2014年11月23日日曜日

卒業通達のジレンマ

11月22日(土)は、マルチピッチリード講習にて、越沢バットレス。
男性Hさん、前日から連チャンの男性IKさん。
<アプローチの橋>

本日にて、Hさんはマルチピッチリード講習を卒業といたしました。

評価としては
・登攀力、ルートファインディング、敗退判断など、リード技術そのものは良い感じ
先日、クラックの5.10bをオンサイトしただけのことは、ありますね。

・ロープワークは、最低限が出来ているくらい。
ただ、前回も指摘した通り、パパっと手を動かしてしまって、作業が混乱することも多い。
<いきなり渾身のIKさん>

登攀力も手際もあって、かなり登る力はあります。
目標にしているスーパーレインでさえ、この冬中にオンサイト出来る可能性もあるでしょう。

で、「それは危ない!」と私が指摘したことに対する、理解も出来ています。
だから、基礎の部分では分かっていると思います。
<Hさんは、快調にロープを伸ばす>

ただ、現状の問題点として、ちょっとしたイレギュラー対応が見ていてハラハラするタイプ。

マルチピッチ中は、実に色々なイレギュラー対応を迫られます。

・ビレイ点を10mだけ移動
・歩きと懸垂を交えて下降する
・途中でリードを交代する
・ロープの末端が分からなくなった
・荷揚げ

こういうとき、手間が掛かっても確実な方法を取ってほしいというのが、私の初心者に対する願いです。
省略形は、徐々にやらないと危ないですよ!

(その点、MJさん、WNさんの2名は、イレギュラー対応を講習で実践している回数も多いので、見ていて安心。)
<マルチっぽい雰囲気>

この点は前回も指摘したのですが、
「意識して改善しているのは、伝わって来ますね。」

という感じで、まだ甘いです。

だから、卒業にするかは結構思案しました。

結局、本日の反省点を本人に聞いて、的を得ていたので卒業決定。

「きっと、次回から良くなるでしょう!」
という願いを込めて。
<「そんなに容易くない!」>

これは、Hさんの例でしたが、卒業を言い渡すのは常に悩ましいです。

特に、マルチピッチリード講習は、全く悩まなかったなんて、0人です。
<3P目は、IKさん>

私の中で、卒業リーチかなと思った人には、下山中ひたすら頭の中でループする思考。

「そろそろ、おおよそのリスク判断が分かってきたから、自力で行って欲しい頃かな。」

「ここで卒業にすると、今気になる悪い癖が一生治らないかもしれないな。で、それが危なっかしいクライマーを生まなきゃ良いんだけど。」

「いや、でも下山中に反省を聞いて、確認してみよう。」

「もう1回受けてもらえば、本当に良くなったかを確認できるなぁ。」

「安全パイで、もう1回、2回にしても、他の作業も洗練させられる分、後々プラスになるとは思うんだけど。」
本当は、教えたいことは山ほど残っています。

それをどこで一旦のゴールとするか、という問題。
実際、マルチピッチリード講習後は、受講頻度も落ちますからね。

だから、卒業させた後にきちんと登れているかは、本人や周りに聞いて回ってしまうこともあります。
<空への一歩>

マルチピッチなら、
・納得いくスタイルで登れているか?
・危なっかしくはないか?

岩場リード、クラックリードなら、
・リードでトライできているか?
・危なっかしくはないか?
<このピッチのフォローは、Hさんでも結構大変そう>

卒業してもなお、いや卒業させてこそ、乗りかかった船だらけになるものですね。

これを書いているだけでも、苦しくなってきました(笑)。
<アニキより、アニキっぽいHさん>

話は、本日に戻り・・・

素晴らしい、オンサイトクライミングでした!

Hさんのスピードと安定感、そしてIKさんの炎のリード。
見事に初登攀ごっこを成功させて、大満足。

「ルート名を付けるとしたら?」
という問いには

“ときめきフレーク”

という回答。
<ロープワークは、まだまだ必死>

しかも、力が余ったHさんは、午後からオールリードでもう1本を完登・・・。

これは、終了間際に、
「あ、ここは体験講習で来たラインだな。」

と気づきましたが、実質オンサイトでしたね。

残置無視・トポ無視で2本登るスピードは、講習生としては相当なものです。
なんせ、登りそのものが余裕そう。
<2本目へスタート>

1本目で核心をリードしたIKさんは、もはや出し切った感たっぷり。

午後は、フォローに終始しましたが、苦手なシステム系の練習にもなったと思います。
<2P目も、Hさん>

最高のクライミングがしてもらえて、私も楽しい1日でした。
<最終ピッチ>