2025年6月6日金曜日

弱点の克服に関して

弱点克服は、かなり難しいものです。

A:完全克服できるもの
B:身体的特性などを理由として、ほぼ不可能なもの
C:かなりの程度、軽減できるもの

まず、この3つに分けて考える必要があります。
キャリアの浅い人は、Aを何個も克服することで目に見える成長を実感し、さらにモチベーションを高める傾向にあります。
ベテランは、Cを考えざるを得ません。ただ、考える要素が豊富で、ベテランだからこそ楽しい分野かなと思います。
<城ヶ崎の橋立で見つけたインバージョン課題、まさかの完登を決めたFZさん>

A:完全克服できるもの

例)
・ハンドジャムが全く効かなかった → 垂壁ぐらいなら大ガバに感じるようになった
・チムニーが全然ダメだった → 5.8ぐらいだったら、割とスイスイ行けるようになった
・懸垂が全くできなかった →連続5回ぐらいならできるようになった
・足置きが酷すぎた → 爪先周辺でスタンスを捉えられるようになった、低グレードなら足音が立たなくなった、など
・柔軟性が無さすぎた → ストレッチしたら、運動していない人の平均よりはマシになったと思われる
・全くオブザベできなかった → ジムならば、ある程度まで読めるようになった
・リードで全く落ちることができなかった → 膝下程度までなら落ちられるようになった

例は、
〇〇(全然ダメな状態) → 〇〇(初級レベルであれば、あまり問題にならない程度に解決済み)
という感じで書いています。

問題は、「この→に相当する部分で、何をやるか?」ですが・・・。
自分が継続しやすく、トレーニングとして合理的な方法を探す必要があります。
ここが自力解決できそうにない方は、是非とも講習へどうぞ。

もちろん、これらも練習を継続すれば、弱点どころか強みに変化します。
※「初級者の割には、〇〇は得意な方だ。」といった具合。

B:身体的特性などを理由として、ほぼ不可能なもの

例)
小さい人には、絶対に不可能なムーヴ。
大きい人には、絶対に不可能なムーヴ。

典型的には、以下です。
●小さい人には、絶対に届かない位置にスタートホールドがあり、何らかの事情で地ジャン不可。
●大きい人には、絶対に通り抜けられないトンネル。

<同じく、橋立で見つけたルーフクラック>

C:かなりの程度、軽減できるもの

これは、考察が難しいです。
例えば、僕の場合は185cmなので、狭いムーヴは不利になります。

まずは、一般論。
手足の距離が近いと壁から身体が離れるため、保持力が一層必要になります。
しかし、大きい人は体重が重い傾向にあるため、保持力の強化に重点を置いたトレーニングは指の故障リスクが高過ぎます。
※極端な例として、狭いカチ課題をイメージすると分かりやすいです。
※実際、私は若い頃に指を盛大に壊しており、指には不利を抱えています。

「じゃぁ、狭いムーヴはもう無理なのか?避けて生きて行くしかないのか?」
と考えてしまうと、なんだかクライミング生活が暗くなります。

次に、ある程度まで弱点をカバーする方法を考えます。

①体幹を強化して、ガバならば狭くてもグラグラしないようにする。
②指の力ではなく、ホールドを効かせる圧力(スローパー対策の圧力)の強化により、カチでもある程度までは保持できるようにする。
③ヒールフックなど、一般的に狭いムーヴ対策として有効と言われるムーヴに習熟する。
④片足は切ってフラッギングする、他人より1つ下の足からランジする(巨人でありながら、あえて距離出しで補うという発想)、凹凸を利用してニーロックなどの多用、などの他人とは異なるムーヴ選択肢を強く意識する。
⑤リードであれば、その他の部分の省エネを強化して、狭いムーヴでの消耗を補う。

まぁ、これらの大部分を封じてくる課題もあるのですが・・・。
・手がカチで、狭い。
・足が悪く、重心の選択肢が少ない。
・ヒールに適したスタンスが無い。
・SDスタート、低空トラバースなどで、片足を切ると地面に付いてしまう。
といった要素が3つ4つと並ぶと、「強くなってから出直させてください!」という状態になります。
この場合、①や②を僅かずつ強化して、数年後に再トライするしか無いかなと考えています。

この考え方は、小さい人にとってのリーチ不利問題、クラックのサイズ不利問題、もともと運動神経に自信がない人の努力方法、などへの応用が可能です。

ときどき、「リーチ不利な課題の対策を教えてください。」みたいな質問をされるのですが、この構図なので、「初心者への説明が複雑すぎるなー。」と感じます。

「不利な課題は、不利。」
「どうにかする方法は、課題による。(保持、足置き、体幹、ダイナミックムーヴ、別ムーブの発案、柔軟性、などなど)」
「不利さを軽減する一般的なトレーニング方法を私から提示するのは現時点では時期尚早なので、目の前の課題ごとに頑張ってください。」
「現時点の講習では、課題ごとの有利不利は一旦置いておき、誰にとっても必要な基礎トレーニングをしていきましょう。」
という回答が、精一杯です。

問題は、
根本解決は不可能だが軽減できそうな弱点 → 上記①〜⑤に相当する改善案の導出 → 実行&継続
という流れをどこまで作れるか、という話です。

あまりにも頭を使うし、根気も必要です。
例えば、講習生のレベルであれば、Aを中心に克服していき、Cはムーヴとトレーニングの理解が進んでから開始する方が現実的な気もします。

実際、①〜⑤のうちの半分くらいは、他の弱点を克服する際にも多少はやることになります。
そうすると、キャリア5〜10年目には相当なムーヴ理解度になっているはずなので、それからスタートしても良いかなと。

キャリア10年でモチベーションがそこそこあれば10年先を見据えることは可能でしょうが、キャリア1年で10年先を見据えるのは相当すごい人だけな気がします・・・。
<こちらは、普通の課題>

最近、小川山のエイハブ船長(1級)がようやく登れました。

こちらは、
●15年ぐらい前に何日もトライして全然ダメ。
当時は、エクセレントパワーを目標にして、ボルダーだけを行っていた期間中。

●数年前にトライして割と良い感触だが再現性が低過ぎる。

という思い出深い課題で、核心のカチを利用し、ある程度までムーヴが起こせたことに感慨深いものがありました。
まぁ、他人との相対評価では永遠に弱点なのですが、自分なりの成長を楽しむゲームとしては、割と満足行く結果です。