10月18日から約1ヶ月、ヨセミテに行っておりました。
予想通り、ボコボコにやられて来た訳ですが、少しずつ書いておこうと思います。
<Brownoser(5.8)>
10月20日(日) クライミング1日目
エリア:センチネルクリーク
まだ気温が高く、日向は厳しい状態。
日陰の当エリアへ。
とりあえず、5.8(Brownoser)でアップ。
日本のグレード感覚より、ちょっと難しい。
そして、ロープスケールが30mを越えており、かなり時間が掛かる。
同じサイズのカムを2セット持ったとしても、バッククリーニングなどの「やり繰り」に時間が掛かる。
(本気トライなら、同じサイズを3〜4セット持つことも)
そして、周りの壁が大きいとか、諸々の目の錯覚で、取り付く前は短く見えるのが厄介だ。
パッと見は20mちょっとでも、実際は30m越え。
3mぐらいの核心に見えても、行くと5mぐらいあって、カム戦略が相当変わってしまう。
同様に、クラックのサイズも細めに見える。上部がフィストサイズかなと思っていたら、OWだったという具合だ。
あとは、氷河で削られた影響だろうか、フリクションが悪い。
これは、垂壁ぐらいの傾斜ならテーピングなしでもジャミングに問題ない、というプラスポイントでもあるのだが、スタンスは見た目を裏切ってくるし、ちょっとしたレイバックやステミングは相当慎重になってしまう。
まぁ、そんなことは書籍でも読んだことはあったし、16年ぐらい前にヨセミテに行ったときにも散々味わったので、最初から補正をかけてオブザベするように心掛けているのだが、それでも感覚の差を感じる。
<Unnamed(5.9)>
続いて、5.9(Unnamed)のハンドクラックで様子見。
当エリアの中だと日本的な長さ(20m以下)だが、やっぱりフリクションは悪い。
続いて、5.10b(Unnamed)のコーナーで様子見。
さらに、5.9(The Sphinxter)のワイドで様子見。
こちらは、さらなるツルツルで、オブザベより遥かに苦戦する。
しかも、30m越えにつき、相当に時間を要する。
最後に、5.10c(Unagi、1P目)にトライ。
こちらも、見た目よりは核心が長く感じたが、本日登った中では唯一グレードが小川山・瑞牆ぐらい(?)に感じた。
<初日からManana(マニャーヤ、5.10d)をO.S.し、勢いに乗る桂くん>
エリア:センチネルクリーク
同じエリアで。
この日は、やりたいルートを決めて来ていた。
Ying-Yangの2P目がワイドの5.10aで、30m越えである。
これの真下には、ほぼ直線的にHari-Kiri(5.10a、ハンド、フィンガーなど盛り沢山、30m越え)というクラックが続いている。
これを、「リンク(2Pを繋げて登る)したら、すごく面白そうだ」というのが前日の私の感覚だ。
ちなみに、Ying-Yangの1P目と2P目はあまり直線的ではないので、こちらの方がリンク向きに見える。
まずは、前日と同じ5.8でアップ。
続いて、5.9(Juan-Tawn)もアップで登るが、例によって苦戦する。
どうやら、グレードは1.5ぐらい日本(小川・瑞牆)より難しいと考えると、トポが読みやすそうだ。
5.8→5.9または5.10a
5.9→5.10aまたは5.10b
という具合に読み替えると体感グレードと合う。
ときどき、小川・瑞牆グレードと同じと感じるときもある。(ヨセミテ基準だと、甘めということか。)
もちろん、高グレードは分からないが、私にとっては縁がなさそうだ(笑)。
<Juan-Tawn(5.9)>
さて、懸案の60m越えのオンサイトトライ。
ロープの流れ問題もあり、上部で使わないカムもしつこくバッククリーニング。
しかし、40mを越えたあたりから、ロープの重さが尋常ではない・・・。
ロープの流れは十分に直線的だが、単純にロープ自体が重いのだ。
パラレルなOWセクションなのに、カムをズラす技が使えない。
止む無く、同サイズのカムを上に決めてクリップして、下のカムを回収する方法を繰り返す。
さらに、ロープを進めると、もはやロープが重力で落ちる力が強すぎてクリップもまともできない。ロープを歯で咥えるのも、歯に悪いんじゃないかと言うレベルだったり、不可能だったり。もはや、ニーロックなどでノーハンドレストに近い状況にしないと、クリップができない。
岩稜帯のマルチピッチなどで50m越えのピッチがあっても、垂壁ではないので、このようにロープの重力を直接感じることは無い。
ヨセミテのショートルートは、80mロープが割と一般的なようだし、我々もそうしていた。今回は、9mm台の後半だったが、9mm前半であれば相当変わったかもしれない。
クラックはロープが岩に擦れるので、細いロープだと消耗も早いのだが・・・。
とにかくツラくて時間が掛かる作業の繰り返しだが、ようやく60mほどロープを伸ばして最終セクションのチムニーへ。
ここで、絶望的なお知らせ。
チムニーは10mぐらい続く。
スタンスなどは、それほど豊富でないため、ランナウトするのは私には難しい。
プロテクションを取れるサイズのカムは、使い切っている。(チムニー内のカムのサイズは、オブザベ不可能なため、ここは運次第。)
さらに、トライ開始から2時間ほど経過して、もうすでに暗くなり始めているが、ヘッデンを持って来なかったという痛恨のミス。
ここで、敗退決定。
しかし、チムニーの奥に1つ6番カム(A)を決めて、その下の5番カム(B)をバックアップに残そうとすると、Bにロープスタックしてしまう。(Aが奥まったところにセットされており、Bは手前にセットされているため)
したがって、ロワーダウンもできない。(そもそも、ロワーダウンしても1P目の終了点まで降りられるかは不明だが、途中のカムを回収してエイドダウンの足しにするなどのプランは考えられる。)
諦めて、上部3個のカムを残置してロープをFIXして、懸垂下降で地上に戻る。
「もうこれは残置して翌日回収させてください。」という最終手段だ。
で、地上に戻ると、「今日中に何とか回収して、明日はちゃんとレストしましょう!」という桂くんの指令が下る。
そこで、ロープ登高(このとき、アッセンダーは無いので非常に疲れる)で60mを登り返し、途中でスタック気味のカム(バッククリーニング時に上からカムを回収しようとすると、スタックさせてしまう可能性が普段より高い)をハンマーで回収し、ようやくFIXの頂点へ戻る。
あとは、下で補充したワイドカムなどを駆使して、エイドダウンとクライムダウンを繰り返して、1P目終了点へと戻る。
あとは、下で補充したワイドカムなどを駆使して、エイドダウンとクライムダウンを繰り返して、1P目終了点へと戻る。
あまりにもヘロヘロなのだが、エイド作業と5.9以下のムーヴの繰り返しなので、とにかく頑張れば続けられてしまう。明るくて元気なときに比べると、作業効率は相当落ちているが。
生命力レベルの頑張りを繰り返して、1P目の終了点へと戻る。
ここには、いわゆるハンガーボルトの終了点が存在するので、ようやくロワーダウン。
トライ開始から実に5時間が経過しており、大迷惑トライとなった。
そして、このルートが70m越えであることも、ロープスケールから分かった。
<Ying-Yang 1P目(5.10d)をトライする桂くん>
具体的な反省
①ヘッデン忘れ
日没2時間前からのトライなのに持参しなかったのは、大失敗。
②悪条件で押し切れるのは5.9まで
多少のランナウト、カムの残量不足のやり繰り、岩の脆さ、そして今回のような強烈なロープの重み。これらの条件が2つ重なるぐらいでも、ヨセミテの5.10aは私の実力では厳しい。
つまり、マルチピッチでピッチ後半に5.10aセクションが出てくるようなピッチを切り方は、私にとってはかなり重荷で、こなせない可能性も十分にある。
5.10d〜5.11aぐらいの一番オンサイトに頑張りたいグレードではなく、こういったラインを序盤にトライしたのは、ヨセミテ慣れを加速できるかなという思惑もあった。
しかし、このルートもヨセミテ慣れが超重要で、5.9までが割とサクサク登れるぐらいでないと大迷惑トライになる。
ともかく、このラインは反省を活かして登るにしてもパートナーへの負担が大き過ぎるので、しばらく封印することにした。
<Frenzyの1P目>
翌日はレスト。
10月23日(水) クライミング3日目
エリア:ミドルカシードラル
Central Pillar of Frenzy(5.9、5P)
中1日レストして、入門マルチに行ってみようという運び。
・アクティブレスト
・ヨセミテ慣れ
・自分たちが後半にトライするマルチルートの選定(自分たちの実力把握)
などが目的。
大変混み合っていたこともあり、全力でスピードを意識して登ったが、それでも全パーティの中で最も遅い。
前にいるエンクラモードの地元クライマーの数パーティには離されていくし、真後ろのフランスENSAガイドパーティには、ピッタリと追い付かれて多少待ってもらいながら登ることになる。
実際、遅いと言っても2割増しとかの時間差なので、ENSAガイドも写真撮影やお客さまとの雑談に程よい時間に使っているようだし、5Pと短いルートなので抜きたいわけでは無いらしい・・・。
しかしまぁ、こちらとしては実力の低さを思い知るばかりだ。
<2P目のスタート>
ビレイ点もカムで作れるので、本当はすごく楽しめるラインだと思うのだが、後方に気を遣って残置ビレイ点を使って時間短縮など、モヤモヤと気疲れがミックスされた不快感が強い。
さらに、これぐらいはアップルートでなければならない、という今回の目標設定とか曲がりなりにも自分もクラックを教えていたりするという背景が、どんどんと自分を追い込んでいるのは否めない。
それでも、毎ピッチの良質なクラックと良い景色があるので、何となくプラスの印象が残るのがヨセミテの凄いところか(笑)。
それに、色々と練習にはなっている。
<対岸に見えるエルキャプ>
あと、ちょっと背景を説明すると、私は指が変形しているためにジャミングに非常に苦労する。
左手に関しては、パラレルなハンドクラックはそもそも手が入らないことが多々ある。
手が入ったとしても、中指の可動域が極端に少ないため、ジャミングの形に制限が大きい。
そのため、過去に登れたクラックも今は登れない、または非常にトライ数が重なると予想されるものが多い。
これが、不快だった時期もあるし、オブザベで「こういう感じで手を突っ込んでジャミングしよう」と思った場所に全く手が入らないことが長らく大きな心理的ハードルだった。
それが、昨年ぐらいから何故か心理的ハードルが下がり、フィンガー〜ハンドのサイズの本気トライも時々やってみようかという気持ちになっている。
自己分析としては、過去のイメージを脳が忘れたので、オブザベと実際の不一致による不快感が減ったのだと思う。別の言い方をすれば、変形した指に合わせてオブザベすることに慣れてきた、ということ。
とはいえ、3番以上のサイズが以前並みのパフォーマンスがあるのに対して、かなり苦戦することは変わりがない。
あとは、本気トライすると指が腫れ上がるため、本気トライ、レスト、レスト、といった1登2休のペースが最も望ましい。
もちろん、ワイド系しかやらない日、5.10中盤までしかやらない日、5.9以下限定のアクティブレスト、などを交えれば、多少の連登、1登1休ペースなども考慮には入ってくる。
<2P目のフォロー>
また、今回のパートナーの桂くんは、かなり気の長い人間。
本人も、割と登攀スピードがゆっくり(僕よりは速い)だし、カムの固め取りや核心前の行きつ戻りつなど、リスク感覚に共有できる点が多い。
生活面でも気の長さは助かるし、富士山ガイド仲間でもあるのでクライミング以外の話題もあって長期のパートナーとしては、助かることばかりだ。
そのため、彼とならヨセミテに行ってみようかな、と思えた次第。
<3P目>
<5P目>
<懸垂下降>