2021年7月31日土曜日

思考停止する自分を認めてみる

7月20日(火)は、ムーヴLv.0。1コマ目は、女性NJさん。2コマ目は、女性IGさん、男性TNさん。
7月25日(日)は、岩場リード講習。男性KBさん。

「ビレイは、これさえ気を付ければ大丈夫。」、「自分は初心者じゃないし、もうそんなに危なくない人間だ。」みたいな思考は、よくあります。ゼロリスクを求める思考が、かえってリスク管理の形骸化となることもあります。
実際には、ヒューマンエラーをゼロにはできないし、岩場の状況、本人のコンディション、パートナーとのコミュニケーションなどによって、その場面に応じて考えることをサボってしまっては、結果的にリスクは上がります。
また、考える習慣のない人は、事故が起こったとしても、そこから得られる教訓が小さいか、トンチンカンになりがちです。

例えば、スポートルートでボルトが抜けて事故ったとします。
反省会をすれば、事前にそれを想定して行動していたかが問われます。

①ボルトの種類は見ていたか?
②さび具合など、可能な範囲で見る習慣はあったか?(僕も、核心のクリップなどは、見る余裕が無くなることが多いですが、地上からのオブザベ、レストポイントでのクリップでは見るようにします。)
③そこの岩面、岩質から、リスク高めだったか?普通と判断していたか?
④1本抜けたとしても、ビレイヤーがダラリンじゃなく、クライマーも受け身をしっかり取っていれば軽傷で済むような岩の形状、地上からの高さだったか?

普段から、これだけ考えていても、ある程度のリスク承知で突っ込んで事故が起こることはあると思います。純粋な見落としや勘違いだって、いつかは起こすでしょう。

ただ、本来これをしていれば、
「あそこが甘かった。」
「そもそも、自分は④を考える習慣が無かった。」
という反省もキッチリできます。

「全部それなりにはやっていたけど、今回は抜けたので仕方ない、超低確率の事故だった。(これが嫌なら、クライミング辞めるしか無いかも)」
と断じることも、あるかもしれません。

これは、カム抜け、リードで落ちてはいけない場面での墜落、ビレイミス、終了点作業、など何でも同じです。登山になれば、天候なども同じです。

最近、講習生から「私は思考停止に陥りがちだと思うんですが、どうしたら良いですか?」という趣旨の話をされました。
無知の知を感じさせる、素晴らしい感想だと思います。

僕の考えとしては、
「基本は思考停止するものだと諦める。ただ、思考を再スタートさせる切っ掛けは、そこらに転がっているので、チャンスを活かす。」
です。

重要だと思うことをバラバラと挙げます。

・他人の事故、ヒヤリハット
・モヤモヤした感覚(グリグリでビレイして手を離してしまったり、他人のビレイを見て違和感を感じたり、岩場でランナウト中に戻れないムーヴで突っ込んじゃったり、プロテクションに不安を感じたり、切っ掛けは色々)
・何かを指摘した際に、人間関係が壊れないようにする配慮(これが下手だと、技術的なことは曖昧な会話しかできず、雑談主体のパートナー関係になる)
・自分の方が正しいと確信しているが相手が納得しないときに、熱くならずに後日に説明するぐらいの精神的余裕(帰宅後、じっくり考え直すのがプラスになる)
・別の意見を聞いたとき
・「自分が山のベテラン(安全な人間)だと思ったら、その人はすでに遭難のリスクがある。」という先輩方の格言
・クライミングがリスク管理が半分、登り半分ということを忘れ、完登やムーヴに夢中になることが多いという日常(特に、ジムなどの本気トライ中はそれに近くて良い部分もあるが、日常的にクライミングを考える内容から、安全管理の比率が下がってきたら、バカになり始めと僕は思っている)
・他人に技術を説明しようとして、自分の理解が曖昧なことに気づくとき

あとは、強制的に安全管理に思考を向ける方法として、『生と死の分岐点』、フリーファンの安全ブックによる今年の保険使用事故例紹介、などをときどき読むという方法もあります。
事故例ばかり読むのは疲れますから、何かで思い立ったときに読むぐらいで良いかと思いますが。