例によって、写真とは全然関係ない話で恐縮です。
近年(?)、コスパ(コストパフォーマンス)の仲間のような言葉で、タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉を、耳にするようになりました。
批判的な文脈で、「タイパを意識すると、活動・思考の豊かさが失われる。」という感じで聞くことも多いです。
一方で、「時間あたりの効率」は無視できない問題です。
このあたり、どう考えるべきでしょうか?
今回は、ジムでのリードを例にして、考えてみます。
<林智加子さんとのコラボ企画・岩場基礎トレ>
例1) オブザベ
クライマーなら、ある程度はオブザベするのが当然だとは思います。
そんな人でも、オブザベを早々に切り上げたくなるタイミングが、2つあります。
①どうせオンサイトは無理そうだから、とりあえずホールド触りたい。
②数回オブザベしたら、これ以上に深読みしても情報が得られそうにない。
非常によく分かります。
ここで、敢えてタイパを無視したら?
①オンサイトが無理そうでも、相当しつこくオブザベする。
②数回オブザベしたものを、暗記できるまでオブザベを繰り返す。(トライ前に、目をつぶっても大部分の情報が思い出せるぐらい。)
そこまでやったら、良いトライができる可能性が高まります。
しかし、散々オブザベした挙句、やっぱり出だしでフォールするという可能性も否めません。
両者は、5〜10年先に、どんな技術や心構えを身に付けているかが変わると思います。
「タイパ VS 時間を掛けて得られる豊かさ」という構図にピッタリの内容です。
補足)
タイパ重視でオブザベを一定時間で切り上げたとしても、その余った時間を何に使ったかによっては、5〜10年先に良いことがあるかもしれません。
余った時間を何にも使わないとしたら、5〜10年先も同じようなことをしているでしょう。
※コンペティターは、短時間でオブザベするトレーニングも積んでいることは、反論としては意識すべき。
<浮き石の説明>
例2) 課題を選ぶとき
自分に登れそうな課題を選ぶことは、悪いことではありません。
全く登れそうにない課題は、ムーヴ自体が起こせないために筋トレにすらなりません。
一般的には、「頑張ればオンサイトできそう」〜「頑張ればR.P.できそう」の間を本気トライとして位置付けます。
登れそうな課題探しのために、グレードだけでは飽き足らず、ジムの常連さんの評価を聞いて回る人もおります。
登れそうな課題探しのために、グレードだけでは飽き足らず、ジムの常連さんの評価を聞いて回る人もおります。
ただ、ときには全然無理そうな課題に触るのも、プラスがあるかもしれません。
また、自分でオブザベして難易度予測した方が、長い目で見たら経験が豊かになるかもしれません。
補足)
ただし、私がよく行くジムで課題について聞いてもらったらコミュニケーションのネタとして色々とお話しはします。
「なるべくムーヴを聞かないで自力で考える。」というクライマー的に良い振る舞いをする人が、スタッフと気軽に話すネタを失うのと同じで、程度問題もあるかと思います。
適度な頃合いが難しいですね。
<ムーヴの基礎練習>
例3) 完登への過程
「自分が登れそうなルートを、早くコンプリートしたい」という気持ちはよく分かります。
一方で、それを意識するあまり、「やりたいリードルートが多すぎて、ボルダーまで手が回らない。」という人もおります。
中長期的なトレーニング効率よりも、R.P.ゲームとしての効率を重視した結果ですね。
スタイルの話でも時々触れていますが、上記のR.P.効率を意識しすぎると、5〜10年先の自分へのデメリットが大きいと感じています。
<チカさん>
例4) 疲れた後
頑張って本気トライで完登した後、帰り際に疲れた状態で別のルートを「お触り」するという方法があります。
次回へのモチベーションを高める効果もあり、多少なりともトレーニングになるため、必ずしも悪癖とは言い難いです。
一方で、そのルートが「フレッシュな状態ならば、オンサイトで勝負になる」ぐらいの難易度だったら、貧乏性で貴重な機会を失っているかもしれません。
じゃあ、余った時間は何をするのが良いのでしょうか?
・次回に向けてのオブザベ?
・基礎練習?
・筋トレ?
・ボルダー?(リードで疲れた後は、課題によっては全然ダメなので、課題選びなどに工夫が必要。)
・アイシングやストレッチ?
・早めに帰宅?
この話がちょっと面白いのは、何の効率を重視するか?という点です。
前述のR.P.ゲームとしての効率を無視すると、その日は余剰時間が生まれるので、ちょっと手持ち無沙汰になるという構図です。
<最後に、トップロープ体験>
例5) できないムーヴの試行錯誤で、無理っぽいアドバイスを受けたとき
私も、これは大の苦手です。
無理っぽいムーヴに1〜数トライを費やして、その日の体力を消費するのが勿体ないと感じてしまうのです。
①「それは考えたんですけど、無理っぽいからやめときまーす。」
②「やるだけやってみまーす。」
という選択肢で、どうしても①を取りがちだと自覚しているので、あえて時々②を取るように心掛けています。
経験を積むほど、自分のムーヴ解析が合っているケースが増えていくので、アドバイスを取捨選択したい気持ちが強くなります。
しかし、ベテランであっても、ときどき「それは無理でしょー。」と思ったアドバイスがハマることがあります。
私自身、頭が固いオジサン・オバサンにならないために、なかなか有効な心理トレーニングにもなるように思われます。
キャリア10年以上のベテランクライマーには、オススメです。
その意味では、ジムボルダーが最も良いように思います。
少し話は逸れますが、夕方のベスト時間帯(日が陰って、ホールドがヒンヤリする)を狙って昼間は大休憩する(お昼寝などで数時間を潰す)というのも、ちょっとした我慢強さが必要なります。
ボルダーとか、顕著です。
開拓作業とか、自分が苦労した割に発表されているグレードが低いとかも、人によっては嫌な気持ちになるでしょう。
タイパ思考って、一つの貧乏性なんでしょうね。
効率を考えるとき、
①クライマーとしての良い習慣を身に付けるための時間の贅沢な使い方
②R.P.効率
③トレーニング効率
などを総合的に判断できるようになりたいものですね。
<ファンタジー岩>
①と③のどちらを重視するかは、良いクライマーになりたいか、強いクライマーになりたいかにもよるように思います。
②は、人間の欲の現れ(いわゆる煩悩)みたいなところがあり、放っておいても自然と湧いてきます。
僕も、登れそうなルートのコンプリートは大好きですし、完登を目指すからこそ頑張れるというのも真実です。
そういう意味では、②に対しては抑制的にして、①や③を優先する態度が大切なのではないかと思います。
<1年半越しの宿題、ベヒーモス(1級)が夕方ようやく登れた。3日半は打ち込んだと思われる。>