2018年8月26日日曜日

ビレイ点の続編

5月17日は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性HMさん、男性SGさん。
<ビレイ点作りの練習>

ビレイ点作りで、講習生が頻繁に話題に上げるのが、足場です。
足場によって、求めるものが変わるという話。

上図で、下段のテラスは数人が座れる広さ、中段は立てる程度(セルフにぶら下がっていることが多いくらい)、上段は大型テントが張れるぐらい。

「中段の場合、ものすごく安全なビレイ点であって欲しい。」
「上段の場合、テンションなるべくかけないように、そうっと使える。」
という感覚。

感覚は、分かります。
ただ、その図はフォローが登っている状態で、このときフォローがテンションすると、ビレイ点に全荷重がかかります。

つまり、ビレイ点はトップロープ支点並みに安全であって欲しいのです。
しかも、仮にビレイ点が崩壊すると、リード(この時点でのビレイヤー)も死にます。

さて、この状況は、ビレイ点の足場が良くても同じです。
<カム複数支点でのハンギングビレイ>

個人的には、
「足場が悪い(ハンギング気味の)ビレイ点を、怖がって真剣に構築するのは悪くはない。でも、足場が良くても結局はパーティ全滅の危険はあるから、妥協は要注意。」
ぐらいのイメージです。
次に、複数支点の連結。

上図は、A~Dの4つのカムで、ビレイ点を作った場面。

A~Cの3つを連結し、一番強固な支点(パワーポイント、マスターポイント、などと呼ぶ人が多い。)を作り、そこでフォローをビレイしました。

で、本人のセルフビレイは、Dだけで1個からとりました。

本人の感覚としては、
「煩雑にならないように、分けた。」
というもの。
これまた、理解はできます。

ただ、もしDが抜けたり、セットした岩が欠けたりすると、本人はA~Cの3点には繋がっておりません。
おそらく、死にます。フォローは、とりあえず死にませんが。

複数支点の最大のメリットである、バックアップの効果がないのです。
このケースだと、普通にパワーポイントにセルフビレイで良いんじゃないでしょうか?

せっかくDが使えるなら、一応パワーポイントに連結して、A~Cが全部抜けたときの最後の保険にしておくという手もあります。
こうやって書いちゃうとサラリです。

でも、リスク管理で感覚と理性の仕分けは、永遠のテーマみたいなところもあり、現場では失敗しがちですよね。
ゆっくり学んで行きましょう。

<トップアウト!>