2024年11月27日水曜日

ヨセミテ日記② オンサイトトライというゲーム

翌日はレスト。

10月25日(金) クライミング4日目。
エリア:クッキークリフ

最初の2連登、レスト、入門マルチ、レスト、というリズムで来たので、身体はほぼ回復している。

まずは、5.9(Meet Grinder、1P目)でアップ。
これも多少苦戦するものの、アップルートとして許容範囲。

ここまでで、私よりも桂くんの登攀スピードの方が明らかに速くなっていたし、先日の大迷惑トライもあった。
私は本気トライだと、どうやっても1時間半以上は掛かると予想されるので、僕は1日1本の本気トライ。1時間程度で本気トライが終わることの多い桂くんは、1日2トライやってもらうのが良さそうな感じ。
<Meet Grinder、1P目(5.9)>

<Waverly Wafer(5.11a)は、桂くんが過去ツアーで宿題だったらしい>

<無事に1トライ目で回収して、成長を実感する桂くん>

続いて、Elevator Shaft(5.8,R)。
これは、16年ほど前に、時期尚早と判断してトライしなかったライン。

さすがに問題なさそうに見えて、無事にオンサイト。

R付きは大袈裟という噂も耳にしていたが、登り終えた感想としては微妙なラインだと思った。

割と安定しているチョックストーンなどにカムを決めるのだが、「割と安定しているためテンションならば全然問題なさそう」なものと「テンションすら、かなりヤバそう」なものが混在しており、やっぱり落ちることは基本リスクだし、それなりに考えた登りが必要になると思った。

ただ、R付きのチムニーと言うと「10m越えのノープロ」とかが思い浮かぶし、実際それを想像して16年前は断念したが、そういう感じでは全くない。ギブアップテンションできる程度のプロテクションは、随所に取れる。

ちなみに、そもそもチムニーの5.8にRを付け始めたら、ほとんどのルートがRになってしまうから、どこまでRにするかは初登者とかトポ製作者次第というのも納得できる。
Elevator Shaft(5.8,R)をトライする私

<Catchy(5.10d)を登る桂くん>

で、夕方にTwilight Zone(5.10d、OW)のフラッシュトライ。
これは、16年前に長門先生のオンサイトをビレイしていたのと、何故か印象深くって何パートかは未だに覚えていた。

結果は、失敗。
取り付きのラインが何パターンかあり、Elevator Shaftのところからトラバースして入り、ハンドサイズのハング越えをして入るラインを選択。長門さんも同ラインでオンサイトしていた。
で、このハング越えに失敗し、呆気なくテンション。

エイドダウンして、大休憩し、もう1トライさせてもらってR.P.だけはさせてもらった。

終わってみて、他のルートよりも残念さが込み上げて来た。
というか、R.P.トライをしている最中ですら、残念さを感じながら登っていた。

・テンションした場面が、本当に力尽きたというよりは、ハング越えのマントルでムーヴに行き詰まり、まだ体力的には余力があるのに呆気なく終わった点。
・見た目と噂通り、後半は持久系でサイズも合っており、苦労はするものの得意系であった点。
・見栄え、評判、16年前の印象から、結構登りたいルートだった点。

などがある。

もちろん、勝負に負けるにしても出し切って終わっていれば満足できる場合もあるが、呆気なく負けが決まるケースも多々ある。
ジムのオンサイトトライなんか、2時間オブザベした結果、1手目でフォールすることだってある。
それに対して、過剰に悲しむことは、近年では無くなった。

もちろん、トライのタイミングをツアー後半にするなど、もっとトライを大切にして行うことも出来たとは思う。
ただ、そればかりだとツアー前半に本気トライができなくなってしまうのが、もどかしい。
<Hardd(5.11a)をトライする桂くん>

翌日はレスト。

10月27日(日) クライミング5日目
エリア:クッキークリフから、チャペルに移動

Meet Grinder(5.9)でアップ。

桂くんが1本の本気トライを終えた時点で、案の定灼熱に・・・。
日陰に丁度良いルートが無いため、エリア移動。
<無事にオンサイトする桂くん>

チャペルウォールは、日陰というか森の中。
岩の色も、奥多摩やカサメリのモツランドを思い起こさせて、何とも懐かしい。

Gold Dust(5.10d、コーナー)。
これは、かなりギリギリだった。
ヨセミテ補正を掛けてオブザベしようとするのだが、どうしても易しそうに見える・・・。

コーナーでスタンスも豊富、日本的な色合いで馴染みを感じる。
どうしても、トライ前の緊張感が本気トライのそれには至らない。

しかし、案の定というか、予想を上回るほどのフリクションの悪さ!
辛くもオンサイト。
<Gold Dust(5.10d、コーナー)>

続いて、Heathenistic Pursuit(5.10b)。
これまた結構なツルツル!

森の中なのに、河原のボルダーエリアのようなフリクションの悪さという違和感。

最後に、ちょっとボルトルートを触ってみようとNew Wave(5.11d)。
案の定、ハングドッグしてトップアウトがやっとだった。

ただ、落ちる覚悟でデッドしていく感覚、核心部で足デッドを交えながらグイグイ高度を上げる感覚、一方でランナウトしている場所はスタティックで戻れるように登る感覚、などを確認できたのは良かった。
ヨセミテと言えども、その辺は別に変わらないし、クラックでは味わいづらいリズムが心地よく感じた。
<Heathenistic Pursuit(5.10b)>

翌日もレスト。

10月29日(火) クライミング6日目
エリア:クッキークリフ

桂くん立っての希望により、Butterballs(5.11c、フィンガー)に行くことに。
このラインが2P目にあるために、テラスで丸一日を過ごす方向で。
<Beverly's Tower(5.10a)>

Beverly's Tower(5.10a)というラインを利用して、アプローチ。

私はフォローなので、まだマシなのだが、かなり難しい。
プロテクションも見通しが立てづらく、核心ムーヴもホールドを触るまでムーヴが読めないのにレストポイントのスタンスが悪め。
正直、アップとしては強度が高すぎて身体に悪い・・・。

しかも、リードした桂くんは丸一日の滞在用グッズを荷上げする必要があるため、労力も掛かる。
さらに、同ルートの終了点から目的のテラスまでの10mぐらいのトラバースが結構悪くて、こちらも荷上げが必要。
トラバースの荷上げは、これまた労力が掛かる。

ようやく辿り着いたテラスだが、直射日光で昼間は暑くなる可能性がある一方、風が吹くと猛烈に寒い。
<Butterballs(5.11c)をトライする桂くん>

この日は、僕もButterballsを1トライ。
ハングドッグしてトップアウト。
一昨日のボルトルートで、テンポ良く登る感覚を思い出したのが功を奏し、割と思い切りよく落ちる覚悟でトライできた。

寒さに耐えかねて2トライ目は断念して、夕方にWaverly Wafer(5.11a、コーナーでサイズ色々)。
こちらは、フラッシュトライ失敗でフォール。

ここまでの流れと夕方だったこともあり、行きつ戻りつよりもテンポよく登ることを意識してみたところ、土壇場で準備不足の状態に陥り、あえなくフォールしてしまった。
やはり、ちゃんとレストできるルートは、労力を掛けてでも行きつ戻りつすべきであると再確認した。
一方で、ヨセミテに来てから足首以上の高さからフォールしたのは初回だったので、過剰なビビりを抑制する意味ではプラスだったかなとも思う。

個人的には、最終プロテクションが膝くらいだと恐怖は少ないが、それ以上だと恐怖が強くなるので、時折オンサイト状態で落ちる必要を感じている。
<ハンガーボルト2本のビレイ点で、岩場での1日を過ごす>

10月30日(水) クライミング7日目
Nutcracker(1P目のバリエーションが5.9、5P)

ここは連登で、入門マルチへ。
ビレイ点も残置が存在しない、歩いて下降できる、グレードの割に結構怖い、などで日本人にも有名な当ルート。

私は偶数ピッチを担当したのだが、4P目で大苦戦。
プロテクションが読めず、スラブっぽいムーヴが続くので、ひたすら慎重に登る。
50m以上伸ばすピッチなのだが、どう考えてもビレイ点用のカムが残らない・・・。

緩傾斜なので、頑張ればどこでもピッチは切れるのだが、まぁトポ通りにピッチを切った方がテラスがあって楽そうなので、盛大に20mぐらいバッククリーニングに戻る。

で、5.8ながら1時間越えのリードで、ようやくピッチを切った。

他のピッチも中々歯応えがあり、僕の能力だと連登で行くのは結構大変なルートだった。
例によって、これもガイドがお客さんを連れて行く代表的なルートなのだが、実際問題として我々はプライベートで登っても苦戦しているのであった・・・。
<1P目のバリエーション>

<3P目>

翌日はレスト。

11月1日(金)クライミング8日目
Higher Cathedral Spire(岩登の名前) Regular Route(バリエーションピッチをこなしたため5.9++、5P)

またまた入門マルチへ。
現実的に行ける本気マルチが見えて来つつも、まだ足掻くべく、スピードを意識して登る。

2P目のバリエーションピッチ5.9++は、かなり難しく、落ちそうなバランスを何度も経由しながらもスピードを意識して登るのは、私には辛かった。
ただでさえヨセミテは小川・瑞牆より辛めなのに、「プラスプラス」って・・・。
まぁ、昔のグレードを改訂しないんでしょうが。

良くも悪くも目算に近いタイム(1Pあたり1時間弱)となり、目標ルートは10P程度の5.9以下主体のマルチという方向付けになって行くことに。

このルートは、他パーティも追い上げられることもなく、残置支点も無視できて(登りはほとんど存在しない。下降支点は残置を使用。)、これまでのマルチの中では割と楽しく登ることができた。
<1P目>

<対岸にはエルキャプ>

<4P目のフォロー>

<5P目>

<無事にトップアウト>

<懸垂下降>

余談だが、ヨセミテに居る日本人は非常に強い人、モチベーションが高い人ばかりだった。

2週間から1ヶ月程度の休みを取れるという時点で、
・ロストアローの社員
・ぺツルの社員
・山フリーター
・ワーキングホリデーで1年間とかの海外放浪中
・そもそも海外に在住の日本人
といった方々が並ぶ。

トライしているルートも、ビッグウォールフリーだったり、5.12や5.13などの高難度ショートルートだったりして、「はぁー、そうなんですねー。」と感嘆するばかり。

円安で海外旅行に行きづらいことも影響しているのだろうか、16年前はもっと初級者層がヨセミテにも居たような印象だったが、今年は我々パーティが最弱かもなと思った。

2024年11月26日火曜日

ヨセミテ日記① 散々の序盤

10月18日から約1ヶ月、ヨセミテに行っておりました。
予想通り、ボコボコにやられて来た訳ですが、少しずつ書いておこうと思います。
<Brownoser(5.8)>

10月20日(日) クライミング1日目
エリア:センチネルクリーク

まだ気温が高く、日向は厳しい状態。
日陰の当エリアへ。

とりあえず、5.8(Brownoser)でアップ。
日本のグレード感覚より、ちょっと難しい。
そして、ロープスケールが30mを越えており、かなり時間が掛かる。
同じサイズのカムを2セット持ったとしても、バッククリーニングなどの「やり繰り」に時間が掛かる。
(本気トライなら、同じサイズを3〜4セット持つことも)

そして、周りの壁が大きいとか、諸々の目の錯覚で、取り付く前は短く見えるのが厄介だ。
パッと見は20mちょっとでも、実際は30m越え。
3mぐらいの核心に見えても、行くと5mぐらいあって、カム戦略が相当変わってしまう。
同様に、クラックのサイズも細めに見える。上部がフィストサイズかなと思っていたら、OWだったという具合だ。

あとは、氷河で削られた影響だろうか、フリクションが悪い。
これは、垂壁ぐらいの傾斜ならテーピングなしでもジャミングに問題ない、というプラスポイントでもあるのだが、スタンスは見た目を裏切ってくるし、ちょっとしたレイバックやステミングは相当慎重になってしまう。

まぁ、そんなことは書籍でも読んだことはあったし、16年ぐらい前にヨセミテに行ったときにも散々味わったので、最初から補正をかけてオブザベするように心掛けているのだが、それでも感覚の差を感じる。
<Unnamed(5.9)>

続いて、5.9(Unnamed)のハンドクラックで様子見。
当エリアの中だと日本的な長さ(20m以下)だが、やっぱりフリクションは悪い。

続いて、5.10b(Unnamed)のコーナーで様子見。

さらに、5.9(The Sphinxter)のワイドで様子見。
こちらは、さらなるツルツルで、オブザベより遥かに苦戦する。
しかも、30m越えにつき、相当に時間を要する。

最後に、5.10c(Unagi、1P目)にトライ。
こちらも、見た目よりは核心が長く感じたが、本日登った中では唯一グレードが小川山・瑞牆ぐらい(?)に感じた。
<初日からManana(マニャーヤ、5.10d)をO.S.し、勢いに乗る桂くん>

10月21日(月) クライミング2日目
エリア:センチネルクリーク

同じエリアで。
この日は、やりたいルートを決めて来ていた。
Ying-Yangの2P目がワイドの5.10aで、30m越えである。
これの真下には、ほぼ直線的にHari-Kiri(5.10a、ハンド、フィンガーなど盛り沢山、30m越え)というクラックが続いている。
これを、「リンク(2Pを繋げて登る)したら、すごく面白そうだ」というのが前日の私の感覚だ。
ちなみに、Ying-Yangの1P目と2P目はあまり直線的ではないので、こちらの方がリンク向きに見える。

まずは、前日と同じ5.8でアップ。
続いて、5.9(Juan-Tawn)もアップで登るが、例によって苦戦する。

どうやら、グレードは1.5ぐらい日本(小川・瑞牆)より難しいと考えると、トポが読みやすそうだ。

5.8→5.9または5.10a
5.9→5.10aまたは5.10b

という具合に読み替えると体感グレードと合う。
ときどき、小川・瑞牆グレードと同じと感じるときもある。(ヨセミテ基準だと、甘めということか。)

もちろん、高グレードは分からないが、私にとっては縁がなさそうだ(笑)。
<Juan-Tawn(5.9)>

さて、懸案の60m越えのオンサイトトライ。

ロープの流れ問題もあり、上部で使わないカムもしつこくバッククリーニング。

しかし、40mを越えたあたりから、ロープの重さが尋常ではない・・・。
ロープの流れは十分に直線的だが、単純にロープ自体が重いのだ。

パラレルなOWセクションなのに、カムをズラす技が使えない。
止む無く、同サイズのカムを上に決めてクリップして、下のカムを回収する方法を繰り返す。

さらに、ロープを進めると、もはやロープが重力で落ちる力が強すぎてクリップもまともできない。ロープを歯で咥えるのも、歯に悪いんじゃないかと言うレベルだったり、不可能だったり。もはや、ニーロックなどでノーハンドレストに近い状況にしないと、クリップができない。
岩稜帯のマルチピッチなどで50m越えのピッチがあっても、垂壁ではないので、このようにロープの重力を直接感じることは無い。

ヨセミテのショートルートは、80mロープが割と一般的なようだし、我々もそうしていた。今回は、9mm台の後半だったが、9mm前半であれば相当変わったかもしれない。
クラックはロープが岩に擦れるので、細いロープだと消耗も早いのだが・・・。

とにかくツラくて時間が掛かる作業の繰り返しだが、ようやく60mほどロープを伸ばして最終セクションのチムニーへ。
ここで、絶望的なお知らせ。

チムニーは10mぐらい続く。
スタンスなどは、それほど豊富でないため、ランナウトするのは私には難しい。
プロテクションを取れるサイズのカムは、使い切っている。(チムニー内のカムのサイズは、オブザベ不可能なため、ここは運次第。)
さらに、トライ開始から2時間ほど経過して、もうすでに暗くなり始めているが、ヘッデンを持って来なかったという痛恨のミス。

ここで、敗退決定。
しかし、チムニーの奥に1つ6番カム(A)を決めて、その下の5番カム(B)をバックアップに残そうとすると、Bにロープスタックしてしまう。(Aが奥まったところにセットされており、Bは手前にセットされているため)
したがって、ロワーダウンもできない。(そもそも、ロワーダウンしても1P目の終了点まで降りられるかは不明だが、途中のカムを回収してエイドダウンの足しにするなどのプランは考えられる。)

諦めて、上部3個のカムを残置してロープをFIXして、懸垂下降で地上に戻る。
「もうこれは残置して翌日回収させてください。」という最終手段だ。

で、地上に戻ると、「今日中に何とか回収して、明日はちゃんとレストしましょう!」という桂くんの指令が下る。

そこで、ロープ登高(このとき、アッセンダーは無いので非常に疲れる)で60mを登り返し、途中でスタック気味のカム(バッククリーニング時に上からカムを回収しようとすると、スタックさせてしまう可能性が普段より高い)をハンマーで回収し、ようやくFIXの頂点へ戻る。
あとは、下で補充したワイドカムなどを駆使して、エイドダウンとクライムダウンを繰り返して、1P目終了点へと戻る。

あまりにもヘロヘロなのだが、エイド作業と5.9以下のムーヴの繰り返しなので、とにかく頑張れば続けられてしまう。明るくて元気なときに比べると、作業効率は相当落ちているが。

生命力レベルの頑張りを繰り返して、1P目の終了点へと戻る。
ここには、いわゆるハンガーボルトの終了点が存在するので、ようやくロワーダウン。

トライ開始から実に5時間が経過しており、大迷惑トライとなった。
そして、このルートが70m越えであることも、ロープスケールから分かった。
<Ying-Yang 1P目(5.10d)をトライする桂くん>

具体的な反省
①ヘッデン忘れ
日没2時間前からのトライなのに持参しなかったのは、大失敗。

②悪条件で押し切れるのは5.9まで
多少のランナウト、カムの残量不足のやり繰り、岩の脆さ、そして今回のような強烈なロープの重み。これらの条件が2つ重なるぐらいでも、ヨセミテの5.10aは私の実力では厳しい。
つまり、マルチピッチでピッチ後半に5.10aセクションが出てくるようなピッチを切り方は、私にとってはかなり重荷で、こなせない可能性も十分にある。

③トライ時期
5.10d〜5.11aぐらいの一番オンサイトに頑張りたいグレードではなく、こういったラインを序盤にトライしたのは、ヨセミテ慣れを加速できるかなという思惑もあった。
しかし、このルートもヨセミテ慣れが超重要で、5.9までが割とサクサク登れるぐらいでないと大迷惑トライになる。

ともかく、このラインは反省を活かして登るにしてもパートナーへの負担が大き過ぎるので、しばらく封印することにした。
<Frenzyの1P目>

翌日はレスト。

10月23日(水) クライミング3日目
エリア:ミドルカシードラル
Central Pillar of Frenzy(5.9、5P)

中1日レストして、入門マルチに行ってみようという運び。
・アクティブレスト
・ヨセミテ慣れ
・自分たちが後半にトライするマルチルートの選定(自分たちの実力把握)
などが目的。

大変混み合っていたこともあり、全力でスピードを意識して登ったが、それでも全パーティの中で最も遅い。
前にいるエンクラモードの地元クライマーの数パーティには離されていくし、真後ろのフランスENSAガイドパーティには、ピッタリと追い付かれて多少待ってもらいながら登ることになる。

実際、遅いと言っても2割増しとかの時間差なので、ENSAガイドも写真撮影やお客さまとの雑談に程よい時間に使っているようだし、5Pと短いルートなので抜きたいわけでは無いらしい・・・。

しかしまぁ、こちらとしては実力の低さを思い知るばかりだ。
<2P目のスタート>

ビレイ点もカムで作れるので、本当はすごく楽しめるラインだと思うのだが、後方に気を遣って残置ビレイ点を使って時間短縮など、モヤモヤと気疲れがミックスされた不快感が強い。

さらに、これぐらいはアップルートでなければならない、という今回の目標設定とか曲がりなりにも自分もクラックを教えていたりするという背景が、どんどんと自分を追い込んでいるのは否めない。

それでも、毎ピッチの良質なクラックと良い景色があるので、何となくプラスの印象が残るのがヨセミテの凄いところか(笑)。
それに、色々と練習にはなっている。
<対岸に見えるエルキャプ>

あと、ちょっと背景を説明すると、私は指が変形しているためにジャミングに非常に苦労する。
左手に関しては、パラレルなハンドクラックはそもそも手が入らないことが多々ある。
手が入ったとしても、中指の可動域が極端に少ないため、ジャミングの形に制限が大きい。

そのため、過去に登れたクラックも今は登れない、または非常にトライ数が重なると予想されるものが多い。
これが、不快だった時期もあるし、オブザベで「こういう感じで手を突っ込んでジャミングしよう」と思った場所に全く手が入らないことが長らく大きな心理的ハードルだった。

それが、昨年ぐらいから何故か心理的ハードルが下がり、フィンガー〜ハンドのサイズの本気トライも時々やってみようかという気持ちになっている。
自己分析としては、過去のイメージを脳が忘れたので、オブザベと実際の不一致による不快感が減ったのだと思う。別の言い方をすれば、変形した指に合わせてオブザベすることに慣れてきた、ということ。

とはいえ、3番以上のサイズが以前並みのパフォーマンスがあるのに対して、かなり苦戦することは変わりがない。
あとは、本気トライすると指が腫れ上がるため、本気トライ、レスト、レスト、といった1登2休のペースが最も望ましい。

もちろん、ワイド系しかやらない日、5.10中盤までしかやらない日、5.9以下限定のアクティブレスト、などを交えれば、多少の連登、1登1休ペースなども考慮には入ってくる。
<2P目のフォロー>

また、今回のパートナーの桂くんは、かなり気の長い人間。
本人も、割と登攀スピードがゆっくり(僕よりは速い)だし、カムの固め取りや核心前の行きつ戻りつなど、リスク感覚に共有できる点が多い。
生活面でも気の長さは助かるし、富士山ガイド仲間でもあるのでクライミング以外の話題もあって長期のパートナーとしては、助かることばかりだ。

そのため、彼とならヨセミテに行ってみようかな、と思えた次第。
<3P目>

<5P目>

<懸垂下降>