2026年2月14日土曜日

「レストが苦手」という人の思考

クライミング中のレストは、当然大切です。

ただ、レストが苦手な人、あるいは苦手であることを自覚していない人が、講習生の中でも相当おります。
<湯河原>

最初に、レストの目的を思い出してみます。

①回復
ダラリンと降ろしている方の腕の血流を流す。

・チョークアップして、ヌメりの予防。
・深呼吸をして、心拍数を下げる。
なども含む。

②時間稼ぎ
作戦を立てる時間を取る。

例)
・O.S.トライであれば、直近のムーヴを読む。
・R.P.トライであれば、直後のムーヴを脳内で再確認。
・ジムリードであれば、クリップの計画を再考。
・岩場であれば、リスク要因やランナウト具合の予想。
・クラックであれば、プロテクション戦略を考える。
などを含む。
これで、「レストやんなきゃな。」ぐらいの気持ちにはなるのでしょうが、実際のトライではレストしない人が相当います。

そのパターンを見ていきます。
<ロープレスキュー>

パターン①
常に焦っていて、早く上に行こうという思いが強過ぎる。

対処法)
これは、厄介です。
まずは、自覚を促すことです。
練習方法の提案、言葉がけ、本人が登っている動画チェック、などなど。
<クラックリード講習>

パターン②
早く登った方が省エネである、という思いが強過ぎる。

対処法)
部分的には正しいだけに、厄介です。
少々時間をかけても、省エネムーヴを選択していくことがパンプ抑制につながる、辛抱強くレストすることがルート攻略につながる、という実感を持たせる工夫が必要です。
<こちらも城ヶ崎>

パターン③
過去に、ゆっくり登ってみたり、レスト多用して登ってみたことはあるが、かえってパンプしたので不採用にした経験がある。
(パターン②の強化バージョン)

対処法)
これも厄介です。
「新たな登り方に身体が馴染むまでは、かえって成績が落ちる」という一般原則があるため、この考え方だと一生自分の登り方を変えることができません。

つまり、自分のスタイル「特攻隊のようにガンガン突っ込んで、ダメなら落ちる。」のまま、伸びられる限り成長し、そこで行き詰まったら成長は終わり、という生き方になります。

ある特定のジャンルでは成果を残せるかと思いますが、オールラウンダーを目指すのは厳しいでしょう。
パターン④
できるだけ長い時間、4点支持で居たい気持ちが強い。

補足)
レストというのは、片手をフリー(ホールドから離した状態)で滞在する必要があるため、これが精神的に落ち着かなかったり、疲れると感じてしまったりする。

彼らの主張A)
片手フリーよりも、4点の方が支持支点が多いから安定する(落ちる確率が低い状態)じゃないか?

彼らの主張B)
片手フリーの状態は、ホールドを持っている方の手が消耗するから、4点の方が片手ごとの負荷は小さいから楽じゃないか?

もちろん、AもBも論破することはできるのですが、何となく腑に落ちないという彼らの気持ちも理解できます。

対処法)
・1点フリーの状態で安定させる練習。(手も足も全てスタティックで登る練習、など。)
・全てのホールドでレストする練習。
など
 ※どちらも、十分に易しいルートで行うこと。
<再び湯河原で、岩場リード講習>

パターン⑤(中級編)
全身脱力できるぐらいのレストポイントでしか、レストできない。

例)
ハングの場合:
ジムの5.10cを登っていて、5.9のような大ガバが出てきたタイミングでのみ、レストする人。
  酷い人になると、5.11をトライしていても、レスト技術は5.9の大ガバのみ、という状況になる。

垂壁〜スラブの場合:
スタンスが非常に良く、手の負荷が非常に軽くなったタイミングでのみ、レストする人。

考え方)
5.10cをトライするなら、5.10aぐらいのホールドでもレストできた方が良い。
5.12aをトライするなら、5.11bぐらいのホールド(あるいは微妙な体勢)でもレストできた方が良い。
レスト中、ダラリンと降ろしている方の腕は脱力しているが、体幹部をナマケモノのように脱力するのは非推奨。

※「体幹部は脱力し過ぎず、レストしている腕は脱力する」という感覚に慣れるのが難しいのですが、これができないとグレードが上がると全くレストできなくなっていきます。
<こちらも湯河原>

パターン⑥(中級編)
レストによく使うムーヴ技術の向上に、興味が薄い。

例)
・省エネのためのヒールフック。
・凹角でのワイド技術。(バック&フット、ニーロック、など)
・ステミング。
・微妙なバランスでのノーハンドレスト全般。

もう少し初心者向けに言うなら、ガバ足でも足指でスタンスを捉えた方が楽だとか、そういうレベルです。

補足)
本人の心理としては、省エネ技術なんかよりも、「突破できなかった、あそこのムーヴを教えててくれよ!」という話です。
実際には、省エネ技術が高ければ登れるルートも相当増えるのですが、そこには目が向きづらい人もいます。

「そういう思考なら、ボルダラーになれば?」という気もしますが、別の理由でリードが好きだったりするので、やっぱり直して欲しいところです。

対処法)
・ウォームアップを兼ねた基礎練習で、様々なテクニックを試行錯誤&反復練習。
・ワイドクラック、凹角課題、スラブ課題、ヒール課題、などに対して積極的に取り組む。
など
<城ヶ崎でワイドボルダー>

パターン①〜④は、ちゃんとできないとバタバタ登りにすぐになります。
ジムならともかく、岩場やクラック、マルチ、アイスなどでは、危険と言っても差し支えないでしょう。

速やかに、改善の必要があります。
<若干のインバージョン>

パターン⑤、⑥は、できなくてもそこそこ登れます。
岩場でも登山でも、危険というほどのケースは少ないかもしれません。

ただ、それゆえに「自分は、レストには自信がある方だ。」などと考えてしまう人も多いのです。
しかし、実際には同グレードをO.S.トライしている人たちに比べて、レストできる場所が少なかったりして、これこそが最大の伸びしろである可能性もあります。
<クラックリード講習>

他にも、
・パンプするまでレストしない人
⇨序盤は、まだパンプしていないので、レストを交えながら登る気持ちになれない。

・パターン①〜⑥の複数に弱点が散らばっている人
⇨「特定の1つが、徹底的にダメ」というほどではない。

など、色々いますよね。
<今回、ようやく手足の位置関係理論が腑に落ちたHSさん>

「キャリア後半に、ちょっとずつでも伸びる人」というのは、こういう弱点分析に長けた人なんだろうと思います。

<懸垂エリアの「あかね」>

<フィストクラックをO.S.するODさん>