2026年5月29日金曜日

山屋系リードクライマーは、ボルダリングに挫折しやすい

「リード上達のため、ボルダリングが必要だと感じたが、ボルダリングで挫折した。」という人は、非常に多いと思います。
特に、山屋系で「リードクライミングは中級レベルに達した自負があるが、ボルダリングはどうも好きじゃない・・」という人が多いです。

私自身もそうでしたし、講習生にも多いです。
講習生の中には、「私は、最初からボルダリングも楽しかった。」という全く問題が無い人もおりますが、それはラッキーな例です。

挫折ポイントを列挙して、何が大切かを考えてみましょう。
①落ちるのが怖い

タイプは様々です。

・リードだと、テンションによるギブアップができるが、それが不可。
・リードのハングドッグだと、他のホールドを持ってチョンボクリップしてトップロープ状態でムーヴを探る習慣があったが、それが不可。
・リードだと、腰から落ちてハーネスにぶら下がる感覚だが、ボルダーは足から着地せねばならない。
・リードのちょっとしたフォールより、ボルダーの着地の方がちょっと衝撃が強い。
・ボルダーで骨折した話を聞いて、何となく避けている。(落ちる態勢に応じたリスク分析など、頭脳戦は苦手)
・リードでも、垂壁やスラブでは着地姿勢が問われるので、実のところ強傾斜しか本気トライができない。

分析していくと、
「そもそもリードの本気トライも、ショボいんじゃないか?」
という感じが見てとれます。

だからこそボルダーに向き合うべきなのか?
それとも、ボルダー以前に「リードで落ちる練習」に向き合うべきなのか?

そこは、どちらから始めても良いと思います。
とりあえず、どっちかは改善を始める方が良いですね。

<クラックリード講習@城ヶ崎>

②できないムーヴに打ち込むのが、精神的にキツい

リードは、多くの場合は「部分的には、ムーヴができる」ぐらいの難易度のルートをトライします。

本気トライの例)
・オンサイトで良い勝負だった。
 → 作戦ミスなど、様々な反省点を考える。

・オンサイトには失敗したけれど、ハングドッグして数回練習したらムーヴはこなせた。
 → 数トライでのR.P.を目指そう。

・テンションかければムーヴはできるんだけど、なかなか繋がらない持久系ルート。
 → 体調を整えて本気トライに臨む日を作る。
   核心部or別パートの省エネを考える。
   全パートに身体が慣れるまで、日数や回数を打ち込む。(最終手段)

「ムーヴができない」例として、以下のケースは私は時期尚早と考えます。

   1本のハングドッグで核心部を、10〜20回練習するとします。
   これを、×3本やってダメだった。

大きな理由は、2つ。

⚫︎ハングドッグが、ボルダーの練習として見ると非効率。
(ビレイヤーも大変。テンション中も、地面に座っているときと比べ、完全な回復が見込めない)

⚫︎持久系のルートの場合、あまりに厳しいムーヴが連続すると、R.P.まで繋げられる見込みが薄い。

だからこそ、ボルダーをやって、色々な「できないムーヴ」を試行錯誤すべきです。
しかし、リードに慣れている人ほど、「できないムーヴ」に向き合う機会が少なく、精神的に追い込まれやすいです。

ここの精神的安全性を保つため、私なりに考えた方法は後述
<ボルダーで練習>

③雰囲気が苦手

ジムのリードエリアの休憩時間は、山の話が割と多かったりします。
「先週末のアイスクライミングは・・・」
「こないだの事故は・・・」
「〇〇のクラックエリアへのアプローチは・・・」
「こないだ、ワイドクラックを初めてやって・・・」
「八ヶ岳の積雪状況は・・・」

山のサロン的な雰囲気もあります。

一方で、ジムのボルダーエリアは違います。

いわゆる街の世間話をしたり、ストレッチ・筋トレなどのメニューを話していたり、他のボルダージムの話をしたり。
岩の話も、岩場ボルダーの話だったりします。

ここに、何となく居場所が無いと感じるのも、メチャクチャよく分かります。

特に、ボルダリングがそれほど好きでない状態で、意を決してボルダリングに打ち込み始めた頃は、1つのハードルになりやすいです。
私は、今となってはボルダリングも結構好きなので問題ないのですが、昔はキツかったです。

今は、モチベーションの高いボルダラーのトレーニング談義も聞けるし、雰囲気の違いは良さでもあると感じます。
<チムニーの練習>

④プライドが砕かれる

・ちょっと運動神経の良いビギナーには、すぐに抜かれます。
・「リードではあり得ない不安定さ。」、「山屋の登り方としては、危なっかし過ぎる。」と思うような登りの人にも、課題では全く敵いません。
・週2以上でボルダリングしているジムの常連さんには、全く敵いません。
基本的に雑な登りなんだけれど、核心部だけは繊細なテクニックを駆使するボルダラーに対して、全面的に尊敬する気にもなれずに戸惑います。
・苦手な課題は、低グレードでも一撃できないどころか、ムーヴ分解すらできないこともあります。(「5級でも全然ダメ!」などと騒ぎたくなる)
・「山では、絶対使わないでしょ。」と思うような課題を避けまくっていると、後ろめたい気持ちになったりします。

要するに、山屋であり、リードではそれなりに登れるというプライドが、邪魔をする訳です。
<ハサマリング>

②の続き

最後に、「できないムーヴ」の精神的安全性を保つコツを、いくつか考えます。

ボルダラーと言えども、やっぱり登れる課題が好き

⭐︎1〜2箇所のできないムーヴであれば、そこに何十回も打ち込んだとしても、ムーヴができたら完登できることが多いです。
それは、リードより遥かに「繋げやすい」からです。
これぐらいの成功体験を積むと、モチベーションを保てます。

⭐︎数回の練習でできる程度のムーヴだけのボルダリングも、十分に練習になったと考えます。
この難易度は、ハングドッグでも「よくあるレベルの難易度」なので、「こんなんじゃ、頑張りが足りない?」みたいな自問自答をしがちです。

リードクライマーで、ボルダリングも頑張ろうと意を決したくらいだと、ストイックな気持ちだけが先行し、自分を追い込みがち!

が、このレベルであれば、1日に何本も遊べるのがボルダリングの効率良さを示しています。
ボルダリングで、ホールド替え直後の壁が賑わうのは、このぐらいの難易度のルートが大量あるから、みんな楽しいのです。

リードは中級レベルでボルダリングが好きになれない場合、最初はこのぐらいのボルダリングを大量に楽しむことをオススメします。

⭐︎頑張って一撃を狙うぐらいの課題も、練習になったと考えます。
これは、リードで言えば、核心部のオンサイトトライに役立ちます。

<野猿谷で、ボルダーで講習>

そして最後に、経験上は最重要なポイントです。

⭐︎⭐︎⭐︎オーバーグレード気味な課題では、一手でも進んだら進歩だと考える。

例えば、普段4級をトライしている人が、3級に取り付くと大抵の場合は完登には至りません。
しかし、何回かやっていると、スタートから2手しかできなかったのが、「3手目ができるかも?」という気配が漂うケースがあります。

もちろん、それによって3級の完登に至るケースは稀です。
だから、「こんなの出来ても意味ない。」と思いがちです。

が、もともとの自分の原点を思い返してみると変な話です。
ボルダーは、「できないムーヴ」を効率的に練習するのが嬉しいポイントなのですから。

<天王岩で落ちる練習など>

とは言え、こればっかりだと流石に辛くなってくるとも思います。
なので、私は以下のようにしています。

プラン1)
十分に課題が豊富な壁では、出来そうな課題を触る。
  (頑張ってオンサイト〜1時間以内に完登、の間ぐらい)

結果として、全然歯が立たない課題だと分かったら、すぐに別の課題に転進したくなるが、進捗がありそうなムーヴであれば、しばらくは粘る。
  (例えば、3手目が取れたら、満足して別の課題に転進などと、自分ルールを決める。)

プラン2)
ホールド替え直前の壁、よく行くボルダーの岩場など、煮詰まって来たら、この理念を強く意識して粘る。
結果的に、完登ゼロの日になったとしても、進捗に対して満足して帰る。

ごく稀ですが、完登は諦めて「一手前進だけを目標に」とトライしていた課題が、奇跡的に登れるケースがあります。
例えば、3手目を取れたら、後半は意外と易しめだったとか。

これに当たると、すごい成功体験になります。
だいぶ、ボルダリングが好きになれる気がします。


個人的には、こういった気の持ちようが全然分からない頃は、ボルダラーの皆さんから「もっと打ち込みなよー」という声援が非常に辛かったなぁと思い返します。

山屋 → クライミングも頑張ろう → 最終的にはボルダリングもやらないと

という流れの人は、悩みが尽きないかなと思いますし、講習生の相談にも頻繁に乗っております。

真面目に、楽しくトレーニングしたいものですね。


<小川山のスラブ>


<兜岩のクラック>


<瑞牆、地獄エリア>

<クラックの森、にて>


<瑞牆、熊岩の上部>

2026年5月13日水曜日

オンサイト練習法

「オンサイトに強くなる」みたいな記述は、溢れていると思います。
実際、オンサイトに弱い人は多いです。

何が問題なのか、考えてみましょう。
<瑞浪、ワイドマスター2>

①オンサイトに強いとは?

一般的な回答
「R.P.グレードに対して、O.S.グレードが近い」

コンスタントに2日間でR.P.することが多いグレード(たとえば、5.12a)の1〜2個下のグレード(この場合は、5.11c〜d)は、コンスタントにオンサイト成功(例えば、成功率30%など)している人もいます。

この人は、かなりオンサイトに強い方だと言えます。

(注)この場合のグレードは、最高R.P.グレード、最高O.S.グレードではありません。
自分がトライするべきルートを決めるための基準として、コンスタントにR.P.やO.S.できるグレードを考える必要があります。

(注)R.P.では、ハングドッグによるムーヴ練習ができるので、「コンスタントにR.P.できるが滅多にO.S.成功しないグレード」というのが存在するのは止むを得ない。多くの場合、このグレードが最高O.S.グレードとなる。

もうちょっと解析的に言うと、
「(本人にとって)核心部のムーヴが一発で成功するぐらいのルートであれば、どうにかオンサイトしてしまう確率が高い人」
ということになります。

・入念なオブザベ
・行きつ戻りつによるホールド探り
・クリップ、レスト戦略(クラックの場合は、プロテクション戦略)
・省エネムーヴ
・土壇場の粘り
・核心ムーヴの頑張り
などの総合力が問われます。

個人的には、この総合力こそがリード能力の本質で、R.P.能力に関してはボルダー能力の方が大切な気がしてなりません。
総合力の前段は、基礎力

・「クリップ戦略」
全然オブザベできない人には、厳しいです。

・「核心ムーヴの頑張り」
全くランナウトしていない状態なのに落ちるのが怖すぎて、一手を出せないようでは勝負になりません。

・「行きつ戻りつによるムーヴ探り」
5.11のルート中、5.9セクションで行きつ戻りつしただけでバテバテだと、厳しい戦いでしょう。

つまり、①で言うところの総合力は、諸々の基礎力を前提にしています。

ここで言うところの基礎力

・オブザベ能力
・入門ルートを安定して省エネで登る能力
・落ちることへの慣れ(ランナウトしていない状態でO.K.)
・落ちてはいけないセクションへの対応(クライムダウン敗退の考慮、など)
・(クラックの場合)プロテクション戦略への慣れ

などに当たります。

これら基礎力が最低限のレベルになっていないと、総合力は発揮しようがありません。
総合力がゼロに等しい初級者は、具体的にどうやって練習すべき?

A:それでも、オンサイトトライは頑張ってみましょう

まずは、ジムでホールド替えした直後の壁を、無節操に触り散らかす癖を止めましょう。
オンサイトトライは、一生に一度きりの大切なものです。

心構え
1)分からないなりに、オブザベは入念に行うべし

2)最高O.S.グレードの2つ下のグレードは、本気トライと認識してトライすべし
 最高O.S.グレードは、得意系・ラッキー・集中力が合わさって達成されたものである。再現性は、極めて低い。それより少し易しいグレードこそが、ちょうど良い戦いになる。

3)さらに易しいグレードも、オブザベや行きつ戻りつを行い、オンサイト(orフラッシュ)を取りこぼさないように留意すべし

典型的には、グレードから甘く考えて取り付き、「テンショーン」と気軽にギブアップして、「グレード〇〇にしては辛いよー。」というコメントを放ってしまう人が、あまりに多いです。
ちゃんと準備して取り付き、粘ったり頑張ったりで、きっちり一撃する習慣を付けましょう。

B:基礎力が向上する練習方法を行いましょう

基礎力は、本気トライを繰り返しているだけでは、なかなか身に付かないものが多いです。

たとえば、以下の習慣。

・「テンション」によるギブアップ癖が抜けない人
・「オブザベって、全然分からない」と喋っている人

こういった基礎力は、本気トライを「週に2日×数回×10年」行ったとしても、ほとんど変わらず、むしろ出来ないことに慣れてしまう人が大勢おります。
<ひばりチムニー>

Aは、自覚の問題である程度は改善できます。
少なくとも、ここまで熟読できた方なら、素養はあるかと思います。

Bは、独学では改善できないのも理解できます。

自分に足りない基礎力を発見するのが第一のハードル、それを改善する練習方法を考えるのが第二のハードルです。
講習では、第一のハードルは私からの指摘、第二のハードルは私からの練習方法の提案、といった具合でハードルを緩和していきます。

ちなみに、マルチピッチやバリエーションは、R.P.能力ではなく、O.S,能力が問われます。
当塾は、山で安全に登るためのクライミング技術というコンセプトがあるので、スポーツとしてのクライミングの中では「O.S.が得意」ぐらいになってもらいたいと思っています。

<ひばりチムニーは、基礎力を測るぐらいのルートかな?
チムニーの入門グレード、落ちてはいけないセクションでクライムダウン敗退の考慮>

<「アームロックききますか?」は、5.10aなので基礎力を測るには、ちょっと難しめ?>

3月23日〜24日:瑞浪
ウォームアップなどの記録は割愛

1日目:ワイドマスター2 丸一日費やして、R.P.
2日目:ワイドマスター(5.12a) またしても敗退
<講習生の間ではお馴染みらしい「神秘体験」>

<スカーレット(2級)は、10回以上かかった>

<スカーレットの裏側も面白かったです>

最近は、野猿谷に3回、城ヶ崎ボルダーに1回、という感じです。

ここ最近で、最も印象深かった課題。
長尺なので、気が向いたら鑑賞ください。
<野猿谷、ボルダーの抜け口で困る編>

動画を編集するのが大変そうなので、以下の解説文で何となくイメージが伝われば幸いです。

・野猿谷のルーフクラック課題で、ルーフ部分はバラシ済み、2日目のトライ。
・2日目も、相当やり込んで、ようやく突破。。
・そのままトップアウトするつもりだったが、上部が悪め。(絶望するほど難しくはないが、落ちるとマット外になることも含め、リスクあり。)
・トンネルを抜ける作戦に変更。
・トンネルは、身体のサイズ的に無理と悟る。
・ハング下の外傾スタンスしかないチムニーまで戻り、根性の大レスト。
・直上ラインにチャレンジするが、抜け口のホールドが欠けそうでビビり、根性のクライムダウン。(自分でも戻れるか怪しかったが、やや奇跡的に成功。ちなみに、足ブラ状態でもマット外ではあるが、ギブアップフォールなら許される程度の高さ&下地なので、マントル失敗だけが大事故のリスクあり。)
・再び、外傾スタンスしかないチムニーで、根性の大レスト。
・意を決して、直上ラインを完登。

2026年4月19日日曜日

6月分の予約受付

遅くなりまして、申し訳ありません。
4月21日(火)の22時30分より、6月分の予約受付を開始いたします。

6月は、週末の半分が埋まっておりますが、ご理解下さい。
また、今年も富士山ガイドは7月10日〜31日くらいの期間に行う予定ですので、その期間を除いて通常通り講習可能です。

①ジム講習

これまで通り、原則として以下のジムで行います。

・ランナウト
・Dボルダリングプラスリード立川
・ストーンマジック

その他のジムでの実施に関しては、お問い合せください。

②主な講習場所

岩場リード講習   : 小川山
クラックリード講習 : 瑞牆
マルチピッチ講習  : 小川山、瑞牆、三ツ峠

では、どうぞよろしくお願いします。

2026年3月28日土曜日

クラックの固め取り

クラックにおいて、プロテクションの固め取りという戦術があります。
1つのプロテクションが抜けても、直近のプロテクションがバックアップとなり、事故を免れる方法です。

プロテクションセットは、ヒューマンエラーをどうやって防ぐか?という戦いです。
もちろん、正常性バイアスとか、焦りとかへの対処も大切ですが、二重化というのは最もシンプルな対策です。

過去にも何度も書いており、さすがに書き飽きた感もあったのですが、未だに講習生とのディスカッション主要議題の1つです。

様々な観点がありますが、今回は網羅的に行きたいと思います。
<久々に岩場講習のMさん>

①具体的な戦略

A)核心部に入る前に、2つ連続して取る。
B)プロテクション間隔を短めにすることにより、結果的に固め取り相当にする。

Aは、核心前でしっかりとプロテクションセットできるルートで有効です。
Bは、難しさが連続するルート(例、ジャミング真っ向勝負の持久系)で有効です。

Aの場合は、ボルトルート並みにはランナウトすることを許容することが多いです。
Bの場合は、ジム程度、またはジム以上にプロテクション間隔を短くすることが多いです。(長いルートの後半は、もっと間隔を伸ばす)

そのため、Bの方が恐怖心は小さく抑えられます。
ただ、それはメリットでもあり、デメリットでもあります。
例えば、Bで最終プロテクションが腰(トップロープ状態の上限付近)でも、1つ下のプロテクションは足首というケースです。

この場合は、「いつでも、テンションギブアップできる」、「落ちても、ほとんど落ちない」といった安心感はあり、1つ下のプロテクションが足首であることが意識の外になりがちです。
特に、ルート下部では固め取りの意味が無くなってしまうミスが散見され、下地が悪いルートでは重大事故に繋がりやすいです。

かと言って、難しさが連続するルートでAを選択すると、ジャミングやフットジャムの場所を埋め過ぎてしまうという問題も発生します。

つまり、AとBの使い分け、Bを選んだ場合の1つ下のプロテクションからのランナウト意識、という2つの問題は、大変ですが永遠のテーマとなるかと思います。

<城ヶ崎、クラックリード講習>

②固め取りをすべき場面

A)できれば、常に
B)自分が落ちる可能性があると感じた場面で

これは、Bが一般的だと思います。
ボルトルートでも、そのルートに取り付く人なら当然安定して登れそうなセクションはランナウトしており、絶対に墜落が許されないケースがあります。
同様に、クラックでも本人が落ちそうもないと感じるのであればプロテクションは不要というのが一般的です。

また、ごく僅かにスリップフォールや岩が欠けるリスクを感じる場面では、念のために1つだけプロテクションを決めるというケースもあります。

つまり、「固め取り、1つだけ、プロテクションなし」の3択をしながら前進していきます。

私自身の例を挙げます。
多くの講習生の場合、これを3〜4つぐらいグレードを下げて読み替えると、私と近い考え方になるかと思います。

5.8ぐらいのクラックだと、プロテクションなしで進む距離も長いです。
少々バランスを崩してもジャミングで落ちそうも無いと感じていたり、チムニーで落ちそうも無いと感じているケースが多いからです。
また、クライムダウン敗退の余裕もあります。
ただ、所々に不安箇所がある(万が一のスリップ、など)ので、カムを決める場所が出てきます。
多くの場合、固め取りまでは行いません。(グレードの辛さ、苦手系などで不安を感じれば、別です。)

5.10前半のクラックでは、大抵の場合は核心部で固め取りを行います。
核心以外は、プロテクション無しで進む場所もあり、カム1つで進む場所もあり、という感じです。
3つの使い分けが、最も分散するグレード帯だと感じています。

5.11a以上のクラックでは、ほとんど常に固め取り状態になります。
非常に持久力の要求されるクライミングになりますが、これをしないと怖くて登れません。
所々、易しいセクションが出てくれば、他の2つの作戦も使用します。
もちろん、5.11以上のクラックでも、半分以上は5.10aというルート構成もあり、対応策はルート毎に異なります。

(こういう事情もあり、私は5.10後半以上のクラックは十二分に難しいと感じている)
<カムで落ちる練習 & エイドダウン敗退の練習>

③いわゆる核心部ではなさそうだが、不安を感じた場合

原則、固め取りを行います。

直前にムーヴが読めなかったが、突破してみたら余裕だったというケースも多いです。
それで毎回固め取りなんてキリが無いと思う方もいるでしょうが、不確定要素への判断は安全側に寄せる必要があります。

直後のムーヴ自体はカム1つでも良さそう(ムーヴで落ちる可能性は、ほぼ無い)だが、突破した後にカムセットできずにギブアップフォールする可能性(もしくは、それが怖くてプルプルしながらカムセットを頑張っている自分の未来)が想定されるケースもあります。
これも、固め取り推奨です。

この観点は、オンサイトトライをする上で非常に重要です。
これを面倒くさがる人は、トップローパー(この場合、トップロープリハーサルをしてからリードしたがる人)への道を辿るか、単なる怖いもの知らずだと思います。
<アドバンスクラック講習1日目@城ヶ崎ボルダー>

④あえて固め取りをしない戦術をどう考えるか?

完全にボトミングでカムが効いたケースなど、「これが抜けるぐらいなら、もう何も信じられないよ。クライミングなんて辞めた方が良い。」と感じることもあるでしょう。
その場合は、1つで突っ込むことも考慮に入れます。
ただし、私は可能な限り固め取りを探し、固め取りが非常に難しいケースに限ってリスク受容しています。

また、地面から非常に近く、下地も平らな土などのケースでは、最悪グランドしても怪我の程度が比較的マシという判断で、カム1個で突っ込むこともあります。
<洞窟ボルダー>

⑤「カムが足りなくなるので、固め取りを避けたい」という心理はどう考えるか?

物量作戦、バッククリーニング(クライムダウンなどして、手前のカムを回収して登り直す方法)、どちらも非常に持久力が要求される作戦です。

どちらも出来ない(疲れて登れない)のであれば、自分にはそのルートにトライする資格なし、と考えます。
持久力と安定感を磨いて、出直しましょう。
<アドバンスクラック講習2日目@城ヶ崎の「あかね」>

⑥ワイドクラックの「ズラっしんぐ」
 
5番以上のサイズでよくある、カムをズラすことによってプロテクション位置を変える方法があります。
私も許容していますが、ズラしたらカムがスタックしてしまった(しかも、フレアー部分とかで効きが不安あり)などの怖い目に遭ったこともあります。
また、ズラしている最中はノープロテクションの状態となるため、ムーヴが完全に安定している必要があります。

その際は、同じサイズのカムを2つ持っていき、2つを交互にズラしていく(上の6番をさらに上にズラす、下の6番を上のカムを追い越さない程度に上にズラす)という方法をよく使います。
これであれば、「ズラっしんぐ」の最中でもカム1つは効いており、ムーヴ中は固め取りされている状態です。

あるいは、途中で出てきた他のサイズのカムが効く場所を最大限活用し、バックアップにする方法もあります。特に、ルート全長が長い場合は、それだけでも死亡・重大事故の可能性が防げることもあります。

前述のグレードイメージの通り、自分にとってほぼ安定して登れそうな課題では、そこまでせずに5番、6番を1つずつしか持たずに、通常の「ズラっしんぐ」を許容することも多いです。
<ISさんのリクエストにより、振れ止めありのフィックスロープ練習>

「そこまで手間をかけていたら、登れる課題も登れなくなっちゃう。」と思う人もいるでしょう。
あるいは、「そんなこと考えるなんて、無理じゃない?(オブザベであれ、トライ中であれ)」と思う人もいるでしょう。

ただ、やっぱりカム抜けで死んだり、大怪我をしている人は結構おります。
<初ユマグリのYIさん>

あなたのリードそのもの・カム抜け・墜落姿勢に対する恐れが、あなたのリスク管理能力を高めるエンジンとなってくれることを願います。

その恐れが、トップロープや、強い人に連れて行ってもらう、などの思考停止の方向性に行かないように、細心の注意、深い洞察力が必要です。
<本日の講習は、作業系の練習に絞って>

<クリップだけで振れ止めにしたり、ロープを固定したり、色々やってみる>

<ハング越えに苦戦するYIさん>

<トラバースに苦戦>

2026年3月26日木曜日

名張、3回目

3月10日(火)〜12日(木)は、自分のクライミングで名張へ。
桂くんと。
Campagne(5.10a)を登る私

看板ルートのモスラパワー(5.11c)をトライする桂くん

名張は、クラック主体の岩場です。
柱状節理で、柱と柱の間を登っていくようなイメージです。

垂壁主体になりますが、柱を折ったような部分にハングやテラスが出現するという感じです。

フリクションは、小川山・瑞牆などの花崗岩のようにザラザラでも、河原の岩のようにツルツルでもない、丁度中間といった感じです。
さらに、同じカムのサイズが何メートルも続くパートが頻出、ルート全長も30mを越えるものが結構あり、ジャミングの練習場として有名です。

また、カチが少ないためにフットジャム以外のスタンスは非常に悪いと感じます。
さらに、フリクションの関係で外傾スローパー(テラスなどの水平スローパーは流石に保持できるが)が極端に悪いと感じるため、柱状節理のカンテ部分がホールドとして使いづらく、フェースとクラックのミックス系のムーヴを封じてくる傾向にあります。
ガンバ

当然、得意なサイズであればガバガバ、苦手なサイズ(一般的には、シンハンドと膝が入らないオフウィズス)は四苦八苦となります。

例えば、
・手はシンハンドだけど、フットジャムはワイドハンド部分でバチ効きだからどうにかなる
・フェースミックスのムーヴで解決
・ワイド技術も駆使して、どうにか突破
などの選択肢が使いづらい訳です。
無事にR.P.

個人的には、指の変形の影響で苦手サイズ(というか物理的に無理そうなサイズも結構ある)が広範囲な私は、積極的に向かわないタイプの岩場ではあります。

とはいえ、せっかく誘ってもらったことだし、苦手なりにグレード落とせば登れたりするものもあるし、ワイドハンド以上のサイズなら指の影響も少ないので普通に登れるし、といった感じで再訪しました。
それがどうした(5.10c)を登る私

さて、初日は極寒・・・。

・Get Wild(5.9、フィンガー〜ワイド) O.S.
アップからして苦戦気味
寒さも相まって、名張のスベスベのフリクションを再認識・・・。

・Paprika(5.10b、OW) オンサイト失敗。エイドダウンして、2トライ目でR.P.。
いわゆる膝が入らない5番サイズが、自分としては核心になる。
ただ、5番セクションは短いので、色々と駆使して登ることは出来た。

・Free Stone(5.11a、フィンガー〜ワイド) 敗退
ミックス系のルートかと期待したが、苦手サイズのジャミング真っ向系になった。
やっぱり、どうしようもなくて敗退。

・Campagne(5.10a、ハンド〜ワイド、27m) O.S.
あまりにも寒い・・・。
終盤のチムニーに入ると、ようやく風が避けられて、体幹が冷える心配が無くなったが、抜け口のムーヴで結構苦戦した。
密林(5.10a)をO.S.する桂くん

2日目
本日は、桂くんのモスラパワーをビレイがてら、軽めに流す方向で。

・Crack Baby(5.7) 再登
・名張入門(5.9) 再登、こちらはちょっと苦戦

・それがどうした(5.10c、凹角ミックス系、38m) O.S.
せっかく名張に来たんだけれど、やっぱり指が気になって、ムーヴ構成がミックス系の課題ばかりに目が向く私。

下部のラインは、パンピングアイアン下部を登った。トポのラインは、途中で左に行くような書き方だが、パンピングアイアン下部からアプローチした今回のラインの方が自然に思えた。
最上部で、パンピングアイアン終了点まで繋がる5.10aの8mも含めて、38mのピッチとして登った。
最後の8mで相当苦戦した。

・密林(5.10a、ミックス系、29m) フォロー回収
これは、かなり辛い気がした。
しかも、終了点直下が・・・。
もいち(5.10b)を敗退する桂くん

3日目
本来はレスト日であったが、天気予報が4日目の雨を告げており、止むを得ない連登。
指は随分と腫れているし、全身疲労もあるので、ワイドの垂壁系に絞って登る方向で。

・だんだん(5.8、ワイド系) O.S.
・New Wave(5.9、ワイド系) O.S.
・チビゴジラ(5.10d、フィンガー〜ワイド、ミックス系でもある) O.S.
やっぱり大苦戦。ギリギリ登れた。

・ジュマンジ(5.10b、ワイドハンド〜フィスト主体) O.S.
奇跡のように、指の変形を気にせずにジャミングを連続できるセクションがあり、楽しい。
たまには、こういうので気持ちよくなると、何かを思い出せる気がする。
<チビゴジラに向かう桂師匠>

チビゴジラ(5.10d)をR.P.する桂くん

2026年3月16日月曜日

5月の予約に関して

5月16日(土)、23日(土)、24日(日)に関しては、どれか1〜2日間で予定が入る見込みになってしまいましたので、カレンダーに「未定」としておきました。

今夜から5月の予約開始のところ、お騒がせして申し訳ありません。

2026年3月11日水曜日

5月の予約受付

3月16日(月)の22時から、5月分の予約受付を開始いたします。

岩場リード講習は小川山、クラックリード講習は瑞牆、マルチピッチリード講習は小川山、瑞牆、三ツ峠などを予定しています。
ただ、東京周辺も登れる時期なので、相談には対応いたします。

ジム講習は、Dボルダリングプラスリード立川、ランナウトを基本としつつ、相談には対応いたします。

では、よろしくお願いします。