2016年6月13日月曜日

マルチは、トラブルの宝庫

6月11日(土)、12日(日)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性HSさん、女性KIさん。
<ビレイ点作り練習>

1日目の1ピッチ目。

2人が選んだのは、プロテクションが取りにくいスラブ。
パッと見、5.9以下ではあるんですが、一部のセクションでカムが効きそうにありません。
<色々と、リスク想定するHSさん>

まずは、HSさんのリード。

途中まではクラックが続きますが、ランナウトするセクションがこなせそうもなく、敗退。
が、しかし。

最後に決めたカムを足元にして、あと1歩のクライムダウンのムーヴが出来なくなってしまい、焦ります。
<懸案の1ピッチ目>

結局、効いているんだか怪しいカムを1つ打ち足して、精神安定剤としてクライムダウン。

これって、本チャンでマントルムーヴがどうしても怖くて出来ないときに、草みたいなのにスリング巻くと、なんだかランナウトしていない錯覚をしてマントル出来ちゃうのと同じですね。

「絶対やるな!」とは言えませんが、自分を騙しているだけなんで、気を付けてくださいませ。
<クラックからスラブへ>

続く、KIさん。

取り付く前から
「痺れそうですね。やってみたい。」
と、ポジティブ発言。
<リード交代して、KIさん>

そして、懸案の箇所で迷わずムーヴを起こします。

KIさんの普段の登りを見ていれば、ビックリするような思い切りの良さです。
普段は、危険なランナウトに入るときは、周りがイライラするほどクライムダウンを繰り返して絶対の安全策を取りたがるのに!!!
<残置ビナを回収しに、変則的なラインで下降>

「これ以上ランナウトして、落ちたら死ぬな。」
と私は思ったので、

「クライムダウン出来ますか!?一旦してください!」
と。

「えー、無理です!でも、進む分には行けそうです。」
<2日目>

しかし、私から見ていて、そこを越えても確実に抜けられるとはチョット思えず。

あまりに不安を感じたので、私からストップ指令。
たまたま近くにあった残置ボルトに捨てビナをして、敗退してもらいました。

※たまたま、2人が選んだラインは、既成のボルトライン付近だった。
<朝から暖かい>

降りてからも、しばらく会話が噛み合わず。
「ストップ掛けられなければ、登れた。」という雰囲気。。

15分くらい経って、KIさんが冷静に戻りました。
<弱点ライン>

「なんか、ズレがありました。」
「ランナウト、グランド、全てのリスクを覚悟して、5.8をフリーソロする気持ちで取り付いてました。」
「死をも覚悟していた気がします。」
「落ちられるようになろうと、毎晩ロングフォールの動画を見てたら、ちょっと恐怖心がマヒしたのかも。関係ありますかね?」

などと自己分析を披露してくれました。
<弱点ラインをつなぐ>

この心理状態、慣れたクライマーなら意図的に使うこともあると思います。

明らかにチョット危ないんだけど、確信犯的に突っ込む場合のメンタルコントロールみたいなもんで。
僕も、何回かは「いま、意図的にやっちゃったなー。」と思ったことがあります。

これを使えば、R付きのルートでも、少し成果が出せるかもしれません。
本チャンやアルパインでも、同じです。

でも、講習では止めてくださいませ!
<前回は通らなかったクラック>

さて、2日目。

前日の経験から、
「現状の自分たちの実力では、弱点ラインを突こう!」
という意識でトップアウト。

KIさんは、3ピッチ目から知っているラインに合流でしたが。
<そのまま縦走でピッチを伸ばす>

さて、この日は丸1日を壁の中で過ごす予定です。

ですが、昼過ぎにはトップアウト。

時間も余ったので、
「自分たちが興味あるピッチを、登りに戻ったりして良いですよ。」
という課題へ。
<フレアークラック>

と、ここでトラブル発生。
KIさんの判断力が、急激に低下。

前回の屋根岩でメンタル崩壊したときと同じで、何をやってもダメダメ状態に突然なりました。
<とりあえずトップアウト!>

頭痛もあるらしく、軽い熱中症だろうと思われる要素が沢山。

水分、行動食、大休止、冷たい岩に横になる、などで30分ほど。
これで復活して、夕方へと行動続行できました。
<トラバース>

マルチって、どうしても初心者は焦ってしまいます。

ビレイ点でギアラックも下ろさず、ザックも背負ったまま、水も我慢しちゃう人もおります。
<レスト中>

2時間そこらで登れるルートなら、それもアリです。

でも、意図的にやらないと危険ですよね。
<面白そうなクラック目指してトラバース>

今回、大きなトラブルは上記2つでした。

が、HSさんも程度の差こそあれ、似たようなミスは繰り返してました。
他にも、色々ありましたね。
<ちょっと突っ込みすぎかな?>

講習で、全てを教えることは出来ません。
というか、マルチピッチのトラブルなんて、誰一人完璧にこなせる人は居ないかもしれません。

2人は、マルチに人生を感じると、しきりに仰っていました。
まぁ、過去の講習生も何人か同じようなことを仰ってましたよ(笑)。
<辿り着いたクラック>

ただ、最初から自力だと危なすぎると感じる人が、講習に来てくれます。

失敗の本質を掴んで、反省方法を習得してくださればと思います。
<2人ともリードしたいとの希望で、HSさんはロワーダウンして来ました。>

ちなみに、その他の大きなポイントとして。

①ビレイポイントをどこにすると、どんなメリットがあるか意識していない。
(なんとなく、作れそうな場所で作っている。)

②下降のために、岩場の全体像を把握しながら登る意識が弱い。
(見当違いの方向に、懸垂下降しそうな雰囲気。)

③フォローを意識して、プロテクションを取っていない。
(トラバースラインで、プロテクションが不適切、など。)

④荷上げ失敗。
(まぁ、これは初心者が必ず通る失敗みたいなものなんで、講習中に失敗してもらって良かったかも。)

あとは、ほとんど講習生共通ですが、イレギュラーな事態になるとロープを絡ませますよね。
<という訳で、フォロー。最後のカムが低すぎるため、抜け口が危険になってしまった。>

何度も言いますが、全部を完璧にすることなんて無理ですよ。
いくらなんでも、現状はトラブルばっかりで、自力で行くのは怖いと思いますが。

先読みして、なるべくトラブルを回避すること。
ショートルートに近いくらい、安全なビレイを心がけて、楽しいピッチを味わうこと。

ちょっとずつ、ちょっとずつです。
<下降>