いていないため、そもそもクリップ態勢が全体的に怪しい。

例)
・ボルダー出身で、5.12aでも核心ムーヴは突破できてしまうが、5.11後半でもクリップ態勢の安定度が圧倒的に怪しい人。
・トップロープ出身で、5.11でも核心ムーヴは突破できてしまうが、5.10でもクリップ態勢の安定度は圧倒的に怪しい人。

→自分が安全にトライできるレベルのルートを選びましょう。
 安定度や省エネ技術が低ければ、少しグレードを下げても十分に本気トライになります。(オンサイト失敗する、など。)
 易しい課題を安定して登る基礎練習を積んで、将来的には今やりたいレベル(核心部はこなせるので、いつか完登はできそう)のトライができるように目指しましょう。
<2P目>

パターン②
クリップして安心したい気持ちが強すぎる。

クリップを終えると、トップロープ状態になります。
そこでフォールしても、大した墜落距離にはならず、安心です。
また、怖がりな初心者にとっては、「テンション」とギブアップできるメリットも大きいでしょう。

クリップを諦めることは、その場で「落ちます」とコールしてフォールすることを意味します。
これが、ジムのボルト間隔ですら怖いという人は、結構多いです。

「2X+α」で考えるところの、X=50cmであっても、初心者には怖いものです。

しかし、それが故に無理してでもクリップに突っ込んでしまい、かえって事故に遭いやすくなります。
<3P目で敗退を決めて、下降に入る>

パターン③
2本目(3本目)神話。

「2本目(3本目)さえクリップしてしまえば、あとはグランドフォールすることは無い。」という迷信を信じている人は、結構います。

しかし、3本目をクリップする際に手繰り落ちすれば、グランドフォールする方が一般的でしょう。
また、4本目をクリップする際に手繰り落ちすれば、十分にグランドフォールする可能性があります。

要するに、単なる事実誤認です。

<残った時間は、登り返し技術の練習>

パターン④
足のスリップ、身体の回転に無頓着。

手繰り落ちのリスクを十分に把握していれば、保持している手がパンプで限界のときや、指が抜けそうな感覚のときに無理してクリップしたくないと感じるでしょう。

そのため、保持手が限界を迎えて落ちるリスクに関しては、自覚的になります。

その一方で、恐怖心を感じずに足がスリップすることがあります。
ある程度のムーヴ原理の理解が伴ってはじめて「ここで背伸びすると、足がスリップする可能性があるな・・・。」などと予見できます。

登り込んでいるだけでは、全くムーヴ原理を理解できない人も、かなり多いです。
入門書を読んでも、やっぱり理解できない人も、かなり多いです。

独学が難しい人は、年数をダラダラやってもダメだと思います。
習いましょう。
<登り返しの練習>

最後に。

実際は、パターン①〜④だと自己認識しつつも、なかなか抜け出せないという残念なパターンも多いです。

例)
パターン①だと半分くらい自己認識しつつも、自分が核心ムーヴをギリギリこなせるルートをやりたくて仕方ない人。

・「高グレードを登っているところを人に見せたい」という見栄っ張り
・グレードへの執着(自尊心を保ちたい。低グレードで登れずに苦しんでいる自分を認められない弱さ。)
・自分の限界と向き合うアドレナリンが好き(基礎的能力に裏打ちされたチャレンジであれば、尊敬されるべき態度かもしれないが・・・)
・「危険なことを恐々やるのがクライミングだ!」という意識が強過ぎ(少なくとも、ジムでこれは「やり過ぎ」)

などという、自己認識が必要かもしれません。

ときどき、講習生にこれらを熱弁されることがあるのですが、「ダメな生活習慣から抜け出せない理由を、延々と聞かされている」みたいな気持ちになります。
マンツーマンの日などは、ゆっくり気持ちを聞くのは構いませんが、「気持ちの整理をするのは自分自身です。」とは言えますね。

2026年7月2日木曜日

用心深くフォールする

残念ながら、講習中に怪我を負った講習生は何人もおります。
中でも、「リードで落ちる練習」はリスクが高めです。
<結び替えの練習>

個人的には、「リードの落ちる練習」はリスクの前借りという側面があると感じています。

「リードに不慣れな人にフォールさせる訳なので、着地ミスなどで怪我をする可能性アリ。」
という話です。

落ちる練習により、
・墜落距離の計算に現実味が湧く
・フォール姿勢への慣れ
・落ちたらいけないセクション、手繰り落ちの危険さが身に染みる
・ビレイ技術に現実味が湧く
など、様々な効用があります。

また、「ここでのフォールは、さすがに怪我しないでしょう!」という自信があるからこそ、勝負の一手が出せます。

だからこそ、テンション癖がこびり付く前、なるべく早期の段階で落ちる練習をしてもらいたいものです。
<午前中のムーヴ練習>

一方で、落ちる練習のリスク管理をすることは、非常に難しいと感じています。

講師がコントロールできるもの

①墜落距離
一般的に、墜落距離は「2X+α」(最終プロテクションからの距離の2倍、+α)で表されます。

初級者であれば、X=50cm程度(ハーネスの腰とクリップ済みカラビナの距離)で落ちることが問題なくなれば、ジムでは本気トライが楽しめそうです。

ジムの中級グレードや岩場リードを見据えると、X=80cm程度までは落ちられると、だいぶ楽しめます。

また、トラバースに関しては、X=0で構わないので、100cm強のトラバース(ジムで隣のボルトラインに入るぐらい)で振られ落ちするぐらいは、あまり恐怖心を感じないぐらいまでに慣れると良いでしょう。

講習の初期段階では、X=0(トップロープ状態)から初めて、少しずつ距離を増やしていきます。
<やわらかソラマメ(5.8?)>

②壁の傾斜

一応、ハングしている方がフォールは易しいのです。しかし、多くの講習生はハングのガバガバルートを登るだけで疲労するため、講習生がXの距離を考える余裕がありません。
そのため、理想は垂壁ガバガバルートだと考えています。

とはいえ、様々な事情(講習生の能力、ジムの空いている壁、垂壁にガバガバルートが無い場合、など)からスラブで行わざるを得ないこともあります。

特に、岩場では垂壁ガバガバルートは滅多に存在しないため、原則としてスラブでXの距離を小さめに抑えて行います。
<ロングロングアゴー(5.10b)>

講師がコントロールしづらいもの

A)フォール姿勢

もちろん、フォール姿勢は教えますが、講習生はある程度の確率で失敗します。

「ハーネスに腰掛けるように。」
「足は壁を押すために、少し高めに。」
「懸垂下降の姿勢。」
「オートビレイで降りる際の姿勢。」
「ロワーダウンされる際の姿勢。」
「スタンスに頼らず、コンパネでも押せるぐらいの足の高さを意識する。」

などと、様々な表現があります。

また、「テンションを掛けた状態で後方にジャンプを繰り返して着地姿勢に慣れる練習」などの独自メニューも色々とあります。

さらに、トラバースの振られ落ちでは、可能な限り「振られる方向(最終プロテクションの方向)に腰(おへそ)を向ける」と言ったアドバイスをすることも多いです。

しかし、こういった「動き」へのアドバイスは、1回聞いて納得しても体現できるものではありません。
数百回のフォールの中で、慣れて行く必要があります。
<マルチピッチリード講習@小川山>

B)着地の脚力

スクワットの能力、骨密度です。

・低めのボルダリングジムで、ゴール落ちができる。
・テント装備などを背負って、冬山登山ができる。
のどちらかが可能な脚力であれば、問題ないでしょう。

※「スクワットのフォームが悪いと、長期的には膝を痛める」と言った話は、一旦脇に置くとして

スクワットのフォームのコツなどは、ある程度は伝えられます。しかし、姿勢矯正みたいなおのなので、一朝一夕には治りません。
骨密度に至っては、クライミング以前の生活習慣によるところも大きいでしょう。

ほとんどの場合、講習生の「もともと持っている能力」に依存して落ちる練習を実施することになります。
<根性のルーファイで道を切り拓くNNさん>

C)講習生の心理

最終的には、「講習で落ちる練習するんだから、大丈夫でしょ。」という気持ちもあるかと思います。
私もある程度はリスクを考えてメニューを組んでいるので、信頼してもらいたいし、その信頼の上に講習生が踏み出せる一歩もあります。

しかし、リスクがあるのも事実です。
具体的に、事故が起こりそうなパターン(実際のものを含む)を考えてみます。

⚫︎「この講習生は、このぐらいの距離なら、フォール姿勢は問題ないだろう。(絶対ではないが、リスク低い)」と、私が判断したが、実際には着地姿勢を大きく失敗した。

⚫︎「Xが50cm以下なら、フォール姿勢を少々ミスっても怪我をしない。」という経験則はあるが、その講習生の骨密度が低かった。

⚫︎「本日は、Xが30cm以下のフォールだけを練習してください。」と私が指示していたが、講習生がうっかりX=100cmでフォールした。

⚫︎「手繰り落ちは、絶対にしないでください。」と私が指示していたが、講習生がうっかり手繰り落ちの練習もするものだと勘違いして、意図的に手繰り落ちした。

⚫︎講習生が、何か他のことを考えたり、講習という安心感に惑わされて、フォール姿勢を意識せずに落ちた。

そして、実際には単一の条件で事故が起こるとは限らず、複数要素が絡んでいる場合もあります。
<こちらで敗退>

落ちる練習は、やっぱり必要なので止める気は全くなく、ムーヴ講習と並んで当塾の根幹をなすメニューだとすら考えています。

講習生におかれましては、用心深くメニューへの参加をお願いします。
もちろん、「今日は体調が悪い」、「今日は頭がボーッとする」などの理由で、落ちる練習や本気トライの辞退(別メニューを私に依頼する)を申し出ていただくことは、全く問題ありませんし、数多くの講習生がそのようにされています。

体調の良い日に、改めて行いましょう。

用心深さは、落ちる練習に留まらず、実際にリードやボルダーで「落ちそうなとき」に考慮すべき項目への気配りです。
落ちる練習が不十分な人は、本気トライもダメダメです。

そして、この「リードクライミングの用心深さ」が、巡り巡って滅多に落ちることのないマルチピッチや登山におけるリスク管理にも役立つと思います。
<兜岩>

皆さま、用心深く、そして長期継続力という「しぶとさ」を胸に頑張りましょう!

<クラックリード講習@小川山>

<斜上クラックの理解を深めるISさん>

<岩場リード講習@小川山>

<立木でプロテクションを取ったり、ボルト足元でフォールしたり、盛り沢山>

<クラックリード講習@小川山>

2026年6月2日火曜日

7月、8月分の予約受付

6月5日(金)の21時スタートで、7月および8月分の予約受付を開始いたします。

⚫︎7月10日〜8月4日までは、富士山ガイドに行って来ますので、通常の講習はお休みとなります。

⚫︎ジム講習は、これまで通り、Dボル立川とランナウトを基本としております。
ストーンマジック、ベースキャンプ入間で講習を希望される方は、ご相談ください。

⚫︎岩場での講習は、小川山と瑞牆山を基本としています。
岩場リード講習、クラックリード講習、マルチピッチ講習、など。

どうぞよろしくお願いします。

2026年5月29日金曜日

山屋系リードクライマーは、ボルダリングに挫折しやすい

「リード上達のため、ボルダリングが必要だと感じたが、ボルダリングで挫折した。」という人は、非常に多いと思います。
特に、山屋系で「リードクライミングは中級レベルに達した自負があるが、ボルダリングはどうも好きじゃない・・」という人が多いです。

私自身もそうでしたし、講習生にも多いです。
講習生の中には、「私は、最初からボルダリングも楽しかった。」という全く問題が無い人もおりますが、それはラッキーな例です。

挫折ポイントを列挙して、何が大切かを考えてみましょう。
①落ちるのが怖い

タイプは様々です。

・リードだと、テンションによるギブアップができるが、それが不可。
・リードのハングドッグだと、他のホールドを持ってチョンボクリップしてトップロープ状態でムーヴを探る習慣があったが、それが不可。
・リードだと、腰から落ちてハーネスにぶら下がる感覚だが、ボルダーは足から着地せねばならない。
・リードのちょっとしたフォールより、ボルダーの着地の方がちょっと衝撃が強い。
・ボルダーで骨折した話を聞いて、何となく避けている。(落ちる態勢に応じたリスク分析など、頭脳戦は苦手)
・リードでも、垂壁やスラブでは着地姿勢が問われるので、実のところ強傾斜しか本気トライができない。

分析していくと、
「そもそもリードの本気トライも、ショボいんじゃないか?」
という感じが見てとれます。

だからこそボルダーに向き合うべきなのか?
それとも、ボルダー以前に「リードで落ちる練習」に向き合うべきなのか?

そこは、どちらから始めても良いと思います。
とりあえず、どっちかは改善を始める方が良いですね。

<クラックリード講習@城ヶ崎>

②できないムーヴに打ち込むのが、精神的にキツい

リードは、多くの場合は「部分的には、ムーヴができる」ぐらいの難易度のルートをトライします。

本気トライの例)
・オンサイトで良い勝負だった。
 → 作戦ミスなど、様々な反省点を考える。

・オンサイトには失敗したけれど、ハングドッグして数回練習したらムーヴはこなせた。
 → 数トライでのR.P.を目指そう。

・テンションかければムーヴはできるんだけど、なかなか繋がらない持久系ルート。
 → 体調を整えて本気トライに臨む日を作る。
   核心部or別パートの省エネを考える。
   全パートに身体が慣れるまで、日数や回数を打ち込む。(最終手段)

「ムーヴができない」例として、以下のケースは私は時期尚早と考えます。

   1本のハングドッグで核心部を、10〜20回練習するとします。
   これを、×3本やってダメだった。

大きな理由は、2つ。

⚫︎ハングドッグが、ボルダーの練習として見ると非効率。
(ビレイヤーも大変。テンション中も、地面に座っているときと比べ、完全な回復が見込めない)

⚫︎持久系のルートの場合、あまりに厳しいムーヴが連続すると、R.P.まで繋げられる見込みが薄い。

だからこそ、ボルダーをやって、色々な「できないムーヴ」を試行錯誤すべきです。
しかし、リードに慣れている人ほど、「できないムーヴ」に向き合う機会が少なく、精神的に追い込まれやすいです。

ここの精神的安全性を保つため、私なりに考えた方法は後述
<ボルダーで練習>

③雰囲気が苦手

ジムのリードエリアの休憩時間は、山の話が割と多かったりします。
「先週末のアイスクライミングは・・・」
「こないだの事故は・・・」
「〇〇のクラックエリアへのアプローチは・・・」
「こないだ、ワイドクラックを初めてやって・・・」
「八ヶ岳の積雪状況は・・・」

山のサロン的な雰囲気もあります。

一方で、ジムのボルダーエリアは違います。

いわゆる街の世間話をしたり、ストレッチ・筋トレなどのメニューを話していたり、他のボルダージムの話をしたり。
岩の話も、岩場ボルダーの話だったりします。

ここに、何となく居場所が無いと感じるのも、メチャクチャよく分かります。

特に、ボルダリングがそれほど好きでない状態で、意を決してボルダリングに打ち込み始めた頃は、1つのハードルになりやすいです。
私は、今となってはボルダリングも結構好きなので問題ないのですが、昔はキツかったです。

今は、モチベーションの高いボルダラーのトレーニング談義も聞けるし、雰囲気の違いは良さでもあると感じます。
<チムニーの練習>

④プライドが砕かれる

・ちょっと運動神経の良いビギナーには、すぐに抜かれます。
・「リードではあり得ない不安定さ。」、「山屋の登り方としては、危なっかし過ぎる。」と思うような登りの人にも、課題では全く敵いません。
・週2以上でボルダリングしているジムの常連さんには、全く敵いません。
基本的に雑な登りなんだけれど、核心部だけは繊細なテクニックを駆使するボルダラーに対して、全面的に尊敬する気にもなれずに戸惑います。
・苦手な課題は、低グレードでも一撃できないどころか、ムーヴ分解すらできないこともあります。(「5級でも全然ダメ!」などと騒ぎたくなる)
・「山では、絶対使わないでしょ。」と思うような課題を避けまくっていると、後ろめたい気持ちになったりします。

要するに、山屋であり、リードではそれなりに登れるというプライドが、邪魔をする訳です。
<ハサマリング>

②の続き

最後に、「できないムーヴ」の精神的安全性を保つコツを、いくつか考えます。

ボルダラーと言えども、やっぱり登れる課題が好き

⭐︎1〜2箇所のできないムーヴであれば、そこに何十回も打ち込んだとしても、ムーヴができたら完登できることが多いです。
それは、リードより遥かに「繋げやすい」からです。
これぐらいの成功体験を積むと、モチベーションを保てます。

⭐︎数回の練習でできる程度のムーヴだけのボルダリングも、十分に練習になったと考えます。
この難易度は、ハングドッグでも「よくあるレベルの難易度」なので、「こんなんじゃ、頑張りが足りない?」みたいな自問自答をしがちです。

リードクライマーで、ボルダリングも頑張ろうと意を決したくらいだと、ストイックな気持ちだけが先行し、自分を追い込みがち!

が、このレベルであれば、1日に何本も遊べるのがボルダリングの効率良さを示しています。
ボルダリングで、ホールド替え直後の壁が賑わうのは、このぐらいの難易度のルートが大量あるから、みんな楽しいのです。

リードは中級レベルでボルダリングが好きになれない場合、最初はこのぐらいのボルダリングを大量に楽しむことをオススメします。

⭐︎頑張って一撃を狙うぐらいの課題も、練習になったと考えます。
これは、リードで言えば、核心部のオンサイトトライに役立ちます。

<野猿谷で、ボルダーで講習>

そして最後に、経験上は最重要なポイントです。

⭐︎⭐︎⭐︎オーバーグレード気味な課題では、一手でも進んだら進歩だと考える。

例えば、普段4級をトライしている人が、3級に取り付くと大抵の場合は完登には至りません。
しかし、何回かやっていると、スタートから2手しかできなかったのが、「3手目ができるかも?」という気配が漂うケースがあります。

もちろん、それによって3級の完登に至るケースは稀です。
だから、「こんなの出来ても意味ない。」と思いがちです。

が、もともとの自分の原点を思い返してみると変な話です。
ボルダーは、「できないムーヴ」を効率的に練習するのが嬉しいポイントなのですから。

<天王岩で落ちる練習など>

とは言え、こればっかりだと流石に辛くなってくるとも思います。
なので、私は以下のようにしています。

プラン1)
十分に課題が豊富な壁では、出来そうな課題を触る。
  (頑張ってオンサイト〜1時間以内に完登、の間ぐらい)

結果として、全然歯が立たない課題だと分かったら、すぐに別の課題に転進したくなるが、進捗がありそうなムーヴであれば、しばらくは粘る。
  (例えば、3手目が取れたら、満足して別の課題に転進などと、自分ルールを決める。)

プラン2)
ホールド替え直前の壁、よく行くボルダーの岩場など、煮詰まって来たら、この理念を強く意識して粘る。
結果的に、完登ゼロの日になったとしても、進捗に対して満足して帰る。

ごく稀ですが、完登は諦めて「一手前進だけを目標に」とトライしていた課題が、奇跡的に登れるケースがあります。
例えば、3手目を取れたら、後半は意外と易しめだったとか。

これに当たると、すごい成功体験になります。
だいぶ、ボルダリングが好きになれる気がします。


個人的には、こういった気の持ちようが全然分からない頃は、ボルダラーの皆さんから「もっと打ち込みなよー」という声援が非常に辛かったなぁと思い返します。

山屋 → クライミングも頑張ろう → 最終的にはボルダリングもやらないと

という流れの人は、悩みが尽きないかなと思いますし、講習生の相談にも頻繁に乗っております。

真面目に、楽しくトレーニングしたいものですね。


<小川山のスラブ>


<兜岩のクラック>


<瑞牆、地獄エリア>

<クラックの森、にて>


<瑞牆、熊岩の上部>

2026年5月13日水曜日

オンサイト練習法

「オンサイトに強くなる」みたいな記述は、溢れていると思います。
実際、オンサイトに弱い人は多いです。

何が問題なのか、考えてみましょう。
<瑞浪、ワイドマスター2>

①オンサイトに強いとは?

一般的な回答
「R.P.グレードに対して、O.S.グレードが近い」

コンスタントに2日間でR.P.することが多いグレード(たとえば、5.12a)の1〜2個下のグレード(この場合は、5.11c〜d)は、コンスタントにオンサイト成功(例えば、成功率30%など)している人もいます。

この人は、かなりオンサイトに強い方だと言えます。

(注)この場合のグレードは、最高R.P.グレード、最高O.S.グレードではありません。
自分がトライするべきルートを決めるための基準として、コンスタントにR.P.やO.S.できるグレードを考える必要があります。

(注)R.P.では、ハングドッグによるムーヴ練習ができるので、「コンスタントにR.P.できるが滅多にO.S.成功しないグレード」というのが存在するのは止むを得ない。多くの場合、このグレードが最高O.S.グレードとなる。

もうちょっと解析的に言うと、
「(本人にとって)核心部のムーヴが一発で成功するぐらいのルートであれば、どうにかオンサイトしてしまう確率が高い人」
ということになります。

・入念なオブザベ
・行きつ戻りつによるホールド探り
・クリップ、レスト戦略(クラックの場合は、プロテクション戦略)
・省エネムーヴ
・土壇場の粘り
・核心ムーヴの頑張り
などの総合力が問われます。

個人的には、この総合力こそがリード能力の本質で、R.P.能力に関してはボルダー能力の方が大切な気がしてなりません。
総合力の前段は、基礎力

・「クリップ戦略」
全然オブザベできない人には、厳しいです。

・「核心ムーヴの頑張り」
全くランナウトしていない状態なのに落ちるのが怖すぎて、一手を出せないようでは勝負になりません。

・「行きつ戻りつによるムーヴ探り」
5.11のルート中、5.9セクションで行きつ戻りつしただけでバテバテだと、厳しい戦いでしょう。

つまり、①で言うところの総合力は、諸々の基礎力を前提にしています。

ここで言うところの基礎力

・オブザベ能力
・入門ルートを安定して省エネで登る能力
・落ちることへの慣れ(ランナウトしていない状態でO.K.)
・落ちてはいけないセクションへの対応(クライムダウン敗退の考慮、など)
・(クラックの場合)プロテクション戦略への慣れ

などに当たります。

これら基礎力が最低限のレベルになっていないと、総合力は発揮しようがありません。
総合力がゼロに等しい初級者は、具体的にどうやって練習すべき?

A:それでも、オンサイトトライは頑張ってみましょう

まずは、ジムでホールド替えした直後の壁を、無節操に触り散らかす癖を止めましょう。
オンサイトトライは、一生に一度きりの大切なものです。

心構え
1)分からないなりに、オブザベは入念に行うべし

2)最高O.S.グレードの2つ下のグレードは、本気トライと認識してトライすべし
 最高O.S.グレードは、得意系・ラッキー・集中力が合わさって達成されたものである。再現性は、極めて低い。それより少し易しいグレードこそが、ちょうど良い戦いになる。

3)さらに易しいグレードも、オブザベや行きつ戻りつを行い、オンサイト(orフラッシュ)を取りこぼさないように留意すべし

典型的には、グレードから甘く考えて取り付き、「テンショーン」と気軽にギブアップして、「グレード〇〇にしては辛いよー。」というコメントを放ってしまう人が、あまりに多いです。
ちゃんと準備して取り付き、粘ったり頑張ったりで、きっちり一撃する習慣を付けましょう。

B:基礎力が向上する練習方法を行いましょう

基礎力は、本気トライを繰り返しているだけでは、なかなか身に付かないものが多いです。

たとえば、以下の習慣。

・「テンション」によるギブアップ癖が抜けない人
・「オブザベって、全然分からない」と喋っている人

こういった基礎力は、本気トライを「週に2日×数回×10年」行ったとしても、ほとんど変わらず、むしろ出来ないことに慣れてしまう人が大勢おります。
<ひばりチムニー>

Aは、自覚の問題である程度は改善できます。
少なくとも、ここまで熟読できた方なら、素養はあるかと思います。

Bは、独学では改善できないのも理解できます。

自分に足りない基礎力を発見するのが第一のハードル、それを改善する練習方法を考えるのが第二のハードルです。
講習では、第一のハードルは私からの指摘、第二のハードルは私からの練習方法の提案、といった具合でハードルを緩和していきます。

ちなみに、マルチピッチやバリエーションは、R.P.能力ではなく、O.S,能力が問われます。
当塾は、山で安全に登るためのクライミング技術というコンセプトがあるので、スポーツとしてのクライミングの中では「O.S.が得意」ぐらいになってもらいたいと思っています。

<ひばりチムニーは、基礎力を測るぐらいのルートかな?
チムニーの入門グレード、落ちてはいけないセクションでクライムダウン敗退の考慮>

<「アームロックききますか?」は、5.10aなので基礎力を測るには、ちょっと難しめ?>

3月23日〜24日:瑞浪
ウォームアップなどの記録は割愛

1日目:ワイドマスター2 丸一日費やして、R.P.
2日目:ワイドマスター(5.12a) またしても敗退
<講習生の間ではお馴染みらしい「神秘体験」>

<スカーレット(2級)は、10回以上かかった>

<スカーレットの裏側も面白かったです>

最近は、野猿谷に3回、城ヶ崎ボルダーに1回、という感じです。

ここ最近で、最も印象深かった課題。
長尺なので、気が向いたら鑑賞ください。
<野猿谷、ボルダーの抜け口で困る編>

動画を編集するのが大変そうなので、以下の解説文で何となくイメージが伝われば幸いです。

・野猿谷のルーフクラック課題で、ルーフ部分はバラシ済み、2日目のトライ。
・2日目も、相当やり込んで、ようやく突破。。
・そのままトップアウトするつもりだったが、上部が悪め。(絶望するほど難しくはないが、落ちるとマット外になることも含め、リスクあり。)
・トンネルを抜ける作戦に変更。
・トンネルは、身体のサイズ的に無理と悟る。
・ハング下の外傾スタンスしかないチムニーまで戻り、根性の大レスト。
・直上ラインにチャレンジするが、抜け口のホールドが欠けそうでビビり、根性のクライムダウン。(自分でも戻れるか怪しかったが、やや奇跡的に成功。ちなみに、足ブラ状態でもマット外ではあるが、ギブアップフォールなら許される程度の高さ&下地なので、マントル失敗だけが大事故のリスクあり。)
・再び、外傾スタンスしかないチムニーで、根性の大レスト。
・意を決して、直上ラインを完登。

2026年4月19日日曜日

6月分の予約受付

遅くなりまして、申し訳ありません。
4月21日(火)の22時30分より、6月分の予約受付を開始いたします。

6月は、週末の半分が埋まっておりますが、ご理解下さい。
また、今年も富士山ガイドは7月10日〜31日くらいの期間に行う予定ですので、その期間を除いて通常通り講習可能です。

①ジム講習

これまで通り、原則として以下のジムで行います。

・ランナウト
・Dボルダリングプラスリード立川
・ストーンマジック

その他のジムでの実施に関しては、お問い合せください。

②主な講習場所

岩場リード講習   : 小川山
クラックリード講習 : 瑞牆
マルチピッチ講習  : 小川山、瑞牆、三ツ峠

では、どうぞよろしくお願いします。