2018年6月6日水曜日

99%登れそう

5月28日(月)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性IUさん、男性NSさん。
<ビレイ点の作成練習>

今回のリードで、「突っ込み過ぎました。」と深く反省していたNSさん。

具体的には、以下のような状況。
<1P目のIUさん>

リード開始後、最初に選んだのはチムニーのライン。
チムニーそのものは、問題ないのですが、抜け口のフェースでプロテクションが取れそうもありません。
考え抜いた結果、敗退決定。

もう1ラインの候補があるので、ここまでは問題なし。
チムニーは、ほとんどノープロテクションなので、クライムダウンはちょっと怖いけど、それなりに安定して降りられました。
<今回は、ロープの流れもほぼ完璧>

そして、第2候補のライン。

やや風化したクラックですが、それなりにプロテクションは取れたので、頑張って突破。
ただ、ちょっと落ちそうだったのに、固め取りをしていないこと、フォールしたらビレイヤーと1本目の間のロープ周辺に落ちそうで気がかりでした。
テラスが大きかったので、ビレイヤーは立ち位置を移動することも出来そうでした。

あとで聞いたら、ここは100%ではないけれど、たぶん登れると思ったそうです。
<フォロー中>

さて、その上でピッチを切れる立木もありましたが、目の前に綺麗なクラックが出現したので、そのまま繋げてリード続行。

すると、クラックが閉じた後にプロテクションが取れないマントルをこなして、「5.10aは、ありそう。」と感じたそうです。

あとで聞いたら、「行けるとは思ったけど、なんかダメでした。突っ込み過ぎました。」という感想。
<2P目の第1候補のチムニー>

実際、彼はスポートルートでは5.11後半もR.P.しており、5.10中盤くらいなら割とO.S.勝率も高いのでしょう。

だから、この講習でラインを選ぶぐらいのものならば、せいぜい5.8~5.10前半ぐらいで、見た目に「登れそう。」と思っても不思議はありません。
<第2候補のクラック。左トラバースのラインもあったが、ここから右上するラインを選んだため、フォールラインにロープが張られることになった。>

ただ、マルチピッチの場合、落ちる可能性が1%でもあれば、リードの戦略は大きく変わります。

個人的には、ほぼ0%ならば岩稜歩きのように、ときどきプロテクションを取れば良いと思っています。
1%でも落ちそうなら、クラックの本気トライに準じた戦略で考えるべきだと思います。もちろん、結果的には99%で登れるので、その安全マージンは活かされません。

ただ、その1%が事故になったら困る、という理屈です。
<反省した様子で、我々を迎え入れる>

具体的には、
・墜落距離の計算
・プロテクションの信頼度チェック
・固め取り
・ビレイヤーの位置
・ロープと身体の関係
などでリスク計算してから、99%出来そうなムーヴに取り組むという流れです。

ところで、常々感じているのですが、スポート中心の初中級者って、1%~10%程度の落ちる確率に鈍感な人が結構いると思います。(ジムクライマーも。)
核心部の落ちる確率が、そもそも50%とかのルートを中心に攻めているからでしょうか?
ちなみに、上級者は核心以外で落ちることも十分に警戒しているとは思いますので、この話には当てはまりません。コンペとか本気オンサイトトライとか、アプローチセクションで落ちたら悔しそうですしね。
あくまで、私の仮説ですが。

NPの場合、ほぼ0%と1%以上では、プロテクション戦略が全く違うので、たとえ初級者でも敏感になる気がします。
むしろ、10%落ちるのも90%落ちるのも、戦略に大きな違いは無いのかも!?(笑)

理想的には、1%の落ちる確率も敏感になりつつ、安全な環境では50%のチャレンジも出来るというクライマーになることなのでしょう。
<懸垂下降のライン取りも難しい>

マルチピッチ講習は、マルチピッチそのものを学ぶことが主題ですが、普段のクライミングにも活きそうなものですよね。

今回が、良い学びになることを願っております。