2023年3月30日木曜日

5月分の予約受付

4月3日(月)の夜21時より、5月分の予約受付を開始いたします。
5月からのクライミング講習は、小川山などの山梨・長野方面での講習がメインとなります。

ではでは、どうぞよろしくお願いします。

2023年3月27日月曜日

事故(ヒヤリハット)反省の講習依頼

ときどき、講習生から
「事故orヒヤリハットに対して、振り返りをしたい。」
という依頼があります。
本人なりの反省・パートナーとの話し合いもあるはずですが、講習にも意義を感じます。

私の講習中にも講習生の骨折・ひどい捻挫は、少なく見積もって過去十数年で4回あります。
知り合いでも、事故は毎年何件も耳にします。
ただ、諸々考えると書きづらいものです。

どうしても、僕が偉そうに反省点を挙げるような文章になりそうなので、実際の事故ではなく、ヒヤリハットを見聞きしたものを書くのが無難かなと思っています・・・。
特に、講習中の事故は、僕にも責任があり、当事者も登山やクライミング休止中だったりしますので。

今回は、ヒヤリハットに近い感じで軽傷で済み、かなり建設的な反省ができたため、参考記録としてまとめます。
すでに、「読みたい」というオファーもあり・・・。

3月26日(日)も、そんな講習をストーンマジックにて。
講習生が、友達同士で登りに行った際のヒヤリハットについて、詳細に検討していきます。

本日は講習生5人。
(様々な意見を聞きたいという本人希望もあり、人数制限は今回は無しにて。)

以下、本人からの聞き取り、講習生の意見、私の意見などは区別なく整理。
私も、そのルートは登ったことがありません。

①発生状況(ボルトルートのエリアにて)
1本目のボルトの高さが4mほどで、その前でフォールして地面に着地し、足首を負傷。

→反省 ★1本目の高さなど、主要ファクターが上手く言語化できず、ついついムーヴの詳細を先行して喋ってしまう思考。

※落ちる直前の必死さがホールドに向いているため、そればかり語りたくなる気持ちは重々理解できる。

②ファーストエイド
本人が捻挫と考えて、テーピングで可動域制限して、行動続行。
ただし、本人は負傷後に自重して登らず。
その後、自力下山のため30分ほど歩行。

→帰宅後、足首がパンパンに腫れる。
 翌日、病院で診察を受け、ピンポイントペイン(圧痛)があり、剥離骨折と診断される。
 ただ、数日の固定で支障なく歩ける程度になり、即座にクライミングは復帰。
 数週間程度でほぼ完治しそうなペースで、むしろ酷い捻挫よりも軽傷。
 (自力下山かつ軽傷なため、事故というよりヒヤリハットと呼ぶべきか?)

→反省
 現場でも、オタワアンクルルールなどを利用して、捻挫・骨折の判定を試みるべきだった。
 もし、その場でピンポイントペイン、顕著な腫れ、などがあれば、判断も変わってきたかもしれない。
 特に、骨折後に歩かせるかどうかで予後が変わる場合もある。

 例)
  ・固定して搬送(最も基本に忠実)
  ・固定部位を基本よりは限定して行った上で搬送
  ・固定せず搬送
  ・ザックは持たずに空身で下山
  ・肩を借りて、なるべく足を付かずに下山

③下地の状況
平らな土がメインだが、着地したい場所にちょうど岩があり、かなり気をつけないとダメ。
実際、フォールした際も、そこに足を付いた。ただ、負傷したのは、平らな土に着地した方の足。

追い込まれるまでの判断
地上1.4mほどにスタンスがあり、そこまで立ち上がると、クリップホールドと予想されるガバ(横からインカット具合などを視認できる訳では無いため、確定情報では無い)が取れそう。
そのガバを保持して、足を1〜2歩上げると、1本目にクリップできそう。

→地上1.4mのスタンスに立てば、1本目は問題なくクリップできると断定し、トライ開始。
 数回の行きつ戻りつをした後に、そのスタンスに立つことに成功。しかし、予定していたガバに届かず、クリップできない状況に追い込まれた。
 さらに言えば、予定していたガバに届いても、思ったほどガバでなかった可能性も十分に考えられたため、その先にも想定外の可能性があった。

→反省 ★クライムダウン敗退、飛び降り敗退を考慮した登りが、どの程度できていたか?
 ・そのスタンスに立つまでは、恐怖心もあり、本人としても慎重に行動したつもり。
 ・一方で、そのスタンスに立ちさえすれば、ガバに届き、問題なくクリップ態勢に入れるという断定があったため、スタンスに立ってからの敗退は全く念頭に無かった。そのため、スタンスに立ち上がる動きは、戻れないムーヴであることを自覚して突っ込んだ。

追い込まれてからの判断
※すでに焦っているため、記憶は不確実な可能性が相当ある

地上1.4mのスタンスから、飛び降りは自信が無い。
しゃがんで、片足だけでも降ろしてから飛び降りようにも、そんな想定なくスタンスに立ってしまったため、戻りづらい状況になった。
結果として、しゃがむことは(少ししか)出来ずに、自らフォール。

※講習中に実験した結果、しゃがむことが出来れば、地上50cmからの飛び降りぐらいになった可能性が高いため、問題なさそう。

→反省 ★戻れないムーヴを繰り出す前の、敗退シナリオの想定が不十分だった。
 ・しゃがめば、ギブアップフォールできた可能性が高い。
 ・ビレイヤーから十分に手が届く範囲での出来事なので、スポット、クライムダウンの補助(沢でのショルダーなども含む)、などをお願いできた可能性が高い。

⑥心構え
・「何年も事故を起こさずに登ってきた。」、「他人が危なっかしく見えてきた。」などの自信から来る油断。
自信と慢心が紙一重である問題

・登ることに夢中すぎて、リスク判断が自分に都合良くなる状態。
集中と無我夢中が紙一重である問題

本日の、講習生の例え話を挙げます。
「経験上、医師は8年目ぐらいの頃に、やや天狗になる。実際は、初期治療しか分かっていなくても、ほとんどのことに対応できるような気になってくる。しかし、そこで天狗の鼻を折られる機会があり、学びに終わりが無いことを再認識する。」

慢心も無我夢中も、どんなベテランでも起こりうることですが、特に起こしやすい時期があるという話。
自分を振り返っても他人を見ても、うなずけます。

⑦ディスカッション前後の講習内容
・ファーストエイド 
・ザック担架搬送
・ボルダーの飛び降りの練習
・スポットの実験あれこれ
・被った壁での逆再生可能ムーヴの考察(特に、手はガバなのに足が戻せなくなるパターンについて詳細に。)

どれも、初めての内容ではないメンバーだからこそ、より一層深く考えることができたのではないかと思います。
ジム講習にしては珍しく、総合的な学習でした。

とは言え、どれも一朝一夕では身に付かないものばかりですね。
個別項目の反復練習は、また追々やって行きましょう。

2023年3月25日土曜日

久々のワイド

3月12日(日)、20日(月)は、自分のクライミングにて野猿谷ボルダー。

ロクスノに出ていた室井先生の記事を読んでファンキーモンキー(初段)をやってみたいなと思い立ったのと、景気付けにワイドでもやってモチベーション上げて行こうかなという気持ちで。
(ここ2ヶ月、自分のクライミングはジムだけだったので、立体ムーヴに飢えて来た頃です。)
<ファンキーモンキー、ルーフ下をトラバースするハサマリング課題>

結果は、勝負にならずに敗退。
僕の考えたムーヴはインバージョンでのトラバースですが、今の実力ではリスクが高過ぎます。
<猿の館(初段)>

その後、なかなか興味深いムーヴ体験をしました。
(ムーヴの記載が細かいので、オンサイト注意)

「猿の館」という課題で、スタートのカチが悪過ぎて、僕には保持できそうにありません。
しかし、地上2m強の高さには挟まれるトンネルがあります。

いろいろ考えた結果、インバージョンでのスタートを選択。
最初から地面に逆立ちして、トンネルに両足をヒール&トウを決めます。
それからノーハンド(コウモリ状態)を作り、スタートホールドを両手でタッチ。
(何だか、コンペの4点スタートの気分です。)

そこから、あれやこれやを駆使して、上下を戻し、トンネルに身体を突っ込み直してトップアウト!

2時間近く打ち込みましたが、自分なりには会心の完登でした。
年末の豊田で、逆立ちスタートで遊んでいたのが、こんなに早く実戦投入されようとは・・・。
<猿の館は、マットが敷いてあるあたり>

主にトライしたハサマリング課題 ルーフワイドorちょっとハングしたワイド

3月12日(日)
・ファンキーモンキー(初段) 敗退
・ジャッキーモンキー(初段) オンサイト
・猿の館(初段) 2時間ほど打ち込んで、完登
・ジャッキーモンキーの裏面(?) 2トライ
その他、フェース系も少々

3月20日(月)
・ダイアナ(初段) 丸一日打ち込んで、完登

この日は、まさかの5人でのダイアナセッション。
その中に、「関西から修行に来ました。」という方、「岩場ではワイドしかやりません。」という女子大学生、「ハンドとかのクラックは1回ぐらいしかやったことが無くて、ハサマリングからクラック覚えました。」という方などが居て、色々と刺激的でした。

そして、皆さんインバージョンで滞在できる時間が長いことに、改めて感心しました。
僕のインバージョンが時間制限が短すぎてリードで活かせそうな気配が薄いだけに、輝いて見えました。
結局、どんな分野も中級以上は身体の強さも大事っすよねー。

2023年3月22日水曜日

雪山の1つの楽しみ方

今シーズン、アイスクライミング講習と雪山講習が、結構たくさんあって、私としても本当に充実しました。
雪山は準備や片付けが大変ですが、やはり良いですね。
<3月17日(金)のトマの耳>

TGさんのマンツーマン日程だけでも、非常に雪山らしい楽しみ方を3回できました。
それを御紹介。

①1月 上越 方丈山〜柄沢山
ラッセル&テント泊の講習にて。

ワカンで腰付近までのラッセル。しかも、前日までが地元の人も雪かきが面倒になるレベルの湿雪だったらしく、めちゃくちゃ雪が重いです。

8時間ほど行動して、方丈山頂にて幕営。
縦走の計画でしたが、想定より時間が掛かっている点、翌日午後からの悪天予報を加味して、撤退としました。

もちろん、全くのノートレースなので、スキー場の裏だというのに山に入っている気分は相当なものです。

また、TGさんも
・地形図読みが自分で思った以上に出来ていないこと
・雪崩の入門書などで知っている地形を全く意識できていないこと
・雪深いところでの整地からの幕営、テント内作業
・コースタイムが存在しない山での、行動時間の予想や撤退判断
などなど盛り沢山で、下山後に沸々と喜びを語ってくださいました。

僕自身、下山後2日間はバキバキの筋肉痛になりましたが、味わい深い山行ができました。
②2月 八ヶ岳摩利支天大滝 敗退?

行く前から懸念していたことですが、登山道から入るべき沢を僕が間違えて、1時間半ほどラッセル。まぁ、違うだろうと90%確信して、隣の沢にラッセルしてトラバース。
3時間近くラッセルして、もはや別の講習として満喫していましたが、そこに6mぐらいの氷瀑がありました。
で、ここでアイスのリードを講習して、15時くらいに撤収。

まだ明るいので、さらに隣の沢にトラバースして、本物の摩利支天大滝と対面。
そして、地形図と今回歩いたラインを改めて照合して、帰路に着きました。

TGさんも、
・アプローチで間違うことは非常によくあるので、そういった場合の行動が経験できた喜び
 一、危険が少なそうなら、トラバースするという選択肢
 二、氷瀑など、そこで遊べそうな対象物が出てきたなら、それで練習すれば十分に楽しめるという選択肢
を経験できて、嬉しそうでした。

また、たまたま出てきた6mの氷瀑が、当然アックスやアイゼンでの穴やボコボコも全く存在せず、ツルッとした氷柱らしい氷柱で、その登りにくさに感動していました。
どうやら、これまで講習したエリアが毎週のように誰かが登るエリアだったので、「氷にはボコボコした段差があり、そういった弱点を付くものだ。」という思い込みがあったようなのです。

「アプローチで迷うかもしれないけど、TGさんなら楽しだり、学んだりしてくれそうだから突っ込もう。」
ぐらいのプランでしたが、予想以上に得るものを得ていただけて、私も心から楽しく思えました。
③3月 谷川岳 雪洞泊
1日目が夕方から雨、2日目は一日中雨(気温が低いので、谷川岳の稜線ならギリギリ雪かな?)という天気予報にて、もともとの行き先を変更して谷川岳天神尾根。

雪洞に適した斜面を探すも、今年は雪が少なく、難渋します。
途中に「40度以上で50m以上続くような斜面」が2つ見つかるも、ちょっと雪崩リスクを感じるので、幕営は憚られます。

テントを背負ったまま山頂にいくと、トマノ耳、オキノ耳の間のコルに雪洞に適した雪面発見!
翌日のホワイトアウト気味の天神尾根下山に若干ビビりながらも、ここで雪洞泊をしました。
なんせ、谷川岳の山頂泊ですから、なかなか貴重な体験です。
不慣れも手伝い、5時間かけて完璧に近い雪洞が完成し、楽しく泊まりました。

で、翌日は予想通りの小雪&ガス。
そして、トレースも薄くなって分かりにくい状況です。
ただ、寒くはなかったので、余裕を持って地図読み講習をしながら下山することができました。
場合によっては、降りるだけで僕自身が超本気モードを覚悟していましたが、そこまでの悪条件には至らず一安心。
ときどき視界が悪くなったりして、ピリッとした緊張感を味わっていただくことができました。

TGさんからは、
・2日目が天気が悪すぎない程度に悪くなってくれたお陰で、自分の地図読み能力の低さが認識できて良かった!
という感想。
この3回で、TGさんと、
・想定外の中で山を楽しむ(本人曰く、「上手くいかない時の方が勉強になることも多い。」)
・ノートレースや若干の悪天候に揉まれて自分の山ヂカラと対話する(苦い思いをしたり、バッチリと上手く行って自信を深めたり)

という点が共有できると分かり、とても嬉しく思いました。

こういう共通認識があれば、来シーズンもチャレンジングな講習方法を楽しめそうです!