2025年8月28日木曜日

10月、11月の予約受付

9月1日(月)の21時より、10月および11月分の予約受付を開始いたします。

ジム講習に関しては、最初に申し込んだ方の希望場所になるべく合わせます。
Dボル立川、ランナウト、ストーンマジックの3つであれば、講師分の経費(交通費・ジム使用料)を負担いただく必要はありません。
強い希望がなければ、こちらで決定します。

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8月15日(金)、16日(土)は、富士山の別の登山口を一人で登ってみました。

たまに別の登山口に降りるツアー(吉田ルートを登り、富士宮ルートを降りる、など)とかもありますし、お客さんにも「他の登山口ってどんな感じですか?」と聞かれることも多いです。
ガイド目線で、開山期間(〜9月10日まで)に登ってみたいというのもあり。

1日目は、御殿場ルート。
8時半くらいにスタート。
<御殿場登山口ののトイレって、こんな感じなのかー>

<登山口の入山料支払いって、こんな感じなのかー>

<大黒茶屋、冬にしか通ったことがないので、営業しているのは初めて見た>

<さすが、砂っぽい。そして、登山道はガラ空き・・・。>


<3,000mくらいになると、吉田ルートと似たような感じか・・・>

<何も用事はないが、山小屋ばかりを写真に収めてしまう>

一人だと、ついついタイムアタック的に歩いてしまい、13時10分に御殿場山頂。
両足も攣りそうだし、背中やら首やらも筋肉痛が酷い・・・。

ここからは、いつものコースだけれど、一応は御鉢巡りもしておく。
真の山頂の剣ヶ峰(3,776m)は一応踏んでおきたいし、お客さんにもいつも「なるべくなら剣ヶ峰まで行って欲しい!」と促しているので・・・。

下山は、富士宮ルート。
午後遅めということもあり、日帰り客の下山、泊まり客の登りで、割と混み合っていて、ちょっと吉田ルートに似た感覚もある。



車を御殿場ルートの登山口に置いて来たので、富士宮ルートの六合目から御殿場ルート新五合目へと下る。

前半のタイムアタックのせいで、非常に疲れていて、正直言って歩きたくはないレベル・・・。
<宝永火口を下から見る>

<向かいに見えるのは、越前岳?コンパスを持参しなかったので、イマイチ同定できず。>

<鹿>

<この辺は、人が少ないのせいか、ちょっと他の山に近い雰囲気>

<二子山の下塚は、一応登ってみる>

どうにか、明るいうちに下山できました。
御殿場と富士宮を両方歩けたし、多少は寄り道もできたので、1日の行動としては結構頑張った感じです。

そして、翌日は須走ルート。
<須走登山口では、こんな感じでガイドグループの宣伝があったりするんですねー>

<「山小屋の前を登山道が通過する」という配置は、どこも同じなんですね>




本日は、筋肉疲労がひどいので、ゆるゆるペース。
当初は、吉田ルートとの合流点(本8合目、3,400m)までで帰るつもりだったのですが、ゆるゆるペースで登ったら意外と身体は動くものです。
クライミングでこんなオーバートレーニングしたら後々まで響くだろうに、人間の歩きに対する適性の高さを再確認します。

やっぱり剣ヶ峰(3,776m)も踏んでおこうかと思い直し、半ばトレーニング的に登頂。
<山口屋前>

<須走の下山って、こんな感じなのねー>

<砂走りを終えたところに、一息できる山小屋の売店があるのは、ツアー的にはプラスポイントかも>

どこの登山口も良さがありますが、弱いお客さん層を想定すると、以下の2種類のツアーがメインになっているのは納得です。

①吉田ルート(スバルライン五合目)往復
②富士宮登山御殿場上部〜宝永火口〜富士宮五合目

御殿場は、キツイ。
須走も、ちょっとキツイ。
富士宮は、下りで使うのはちょっとキツイ。
富士宮は、山小屋も多いので登りで使う分には良いのかも。

ちょっと元気なお客さん層(途中リタイヤは、基本は1名も出ないぐらい。)であれば、どこも1回ガイドしてみたいんですがねー。

2025年8月24日日曜日

自分のパワーゲージを意識する

何度か書いていると思いますが、ときどき講習で話すので、また書いてみます。

リードトライ中に、
「自分のパワーゲージ(残存のクライミング体力)がどの程度あるのか?という意識を持ちましょう!」
という話です。
<富士山前に、桂くんと小川山>

話を単純化するため、いくつかの整理をします。

①トライ対象
ジムのリードルートにします。

トライ中のリスク管理とか、クラックでは腕より体幹のヨレが大事、とかの要素を除外して考えます。

②何のパワーゲージか?

初級者は「パワーゲージ=腕のパンプ具合」と考えてください。
ジムでも、体幹・脚力のヨレもトライには大いに影響するのですが、トライ中に自分のヨレ具合を意識することが困難です。

つまり、「100%=全く腕が疲れていない。」、「0%=何も持てないほどに腕が疲れている」とします。
③パワーゲージを測る方法

ボルダリング3級の核心が、腕がフレッシュなときギリギリでこなせる人を想定します。
(話を単純化するため、パワーはほとんど使わないテクニカルな3級とかは除外して考えます。)

この人の場合、例えば以下のようにパワーゲージを考えます。

100% 3級の核心がこなせる
 90% 4級の核心がこなせる
 80% 4級の中でも易しい課題なら、核心がこなせる
 70% 5級の核心がこなせる
・・・・・・
 50% 6級がギリギリこなせる
・・・・・・
 30% 100度傾斜のガバガバ課題なら、ギリギリ登れる(ジムの5.8など)
 20% 垂壁のガバガバ課題なら、ギリギリ登れる(ジムの5.6など)
 10% スラブのガバガバ課題なら、ギリギリ登れる(課題として存在しないジムもある)
  0% スラブのガバガバ課題でも、登れない

これで、自分のパワーゲージを、ある程度は客観的に評価できます。

もちろん、自分の能力によって100%が変わるので、それによって全てのデータが変動します。
あくまで、自分用の評価表を作ることが大切です。
<ボルトルートだが、オールNPで登ろうと頑張る桂くん>

実際の考え方
ウォームアップ後の最初のトライであれば、スタート時点のパワーゲージは100%です。
スタート後、一手ごとに消耗して行きます。
レストポイントで少し回復することも多いですし、大レストポイントで90%以上まで復活できるルートもあります。
上手なクライマーであれば、省エネ技術を駆使して、一手ごとの消耗をセーブして行きます。

この際、どこまでセーブが必要なのでしょうか?
「リード後半の核心がこなせる程度のパワーゲージを残せれば及第点!」
と考えると、話はシンプルになります。

例)
最上部に4級難しめのムーヴが出てくるルートであれば、その直前に90%のパワーを残しておく必要がある。

最上部に6級のムーヴが出てくるルートであれば、その直前に50%のパワーを残しておく必要がある。
<クラックの新ルート(5.12a)にトライするが、2人とも敗退>

一般的なR.P.トライ
最上部のムーヴはハングドッグの際に確認済みのはずです。
まずは、そこに必要なパワーゲージをイメージします。

「このルートは、最終クリップをした時点で70%のパワーゲージを残しておかないと、登れないタイプだな・・・。」
と、自分の実力とルート難易度を、相対評価します。

実際のトライをすると、結果は以下の3パターンになります。

A)80%のパワーを残すことに成功し、余裕を持ってR.P.できた。
(最終ムーヴにミスらないようには気を配り続けた。)

B)70%台のパワーが残っており、最終ムーヴがギリギリの戦いになった。
(精神力で押し切ろうとしつつも、ムーヴにミスらないようにも気を配るという、本気トライの見せ場になった。)

C)70%未満のパワーしか残せず、最終ムーヴが始まる時点で敗戦が確定していると感じた。
(場合によっては、最終ムーヴを起こすことすら不可能。)
<いつも良い笑顔です>

もしあなたが、上記ルートで以下のような取り組みをしているなら、少し考えた方が良いかなと思います。

●トライ毎の休憩時間が短か過ぎて、2トライ目のスタート時点で80%でスタートしている。
⇨ルート中に、完全回復できるような大レストポイントがない限り、R.P.できるとは思えない。2トライ目でも、スタート時点では90%以上の状態でスタートしないと、最終盤で70%が残せるとは思えない。

●「テンション掛ければ、ムーヴは出来るんだけどなー。」、「いつか登れるよー。」くらいしか考えておらず、漫然とR.P.トライを続けている。

●トライ開始時点は、100%。途中の省エネが下手で、Cの状況になって最終ムーヴがこなせなかった。しかし、本人は「なんで、頑張り切れなかったんだろう・・・」と、落ちた場面だけを嘆いている。
→ポイントは、最終ムーヴではなく、下部の省エネ。
<アドバンスクラック講習@瑞牆>

もちろん、Cの状況でも奇跡を信じて一手出して行く姿勢は素晴らしいと思います。
実際、ハングドッグでは思い付かなかったような別ムーヴで奇跡的にR.P.を決めた経験は、多くの方が味わっていることでしょう。

ただ、フォールした後に反省すべきは、奇跡を起こせなかったことではなく、下部の省エネ・レストの改善です。
<10トライぐらいで完登した、超低空のハサマリング>

ちなみに、オンサイトトライの場合は、最上部の難易度は不明です。

ただ、やることは同じで省エネしつつ高度を稼ぎます。
1つ難しいのは、行きつ戻りつでの消耗です。
省エネや成功確率の面でベストムーヴを探したいけれど、探し過ぎると消耗することも多いです。

だからこそ、戦略ゲームとしてはオンサイトトライが一層面白いです。
次にトライするルートで、最上部に何%を残せば良いのか不明なだけに、日常の省エネ技術トレーニングも終着駅がありません。

当然、そもそもの100%のレベルを上げるのが大切なので、ボルダーを頑張るのも並行したいところです。

2025年8月6日水曜日

9月分の予約受付

8月8日(金)の夜21時より、9月分の予約受付を開始いたしましす。
よろしくお願いします。

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今年も3週間ほど富士山ガイドに行ってきたのですが、実に色々なことがありました。

①人手不足
3週間で、6回程度の勤務の年もありますが、今年は9回でした。
私は、6回ぐらい(1回登るごとに、少しの休息ありのリズム)で十分です(笑)。

富士山ガイドをやりたい方は、この際ですから是非とも連絡ください!
私も所属する太子舘ガイドは、勉強になるという点でオススメです!

②インバウンド体験
台湾人ツアー。
通訳兼添乗員さんが、途中リタイヤして、2日目は通訳アプリなどで大苦戦。
本当は、1日目の方が色々あったのですが・・・。

③大雨のツアー
2泊3日で、中日が大雨と小雨を断続的に繰り返し、ほとんど1日中降りっぱなし。
希望者のみ(ツアー参加者の3分の1ぐらい)で頂上アタックするも、3,400m地点で撤退。

太子舘に戻ってから、1時間強のプチ講演会。
内容は悪くなく、満足度もあったようです。
一方、視覚資料を準備しないで行ったので、さすがに理解度を高めるのに限界を感じました。

④自分が体調不良
ガイド自身が体調不良になり、途中でガイド交代をしてもらうことに。
数日のお休みをいただいて、復調。
明確な不摂生などはしていないので、一時的な過労だったのではないかと思います。

⑤ツアー全員お鉢めぐり達成
20人規模のツアーだと、1シーズンに1回あるかどうか、という有難い体験。
お客さま、天候、ガイド同士の連携、すべてに恵まれないと起こりえない運ゲームなのですが、ガイドとしてのモチベーション維持には大きく寄与しており、一層の登山アドバイスや運行のスムーズさを高めようと思えます。

今回は、登山系の旅行会社だから、どうにか出来たという側面もあります。

⑥学校登山で割と成功
オフシーズンに、行程や雨具に関して提案書を出させていただいたことで、かなりスムーズになりました。
生徒109人が吉田口山頂まで全員登頂できた(先生方は2名リタイヤ)のは、運要素もありつつも、やっぱり嬉しいものです。
「当日のガイドの頑張りも大切だが、登山準備がそれ以上に大切である。」という点を再認識しました。
ただ、これを突き詰めていくと、旅行会社(場合によっては学校)との折衝とか、お客さまへ配る事前資料のチェックとか、私の苦手な事務作業の比率が高くなるのが困りどころです。

今回に関しては、同じガイド仲間の何人かが提案書を実質的に作成・ブラッシュアップをしてくれたので、彼らこそが今回の学校登山成功の立役者です。

⑥どハマり
旅行会社ツアーの時間制約のギリギリを攻めて、一時は「関係各所に迷惑掛けまくりかも?」という状態に。
結果として、序盤での布石が効いたことやラッキーも重なり、下山時間短縮である程度まで巻き返せたので、内心は相当ホッとしました。

ギリギリを攻めてしまう要因は分かり切っています。

・ギリギリの人を登頂させる(お鉢巡りに挑戦させる)
・説明が長い
⇨簡潔さを志すと、理由の説明や、現実的な妥協点をお客さまと共有できなくなるのが苦手。長い説明で、結論部分を勘違いしてしまうお客さまが増えるのも感じているのが難しい。しかし、お客さまの理解度が上がっているのも感じるので、さじ加減は永遠の課題です。

これらを妥協するのは、自身の性格上も相当厳しいのだが、スムーズさとの両立を目指したいとは常々思っています。

⑦説明が下手
主には観光ガイド(植物、歴史、地質、など)。
ある程度は、原因が分かっています。

・話し慣れによって、最低限それっぽく話を繋げられるため、話し始める前に構成をあまり考えなくなってきています。しかも、歩き方とか高山病対策などに比べて、自分の知識の整理がイマイチなので、アドリブで喋ると知識の穴が露呈しやすいです。話しているうちに、「そう言えば、ここは知識(名称・年号・人数、などなど)が曖昧なんだよな・・・」と気付いたところは、迂回して話を組み立てようとするので、一層組み立てが変になります。しかも、「お客さんが登山アドバイスばかりだと息が詰まるかな。」、「後々の名所旧跡において長い観光説明をするのも時間ロスだから、ここで前段を話しておこう。」という感じでチョットした息抜き感覚で話を入れるので、そもそもの優先順位や時間・場所の制約が大きくなります。立ち休憩を兼ねて観光ガイドをしているときなどは、そもそも後方まで声が届いていないこともあるようです。

自分自身の興味、登山アドバイスをメインに行いたいモチベーションなどから、根本解決は相当厳しいです。
とはいえ、明らかなダメさは改善する必要があり、来シーズン以降の課題です。

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富士山ガイドも長く続けていると、明確な反省点というよりも、長年の課題の進捗状況という色合いが強いです。

今年もお世話になりました!
8月も続けている皆さま、頑張ってください!

2025年6月27日金曜日

ジムリードの本気トライ

最近、岩場でのリードについて書くことが多かったかなと思っています。
「落ちても大丈夫な範囲」or「クライムダウン敗退できる範囲」のどちらかで登りましょう!
というのが、私の推奨です。

クラック・マルチ・アイス・沢登り、何でも通じる考え方だと思いますが、ボルトルートが一番分かりやすいと思います。
微妙なプロテクション(本当に止まるか判断つかない)というのものが、ほとんど存在しないため、グレーな判断をする必要がほとんど無いためです。

ちなみに、微妙なプロテクションを取った場合は、「自信のあるプロテクションまでクライムダウンできる範囲」で登る(≒プロテクションを取らない場合と判断自体はほとんど変えない)というのが、私の推奨です。
「微妙なプロテクションのお陰で登れました!」と発言してしまうぐらいなら、敗退や別の突破方法を探る習慣を付けた方が良いんじゃないでしょうか?という趣旨です。

今回は、切り口を変えてジムリードについて考えてみます。
ジムリードは、プロテクションの信頼度・プロテクション間隔という観点で見て、最上のコンディションとなります。

「非常に整備された、(通常は考えられないほど)ボルト間隔の近い岩場」と見なすことができます。
そこに適した本気トライの方法を考えてみます。
<ジムリードのオンサイトトライ①>

まずは、安全にトライするための基本事項。

「落ちてはいけないセクション」を、可能な限り作らない。
・1本目は、自分が床に着地できる範囲までの間にクリップする。
・2本目は、自分が1本目でフォールを許容できる範囲までにクリップする。
・以下、同じ。

②クリップムーヴは、攻めすぎない。
手繰り落ちのリスクがあるため。

③ロープの足絡みに注意する。
特に、フラッギングや壁スメアしている脚は、目視しないので要注意。

④ビレイヤーのロープの弛ませ具合、立ち位置に注意。
「落ちても大丈夫なセクション(安全圏)」のはずなのに怪我をしてしまった、ということを減らすため。

⑤反転フォールしそうな場合などは、例外的にギブアップフォールを許容することもある。
※トップロープ状態などであれば、リスク無しと判断して突っ込むことが多い。

⑥どのラインにクリップするか?などをオブザベに含める。
オブザベがある程度できる人は、クリップ態勢、ロープが足に絡みそうな場面もなるべくオブザベに含めます。
<ジムリードのオンサイトトライ②>

上記が守れたら、以下の状況が完成しているはずです。
手繰り落ちをしない限り、どのムーヴでフォールしても、事故になる可能性はほぼゼロ。

これが完成すると、ようやくスポーツとしてクライミングを楽しむ下地が出来上がります。

・クライムダウン敗退を考慮した登り
・落ちないことが最大のリスク管理

といった場面から解放され、「落ちるときは、ダメもとでも一手出して落ちろ!」といったジムでの本気トライにおけるスタートラインに立つことができます。

その上で、私がトライを成功させる上で重要だと考えている事項。

①岩場に比べて、トライのテンポ感が大切。
岩場だと、難しいセクションと易しいセクションの差が激しい、何分でも滞在可能なレストポイント、などが散見されるため、行きつ戻りつが功を奏することが多いです。
一方で、ジムは5.12のルートで5.10のセクションが出てくることが滅多にないため、行きつ戻りつすると消耗してトライ失敗するケースが多いです。

ただ、テンポ感を意識しすぎて雑になったり、ムーヴ選択がグチャグチャになったりすることも多いので、適正なテンポを心掛けます。

②岩場に比べて、ホールドが見えるため、オブザベが一層有効。
トライ前のオブザベはもちろん、レストポイントでのオブザベも大切です。
レストポイントでオブザベしてアタック開始したら、通常はレストポイントに戻ることはありませんので、覚悟を決めましょう。

③デッドポイントなどのダイナミックムーヴも、積極活用。
スタティックよりダイナミックの方が省エネであれば、核心部でない場面でも使用します。
ただ、次のホールドの掛かりが不明な場合などは、ギャンブル性は否めません。

もちろん、岩場の「落ちてはいけないセクション」のように、ギャンブルに負けたら事故というほどのリスクは無いのですが、「オンサイトが一生で1回だけのチャンス」という要素もあり、ギャンブル性は減らしたいものです。
「どの程度までデッドポイントを織り混ぜて行くのが、オンサイト勝率を高める上策なのか?」
といった試行錯誤は必要でしょう。

④多少の消耗をしてでも、クリップ先行を心掛ける。
クリップができなくなり、「これ以上、クリップせずに進んだら危険すぎる!」と判断してギブアップフォールせざるを得なくなることがあります。
こんなとき、「下から頑張ってクリップしとけば良かった〜!」と後悔することになります。
もちろん、一歩上がってからクリップの方が楽な場面など山ほどあるので、判断には迷います。

そもそも論として、下からのクリップに慣れるためにも、リードクライマーこそロックオフトレーニングをすることを推奨しています。

「テクニカルなムーヴでの省エネ狙い」VS「シンプルな真っ向勝負ムーヴでのムーヴ迷い時間短縮」の判断に迫られることを、あらかじめ予想しておく。

キョン、ヒール、凹角でのノーハンドレスト、ニーロック、などで省エネができるケースは多いです。
一方で、オンサイトトライ中に、これらを一生懸命探しているうちに消耗してしまう、という問題はあります。

限られた時間内に、どちらかに腹を括るのは難しいので、あらかじめ「判断に迷いそうな場所」を予想しておくと良いです。

ちなみに、「オンサイト中は考えるのが面倒だから、ほぼシンプル一択。ハングドッグして初めて省エネムーヴを探り始める。」という、やや脳筋の人も結構います。
実際、そういう人が僕なんかより相当強かったりしますが、他の点が優れているということなんでしょう。


最後に。
ジムリードでスポーツ的な本気トライができるようになると、岩場での登りも大きく変わります。

・岩場でも、ジム的なスポーツのトライが有効な場面は、局所的には出てくる。
・岩場だからこその行動指針の違いが、今までより分かる。
・落ちる前提のトライに心身を慣らすことで、カムセット・カムの固め取りなども一層慎重になる。

そう考えると、講習生全員にジムでのまともな本気トライができるようになって欲しいものだと思います。

2025年6月25日水曜日

「ワイドクラックも、特別なものではない」と考える

「ワイドクラックを教えてください。」というリクエストは多く、その希望は大変嬉しいものです。
その一方で、「原理原則は、フェース(もっと言えばジム)と大差ない。」という思いもあります。
<岩場リード講習@小川山>

まず、何よりも本気トライの方法が最重要です。
その他のクラックと同様に、初心者のうちから必ずリードした方が良いでしょう。
トップロープリハーサル、トップロープ癖は、クライミング初心者のうちに排除した方が良いです。

「チムニーだと5.8でもランナウトするから。」などという言い訳が聞こえてきそうですが、何とかする方法を考えるのが、最大の肝です。

A)5.7以下を探す。
チムニーのセクションに、ホールド・スタンスが豊富なら問題ない。
ルートにならないほど易しいチムニー、トポに載せる価値のないようなチムニーで、十分です。

※これだと、「自分は全くチムニー登りをしないで、無理矢理でもフェース登りで突破するので、練習できない。」という人は、思考方法に問題があります。易しいグレードでこそ、色々と試行錯誤する習慣を考えましょう。ジムの5.8や8級は、「どんなにバタバタ登っても登れたらO.K.で次に進もう」ではイマイチだったことは、すでに経験しているはずです。岩場であれば5.7以下こそが、あなたにとっては最適な実験場かもしれません。

B)プロテクションの取れそうなライン(奥にジャミングが効くサイズのワイド、オフウィズス、など)から先にトライして、本格的なチムニーは先延ばしにする。
私は未だに購入していませんが、キャメ7番、8番などを購入するのも、1つの選択肢だと思います。

C)ジムの凹角ハリボテ課題、ジムのチムニーなどで、ニーロック・プッシュ・バック&フットなどの断片的な要素を学ぶ。

D)それ以外のフェース課題の中でも、省エネ技術の練習も兼ねて積極的にワイドっぽい技術を使うように心掛ける。
<怖さを理解した上で、5.8を再登するNZさん>

これらに通じる考え方を、いくつか提示します。

①垂直以下のチムニーは、クライムダウン敗退が容易なことが多い。

チムニーでは、推進力が問題になります。
垂直以上でない限り、ワイドクラックから吐き出されることは考えにくいです。

●チムニーで進めずに敗退
●チムニーの抜け口でクラック・フェースとの混合ムーヴになるセクションがプロテクションに不安があって敗退
の2つのシナリオが頭をよぎります。
もし、そうなったらチムニーをズルズルとクライムダウンすれば良いでしょう。

さらに、「チムニーの動きを勉強したいから、まずはトップロープで・・・。」という言い訳が聞こえて来そうですが、これも推奨しません。

やりたければ、ボルダーのハサマリングorジムのトップロープチムニーを推奨します。
これならば、「やっぱり怖いからトップロープで!」みたいな逃げ癖を付ける心配がありません。

あなたが、ボルトルートでちゃんと下積み(トップロープリハーサルやチョンボ棒を行わないリード)を積んできたのなら、すでに以下のことを何度もやって来たはずです。

・スラブの登り方も、(今から考えると)ほぼ理解していない状態で、小川山の5.8のスラブを恐々と行きつ戻りつしてリードする。そして、時には直近のボルトまで敗退して来て、敗退ビナで下降する。
・ハングの登り方も、(今から考えると)ほぼ理解していない状態で、奥多摩の5.9のハングを・・・以下同文。

行きつ戻りつで敗退することは、ムーヴ理解が甘くても可能です。
まずは、「敗退できる範囲で登る」という意識が大切です。

そういった思考ができなければ、あなたは新しいことにチャレンジするときに必ずガイドツアーに長い年月で参加する羽目になり、よほど根性のある人を除き、ガイドツアー(orそれもどき)に安住することになります。
<アドバンスクラック講習@小川山>

②チムニーでも、奥にプロテクションが取れることはあるが、行ってみないと分からない。

これは、オブザベでは分からないことが多いです。
マルチピッチなどで、フェースの中でも所々にカムが効くのと同じです。

「敗退できる範囲で登ろう!」という腹を括った人間にだけ訪れる、ご褒美だと考えれば良いと思います。
<5.6くらいのチムニー>

「敗退できる範囲で登る」「初心者なりにカムセット態勢を工夫する」ことの2つが初心者にとっての最大のムーヴ学習

ワイドクラックは、非常にスタティックなクライミングです。
スタティックなクライミングを学ぶ上で、恐怖心やリスクは非常に良い薬になります。

トップロープでのワイドムーヴ学習は、どうしても雑になります。
トップロープで練習するとしたら、自分自身がO.S.やR.P.を済ませたルートで、「何かしらの反復練習」「他のムーヴの可能性を探る実験」という明確な目的を持って部分的に行うのが良いでしょう。
繰り返しますが、「ワイドは慣れてないからトップロープで〜」という逃げ癖を付けると、あなたの将来が大変です。

これは、スラブでもハングでも同じだったということは、下積みを積んで来た方なら理解できることでしょう。
さらに、これは雪山でもアイスでも同じだと思います。

もちろん、アームロックやニーロックなど、部分的には人から教わった方が良いムーヴもあります。
これに関しては、ボルダーまたはリードルートの出だし(実質的にマットなしの低いボルダー)での反復練習がオススメです。
④ワイドとフェースの境界線は曖昧

典型例を幾つか挙げます。

・オフセットクラック、コーナークラックは、アームロック・バック&フットを活用する場面が非常に多いです。
部分的にレストのためだけ、というケースもあれば、突破するムーヴに活用することもあります。

・奥にジャミングが効くが手前がフレアーしている形状では、必然的に肘・膝・腰がフレアー部分に当たるため、上手にやれば大きな助けになることが多いです。

・石灰岩やジムの凹角ハリボテ課題などの立体的な形状では、ニーロック・バック&フットが有効になることが多いです。
場合によっては、肘でのプッシュ・膝でのプッシュも非常に有効です。

・ジムのルーフでヒール・トウフック(場合によってはニーロック・ヒール&トウ)を連発する課題と、ルーフワイドのインバージョンは境界線がよく分かりません。

このような典型例でなくても、ちょっとワイドムーヴを使うと省エネ(or突破できる)という場面は多いものです。

この話に関して、あるとき悟りを開いたような感覚に入った講習生が「全てはワイドである」という名言を残しています。
<アドバンスクラック講習@瑞牆ボルダー>

⑤ムーヴの法則性も、結局は同じ

ムーヴ詳細は文章での解説が困難なので、軽く触れる程度にします。

・スタティックに動く
・オポジションを意識する
・回転モーメントを意識する
・足の移動時は壁から身体を離す、手の移動時は壁に腰を入れる
・極力、大きな筋肉で動く(フォームの話)

などの原理原則をワイドクラックを教える際には最も大切にしています。
(相当講習に通っている方でも、意味がよく分からないと思いますので、是非とも講習にご参加ください。)

ニーロック・アームバー・ダブルスタック(リービテーションやTスタック)などの技は、フェースで言えばヒールフックみたいなもので、必要な要素だけれどベースの能力ではないと感じます。
むしろ、ベースが多少なりともできないと、技の話を聞いてもチンプンカンプンな講義に終わってしまいます。

※ベースの能力を身に付けるのは、上記のムーヴ理解と、「初心者なりに戻れる範囲で低グレードをリードし続ける」という強い意志だと思います。もっと言えば、ジムやボルトルートでのリードクライマーとしての下積みが、すでにベースの能力を形作っていると言っても良いでしょう。
<ルートにならないほど易しいチムニーで反復練習>

色々と書きましたが、ワイドクラックだからと言って特別なことはないと思っています。

「〇〇なムーヴが出てくることが多い。」
「リード中に、〇〇な状況が発生しやすい。」
「〇〇の筋肉が疲労しやすい。」

という程度の差だと考えた方が上達しやすいんじゃないか、という提案です。
<5.9の核心ぐらいのハサマリング>

<典型的なO.W.で反復練習>

2025年6月6日金曜日

マルチピッチのレスキュー講習

ここ1ヶ月半ほどバタバタしていたので、まとめて色々と更新しています。
これで、ようやく最近の写真は使い切りました。
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STさんの呼び掛けで、マルチピッチのレスキュー講習を行いました。

対象は、マルチピッチリード講習の卒業者。(アドバンスマルチは、未卒業でO.K.)
「意識付けのために、1年に1回だけでも毎年やろう!」というSTさんの声がけです。

マルチ卒業生で興味をもった方は、是非お問い合わせください。
<越沢バットレス2P目で、リードがフォールして負傷したという設定>

1日目は、ストーンマジックにてロープワーク講習。

マルチピッチリード講習で教えるような基礎、懸垂下降の登り返しまでは、「一応はできる。」という前提で、一般的なロープレスキュー手法を確認していきます。

※実際は、結構忘れている部分が大きいと思うし、習熟度の問題もあります。上記の基本も、復習受講して欲しいとは願っています。

・リードビレイからの脱出
・ムンターヒッチの仮固定
・セカンドビレイからのロワーダウン
・介助懸垂
・引き上げ
など。

1日で講習しても全然反復の時間が無いのですが、とりあえず手持ちの選択肢を増やしていただく、という程度です。
普段のロープワーク講習なら、上記1つを選んで様々な検証作業などを行うところですしね。
ただ、一応はマルチ卒業者対象なんで、山岳会とかで頼まれる団体向けレスキュー講習よりは理解してもらえていると感じます。
来年以降も継続実施の予定なのが、私としても救いですね。

あと、一番厄介なリードレスキュー(ロープ半分以上出たリード中に、リードが負傷して云々・・・)には今回は触れません。
<とりあえず仮固定して、今後の方法の検討に入る2人>

2日目は、越沢バットレスで実地訓練です。

あまりにビショビショだったので、1P目は私がリード。
2P目を途中までリードしていただき、フォールしてカムが抜けて負傷、という想定でロープにぶら下がってもらいます。
<傷病者役も、声の届く範囲にいるので、一緒にプランニングが可能>

今回の設定

①傷病者
・右足が非常に痛い(荷重不可、曲げるのも不可、押すのも痛い)
・動いてみたら左肩が痛い(その腕でホールドが引けない)
・若干のパニック気味(見えないところで、一人でロープ作業などをさせるのはリスクが高い)
★上記3点以外は、おおむね元気

②壁の状況
・壁には、残置支点が一切ない。
※「残置無視で登っていたが、事故後は残置利用に切り替えて脱出にフォーカス。」という非常手段は使えない壁。

・天候、時間帯、アプローチ、携帯の電波状況、などは全て現場の通り。
<リードに使用したカムの回収に向かうSTさん>

解法は、もちろん色々あると思います。
3人パーティ設定なのも、選択肢に幅を広げます。

今回の方々は、「どうにか傷病者をビレイ点に引き戻し、介助懸垂して地上に降りる」という流れを選択しておりました。

その際、傷病者の緊急度(ショック症状が出ている、低体温症が出ている、などの時間的制約が大きい)は低いという設定で、日没までも十分に時間があったのでリードに使用したカムはクライムダウン回収していただきました。
<まずは、トップで1人目が懸垂下降>

今回3人が選んだ方法は、効率面でベストではないと思います。

その一方、兎にも角にも「自力で問題を解いた。」という経験で、得るものは大きかったのではないでしょうか。
※作業中に小技・リスク要素などのアドバイスはしますが、「なるべく大方針には口を出さない」というのは、マルチ講習・読図講習・雪山講習などと同じスタイル。
<残りの2人が、「トップが設定したロープで介助懸垂する」という方法を選択>

まだ日暮れまで時間もあったので、取り付きで反省会を1時間ほど。
それからアプローチも救助訓練をやりたいという話で、頑張って2時間ほどで林道まで戻りました。
<背負って渡渉したり、3人パーティなのを利用してロワーダウンしたり、色々大変>

ちなみに、足を骨折していたと仮定すると、本来は固定して担架搬送がセオリーになります。
そうなると、3人パーティでは不可能なので、周囲に助けを求めるか、救助要請になります。

ただ、「正直、この状況なら僕なら背負っちゃいますねー。」というSTさんの意見もあり、「じゃぁ、どこまで現実的に可能か、実際にやってみましょう!」というのが後半の講習内容。

実際、
・渡渉、鎖場などで、リスクも実感。
・ロープ確保の有効性と限界を実感。
・傷病者が脚をぶつけて悪化しそうなことを実感。
・背負う人、傷病者、サポートの人、などの心情や動きの難しさを実感。
・講師から、背負いやサポートの小技アドバイス、焦りで妥協しがちなリスク要素諸々の説明。
などと盛り沢山で、充実しました。

どの程度のアプローチまでなら背負い搬送が有効か、などの判断材料にもなったかと思います。

ここまでの想定訓練をやる機会は、なかなか無いですよね。
普通は、背負い搬送も30分とか運んで終わりだし、本当にロープ確保が必要な状況で訓練するのはリスクもありますから。

今回講習した技術は、どれも習得までには時間が必要で、正直すぐに忘れてしまうものが多いとは思います。
ただ、とりあえず「実際は、こうなるのか!」というイメージが深まったのは、第一歩としては良かったかと思います。
<マルチピッチリード講習@小川山>

<メインロープによるビレイ点作成。こういう基礎も、やっぱり大切。>

<1P目>

<アドバンスマルチ@小川山>


<「めっちゃ、悪いじゃないですかー」>

<3P目のチムニー>

<リード交代>