とある日、講習生の方が友達同士で登っているのが、何となく目に入っていました。
ウォームアップで5.8〜5.10aまで数本登り、その延長で5.10bの前にロープを持って来ました。
オブザベも少々で、ビレイ準備も完了、というアップ的な流れの最中に、「ん!?これは、結構悪そうじゃない?」と気が付きます。
そこで、ロープは解かずにビレイヤーを待たせたまま、数分間のオブザベ延長。
急遽、防寒具のフリースも脱いで、トライ開始。
トライ自体は見ていないのですが、その中でも結構頑張っていたようで、終了点直下まで粘りのクライミングで到達。
そして、終了ホールドを見落とし、終了直下のホールドで頑張って終了クリップを行おうとして、手繰り落ちとなってしまいました。
※手繰り落ちそのものの反省(いつがクリップの諦めどきだったか?)については、ムーヴに依存するので、今回はスルーします。手がプルプルでクリップしたのではなく、クリップ中に足がスリップしたので、ある程度登れる人でも避けづらいパターンなのが難しいです。
ちなみに、終了点ホールドはガバですが、見落としやすいのも理解できます。
その面は、ラインセット(色分け)のルートなのですが、終了点は何ルートか共有となっているため、色分けではなく、その色のテープが貼ってあるのです。
特に、その壁を初めて登る方などは、ときどき同じ状況に陥っています。
ただ、壁が低いのでオブザベで気付く可能性は十分にあり、その壁を何度か登ったことがあれば、思い出せた可能性もあります。
反省したその方は、再びウォームアップに戻り、1時間ほど後に本気トライとして上記5.10bをR.P.しておりました。
こういう失敗って、岩場なら起こりにくいと思います。
①岩場はリスクがある、という利点
・5.10bのルートでも、5.8セクションが絶対に落ちられないため慎重に登るケース
・核心ムーヴは落ちても安全なように設計されているが、クリップ先行はできずに、それなりのフォールは覚悟するケース
・初見ルートであれば、岩の脆さ、終了点作業、などをイメトレしてから出発するケース
・ビレイヤーの立ち位置、ロープバッグの位置、持っていくギア(ヌンチャクの本数など)、などを考えて、ビレイヤーと会話するケース
などなど、通常どれか1つには当てはまります。
そのため、本当に易しいルート(or再登でのアップ)の直後に、ちょっと悪いルートを目の前にすれば、安易に取り付くことが憚られます。
その緊張感が、実はスパイスとなり、まともなトライへと導いてくれます。
②ジムの滞在時間による焦り
平日夜、会社帰りの方のリードトレーニングは、とても忙しそうです。
登る本数それ自体を目標にしていたり、本気トライの数を目標にしていたり、そこまでじゃなくてもウォームアップは2連続・3連続で登る方も多いです。
それ自体ダメだとも言い難く、それで多くの初心者には効果がありそうですし、これで私なんかより遥かに強くなる方もいるのだと思います。
しかし、かなり意識しないとバカになりそうなルーティンでもあります。
短時間のリードトレーニングで、質を高めるための提案としては。
・アップは、オートビレイやボルダーなど、パートナーとは別れてできる方法を採用して、練習量と時間の確保。(ビレイからの解放)
※ただし、どうしてもリード勘を取り戻したい人は、1〜2本はリードするなども考慮に入れる。
・本気トライは、数ではなく、質を重視。3トライして諦めてテンションするよりは、2トライでも上質なトライを。そうすれば、オブザベの時間も取れる。必死の行きつ戻りつや、渾身の一手が出せる可能性も高まる。
※トライ数減少でフィジカル低下を恐れる人は、ボルダーをやるとか、別のトレーニングを取り入れるとか、いくらでも工夫の余地はある。そもそも、上質な本気トライは、低質な本気トライよりも、遥かに1トライで出し切れるため、トレーニング効率が落ちるかどうかも微妙。
上記の※印を色々考えて、自分の力量や生活スタイル、ジムに滞在できる時間に合わせてアレンジすること自体が、一人一人の脳味噌の使い所なのだと思います。
コーチ無しでメニューを考えるのって、多分かなり難しいことなんで、講習などで個別相談には応じたいと思っています。