2025年12月1日月曜日

「好きな講習は何ですか?」という質問

2月分の予約受付は、本日開始しております。
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「石田さんにとって、最も楽しい講習は何ですか?」という質問は、定期的にもらいます。
他にも、最もやりがいのある講習、最も教えたい講習生など、角度を変えた質問は色々あります。

講習の本題とは逸れますが、今回は雑談的に。
<マルチピッチリード講習@つづら岩>

まず、最も楽しみな講習の1つは、卒業生が継続的に受講を続けてくれているものです。

例えば、ムーヴ講習。
最低限、ジムでリードできる程度に安定感が出てきたら、「ジムのリード講習を受講してオーケーです。」と、言い渡します。

残念ながら、そこでムーヴ講習の受講を辞めてしまう方が多いです。
そこで、しつこくムーヴ講習を継続的に受講してくれると、とても嬉しいです。

さらに上のクラスを卒業して、再度ムーヴ講習に戻ってきてくれると、さらに嬉しいです。
理由①
私が「本当は、もっとこういうことを理解しておくと、登れるようになるし、将来的に色々役立つ。」と考えていることを伝えることが可能です。

・フック系のコツ色々
・デッドポイントのコツ色々
・持てないホールドを良いスタンスなどで誤魔化すテクニック
など、私が普段考えている話を少しずつ解説していきます。

理由②
過去にも講習しているんだけど、独力での復習が難しい(&指摘されないと、すぐに元に戻ってしまう癖などもある)ことを継続的に指摘し続けることが可能です。

・スタティック練習にすぐに飽きてしまう人
・フォーム矯正で勘違いに走る人
・ムーヴの原理原則を考えるのが自分では難しくてオブザベが一向に上達しない人
などなど。

ちなみに、これは初期の頃から解説している話ながら、講習の最終奥義でもあると思っています。
これの習熟度が、「講習生のクライミング人生の最終的な到達レベルを決定付けるのではない か?」とすら思います。

理由③
卒業を目指していないため、焦り、私に対する苛立ち、などが無いため、講習中に嫌な空気になることが、ほぼ無い。

理由④
講習の全体像が見えているため、何のためにこれを覚えた方が良いと私が言っているかが、ある程度まで本人が想像できる。

※特に、マルチピッチ講習とかを知った上でムーヴ講習に参加してくれるような方は、この点では最も良いです。
別の言い方をすると
●より高度なことを講習できる
●地味なトレーニングにも意味を見い出せる
●講習生・講師のコミュニケーションに、お互いストレスが無い
といった所でしょうか。

これは、ムーヴ講習に限らず、ジムリード講習の再受講とか、岩場リード講習の再受講とかも同じです。

ちなみに、アドバンスクラック講習に至っては、最初から卒業システムが存在しないので、これを複数回受講できる人は、それなりの意識があるという風に感じています。
これに至る、1つの壁があります。

卒業して、1回だけ再受講に来たんだけど、結局は「できたつもりで、身に付いていないことの指摘」を受けるばかりで、「より高度なことを習うことはできなかった」という問題です。

例)
・ビレイを直された
・易しいムーヴにおけるスタティックが不十分と指摘された
・脇の締め方を修正された
・足置きの雑さを指摘された

これにより、モチベーションが下がるという問題です。

これって、理由②に挙げた通り、本当は最終奥義(基本の習熟度アップ)の話です。
ただ、人間って「もう自分は基本は出来ているんだから、もっと高度なことを教えて欲しい。」と思うものですよね。

基本の習熟度が最終奥義だなんて、なかなか信じられないのも、気持ちは理解できます。
(でも、信じてもらうしかないのですが・・・。)
<綺麗なハンドクラック>

だからこそ、この壁を越えた方を講習するのは、私にとっては一つの楽しみです。
少しずつ、上達して欲しいなと思います。
ちなみに、「やりがい」という点では、色々な意味で「手の掛かる講習生」も印象的です。
これは、学校の先生とかがよく言う話ですかね。
通常のクラスの中では、とにかくインパクトが強いです。
本人も「手の掛かる講習生」になりたくてなっている訳ではないとは思うのですが・・・。

こういう方には、講習内容だけでなく、「手の掛かる根本原因」を俯瞰できるようになって欲しいとすら思うのは、私のお節介が過ぎるでしょうかね(笑)。

実際には、性格とか長年の人生経験に起因するため、教えるとか教わるというのも難しいところがあり、あまり正面から指摘しないようにしています。
なるべく長い年月をかけて、搦手(からめて)から行くぐらいのつもりでアプローチしたいものです。
<アドバンスクラック講習>

あとは、ちょっと大変な講習(雪山、アプローチの遠いクラック、城ヶ崎の懸垂エリア、マルチピッチ講習、など)も、計画段階からシュミレーションを色々と練っているので、たまにやると楽しいです。

大半の講習をゲレンデっぽいエリアで行う私にとって、山っぽいことはそれだけで加点対象なので。
<ボルダーでの講習は、なかなか面白い>

高度なことを講習できるという点に絞れば、ボルダーで講習するのは面白いです。

場合によっては、入門的なインバージョンを講習したり、結構シビアなデッドポイントとかヒールフックのコツを話したりすことになります。
私自身が、普段のクライミングで意識しているぐらいの込み入った内容を講習する機会は、なかなか無いですからねー。
<クラックリード講習での、カムで落ちる練習中>

2025年11月28日金曜日

2月分の予約受付

12月1日(月)の22時より、2月分の予約受付を開始いたします。
どうぞよろしくお願いします!



①ジム講習の開催場所

Dボルダリングプラスリード立川、ランナウトを基本としますが、ストーンマジックでも講習可能です。
その日の講習を一番最初に予約した方の希望に、なるべく合わせます。

他のジムの場合は、講師の経費をいただくことになります。
お気軽にご相談ください。

②岩場での講習場所の予定

岩場リード講習:湯河原
クラックリード講習、アドバンスクラック講習:城ヶ崎

③雪山関係の講習

これまで通り先行予約を可能としていますので、3月分もお問い合わせください。
雪山講習の前日および翌日は、岩場での講習が難しいためです。
12月〜2月に関しても、私が空いているタイミングであれば、今からでも追加催行も可能です。

2025年11月26日水曜日

昇仙峡、コブラクラック(5.11c)がフラッシュできました

11月4日(火)は、桂くんと昇仙峡。
<ルート名不明のワイドでアップ>

コブラクラック(5.11c)のフラッシュができました。

指を変形させて以来、特に左手のジャミングが相当絶望的で、誤魔化しテクニックを独自進化させてきました(笑)。
<素直に楽しい!>

初期の頃は、「あそこは、ジャミングがバチ効き」とオブザベしても、現場に行くと指が入らないストレスが非常にメンタルに悪いと感じていました。
しかも、めちゃくちゃ頑張って指を入れると、相当指が痛い!

そんな訳で、キャメ2番以下のクラックは、極力避けておりました。

左手は、キャメ2番でもパラレルだと「そもそも手が入らない」or「入れるのに非常に時間が掛かり、抜くのも一苦労。」なのです。

講習で行うぐらいのグレードなら、どうにか他のムーヴで登れることがほとんどなので、ご心配なく。
<沢登り的というか、自然と笑顔がこぼれる>

数年経ち、自分の指なりのクラックのオブザベができるようになって来ました。

実際、あんまりクラックに登りに行っていなかったし、岩場はボルダー中心にやっていたので、そのぐらいの期間は掛かって当然です。
その間も、ジムでの自分流の練習方法に磨きを掛けてはおりました。
トレーニングの目標は以下。

①ジャミングには、人一倍の時間が必要になるため、ロックオフの持久力強化。
※ロックオフ:腕を懸垂のように曲げた状態で静止すること

②フェースに逃げて、クラックに復帰するというムーヴ構成が、他の人よりも多くなるので、それ対応の能力の強化。

例)
フェース直前に、高いところにカムを決める能力 → クラックムーヴ中のロックオフ能力
フェースの最後に、クラックに戻る際に完全スタティックでジャミングする時間的猶予を作る能力 → フェースムーヴ中のロックオフ能力
フェース部分のムーヴを読むオブザベ能力

要するに、ほとんどロックオフ能力ですね・・・。

実際の易しい課題とかで、次のホールドを触れるぐらいの高さで、3秒とか静止する練習をロックオフトレーニングと呼びます。
これだと、単純な懸垂力だけでなく、片手と両足の3点で身体を支えた状態で、身体中の様々な体幹を駆使して静止する能力が鍛えられます。
個人的には、懸垂能力が絶望的に伸びづらいと感じているので、こちらを少しずつ鍛えることにしています。
<フォロー回収する桂くん>

しかし、昨年の名張ツアー、瑞牆、ヨセミテと割とハンドサイズ以下のクラックを触る機会が結構ありましたが、やっぱりダメですねー。
5.11a以上でオンサイトできるのは、フェース系orワイドハンド以上のサイズの2択です。

指の変形が酷くなる以前、プロテクション良好の5.11bぐらいまでは割とオンサイト率が良かっただけに、心理的にもダメージがあります・・・。
<こういう遊びをするために、クライミングを始めたような気がします>

なかなか厳しい戦いですが、コツコツやろうと思います。

ちなみに、ロックオフトレーンングを続けると、他のサイズ(ワイドハンド、フィスト、オフィズス、チムニー)にもプラス効果は大きいです。
また、フェースやジムも含めた、全てのクライミングにプラス効果があります。

まぁ、一番の恩恵を感じるのは、リード中に先行クリップするのが今までより遥かに楽に感じることかもしれませんが。
本日のコブラクラックも(5.11c)は、核心はフェースだったり、後半の持久力勝負はワイドハンド以上のサイズだったりしました。
そういう意味では、トレーニング成功の証明(ハンド〜フィンガーへの対応力の強化)にはなっていないんですよね。

ただ、ワイド系以外のクラックで、5.11がフラッシュできたのは久々です。
緊張感あふれる体験ができて、今後の励みになりました。
<他のクラック>

<予想通り、こちらも本気オンサイトトライだった>

<5.10dのクラックをO.S.する桂くん>

<5.10cもO.S.する桂くん>


<コブラクラックをR.P.する桂くん>

2025年11月3日月曜日

1月分の予約受付

11月7日(金)の22時15分より、1月分の予約受付を開始いたします。

これまで通り、雪山講習・アイス講習は事前受付をしておりました。
前夜のジム講習、前日や翌日の岩場講習が不可能になるためです。
ただ、その条件さえ満たしていれば、今からでも雪山・アイスの講習は別日でも受付可能です。

ジム講習の場所に関しては、なるべく最初に申し込んだ方の希望に沿うように合わせています。
Dボルダリングプラスリード立川、ランナウト、ストーンマジックが主な候補です。
私から、ジム指定する場合もあります。

クラックリード講習、アドバンスクラック講習は、原則として城ヶ崎です。
岩場リード講習は、原則として湯河原です。
マルチピッチ講習は、1〜2月は原則行いません。

講習場所、料金、その他のお問い合わせがある方は、事前にメールなどでご相談ください。

2025年11月2日日曜日

半端者である自覚は難しい

10月29日(水)は、小川山。
31日(金)は、甲府幕岩。
どちらも、桂くんと。

両日のクライミング内容とは、全然関係のない話ですが・・・。
<小川山>

以前、ガイド見習いをしていたときに、色々と感じたことがありました。
最初に、お客さんは「自立したクライマーになることを、熱望していない。」という点があります。

・地形図を読んでルーファイせずに、人の後ろを歩いてもモヤモヤしていなさそう。
・天候判断など、お任せでも気にしない人も多い。
・撤退判断はガイドにお任せなのは当然として、敗退基準などについて突っ込んだ質問をして学ぼうという意識は感じない。

また、練習と称してフリークライミングの岩場に来ても同じです。

・トップロープを張ってもらい、ガイドが先に登って見本を見るのが当然。そうでないと嫌がる人もいる。
・ガバホールドの位置、スタンスの位置などは教えてもらいながら登りたいと思っている人も多い。
・リスク管理はガイド任せなので、トップロープで振られ落ちする場面などは想定しておらず、軽い振られ落ちでも怪我しそうになる場面がある。(「考えないでも、(ガイド講習会だし)大丈夫だろう」という思考に慣れている。)
もちろん、これを即座に悪いとは言えません。
例えば、「老後の楽しみとして、クライミングと緩く関わる方法としてガイド登山を選んでいるのだ。」と言われれば、我々とは別ジャンルの人だと認識すべきです。

とはいえ、私は相当な教え好き、しかも当時は20代前半の熱い盛りです(笑)。
果敢に「自立し、考えて登ることの楽しさ・厳しさ」を説こうとしました。

お客さんたち自身も、「レベルが低いルートなら、自分たちで行きたい。」、「ボルトルートやジムくらいなら、リードしたい。」などと考えている人も多く、なんだか期待も捨て切れません!

※メインガイドの師匠にとっては、それが微妙だったと映る場面も多かったとは思います。ご迷惑をお掛けしているとは、分かっていましたが。
<アップだが、かなり怖い>

これを3年ほど続けた結果、お客さんの傾向が見えて来ました。

①ごく一部だが、本当に自立する思考に向かう人がおり、彼らはガイドから離れていく。

②「ガイド山行を続けながら、レベルが低いルートだけは自分たちで行く。」、「岩場やジムで、易しいルートや十分にトップロープリハーサルしたルートだけをリードする。」ということを続ける人は、半端者のジレンマから抜け出せない。

③自立した登山者・クライマーへの道のりに興味を示しつつも、それは雑談の中だけ、という人もいる。
①は、優秀なガイドの元からは、お客さんのうち1%の自立したクライマーが輩出される仕組みそのものです。
ときどき岩場で、「〇〇さんの講習会出身で・・・」とかいう強い(当然、グレードのことではない)人が稀にいますので、彼らに相当します。

③は、「自立しない」というスタイルを堅持していると言えます。
<真っ暗な・・・>

②は、30〜60前半くらいのお客さまに最も多い傾向です。
モチベーションも色々と混ざっています。

A)自立して登ったら、「本当の登山・クライミング」って感じで楽しそう。(最も純粋なもの)

B)ガイド登山ばかりだと、お金も続かないから、易しいルートは自分たちで行きたい。(節約思考)

C)ジムやボルトルートぐらいはリードしないと、格好が付かない。(他人の目)

※フリークライミングの完登が、O.S.やR.P.として表記されるため、クライミングジムや岩場で知り合いと喋っても会話が噛み合わない。特に、ガイド登山で多少なりとも登れるようになった人は、トップロープで少々難しいルートをトライしていたりするので、ジムや岩場で「ちょっと登れる人」と勘違いされやすく、居心地が微妙なんだとか。あるいは、自分がトップロープで触ったルートをリードトライしている人に、ムーヴを教えたりという場面もあったりして、本人達も立ち位置がよく分からなくなっている。
<私と同じく、プアプロセクションで敗退する桂くん>

しかし、ここで幾つかの問題が起こります。

●近場の入門ルート(入門マルチであれ、ボルトルートの低グレードであれ、何のジャンルであれ)は、触り尽くしている。

一般のクライマーが、入門ルートで少々の痛い目に遭いながら培って来た基礎を学ぶための最良のルート達がオンサイト状態でなくなっている。
<夕方、ひよこ豆スラブに移動>

●プライドが邪魔をする人も多い。

例えば、ガイド登山とは言え、それなりに難しいマルチとか冬期バリエーションに行ったことがあるという実績が邪魔をします。
あるいは、トップロープや、トップロープリハーサル後のR.P.で、それなりの高グレードを登ったことがあるという実績が邪魔をします。

プライド以前に、「自分は、5.11の実力がある。5.10bくらいは余裕だろう。」と本気で勘違いしている人もいます。
すぐに、泣きそうな目に遭うのですが・・・。
●一般の初級者を見下してしまう癖が付くことも多い。

ガイドから見ると、初心者エリアにいる人たちのリスク管理はボロボロだったりします。
また、練習方法を見ても、「そんな練習方法じゃ、10年後も同じことやってる未来が見えるわ。」と感じるものです。

それを、ガイドはお客さんに話します。
実際、お客さんへの教育としては、その話が有効な場面も多いです。

しかし、その話を頻繁に聞かされ続けたお客さんは、自分が「ガイド側」のような錯覚を覚えることがあります。
実際に、ガイドに習った技術は山岳会のものよりも優れていることが多々あり、錯覚でない部分はあります。

とはいえ、リスク管理や練習方法に多大な問題ははらみつつも、とりあえず自力でそのエリアに来ている人は、ガイドのお客さんよりも言葉に表しにくい強さが隠れていることもあります。

●「連れられの悪癖」VS「ガイドに習ってきた経験」。どちらがプラスになるかは非常に難しい。

例えば、トップロープで難しいルートに触ることに慣れた人は、とにかく無我夢中で上を目指します。
自分が本来リードで取り付けるグレードより上のルートなので、レストしながら考えるどころか、「私にとって、レストポイントが無い!」という本人の気持ちも理解できます。

さらに、核心部でぶら下がり、ガイドやお客さん仲間から、下から「やいのやいの」とホールドや足位置の指示を受けます。

これに染まると、お客さんは核心部のことだけしか記憶せずにロワーダウンされることになります。

実際には、リードというのは、核心部に行くまでの省エネ・レスト・ルーファイ・リスク管理などを洗練させて、核心部にエネルギーをぶつけるものです。

こういった悪癖が付いてでも、「高グレードをトップロープで触り続けた方がグレードが伸びて、結果的には低グレードならリードできるようになる。」という持論を展開する方もおります。
この持論は、難しいマルチでガイド登山、入門ルートは自分たちで、というのと似た構図です。

実際、入門ルートや低グレードは登れちゃうとは思います。
ただし、見るからに「地に足が着いていない人間」が出来上がります。
<甲府幕岩、初夏をトライする桂くん>

少し、話を戻します。

①は、ある種の理想です。
ただ、比率から考えてもガイドの教育成果とは思えません。
クライマーになるべき人が、クライマーになった。ガイドは、教育者であることよりも、本人が優秀なクライマーであることが最も大切。という話です。
彼らにとっては、当塾なんかよりも一流クライマーの弟子になる方が良いのかなとも思います。
もっと言ってしまえば、「ガイド講習に行かなくても、優秀なクライマーにジムとかで拾われて、登れるようになったかもね・・・」というぐらいの超優秀層です。

③は、いわゆるクライマーとは違うカテゴリーだとは思いますが、違うジャンルとして理解できます。

②は、ボリュームゾーン(人口が多い領域)です。
いつしか自立したクライマーに化ける可能性もあるので、私のような人間は強く期待も寄せがちです。
が、この状態が最も危険な時期とも言えます。

私の講習生にも、②の意識が強い人はそれなりの人数がいます。
「ガイド登山・連れられ山行・トップロープ講習で満足しているような、ちゃんとリードしたいような・・・」という層です。
もちろん、技術や心構えの習得に、最も難儀する層です。

しかし、今回書いたような内容って、本当の意味で理解できるのは自立したクライマーだけなんじゃないかと思います。
技術や心構えができて来て、ようやく当時の自分は半端者であったと思えるというのも、無理からぬ話です。
<ダーティークライマーズをトライする桂くん>

山の世界から離れて、一般化して考えてみます。

「自分が半端者でなくなろう!」と強く意識した分野以外は、誰もが半端者である可能性があります。
そして、半端者である自覚は非常に難しく、ジャンルによっては危険な状態ですらあります。
つまり、これを書いている私も何かしら半端者である可能性がある、ということです。
 

「自分自身や半端者に見える知人に対して、どうすれば良いの?」っていうのは、各自で考えた方が良いかなぁと思います。
以前、私の知り合いで「美味しいとこ取りは、出来ないんだよ。」と言っていた人が居ましたが、それを②のフェーズの人に説得するのは難しいんですよね。
<ハングドッグする私>

具体的に登ったルート
10月29日
・タワーランペ(5.9、NP &ボルト) 再登
・フルート(5.10a、ボルト) 前回ボルトルートして登ったが、桂くんがオールNPで登っていたので、今回は私もオールNPで。風化したクラックなので、かなりやりづらい。

・真っ暗な世界から・・・(5.12a、NP) 敗退。
先日もプアプロセクションで敗退しているので気乗りしなかったが、桂くんの強い希望により再訪。先日は、下部が少々濡れていたのと、プアプロセクション時点でヨレヨレだったので、再訪したら印象が変わる可能性にかけてみる。
今回は、懸案のプアプロセクションで、かなり余裕を持ってオブザベすることはできた。しかし、やっぱり自分の実力には見合わないと判断して、敗退&封印。

・燦燦(さんさん)(5.11b、ボルト) O.S.

10月31日
・ナベちゃん(5.8、ボルト) NPで登った方が自然なので、NPで。ついでに、右のクラックも登って、ウォームアップとする。
・ピリカ(5.10b/c、ボルト) 再登

・幻の右(5.12c、ボルト)
GWに丸1日で3〜4トライして、クリップムーヴが解決していない。

今回は、1トライ目のハングドッグでクリップムーヴが解決。
2トライ目は、下部のムーヴが固まっておらず、まだ全然ダメ。
3トライ目は、ある程度まで固まっていたが、スリップフォール。ちなみに、あまり惜しい感じはしない。

レストしづらいムーヴが続くので、私にとっては暗記がほぼ完璧でないと厳しいルート。
ただ、GWよりは色々と細かい成長を感じたので、それは良かった。

2025年10月28日火曜日

岩場では、上手く行かないことも多い

10月24日(金)は、桂くんとカサメリ沢へ。
ストロンブレイカー(5.11c、フィンガー系)をトライしに。

結果としては、3トライでR.P.しました。
(3トライ目で出だし落ちして、10分ほど休んでから仕切り直して再スタートしたので、それをカウントすると4トライ目。)

オンサイトトライは、全然ダメ。
2トライ目は、可能性はあったものの8割以上で負けるべくして負けた感じ。
(自分レベルだと、少なくとも肝になるポイントだけは暗記しないと、奇跡を待つ感じになってしまう。)

3トライ目は、大雑把なムーヴが固まって、ようやく登れたという感じです。
<R.P.した3トライ目、核心部スタートあたりから>

反省点
・ムーヴの暗記が不十分につき、バタバタ(核心中のスメア位置が大雑把過ぎて迷う、核心を抜けてからの左手ホールド忘れ)
・フォーム(肩の挙上を抑える、必要以上の猫背は避ける、など)が悪く、体幹が上手く使えていない

良かった点
・小雨が降ったり止んだりの中で、心折れずにトライできた(実際、核心のクラックの内部はパリパリに乾いていた)
・核心を抜けた直後にムーヴに迷い始めてからの、土壇場での踏ん張り
<10月2日、ジムリードでのR.P.トライ>

比較対象として、ジムでのR.P.トライ動画を上げてみます。
同じく3トライ目。(1日目に1トライ、2日目に2トライ。合計3トライ。)

・足順も含めて、ほぼ暗記は完璧です。
※「行ってみたら、意外とバランスが取れた。」という感じで、新たにレストポイントとして使用している場所が数カ所あるが、大きなムーヴの流れには影響しない。

・姿勢も、自分基準では悪くはないです。

もちろん、スメアが滑るなど、細かいミスはあるものの、概ね計画通りのトライができました。
<ストロンブレイカーをR.P.する桂くん>

本来、R.P.トライはこういうものです。

ハングドッグで暗記したムーヴやレスト計画を、忠実にトレースしていきます。
その中で、いかにミスを少なくして「核心じゃないところで、スリップフォールを防ぐ。」、「核心じゃないところでの消耗を抑える。」などを着実に履行します。
その上で、核心部に全てをぶつけます。

(2〜3トライ目では暗記が不十分というケースも十分に考えられ、その場合は若干のオンサイトトライ的な駆け引きが要求されます。)
<人気者の桂くん>

さて、岩場だと上手く行かない理由を、一応解説します。
(これを自分で書くと、なんだか下手な登りの言い訳を書くようですが。)

①カムセット位置、ロープの足絡み、核心部で多少のランナウトする計算(墜落距離、落ちる態勢)など、考えることが多い。

※このルートは短いこともあって、肩にかけるギアラックを使わずにトライしました。その方が、ムーヴのストレスが軽減できるためです。ただ、それによりカムを左右どちらの手でセットするかを記憶して、その順番にハーネスの左右ギアラックに並べるという作業が増えました。
これに、トライ前後の脳味噌のキャパをかなり取られました。

※このルートは下部が脆いため、固め取り、比較的ホールドが欠けにくいムーヴ選択、などの考慮事項が色々ありました。
<同じく、ストロンブレイカーをR.P.する青木くん(本日は、別パーティで現地で会う感じ)>

②岩場では、ジャミング位置、スメア位置、クラックのふちを持つ位置など、正確な暗記を困難にする要素が多く、大体のムーヴ概要だけをイメージして再現に挑んだ方が良いケースも多い。このルートは、核心でジャミングはするもののフェースっぽい動きになるため、ある程度の暗記も要求された。

※ジムは、ホールドが限られているため、暗記が易しい環境。
<核心部のスメア移動のシーン。我ながら、不格好。>

③小雨が降ったり止んだりの天気になり、2トライ目と3トライ目は、トライするか否かをちょっと考えるぐらいの状況になった。

※比較的、雨に強いルートだったので問題はないと信じつつも、不安要素を上げればキリは無い。あとは、荷物を雨から守ったりするので、気もそぞろな状況。

(注)
講習生などを見ていると、①〜③で実際に全くと言っていいほど実力を発揮できなくなったり、危険な目に遭ったりしている。
それを避けることに脳のキャパを優先的に使うこと自体は、やむを得ない。
<うーむ、素人っぽい>

さて、この状況を打破する方向性は2つ。

A:今回、反省点に挙げた内容を、改善する。
特に、フォームは無意識化が望ましい。
(これは、やっぱり状況が単純化されたジム練習が大切。特に、ウォームアップでの基礎練習が大切。)

あとは、核心後のムーヴ暗記に関しては、「核心さえ越えれば、何とかなるだろう。」という甘えがあったことは否めないので、これはシンプルに油断もありそうです。
<R.P.後は、懸垂での回収>

B:岩場の悪条件に、脳のキャパの30%とかを取られている状況を、10%ぐらいを目指す。

●手順足順の完全暗記よりも、大雑把なムーヴ概要のイメージだけで再現に挑む(真っ向勝負のクラックに特に多いパターンな気がする。ワイドも含む。)ことに、慣れ親しむ。

●本チャン的な悪さに慣れる
・小雨でも(登れそうな状況であれば)諦めない
・ヘッデンでも(登れそうな状況であれば)諦めない
・脆い岩でも(リスクコントロールできそうな状況であれば)諦めない

どれも、一朝一夕には改善しないものばかりですねー。
グレードは(ほとんど)上がらなくても、クライミングは生涯学習に足るゲームだと思います。
頑張りましょう。

2025年10月20日月曜日

リトルサンシャイン(5.12a) R.P.

10月17日(金)は、桂くん、青木くんと瑞牆のカサメリ。
<飛鳥(5.11b)をO.S.する青木先生>

雨上がりにつき、乾きの良さそうなフェース主体のエリアへ。

まずは、トータルリコール(5.10b、ボルト)でアップ。
三者三様の登り方で、なかなか興味深いです。

石田:
・確実性(戻れる、スタティック、パンプしづらい、などなど)の高いムーヴを探しまくる。
・結果として、易しいセクションも、それなりに時間を掛ける。
・レストしながら上部を見上げるオブザベを重視。
  (登攀スピードが、遅いタイプ)

青木くん:
・上半身のフォームが美しい・・・。
・保持力と懸垂力に自信がある人に多い「とりあえず保持してしまえば、足位置は考えなくても自然と身体が反応するさ」的な発想が漂う。
・ジム店長でセットも頻繁にこなしているだけに、ムーヴを考えていない訳ではない。
  (登攀スピードは、概ね速いタイプ)

桂くん:
・アプローチセクションは、ぐいぐい高度を稼ぐ。
・核心部になると、慎重に慎重を重ねるタイプ。(完登を大切にする、怖がり、の両面で)
  (登攀速度は、場面により大きく異なるタイプ)
<続いて、桂くんのO.S.トライ>

次に、私は「ちちくりマンボウ(5.10c、ボルト)」のフラッシュトライ。
トポに「オールNPでよく登られている」と書いてあるので、オールNPにて。

このルートは、グレードでは判断しづらいのですが、地上からのオブザベもほとんど見えません。

難易度予測が難しい理由。

①30mの5.10c。
ムーヴは非常に易しい可能性もあるが、バッチリ5.10cのムーヴが出てくる可能性もある。
(ノーハンドレストなどで無限レストができるルートの場合、5.10c×3回=5.10cというグレーディングの考え方がある。逆に、5.10a×3回=5.10cという考え方もある。)

②オールNPがやりやすいルートか否か?
「クラック主体なのに、ボルト打っちゃったの?」的な構成もあれば、「本チャン的なフェースに、頑張ってカム決めながらランナウトする場面も許容」的な構成もある。

結果としては、①に関しては難しい部類、②に関しては中間ぐらいの部類だったため、私にとっては十分に難しく、1時間のトライになった・・・。
<桂くんがO.S.決めたー!>

十分に疲れたので、順番は1回休み。
14時頃に、リトルサンシャイン(5.12a、ボルト)のO.S.トライ。

結果は、全然ダメ!

第一核心で、呆気なくフォール。
ムーヴを変え、そこは一回で突破。

第二核心でクリップできず、A0クリップ・・・。
そこから、20分ぐらい(?)第二核心後半を「あーでも無い、こーでも無い」とハングドッグしますが、直射日光が当たり始めて、ムーヴ練習不可能に。
一応、再現性の低いムーヴだけれど1回だけは成功したので、次のトライに期待です。
(A0クリップ部分だけは、クリップムーヴが解決しておらず。)
<ストロンブレイカー(5.11c,NP)をトライする青木くん>

暗くなり、ヘッデンを装着しての2トライ目。

第一核心は、思い切りよく突破して大レスト。
第二核心中の懸案のクリップは、夕方の冷えた岩のフリクションに助けられ、初の成功。
そのまま第二核心の後半は、3回連続で唸り声を出しながら、ギリギリでガバを掴みました。

そのまま終了かと思いきや、最大光量モードにしていたヘッデンが省エネモードに切り替わり、薄暗い世界に・・・。
スタンスは見づらさ、ヘッデンのスイッチの調整などにハラハラしつつ、どうにか落ち着いて終了点へ・・・。
<続いて、桂くん>

しみじみ、私にとっては5.12aが難しいです。

今回のルートは、
・O.S.は、ある程度のラッキーに恵まれたと仮定しても無理だった(現状では、到底不可能なレベル)
・3トライ〜2日目に持ち越しが妥当な戦績(今回の2撃は、実力の割には上手く行った方という感覚)

という自分との距離感に思えました。
<近年は、モデルとしても活躍している青木先生>

15年くらい前に初めて5.12aをO.S.したときと比べ、諸々の成長は感じているのですが、グレードへの反映はごく僅かです。

この分だと、生涯の最高到達点(何歳になるかは不明)でも「スポートルートは、5.11後半〜5.12aぐらいが丁度いいグレードっす!」と言いそうな気がしています。
<泥くさいトライが得意な桂くん>

とは言え、悲観はしていません。

キャリア10年を越えれば成長と老化の狭間ですから、僅かでも伸びれば大成功な訳です。
自分にとってトレーニングすべきことも見えているから、十分に楽しんでおります。
<ガンバ!>

<うーむ・・・。5.11cのクラックも難しい様子。>