2011年11月7日月曜日

ガイド登山と講習

11月1日(火)は、越沢バットレスにてマルチピッチ体験講習。
今回は、常連女性のKKさん。
KKさんは、長らくジム講習だけを受講してきましたが、先日の天王岩で岩場講習に初参加。
続けて今回は、マルチピッチ体験です。

KKさんは、他のガイドの元で色々なバリエーションルートを体験しております。
「そんな方が、なぜ講習?」と思うかもしれませんね。

「ガイド登山というのは、お客様を登頂させるのが目的で、お客様を育てるのは副次的なもの」
という前提は、ガイド登山を知らないと理解しづらいことでしょう。
今回は、その点について少し話してみます。
たとえば、天気などで敗退が一瞬よぎるような場面でも、ガイドは敢えてお客様にそのことは伝えないことが多いです。
伝えるとしても、「少し大変ですが、行きましょう」と結果のみを伝えたり。
(例外のケースは、いくらでもありますが)

まず、お客様がガイドを強く信頼していただけるなら、その方が円滑に回ります。

さらに、お客様は登山の判断から開放されて、自分のことだけに集中できます。
たとえば、自分の体力維持のために行動食を食べること、危険箇所を気を付けて通過すること、今後の行程に関する見通し。

つまり、ガイドというのは、全体の判断をしつつ、お客様にはプレッシャーをなるべくかけず、さらにお客様にすぐ役立つアドバイスや注意点を促して集中させる、という業務を行っています。

まして、雪山やバリエーションルートのガイドは、その最たるもの。
ロープワークは難しいので、ほとんどをガイドが行います。
お客様は、ガイドと一瞬離れる際にやるべきロープ作業を指示され、それを実行しながらガイドを追います。

この方法が、“最も弱いお客様”を“最も難しいルート”に“できるだけストレスなく”登らせるため、最善という訳です。
私自身も、富士山でガイドをしている際、本当の初心者をマルチピッチにお連れする際などは、このことを意識しています。
お客様は、本当に登れるかの瀬戸際だったりするので。
そして、このガイド登山という方法が、自分自身では絶対に登れないはずの山を登るための良い方法であることは知っております。
もちろん、それが夢を与えるほどの仕事になりうることも。

ただ、私は“最も弱いお客様”にも簡単なバリエーションでも自力で登る可能性は捨てて欲しくないし、それを教える方が10倍好きですね。
そして、他のガイドなら「一生ガイド登山が良いんじゃないですか?」と勧められるようなお客様が、少しづつでも自分で考えられるようになることに、夢を感じます。
KKさんが、このままガイド登山を続けるのはもちろん構いません。
それで、色々なルートに連れて行ってもらうことも、きっと素晴らしいのでしょう。

ただ、僕はKKさんの可能性を広げる方に集中していきたいと思っております。

具体的な講習内容
1ピッチ目のⅢ級を2回登ってから、3回目にそのまま一般ルート(3ピッチ)をトップアウト。
・ギアラックの整理方法
(「ハーネスの前列を、ヌンチャクや回収ギアだけのために空けておく」など)
・カムの回収方法
・カウテールの作り方
・コール無し(コールが聞こえない場合)の流れ

ちなみに、ガイドの仕事は私には難しすぎるというのもあります(笑)。

本格的なアルパインルートのガイドとか、出来る気がしません。
興味があれば、素晴らしいガイドの面々を紹介いたしますよ。