2026年1月19日月曜日

WMA(ウィルダネス メディカル アソシエイツ)の講習に参加しました

だいぶ前の話ですが、以下の講習に参加して来ました。
https://www.wmajapan.com/
私が参加したのは、「3日間の現地講習+事前のオンライン学習」というカリキュラムで、WAF Aというクラスです。
非常に素晴らしいカリキュラムなので、オススメです。

私なりの理解を説明すると、まず野外救急法(WFA)というものが存在します。
登山、海、僻地などでの救急法です。

ちょっと理解しづらいと思うので、2つ例を挙げます。

①パートナーが、クライミング中に着地にミスって足を骨折したかもしれない。
本人は、這ってでも自力で降りたい様子。(大ごとにしたくない!)
しかし、少なくとも「普通には自力歩行できない」様子。
患部は、腫れている。

→こんなとき、どうしますか?

・悪化リスク覚悟で、這ってでも降りてもらう?or大事を取って搬送?
・搬送するとして、背負い?担架?(救助要請?自分たちや周囲のパーティで降ろす?)
・骨折部位の悪化を防ぐために、固定するためには、どうするのがセオリー?
・骨折以外に見落としている怪我を探す方法ってある?
・骨折が原因で、死ぬことって本当に無いの?
など、様々な判断を迫られると思います。

これらに対して、包括的に理解するためには、傷病者を評価するシステムが必要です。

医者で言うところの診察にあたる行為ですが、
A)我々一般人は、絶対的に医学的知識に乏しい。
B)医師であっても、レントゲンなどの器具が無い状況で診察は不可能。
という状況なので、考え方が結構違います。

別の言い方をすれば、診察と「野外救急法における傷病者評価システム」は、似ているけれど相当異なる部分もあります。
どこかで基準を決めて(当然、この基準はすでに決めてくれている)、
「これを越えるぐらいなら、緊急搬送。これ以下なら、固定して搬送。これ以下なら、自力歩行させる。」
という風にします。

また
・その基準を採用している、大雑把な理由(傷病者に聞かれるので)
・固定法
・傷病者保護(保温など)
などの周辺知識を補強学習していくイメージです。

※「悪化してでも救助隊を呼びたくない。」という強い信念を持つ人の場合は、尊厳死の問題と同様に認めざるを得ません。自力下山は山屋の美徳ですから、山屋・クライマーにはよく見られる考え方だと思います。とは言え、救助者側は、このシステムを理解した上で、傷病者本人と話し合うことが大切だと思います。

②雪山で、ロープワークにミスって高さ10mから滑落。
奇跡的に生きている様子だが、出血もあり、打撲か骨折かよく分からない痛みも何箇所も訴えている。

こんなとき、どうしますか?

・寒いので、保温して低体温症対策?
・とにかくハーネスを脱がせて楽にしてあげる?
・出血の止血?
・痛がっている場所を特定して、固定する?
・楽で安全な場所まで運んでしまう?(動かして良いのか?という迷い・・・)
・とにかく、救助隊に連絡?

他にも、思い付くことは色々あると思います。

この中で、優先順位のセオリーはどうなっているんでしょうか?
日赤や消防の救命講習であれば、
「人が倒れています。→声かけ(意識の確認)→救助要請(119)→気道確保→呼吸の確認→なければCPR」
みたいな手順書があります。

しかし、山では寒い中で救助隊を待っているだけでも傷病者は死亡します。
救助隊が到着するまでの時間を考えても、出血の止血の優先順位も高そうだし、「どこまで動かして大丈夫なの?」という問題にも直面しやすいです。

何から順番に手をつけるべきなのか、もう少し(実際には10倍くらい?)詳しい手順書が欲しいところです。

これに指針を与えてくれるのも、前述の傷病者を評価するシステムです。

また、これを補強する意味で、
・脊椎損傷の可能性がある人は、どの程度は動かしても大丈夫?
・大出血の止血法は?
などの知識を学んでいくイメージです。



野外救急法(WFA)の講習は、私も以前にスリップストリーム(現在は日本から撤退)という別会社のものを何度か受講したことがあります。
元データ(北米のお医者さん団体が、野外救急法のために論文を色々出してくれているページは、Web上では誰でも閲覧できる。)は同じなので、大筋は変わりません。

スリップストリームも、当時としては素晴らしかったと思うのですが、WMAは更に素晴らしいです。

具体的には、
・カリキュラムの完成度が高い。
(多くの人間で練っている点、多くの講習での反省点改良、が伝わってくる。)

・教科書、補助資料の完成度が高い。

・医師などの専門家が監修に入っており、WFAの元データのアップデートを反映させている。
(英語の論文を読めるメンバーが、何人もいる。)

・講師の質が高い。
(これまで、5人ほどの講義を受けましたが、全員がしっかりしています。複数の講師の質を担保するというのは、本当に難しいことだろうと思います。)

非常にオススメなので、プロ系(ガイド、インストラクター、野外活動の引率者、など)の人のみならず、一般の方も要検討ではないかと思いますよ。