2025年6月6日金曜日

マルチピッチのレスキュー講習

ここ1ヶ月半ほどバタバタしていたので、まとめて色々と更新しています。
これで、ようやく最近の写真は使い切りました。
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STさんの呼び掛けで、マルチピッチのレスキュー講習を行いました。

対象は、マルチピッチリード講習の卒業者。(アドバンスマルチは、未卒業でO.K.)
「意識付けのために、1年に1回だけでも毎年やろう!」というSTさんの声がけです。

マルチ卒業生で興味をもった方は、是非お問い合わせください。
<越沢バットレス2P目で、リードがフォールして負傷したという設定>

1日目は、ストーンマジックにてロープワーク講習。

マルチピッチリード講習で教えるような基礎、懸垂下降の登り返しまでは、「一応はできる。」という前提で、一般的なロープレスキュー手法を確認していきます。

※実際は、結構忘れている部分が大きいと思うし、習熟度の問題もあります。上記の基本も、復習受講して欲しいとは願っています。

・リードビレイからの脱出
・ムンターヒッチの仮固定
・セカンドビレイからのロワーダウン
・介助懸垂
・引き上げ
など。

1日で講習しても全然反復の時間が無いのですが、とりあえず手持ちの選択肢を増やしていただく、という程度です。
普段のロープワーク講習なら、上記1つを選んで様々な検証作業などを行うところですしね。
ただ、一応はマルチ卒業者対象なんで、山岳会とかで頼まれる団体向けレスキュー講習よりは理解してもらえていると感じます。
来年以降も継続実施の予定なのが、私としても救いですね。

あと、一番厄介なリードレスキュー(ロープ半分以上出たリード中に、リードが負傷して云々・・・)には今回は触れません。
<とりあえず仮固定して、今後の方法の検討に入る2人>

2日目は、越沢バットレスで実地訓練です。

あまりにビショビショだったので、1P目は私がリード。
2P目を途中までリードしていただき、フォールしてカムが抜けて負傷、という想定でロープにぶら下がってもらいます。
<傷病者役も、声の届く範囲にいるので、一緒にプランニングが可能>

今回の設定

①傷病者
・右足が非常に痛い(荷重不可、曲げるのも不可、押すのも痛い)
・動いてみたら左肩が痛い(その腕でホールドが引けない)
・若干のパニック気味(見えないところで、一人でロープ作業などをさせるのはリスクが高い)
★上記3点以外は、おおむね元気

②壁の状況
・壁には、残置支点が一切ない。
※「残置無視で登っていたが、事故後は残置利用に切り替えて脱出にフォーカス。」という非常手段は使えない壁。

・天候、時間帯、アプローチ、携帯の電波状況、などは全て現場の通り。
<リードに使用したカムの回収に向かうSTさん>

解法は、もちろん色々あると思います。
3人パーティ設定なのも、選択肢に幅を広げます。

今回の方々は、「どうにか傷病者をビレイ点に引き戻し、介助懸垂して地上に降りる」という流れを選択しておりました。

その際、傷病者の緊急度(ショック症状が出ている、低体温症が出ている、などの時間的制約が大きい)は低いという設定で、日没までも十分に時間があったのでリードに使用したカムはクライムダウン回収していただきました。
<まずは、トップで1人目が懸垂下降>

今回3人が選んだ方法は、効率面でベストではないと思います。

その一方、兎にも角にも「自力で問題を解いた。」という経験で、得るものは大きかったのではないでしょうか。
※作業中に小技・リスク要素などのアドバイスはしますが、「なるべく大方針には口を出さない」というのは、マルチ講習・読図講習・雪山講習などと同じスタイル。
<残りの2人が、「トップが設定したロープで介助懸垂する」という方法を選択>

まだ日暮れまで時間もあったので、取り付きで反省会を1時間ほど。
それからアプローチも救助訓練をやりたいという話で、頑張って2時間ほどで林道まで戻りました。
<背負って渡渉したり、3人パーティなのを利用してロワーダウンしたり、色々大変>

ちなみに、足を骨折していたと仮定すると、本来は固定して担架搬送がセオリーになります。
そうなると、3人パーティでは不可能なので、周囲に助けを求めるか、救助要請になります。

ただ、「正直、この状況なら僕なら背負っちゃいますねー。」というSTさんの意見もあり、「じゃぁ、どこまで現実的に可能か、実際にやってみましょう!」というのが後半の講習内容。

実際、
・渡渉、鎖場などで、リスクも実感。
・ロープ確保の有効性と限界を実感。
・傷病者が脚をぶつけて悪化しそうなことを実感。
・背負う人、傷病者、サポートの人、などの心情や動きの難しさを実感。
・講師から、背負いやサポートの小技アドバイス、焦りで妥協しがちなリスク要素諸々の説明。
などと盛り沢山で、充実しました。

どの程度のアプローチまでなら背負い搬送が有効か、などの判断材料にもなったかと思います。

ここまでの想定訓練をやる機会は、なかなか無いですよね。
普通は、背負い搬送も30分とか運んで終わりだし、本当にロープ確保が必要な状況で訓練するのはリスクもありますから。

今回講習した技術は、どれも習得までには時間が必要で、正直すぐに忘れてしまうものが多いとは思います。
ただ、とりあえず「実際は、こうなるのか!」というイメージが深まったのは、第一歩としては良かったかと思います。
<マルチピッチリード講習@小川山>

<メインロープによるビレイ点作成。こういう基礎も、やっぱり大切。>

<1P目>

<アドバンスマルチ@小川山>


<「めっちゃ、悪いじゃないですかー」>

<3P目のチムニー>

<リード交代>