2020年12月16日水曜日

事故を乗り越えるとは何か

11月29日(日)は、クラックリード講習にて、城ヶ崎。
男性KYさん、女性STさん。
この日は、喜ばしい報告を受けることがありました。

以前、フラッシュダンスで重大事故未遂(軽めには怪我をしたが、内容的には死ななくて良かったレベル)を起こした講習生が、無事にフラッシュダンスをR.P.したというものです。
ただ、事故ったルートを恐怖に耐えてR.P.すれば、事故を克服したという考え方は、間違いだと思います。
反省が活かされ、別ルートに通じるリスク管理能力の向上があってこそ、克服と言えるでしょう。

また、「そのルートは危ないから、もうやらない」となってしまうのも、クライマーとしていかがなものかと思います。
実際、安全にトライできる人は、いくらでも存在する訳ですから。
典型的には、以下の道を辿ると思います。

①事故後に、自分のリスク管理に疑いを持ち、クライミングが少し怖くなる期間がある。
②自分の中で、再発防止のルールが決まり、それによって今までよりもクライミングが難しく感じる。
③新ルールで、ようやく以前のレベルでクライミングができるようになり、宿題に向き合える。
(時間としては、数ヶ月〜数年というスケール)

例として、カムの効きが甘いと分かりつつ、「テンションなら平気でしょ。」と思って進み、行き詰まってテンションしたらカム抜け、というケース。
ここで、「そっとテンションは万能ではない。禁止にはしないが、常に自信のあるカムからの墜落距離で、最終的な進退判断は決定する。」という新ルールを自分に課すと、明らかにクライミングは難しくなります。
5.10aをコンスタントに一撃していた人が、5.8のオンサイトですら難しくなることも、当然あります。

新ルールが定まるまでの間、モヤモヤ期間もあります。
以前のレベルで登れないことに、ストレスも感じます。
それ以前に、「自分は危ない人間かもしれない。」と自己批判することは、何度味わっても嫌なものです。
思慮が浅い友人から適当なアドバイスをされて、議論するほど自分も明確に意見を言えず、コミュニケーションの問題を感じることもあります。

当然ですが、事故ったルートのムーヴやカムの効く場所を暗記してR.P.することには、何の意味もありません。
仮に、トップロープリハーサルでなかったとしても、中身は本人が一番分かるはずです。

今回の方には、色々なことが飲み込めたように思えました。

この苦しみを何度か乗り越えて、それでも続けている人。
そういう人には、ジムで強い人とは、また少し違った雰囲気が漂うのではないかと思います。