4月19日(土)は、宝剣岳にて、雪上訓練Lv.3。
当初計画は、八海山八ツ峰の縦走でしたが、土曜のみ好天予報にて。
男性ONさん、男性HYさん、男性NMさん、というトリオ。
本人たちの希望にて、鎖、ハシゴなどの残置は無視して、縦走路を入門バリエーション感覚で登る計画。
<大盛況の千畳敷カール>
今回、彼らに今後教えるべきことが、少し分かった気がしました。
しかも、“プロテクション戦略”に匹敵するくらいの、一大テーマかもしれない感触で。
<春山の気分>
テーマ①:コミュニケーション
1番典型的だった失敗例は、最初の休憩場所選び。
核心の岩場に入る直前。
<天空を目指すHYさん>
NMさんは、
「オブザベーションもしたいから、少し離れたところで休みたい。」
ONさんは、
「直前のコルで。場所の良さ、オブザベーションのしやすさのバランスを取って。」
HYさんは、
「岩場の取り付きまで突っ込んでしまった方が、風が弱そう。」
どれも、15mくらいしか離れていません。
<途中は、あまりのルンルン登山に、緊張も緩む>
で、全員が、
「ここの方が良いんじゃないですかねー。」
くらいの打診をし合うも、話はまとまらず。
全員が、「みんな、自分の言うことを聞いてくれないなー。」
と思っている状態。
そのまま、なぁなぁで決まらず。
なんと!
バラバラの場所で休憩するという、統率の取れないパーティになってしまいました。
※誰も、「じゃあ、~~で決めませんか?」と言わなかったのが、ちゃんとした議論にならなかった原因。
<鎖場も、残置無理だとチョット悪い>
どの休憩場所も、全然ダメな判断という訳ではなかったんです。
だからこそ、「今回はコレで!」と決めちゃう必要がありました。
<カムを効かせながら、ロープを伸ばしていく>
これと同じようなことが、
「ロープを出すか?出さずに通過しちゃうか?」
「ビレイポイントを、どこに作るか?」
「どのラインから通過するか?」
と、事あるごとに意見がまとまらず。
皆さん、いい人達な上に、天気も良かったので、大きな揉め事もなく済みました。
<クライムダウンは、セカンドの方が恐い>
でも、意見がまとまらないうちに、ロープを出し始めたり、ビレイポイントを作り始めたり。
誰かがビレイポイントを作り始めたら、
「えっ?あぁ、ここで作ることになったの?」
と言いながら、なんとなく合わせて行く。
なんだか、危なっかしい・・・。
しかも、準備を始めちゃった人の意見が通るような雰囲気なんで、全員に小さなストレスが溜まります。
<時間が余ったので、敢えてチャレンジングなラインをリードするONさん>
自立したクライマー同士、どうやってパーティとして行動していくか?
昔から山屋さんは、喧嘩になったり、不機嫌になったり、色々あるみたいです。
でも、そうならないのは、人間性というよりもコミュニケーションスキルなんじゃないかと思います。
私も、学生の頃は随分と揉めたりしましたが、最近は程々にしながら話し合うのが上手くなったと思うので。
<そこをフォローするHYさん>
テーマ②:ロープワークの応用編
マルチピッチリード講習では、常にビレイを取るように教えています。
ロープでのビレイ → セルフビレイ → ロープでのビレイ → セルフビレイ → ・・・
で、ロープを出すのも、ロープを畳むのも、すごく安定した広場のみ。
<宝剣岳の山頂!>
ただ、岩稜では、ロープを畳む場所が、セルフビレイが欲しい足場だったり。
そこでのビレイポイントが、メインロープで巻きつけたピナクルなら、セルフビレイなしでロープを畳むのも止むを得ないでしょう。
<下山も、懸垂下降を1回>
で、そのときに、
「作業に没頭して、バランスを崩すして滑落」
「仲間が、隣で動いて、押されて滑落」
「ロープが、斜面に流れて、それが足に絡んで滑落」
といったリスクを、想定した上でやります。
<千畳敷カールへ戻る>
理想的には、
「セルフなしだけど、まぁ良いよね?(仕方ないから、気を付けてやろうよ。)」
「(ビレイ無しで)後ろを通るよ。(押さないでね。)」
くらいの声かけをしながら、リスクを共通認識すると。
<15時15分に、余裕を持って下山>
どちらのテーマも、登山技術というのは不思議な感じ。
山を舞台にした、ヒューマンスキルっぽい。
でも、ベテラン山屋は、たぶん自然と洗練されて来るものだと思います。
彼らのように、実践研修を主体としたレベルの講習生には、
「こういうテーマが大事なんだなぁ。」
と感じました。