翌日はレスト。
10月25日(金) クライミング4日目。
エリア:クッキークリフ
最初の2連登、レスト、入門マルチ、レスト、というリズムで来たので、身体はほぼ回復している。
まずは、5.9(Meet Grinder、1P目)でアップ。
これも多少苦戦するものの、アップルートとして許容範囲。
ここまでで、私よりも桂くんの登攀スピードの方が明らかに速くなっていたし、先日の大迷惑トライもあった。
私は本気トライだと、どうやっても1時間半以上は掛かると予想されるので、僕は1日1本の本気トライ。1時間程度で本気トライが終わることの多い桂くんは、1日2トライやってもらうのが良さそうな感じ。
<Meet Grinder、1P目(5.9)>
<Waverly Wafer(5.11a)は、桂くんが過去ツアーで宿題だったらしい>
<無事に1トライ目で回収して、成長を実感する桂くん>
続いて、Elevator Shaft(5.8,R)。
これは、16年ほど前に、時期尚早と判断してトライしなかったライン。
さすがに問題なさそうに見えて、無事にオンサイト。
R付きは大袈裟という噂も耳にしていたが、登り終えた感想としては微妙なラインだと思った。
割と安定しているチョックストーンなどにカムを決めるのだが、「割と安定しているためテンションならば全然問題なさそう」なものと「テンションすら、かなりヤバそう」なものが混在しており、やっぱり落ちることは基本リスクだし、それなりに考えた登りが必要になると思った。
ただ、R付きのチムニーと言うと「10m越えのノープロ」とかが思い浮かぶし、実際それを想像して16年前は断念したが、そういう感じでは全くない。ギブアップテンションできる程度のプロテクションは、随所に取れる。
ちなみに、そもそもチムニーの5.8にRを付け始めたら、ほとんどのルートがRになってしまうから、どこまでRにするかは初登者とかトポ製作者次第というのも納得できる。
<Elevator Shaft(5.8,R)をトライする私>
<Catchy(5.10d)を登る桂くん>
で、夕方にTwilight Zone(5.10d、OW)のフラッシュトライ。
これは、16年前に長門先生のオンサイトをビレイしていたのと、何故か印象深くって何パートかは未だに覚えていた。
結果は、失敗。
取り付きのラインが何パターンかあり、Elevator Shaftのところからトラバースして入り、ハンドサイズのハング越えをして入るラインを選択。長門さんも同ラインでオンサイトしていた。
で、このハング越えに失敗し、呆気なくテンション。
エイドダウンして、大休憩し、もう1トライさせてもらってR.P.だけはさせてもらった。
終わってみて、他のルートよりも残念さが込み上げて来た。
というか、R.P.トライをしている最中ですら、残念さを感じながら登っていた。
・テンションした場面が、本当に力尽きたというよりは、ハング越えのマントルでムーヴに行き詰まり、まだ体力的には余力があるのに呆気なく終わった点。
・見た目と噂通り、後半は持久系でサイズも合っており、苦労はするものの得意系であった点。
・見栄え、評判、16年前の印象から、結構登りたいルートだった点。
などがある。
もちろん、勝負に負けるにしても出し切って終わっていれば満足できる場合もあるが、呆気なく負けが決まるケースも多々ある。
ジムのオンサイトトライなんか、2時間オブザベした結果、1手目でフォールすることだってある。
それに対して、過剰に悲しむことは、近年では無くなった。
もちろん、トライのタイミングをツアー後半にするなど、もっとトライを大切にして行うことも出来たとは思う。
ただ、そればかりだとツアー前半に本気トライができなくなってしまうのが、もどかしい。
<Hardd(5.11a)をトライする桂くん>
翌日はレスト。
10月27日(日) クライミング5日目
エリア:クッキークリフから、チャペルに移動
Meet Grinder(5.9)でアップ。
桂くんが1本の本気トライを終えた時点で、案の定灼熱に・・・。
日陰に丁度良いルートが無いため、エリア移動。
<無事にオンサイトする桂くん>
チャペルウォールは、日陰というか森の中。
岩の色も、奥多摩やカサメリのモツランドを思い起こさせて、何とも懐かしい。
Gold Dust(5.10d、コーナー)。
これは、かなりギリギリだった。
ヨセミテ補正を掛けてオブザベしようとするのだが、どうしても易しそうに見える・・・。
コーナーでスタンスも豊富、日本的な色合いで馴染みを感じる。
どうしても、トライ前の緊張感が本気トライのそれには至らない。
しかし、案の定というか、予想を上回るほどのフリクションの悪さ!
辛くもオンサイト。
続いて、Heathenistic Pursuit(5.10b)。
これまた結構なツルツル!
森の中なのに、河原のボルダーエリアのようなフリクションの悪さという違和感。
最後に、ちょっとボルトルートを触ってみようとNew Wave(5.11d)。
案の定、ハングドッグしてトップアウトがやっとだった。
ただ、落ちる覚悟でデッドしていく感覚、核心部で足デッドを交えながらグイグイ高度を上げる感覚、一方でランナウトしている場所はスタティックで戻れるように登る感覚、などを確認できたのは良かった。
ヨセミテと言えども、その辺は別に変わらないし、クラックでは味わいづらいリズムが心地よく感じた。
<Heathenistic Pursuit(5.10b)>
翌日もレスト。
10月29日(火) クライミング6日目
エリア:クッキークリフ
桂くん立っての希望により、Butterballs(5.11c、フィンガー)に行くことに。
このラインが2P目にあるために、テラスで丸一日を過ごす方向で。
<Beverly's Tower(5.10a)>
Beverly's Tower(5.10a)というラインを利用して、アプローチ。
私はフォローなので、まだマシなのだが、かなり難しい。
プロテクションも見通しが立てづらく、核心ムーヴもホールドを触るまでムーヴが読めないのにレストポイントのスタンスが悪め。
正直、アップとしては強度が高すぎて身体に悪い・・・。
しかも、リードした桂くんは丸一日の滞在用グッズを荷上げする必要があるため、労力も掛かる。
さらに、同ルートの終了点から目的のテラスまでの10mぐらいのトラバースが結構悪くて、こちらも荷上げが必要。
トラバースの荷上げは、これまた労力が掛かる。
<Butterballs(5.11c)をトライする桂くん>
ハングドッグしてトップアウト。
一昨日のボルトルートで、テンポ良く登る感覚を思い出したのが功を奏し、割と思い切りよく落ちる覚悟でトライできた。
寒さに耐えかねて2トライ目は断念して、夕方にWaverly Wafer(5.11a、コーナーでサイズ色々)。
こちらは、フラッシュトライ失敗でフォール。
ここまでの流れと夕方だったこともあり、行きつ戻りつよりもテンポよく登ることを意識してみたところ、土壇場で準備不足の状態に陥り、あえなくフォールしてしまった。
やはり、ちゃんとレストできるルートは、労力を掛けてでも行きつ戻りつすべきであると再確認した。
一方で、ヨセミテに来てから足首以上の高さからフォールしたのは初回だったので、過剰なビビりを抑制する意味ではプラスだったかなとも思う。
個人的には、最終プロテクションが膝くらいだと恐怖は少ないが、それ以上だと恐怖が強くなるので、時折オンサイト状態で落ちる必要を感じている。
2P目のバリエーションピッチ5.9++は、かなり難しく、落ちそうなバランスを何度も経由しながらもスピードを意識して登るのは、私には辛かった。
<ハンガーボルト2本のビレイ点で、岩場での1日を過ごす>
10月30日(水) クライミング7日目
Nutcracker(1P目のバリエーションが5.9、5P)
ここは連登で、入門マルチへ。
ビレイ点も残置が存在しない、歩いて下降できる、グレードの割に結構怖い、などで日本人にも有名な当ルート。
私は偶数ピッチを担当したのだが、4P目で大苦戦。
プロテクションが読めず、スラブっぽいムーヴが続くので、ひたすら慎重に登る。
50m以上伸ばすピッチなのだが、どう考えてもビレイ点用のカムが残らない・・・。
緩傾斜なので、頑張ればどこでもピッチは切れるのだが、まぁトポ通りにピッチを切った方がテラスがあって楽そうなので、盛大に20mぐらいバッククリーニングに戻る。
で、5.8ながら1時間越えのリードで、ようやくピッチを切った。
他のピッチも中々歯応えがあり、僕の能力だと連登で行くのは結構大変なルートだった。
例によって、これもガイドがお客さんを連れて行く代表的なルートなのだが、実際問題として我々はプライベートで登っても苦戦しているのであった・・・。
<1P目のバリエーション>
<3P目>
翌日はレスト。
11月1日(金)クライミング8日目
Higher Cathedral Spire(岩登の名前) Regular Route(バリエーションピッチをこなしたため5.9++、5P)
またまた入門マルチへ。
現実的に行ける本気マルチが見えて来つつも、まだ足掻くべく、スピードを意識して登る。
ただでさえヨセミテは小川・瑞牆より辛めなのに、「プラスプラス」って・・・。
まぁ、昔のグレードを改訂しないんでしょうが。
良くも悪くも目算に近いタイム(1Pあたり1時間弱)となり、目標ルートは10P程度の5.9以下主体のマルチという方向付けになって行くことに。
このルートは、他パーティも追い上げられることもなく、残置支点も無視できて(登りはほとんど存在しない。下降支点は残置を使用。)、これまでのマルチの中では割と楽しく登ることができた。
<1P目>
<対岸にはエルキャプ>
<4P目のフォロー>
<5P目>
<無事にトップアウト>
<懸垂下降>
余談だが、ヨセミテに居る日本人は非常に強い人、モチベーションが高い人ばかりだった。
2週間から1ヶ月程度の休みを取れるという時点で、
・ロストアローの社員
・ぺツルの社員
・山フリーター
・ワーキングホリデーで1年間とかの海外放浪中
・そもそも海外に在住の日本人
といった方々が並ぶ。
トライしているルートも、ビッグウォールフリーだったり、5.12や5.13などの高難度ショートルートだったりして、「はぁー、そうなんですねー。」と感嘆するばかり。
円安で海外旅行に行きづらいことも影響しているのだろうか、16年前はもっと初級者層がヨセミテにも居たような印象だったが、今年は我々パーティが最弱かもなと思った。