2024年10月27日日曜日

12月分の予約受付

10月31日(木)の昼12時(正午)より、12月分の予約受付を開始いたします。

普段と異なる時間なので、ご注意下さい。


雪山に関する講習は、前後日を休業またはジム講習にする必要があるため、先行予約を一部受付した状態です。

こちらは、すでにスケジュールに反映済みです。


マルチピッチ講習も、奥多摩で実施可能です。

では、よろしくお願いします。

2024年10月25日金曜日

ワイドで膝が抜けなくなる現象

ヨセミテにて本日レスト日ですが、とりあえず出国前の記録を。
10月2日(水)、10月10日(木)、11日(金)は、一緒にヨセミテに行く桂くんと。
<桂くん@クロム1P目>

常々思うことですが、講習生に「これはハマりやすいですよ」と言った罠に自分がハマることが頻繁にあります。

10月2日は、瑞牆のクロム1P目(5.11a、ワイド系)をオンサイトトライ中に、膝がスタック!
体感では10分以上は粘って、ようやく膝を抜くことができましたが、もう擦り傷やアザだらけ。かなりの痛みに耐えつつ、オンサイトしました。

しかも、何らか神経を痛めたのか、その後の1週間ぐらいは左脚だけがピリピリと痺れていました。
<「うおぉー」と吠えてフラッシュする桂くん>

状況(ある程度、ワイドクラックに慣れた人にしか分からない描写です):

薄被りのO.W.セクションを越える際に、リップ周辺が4番〜5番サイズで膝が入りません。
で、リップを越えた緩傾斜は6番サイズにより膝が入ります。

という訳で、核心のハング越えを果たして、緩傾斜の6番サイズに素早くニーロックすると完全ノーハンドの大レストが可能なパターンです。
そこで落ち着いてマントル前のカムを決め、ニーロックを解除してマントル、という場面で膝が抜けません。

膝を入れた少し下が4番〜5番セクションなので、完全にボトミングが効いてしまったのです。
<桂くんは、隣の5.10cもO.S.>

この手の困った話は講習生からも相談されるので、過去にも何度も回答しています。
昨冬、城ヶ崎のプチワイド(5.8)で、この相談をされましたし。

①完全ボトミングで効くニーロックは、要注意。
 ※膝を曲げて太腿を膨らませたり(カムの働き)、膝を内転させてトルキングを効かす必要が無い形状。ナッツのように膝が決まってしまう。

②完全ボトミングで効くと思っても、念のために僅かにカムかトルキングをしておくと、解除する分のゆとりが生まれる。

③原則、ボトミングの逆方向に抜く必要があるため、もう片方にガバ足が無いと解除は厳しい。
 ※本当にヤバい時は、アブミなどで片足を作成して脱出。

もちろん上記は意識していたのですが、ほぼノーハンドレストの体勢でカムセットをしながら②を保つことに失敗しました。
つまり、核心を抜けてホッと体幹の力を少し抜いたり、カムセットをしているうちに、少しずつ膝がナッツのようにボトミングされてしまったのです。

あとは、③の選択肢ですが、典型的O.W.のハング越えなので、もう片方のガバ足はありません。
どうにかヒール&トウで頑張るも、一向に抜け出ず。

何度もギブアップテンションからのアブミ脱出がチラつきましたが、最終的に膝周辺の皮をズリムケする覚悟で、重力方向に近い5番サイズ方向へと数ミリずつズラして抜きました。
<ジェリーフィッシュ>

過去に、城ヶ崎のチークボーンでも同じ状況になったことがあります。
あの時はルーフだったので、さすがに諦めてテンションギブアップからのアブミにしましたが、身体構造的にボトミングの逆方向に押し出すことは不可能に・・・。
結局、今回と同様に色々とズリむきながら通常は通れない5番サイズを数ミリずつ通しました。

今回は、「チークボーンよりはマシな状況だ・・・」と考え、どうにかギブアップせずには済んだのですが、まぁ痛かったです。
<桂くんは2撃>

そして、講習生に留意点を説明している罠にハマると、なんだか自分が不遜で恥ずかしい人間に思えてきます。

ただ、こういう可能性は分かっているので、講習生にも
「分かっていても、(余裕とか状況によっては)僕も含めて誰でもなっちゃう可能性はあると思いますけどね。」
と説明する習慣なのがせめてもの心のバックアップです。
<I'm old fasshioned の1P目>

この手の話は、カムスタック、ヒヤリハット、他の人に驚かれるようなオブザベミス、ホールド見落とし、忘れ物など、一生尽きないんでしょうね。

いい人生経験だと思いますが、毎回心は痛みますね。
<1P目の上部は乾いていたが、もうヘロヘロだった>

具体的に登ったルート
10月2日(水) 瑞牆の黄金狂時代周辺
・5.10bぐらいのワイド O.S.
・クロム1P目(5.11a、ワイド系) O.S. 上述の顛末
・5.10aぐらいのワイド O.S.

10月10日(木) 小川山の屋根岩3峰
・アップで5.10aぐらいのボルトルートを3本ほど
・ジェリーフィッシュ(5.11d、ボルト、スラフェース系) R.P.通算3トライ
 何年か前にトライしたが、リボルト前だったこともあり、落ちる可能性満々だったので敗退。
 この日の1トライ目で、ハングドッグしてムーヴ解決。
 この日の2トライ目で、R.P.。

10月11日(金) 瑞牆の大面岩
・ I'm old fasshioned(5.11b、5ピッチ)
 敗退。
 1ピッチ目(5.10b)が濡れており、大苦戦。
 リード交代して、どうにかフラッシュして、午後にようやく2ピッチ目(5.11b)
スタート。しかし、ここも核心が全然分からず、ハングドッグしてようやくムーヴ解決して抜ける。
 この時点で時間切れ敗退。

 正直、条件が良かったとしても、オンサイトトライでは全然歯が立たないマルチに感じた。とは言え、一応核心ムーヴは解決したし、他のピッチは5.10台と言うこともあるので、いずれ再訪したい。

2024年9月2日月曜日

登攀スピード

10月・11月の予約受付は、9月4日(水)です。
念のため再掲しておきます。

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登る速度に関して、リスク低減とスピードは、利益相反することが多いです。

初心者的な言い方をすれば、
「雑で早い登り」VS「丁寧でスローな登り」
という構図になります。

「丁寧に素早く」というのは熟練者のみが到達可能なものだからです。

例えば、マルチピッチなどで「早くしろ!」と急かされる初心者が雑な行動で怒られる構図は、見ていて辛くなるものがありますよね・・・。
この問題は、講習生に対しても常々悩まされるポイントです。
一般の初級者よりは遥かに慎重には登って欲しいんだけど、残置無視・トポ無視のスタイルであっても1日で6ピッチぐらいは登れるようになって欲しい、という話です。

少し、分析的に見てみましょう。

登攀スピードの問題を顕在化しやすくするため、「落ちてはいけないセクション」が多い、マルチピッチや沢登りをメインに考えます。
①マルチピッチなどで要求される丁寧さ

A:慎重さ
・戻れるムーヴ主体で登り、安全圏(プロテクションで守られた場所)まで退却できること
・そのために、スタティックで登ること
・浮き石のチェックをしながら登ること
・浮き石の可能性のあるホールドを止むを得ず使うときは、ホールドを剥がす方向の荷重になるか否かを厳密に意識すること
・足のスリップを避けるため、丁寧に足置きすること
・外傾スタンスに置く場合は、荷重方向をキープすること
・プロテクションセットに時間を掛けられるように、十分に安定した3点支持を主体で登ること

B:ムーヴ選択の習慣
・クラックを積極的に活用した方がプロテクションに困らないため、どちらかと言えばクラックが得意であること
・ジャミングやワイドテクニックなど、比較的ホールドが欠けにくい技術主体で登ること(誰も持っていないようなカチを拾う登りは、欠けるリスクが高まる)
・ステミング・ニーロックなど、ノーハンドになれる態勢を積極的に活用すること

Bは慣れてしまえばスピードにはあまり影響しませんが、Aを完璧にこなそうとするほど「落ちてはいけない」5.7以下(RCCで言えばⅣ級ぐらい?)のセクションの登りは、スローになっていきます。

※難しいマルチになれば、落ちてはいけないセクションのグレードも上がってくるが、とりあえず初級マルチを想定。

しかし、サボると実際に事故に遭ったり、怖い目に遭うので、なかなか難しいものがあります。
②普段のウォームアップで意識すべきことのうち、マルチに即応しないものを思考から除外

普段は、上記の点に加えて、
・脇を締める
・小指で効かせる
・肩を下げる
・胸を開く
・背筋を伸ばす
・骨盤の位置
などなど、フォームに関することを意識しています。

また、手足の位置関係や、荷重方向変化など、ムーヴの仕組みに関しても、様々な考察が可能です。

これらの目的は、故障防止と、将来的により強くなるためです。
どちらかと言うと、マルチピッチのためというよりも、ジムや岩場のショートルートで「もっと登れるようになる。」ことを念頭に置いています。

少なくとも、マルチピッチ中は、これらを意識から外すことで①に集中することが可能です。
実際、マルチピッチ中は、ルートファインディングやプロテクションセットなどにも脳のキャパを取られるので、こんなことは考える余裕が無いと思います。

つまり、この項目は、あくまでも普段のウォームアップでのみ可能な練習です。
③丁寧さを維持した状態で、登攀スピードを上げる要素

A:ルートファインディング
間違うと、大幅にクライムダウンを強いられます。
複数ラインが考えられる場面で、両方にどれだけの偵察を試みるのが効率的なのか、といった戦略が非常に大切になってきます。
1回の戦略成功が、30分〜1時間以上の時間短縮に繋がることも多いです。

B:オブザベーション
「この形状であれば、こういうムーヴになりそうだ。」という読みです。
正解を見つければ非常に易しいムーヴでも、見つかるまでは落ちそうなムーヴしか思い付かず、落ちてはいけないセクションだけに安易に突っ込めず逡巡しまくる、といったシーンをよく見かけます。

C:現場でのスタティックムーヴ選択
オブザベーションを終えて、実際にホールドを触って、「ハイハイ、この配置パターンね。」と理解して自分の引き出しを使う場面です。
ルートファインディングは、ほとんど頭脳戦ですし、失敗経験が物を言う世界なので、マルチピッチリード講習の中で「今の場面は、こうやった方が効率的だったんじゃないですかねー。」といったディスカッションをするのが良いかなと思います。
そういう意味でも、トポ無視・残置無視の初登攀ごっこは、非常にトレーニング効率が良いです。

オブザベーションは、ジムでのオブザベ練習で諦めないこと、岩場ではクラックなどの形状登りの経験を積むこと、などが肝になると思います。
ジムでは、ホールド配置が見えていて、ホールドの掛かりを知っている場合などは、オブザベを外したら、自分のミスだと考えるべきです。まぁ、どんなにレベルが上がってもミスが無くならないのも確かですし、数パターンのムーヴが思い付いて「あとは現場判断」ということが多いのですが。
ある程度分かるようになるまでは、ムーヴ講習を継続的に受講することがオススメです。
軸またぎ、正体フック、逆三角形、などと、講習生用に配置を理解しやすい用語を色々と作りましたので、是非とも習熟して欲しいと思っています。

現場でのスタティックムーヴ選択は、ボルダージムの○級までを手だけでなく足の移動も含めてスタティック縛りで登る、という練習が有効です。
どういう場面では踏み換えが有効で、どういう場面ではプッシュが有効で、といったスタティック縛りならではのムーヴ選択が習慣付いてきます。
当然ながら、自分が本気トライするグレードよりは、少し易しいグレードでないと不可能です。
④許容される手抜きの検討

「落ちてはいけないセクションなんだけど、戻れないムーヴでチャチャッと登っちゃっても良い場面って、どんな条件があるときなんだろう?」
「こういう条件のときは、浮き石チェックをサボっても、ほぼノーリスクだよね。」
といった、条件分岐を自分の中に持つことも、有効です。

ただ、条件設定を間違えてルール化したり、ついつい調子に乗って条件を拡大解釈したりして、ヒヤリハットを感じたことは、僕自身も学生時代から現在に至るまで数々あります。
これらに関して、過去にもブログで何度か書いては来ましたが、今となっては誤解されて伝わるリスクを感じて、少々の罪悪感が沸いています。

この話は、本当に色々と考えてそうな友人と、ディスカッションして身に付けていくべきものでしょうね。

また、ある程度のレベルまでは、あえて積極的に取り組まない、という方法もアリかもしれません。
例えば、1日に10ピッチ以上あるようなルートに行くんじゃないかぎり、6ピッチ程度なら朝イチから登ってヘッデンで下降すれば、登攀スピードは最低限あれば十分です。

とはいえ、現場に行ったら、自然と考えてしまうとは思います。
なんせ、その場で手っ取り早く時間短縮できてしまうので、魅惑的です。
どの要素も一朝一夕には行きませんが、引き続き頑張って習熟していただければと思います。

講習的には、
「①の要素を早期に伝えて、ちゃんと理解した人ほど登攀スピードが遅くなるので、そこから③の要素を本格的に伝えていく。」
という方針になろうかと思います。

まぁ、③の要素を勉強しづづけるのは、かなりの根気が要るので、なかなかマルチピッチ卒業生でムーヴ講習に継続的に通うような人が少ないのですが。

今回は、マルチピッチや沢登りを例に挙げましたが、ショートルートでも落ちてはいけないセクションを登るときは実際には同じはずだと思います。


2024年8月30日金曜日

10月、11月分の予約受付

9月4日(水)の夜21時より、10月、11月分の予約受付を開始いたします。

ヨセミテに行く予定なので、その出発日と帰宅日の前後1日ずつも含めて休業とさせていただきます。
かなりの長期休業となりますが、どうぞよろしくお願いします。

2024年8月13日火曜日

バシルーラ(5.12a)のオンサイト

5月24日と、かなり前の話になりますが、桂くんと七賢の岩場。
バシルーラ(5.12a、核心はボルトルート)をオンサイトしたのですが、自分でもびっくりの3時間トライになってしまいました。
ボルトルートでは、自身最長時間の記録だと思います。

残念ながら明確な反省点はなく、再び繰り返す可能性も無きにしもあらず。
顛末を書き留めておきます。
ルート詳細に言及するので、オンサイトしたい人は読まないでください。
<これは、別日に桂くんと瑞牆に行ったとき>

①事前準備
下部は易しいスラブ、核心部がハングしており、ハング面に入らないとホールドが見えづらいことが一目で分かった。
すると、ハング面に入って上部観察(頑張ってレストしながら数分観察)、スラブ面に戻って大レスト(完全回復するまで10分以上休む)を何度も繰り返す展開が予想される。

この時点で、1時間越えの可能性は十分にあるルートだと分かった。

②ウォームアップ
嫌な予感がプンプンしたため、本気トライの時間短縮のために工夫することにした。

バシルーラと下部が共通するであろうNPでトップアウトする凹角ラインでアップ(5.8ぐらい)。
さらに、隣の「遠雷の木曜日」(5.8、ボルト)も登る。

これらのラインを登りながら、バシルーラの核心パートを遠目に眺めて、可能な範囲でオブザベしておく。

③地上でのオブザベ
幸い、ハングしたカンテラインなので、カンテと相性の良いホールドの向きがあった場合と無かった場合で、何パターンかムーヴをイメトレ。
が、あまりに地上からは遠いため、ホールドの予想はやはり外れた。
しかし、このイメトレは役に立ったとは思う。

ちなみに、ある程度までオブザベが当たったのは、各ボルトにおけるヌンチャクの伸ばし具合ぐらいか・・・。

④トライ
ルートが日陰となり、状態が比較的良くなってからトライ開始。

下部のスラブは、リピートなので順調にこなす。
ハング下(正確には右下)が予想通り居心地が微妙なレストポイントで、完全回復するのに時間が掛かる。
ここから、核心部まで3mぐらいトラバースして、ハング面に上体だけを入れて、上部観察。
疲れたら、3mをトラバースして戻り、居心地の微妙なレストポイントで完全回復を待つ。
これを、4回ほど繰り返す。

大体の作戦が定まり、核心部へ突入。
無事にボルト2本分のハング面を越え、ノーハンドで立てる外傾テラスへ。

そこから、3mほどの垂壁からスラブへのマントル(以下、スラブ系マントル)があるが、ここにボルトが無いのに、予想より遥かに難しい!
最後にクリップしたのはハング面のボルトなので、外傾テラスに立った時点で既に足元を越えている。

何度もマントルにトライするが、できそうなムーヴが見えない。
そして、かなりのランナウトになっているため、いかに下がハング面でロングフォール許容だとしても、9割行けそうなムーヴじゃないとトライできない。
さらに、外傾テラスに戻っても、シューズを一旦脱いだりするのも物凄く体勢的に厳しいものがあり、時間ばかりが過ぎていく。
かといって、スラブのスタンスが細かく、5分もシューズを履き続けているとスタンスの乗り心地が悪く感じてきて、一旦シューズを脱いで汗を乾かさざるを得ない。

何度もビレイヤーに謝りつつ、自分でも時間の読めない行きつ戻りつを繰り返す。
ビレイヤーとしても、「仮に3時間半のトライ」が見えて来たら、敗退を促すつもりだったそうだ。

そして、行きつ戻りつの高度を十センチずつ上げていき、ある時「たぶん登れそう」というムーヴが見出された。
落ち着いて外傾テラスに戻り、「次こそは行けそうです。」と宣言して、突っ込む。
そして、10%のフォール確率を許容したマントルを達成・・・。

ようやく終了点にクリップすることができた。

⑤トライを終えて
ハング面の核心部における行きつ戻りつに時間が掛かることはビレイヤーも想定しており、1時間半程度まで(クラックで、まぁまぁ時間が掛かったときぐらい)は、お互いに折り込み済みのオンサイトトライだった。

しかし、上部のスラブ系のマントルは、ボルトが打たれていないことから易しいだろう(せいぜい5.9の核心ぐらい)と思い込んでいた。
実際、フォールしても盛大にハング面に落ちるだけなので、5.9ぐらいなら恐々越えられるだろうと思っていた。
もっと言うと、ボルトルートは人為的にボルトを打っているので、「5.12aでランナウトするとしたら、ハングの5.10b、スラブで5.9まで。」などと言う相場感をオブザベに当てはめていた。
が、実際には体感で5.10bくらいのスラブ系マントルだと感じた。
正確な時間は分からないが、ここで1時間以上の行きつ戻りつとなったことが、最大の誤算であった。

ちなみに、外傾テラスにしゃがんでフォールすれば、敗退することは可能であった。
(ビレイヤーとしても、これ以上長くなる場合は、それを促すつもりだった。)

⑥感想
トライ中は、「ボルトルートにしては、ちょっと厳しめのボルトだよー。」などと文句を言ってしまうが、実際には大変よくあることなので、登る側も覚悟を持ってトライする必要がある。
実際、危険になる前にトライを辞めることも可能なので、ルートが危険なわけでも、初登者が悪いわけでもないとも思う。
初登者が、例のスラブ系マントルを5.9以下に感じたからボルトを打たなかった可能性だってあるし、「5.12aなんだから5.10bぐらいはスラブでもランナウトでしょ。」と思う可能性だってある。まして、僕は185cmと長身なので、狭いムーヴで辛く感じることも頻繁だ。

つまり、「5.12aでボルトが無いスラブだから5.9以下」という僕の見立て自体も、ハズレの可能性があることは、僕自身もよく知っている。
一方で、今後こういう見立てを使わずにボルトルートのオブザベをするかと言われたら、答えはノーだろう。
見立てが当たればラッキー、外れても敗退すれば良いので命に関わる問題ではないからだ。

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つまり、明確な反省点はありません。
ルートが悪いわけでもなく、今後もこういうルートには出会うでしょう。

ここまでの長時間トライを積極的に行いたい訳では決してないのですが、外傾テラスで敗退するのが正解だったかと言えば、「それはビレイヤーとの相互理解による」ということになるでしょうし、今回に関してはトライを続けて良かったと言ってもらえました。
(桂くん、ありがとう!)

一方で、単なる粘りではなく、オブザベとかを磨いて、もうちょっとスマートにオンサイトできる確率を上げたいなぁとは思うので、今後のトレーニングの問題意識として行きましょう。

<これも本文とは別日>

<これも・・・>

2024年8月6日火曜日

9月分の予約受付

8月9日(金)の夜20時より、9月分の予約受付を開始いたします。

曜日毎のジムなどに、特に変更はありません。

原則、火木がDボルダリングプラスリード立川、水がランナウト。
ただし最初の1名の方の希望によっては変更できる場合もあります。

また、10月中旬〜11月中旬でヨセミテに行く予定なので、その期間は講習を行うことができません。
継続的に受講されている方には、ご迷惑をおかけしますが、ご理解よろしくお願いします。

2024年8月5日月曜日

2024シーズンの富士山ガイド

7月に3週間ほど、富士山ガイドに行ってきました。

今も残っているガイド仲間の皆さん、本当に頑張ってくださいませ!
自分の中で、良かった点、イマイチだった点を書き出してみます。

●良かった点

①全体説明中に、自分が注目を集めきれていないことに気づいた際に、「Are you O.K.?」みたいな内容を一言喋り、笑いを取りながら注目を集め直すテクニックに習熟してきた。
(実際には、日本語で行う。)

②登りの歩行技術、下りの歩行技術に関して、日常生活の姿勢との関連を、お客さまに分かるように説明できるようになってきた。ただし、本人が実際にツアー当日中に修正できるかどうかは別問題で、実際には相当難しいことが多いが、修正してくる人もいる。

③登りの歩行技術、下りの歩行技術、耐風姿勢の説明が、ごく僅かにレベルアップした。

④休憩中に、肩回しや伸びをさせて、高山病対策をさせることを、僕自身が忘れにくくなった。

⑤お客さまの水分補給量が少し増えた。(五合目で原則1人1リットル程度を持たせる。七合目で水が足りなくなって、購入する人が増えた。)これによる、高山病の予防と脱水予防。

⑥7月の富士山と天気図の関係の理解が、少し深まった。

⑦観光ガイドで、笑いが取れているとき、「へー」と思ってもらえたときは、もともと満足感があった。
今年は、「何の反応も無いけれど実はよく聞いてもらったとき、というのも結構あるはず。」というのも意識してみたら、実際やりやすくなったし、後々そういう感想ももらえた。

⑧足首を捻った程度のお客さまで、その場で歩けたとしても、「一応オタワアンクルルールをやっておこう。」という意識が染み付いてきた。小雨の下山道で、正直かなり面倒ではあったが、2人ガイドで他のお客さまを待たせる必要の無い場面だったので、面倒がらずにやって良かったと思う。
●イマイチだった点

①よく理解してもらうことに重きを置きすぎて、短時間で説明を終える工夫に至れず、過去シーズンより下手だった気がする。
(初心者ツアーで、2日間の中に伝えたいことをギュッと詰め込むのは、かなりの難題。)

②強風の日にお鉢巡りを決行したが、帰りの大沢崩れ上部通過のリスクが高かった。
・添乗員さんが耐風姿勢が甘かったことに強風帯を抜ける頃に気づいたため、ヒヤリハット体験の気持ちになった。
・そもそも、風向きを考えると、お鉢一周ではなく剣ヶ峰往復にすべきだった。
・耐風姿勢よりも帽子が飛ばされないことに意識が注目してしまう人がいたので、帽子を脱がせてスタートすべきだった。

③ツアー終盤に話している「できれば、これを機に登山や運動習慣を!」という話の反応が、過去シーズンよりも悪かった気がする。原因は、歩き方の姿勢矯正の話とかまで踏み込んだ結果、話が難しくなったり、実現可能性が遠のいたためと思われる。

④いつもながら仕事の合間に余裕はなく、博物館などに行けたのは初仕事の前日だけだった。後は、ネット調べや、他のガイドから聞いた知識で、わずかばかりの観光ガイドの補強をした程度。
オフシーズンに勉学モチベーションが上がらないことが最大の問題・・・。
同様に、仕事の合間にクライミングジムに行けたのも、3週間で1回だけだった・・・。

⑤高齢層が多いツアーで寒い日に、トイレマネジメントが全く上手く行かなかった。
休憩の最後に、やっぱり今からトイレに行って良いですか?という人が現れる。トイレが2時間無いセクションで、「トイレ我慢できないんです。」という人が現れる。などなど。
水分補給量が増やせた、他に色々とアドバイスする項目が増えたためお客さま目線でトイレマネジメントの優先度が下がった、などの可能性あり。
●興味深かった点
①経験の多いガイドと2人仕事ができて、単純なダメ出しではないレベルの議論ができたこと。

例)
・(弱めのお客さまを何とかしてでも)全員登頂を目指すこと、ツアー中の個別ケアの限界、時間の制約を、その日の具体的事例の中で。
・ツアー運行や説明で、あえてやっていること、あえてやらないでいることの意味。
・各自のガイドスタイルのメリット、デメリット。

※新人教育とかを話し合う機会はあるが、ガイド個人技の悩みを共感できる機会は、意外と少ない。

②吉田ルートから登り、富士宮5合目に下山するという、縦走形式のツアーで、富士山を少し別の側面から見られたこと。

例)
・山頂宿泊小屋の雰囲気
・リタイヤの出しにくさを実感(初心者が多く、高山病も多い富士山で、リタイヤを出しづらいのは非常に厄介な問題。)
・夏山期間中の御殿場口と富士宮口の雰囲気(山小屋、ガイド、登山道、など)
変わりゆく富士山というのも、実感します。

10数年前の大混雑時代(1日あたり7,000〜12,000人)を知っているガイドは、
●多少荒っぽくても山頂御来光に間に合わせること
●時短の技術
●40人ツアーを1人でガイドすること
などが最低条件で、この上に各自の個性がありました。

とにかく荒っぽい時代で、他の小屋のガイドから怒号が飛んだり、山小屋の人から怒鳴られたりも頻繁にあり、とても平成とは思えない雰囲気でした。

その後、世界遺産登録やスバルラインのマイカー規制の影響なのか、年々と登山道は空いて行きました。
さらに、コロナで山小屋の宿泊者数を絞ったことも重なり、去年と今年は、1日あたりの登山者数は1,000〜3,000人程度です。
ツアー上限も30人が主となり、2人ガイドもメジャーになりました。
登山道も山小屋も余裕が生まれて、山頂直下の渋滞もごく限定的です。

だからと言って、世界文化遺産の広報とばかりの観光ガイドが好まれるかというと、また少し違う気がします。

●天候が悪い日も多く、並の登山ガイドよりもシビアに天候判断やお客さま説明を経験する
●程度の差はあれ、高山病の症状はほとんど毎ツアーある
●同じ旅行会社ツアーでも、参加者層が高齢化、登山未経験者化していく傾向を感じるため、全員登頂のハードルが上がっていく
●持病や軽い怪我を含めれば、ガイドが初期対応する事案も多い

大混雑時代でなくなったとは言え、やっぱり若手ガイドが
・20〜30人という人数
・時間通りの運行
・全体説明
・山小屋やガイド同士の調整
などに脳のキャパを大部分持っていかれるのは、昔と同じかなぁとも思います。

個人的には、天気や状況次第で、臨機応変にやること・説明内容を変えられる裁量が、ガイドの面白さでもあります。
そういう意味では、時代の変化は感じつつも、普段はツアー毎・天気毎の臨機応変の対応に追われて毎シーズンを終えています。

つくづく富士山は、短い期間に凝縮された人生経験の宝庫だと思います。