2018年5月29日火曜日

オンサイト権を捨てたエイド練習

5月27日(日)は、クラックリード講習にて、湯川。
女性Sさん、復習参加の男性ITさん。
<カムセット練習>

復習参加のITさんへのメニューとして、少し変わったやり方をやってみました。

①現状ではまだオンサイトは厳しいくらいのフィンガークラックをエイド練習として、1回トップアウトする。

②次のトライで、リードする。(カムが効く場所、上部のホールドなどを把握しているので、オンサイトトライではない。)
<Sさん、初めてのオンサイトトライ>

意図としては
・エイド自体を覚える
・「リードトライ時に、もし出来ないセクションが出てきてもエイドできる。」という逃げ道を持った上で、リードトライの練習をする
<エイド練習@イエローフェスティバル>

過去に、無名フィンガーの下部5mぐらいで同じような講習メニューを組んだこともあります。

最大の問題は、これをやるとオンサイト権が無くなることです。
<Sさんは、3トライ目でR.P.>

ただ、そういうことを勘案しても、
「エイドという逃げ道を持った上で、背伸びしたルートに取り付く。」
という方法を体験して欲しいなと思って、やってみました。
<リードトライ開始>

結果。
エイドトライ時
状況:色々と迷いながらも、順調にトップアウト。
感想「これって、腕が全然疲れないで上まで行けちゃいますね。」

リードトライ時
状況:落ちるまで頑張れず、テンションコールの連続。数ヶ所で、エイドを交えてトップアウト。
感想「もうちょっと落ち練しないと、怖すぎて(まともにチャレンジできない)。大丈夫なんだろうとは、分かっているんだけど。」
<数ヶ所のエイドを交えつつ、概ねムーヴ解決しながらトップアウト>

この練習で、何が体感できるんでしょうか。

エイドの安心感を覚えることも、やはり大事です。
一方で、テンションしてエイドに逃げるタイミングを考える際に、「頑張りきれない自分のショボさ」、「フリーとは何ぞや」、「リードとは何ぞや、トップロープとは何ぞや」が頭をよぎると思います。

「ハングドッグはトップロープと何が変わるのか?」
みたいな議論もあります。
クラックの場合は、ハングドッグがまともに出来るようになってから言うべき話ですよねー。

スラブをどうにかしたい

5月26日(土)は、岩場リード講習にて、小川山。
女性MKさん、男性STさん。
<結び替え練習>

岩場リード講習にせよ、クラックリード講習にせよ、ムーヴの癖について考えることは多いです。

個人的には、最もオススメしているのは小川山での岩場リード講習です。
<色々と試行錯誤>

別に、私の教え方がどうこうという訳ではなく、スラブが苦手だと悩む卒業生が多いので、ムーヴ講習として一助になればということです。

特に、卒業生が復習参加を考えるなら、ついでにスラブで受講して欲しいなと思いますね。
そういう意味で、小川山での講習期間を5月~10月と一番長く取ってありますので。
<ウルトラセブン>

スラブはランナウトしていることが多い、クライムダウン敗退が困難、コツが分かりにくい、などなどで敷居が高いのは確かです。
5.8や5.9でもオンサイトトライできないというのは、成長曲線にすら乗れていないと思いますよ。

一般的には、それすら出来ないとトップローパーになるものです。
が、それはそれでイマイチだと思う私が、あれこれと手立てを考えております。
<小川山ショートストーリーの1本目クリップ前>

どうにか、スラブでもリードクライマーになって欲しいものです。
さて、本日でSTさんは岩場リード講習を卒業にいたしました。

小川山ショートストーリー(5.9)を数トライしてR.P.も出来ました。
安全を守ってのトライも、だいぶ良い感じになって来ましたねー。
<微妙なバランス>

<核心抜けた!>

2018年5月25日金曜日

ビレイ点崩壊は死の香り

5月24日(木)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性HMさん、男性SGさんのペア。
<取り付きにて>

マルチピッチにおいて、複数支点を連結して、ビレイ点を作ることについて。

流動分散か固定分散か、みたいな連結方法の話ではありません。
そもそも、各々の支点の信頼度に関して。
<1P目>

状況を分かりやすくするために、カム3本とします。
(1本では不十分と感じる潅木、ナッツ、ハーケン、冬山の支点各種、なども全て同じですが。)

ここで、1つ目のカムがバチ効き、2つ目もほぼ自信あり、3つ目が不安とします。
ここで、無理やり感覚を定量化してみます。

リードの墜落など、動荷重でカムがしっかり止まる、という可能性に置き換えます。

1つ目:99.9%
2つ目:90%
3つ目:40%
<立木でビレイ>

すると、ビレイ点の崩壊は3つともが抜けた場合のことなので、
0.1%×10%×60% = 0.006%

という評価になります。

イメージとしては、命を掛けたリスク分散です。
<楽しそう>

2つのバチ効きカムならば、どちらも99.9%で止めてくれると評価しています。

0.1%×0.1% = 0.0001%
と評価します。

そんな訳で、バチ効き2つのビレイ点は、生半可な3点や4点よりも信頼度は高いと感じています。
<2P目>

ちなみに、この感覚的な議論には突っ込みどころ満載です。

①抜ける確率を評価できるのか?
カムに限って言えば、クラックで実際に本気トライを繰り返す人であれば、ある程度は大丈夫だと思います。

ちょっと不安なカムで落ちたときに、「いやはや、ちょっとフレアしていたけど、案外止まるもんだね(汗)。まぁ、1個抜けても下のは自信あったんだけどさ。」と言った経験をするものなので。
もちろん、「あー、やっぱ抜けるよね。」と思うこともあります。

ハーケン、アイスクライミングのスクリューとかだと、ちょっと経験が積みにくいとは思います。
<岩稜帯に出た>

②ビレイ点は、動荷重用のリスク評価が必要なのか?静荷重用で十分では?

これは、難しい問題です。
ビレイ点に命を託す場面を、3つ想定してみます。

A フォローのフォール
これは、静荷重+αになるでしょう。
ただし、1本目が抜けた場合は、2本目には動荷重になるでしょう。

B リードが1つ目のプロテクションにクリップする前のフォール
これは、動荷重です。しかも、いわゆる墜落率2というケースで、通常のプロテクションよりも大きな荷重になるでしょう。

C ビレイ点のセルフビレイにぶら下がる
これは、静荷重です。足場の良いテラスならば、体重の半分程度しか掛からないかもしれません。
ただし、セルフを延長した状態で足を滑らせた場合、1本目が抜けた場合、などは動荷重になります。

そんなことを諸々考えていくと、
「ビレイ点って、何事もなければ静荷重しか掛からないものだけど、動荷重でリスク評価しておいた方が良いだろう。」
というのが、私なりの経験則です。
③クライミングの難易度、ビレイ点を作るテラスの安心感、などによっては、やや信頼度の劣るビレイ点を許容できるか?

これまた、超難しい問題です。
どうしても自信あるビレイ点が作れず、フォローに「落ちんなよ。」と声かけしたことがある本チャン系のクライマーも多いことでしょう。沢でも、雪山でも。

でも、フォローというのはなかなかリードと同じ心持ちで登ることが難しく、リードでプアプロならば絶対に行きつ戻りつして絶対的な確実性を探るような場面でも、トップロープ的な気軽さが出てしまうかもしれません。
それ以前に、フォローにそういう声掛けできなくて、フォローは“知らぬが仏”でリスクに晒されることが多いような気がします。

ビレイ点が広いテラス、ってのも似たような難題です。詳しくは割愛しますが。

そんな訳で、
「絶対ダメ、とも言えない。ただ、ほとんどプロテクションを取らずに進むようなピッチでも、ビレイ点だけはなるべく手を抜かない方が、大抵の場合は吉。」
というのが、私の経験則です。
<本日は、ここで降りましょう>

リード中のプロテクションは、本人さえリスクを許容できればランナウトしても良いと思います。
ただ、ビレイ点や懸垂支点は、パートナーの命も託すことになります。

そう考えると、経験を重ねるごとに安全基準は厳しくなってくるような気がします。
<懸垂下降>

いつも同じような話をしているのですが、相手によって色々と教え方を変えたりしているうちに、自分の理解も洗練されるものですね。
何回か似たような話は書いていると思うのですが、ちょっとずつマシな文章になっていると感じます。

レストを立ち返る

5月23日(水)は、ムーヴLv.0。
新規男性FMさん。
このブログでは、レスト中に作戦を練ること、レストポイントまで戻って来て再度安全な状態に戻ることを、何度も何度も書いてしまっていると思います。
たぶん、スポーツクライミングのオンサイトトライと、アルパイン的なクライミングに共通する極意的なものの1つと私が感じているので、イチオシしちゃうんでしょう(笑)。

たまには、それ以前の話に戻ってみます。

写真のように左手をレストしているときは、右手はホールドを保持しているのが普通です。
この際に、左手の回復速度よりも、右手の消耗速度の方が早ければ、「居るだけ損」ということになります。
(どうしても左手を回復させたい特殊な事情があれば、話は別。)

ただ、よくよく考えると、左手の回復速度を上げることは大したことは出来ません。
(脱力して腕を下ろすだけ、シェイクする、シェイクの方法を工夫する、など。)

一方で、右手の消耗速度を遅くする方法は、かなり工夫の余地があります。
いわゆるムーヴそのもの。足位置、大雑把な姿勢、身体のちょっとした部分脱力、ホールディング、などなど。
本当にちょっとしたことで右手の負担が変わることは、クライマーなら誰でも感じるところだと思います。

この場合の「レストが上手い」というのは、右手の負担が少ない状況を巧みに作り出せる、ということなのではないでしょうか?

さてさて、本日でFMさんはジムリードに進んでO.K.といたしました。
もしよろしければ、引き続きよろしくお願いします。

2018年5月23日水曜日

ワイドクライマー返し

5月21日(月)は、自分のクライミングにて、瑞牆。
お初のN山くんと。
<アプローチ0分>

九州から1人、クライミングのために川上村に上京(?)してきたN山くん。

毎朝、出勤前に小川山へ朝練に行くという凄いモチベーションです。
<これが、ワイドクライマー返しだ!>

本日は、“ワイドクライマー返し”(5.11b)というワイドクラック。
私は、1トライ目はすっかり力尽きてしまい、ハングドッグしても身体のヨレが戻ってこない悲惨な状況に。

一旦ロワーダウンして、しばらく昼寝休憩。
そして、もう一度ハングドッグの最終地点までロープで上がり、エイドダウン回収。

一応、終盤はサイズ的に有利だとは確認できたので、2トライ目は出たとこ勝負でなんとかなるでしょう。
<アメリカンドリームを試みる>

N山くんの1トライ目は、ハングドッグしてムーヴ解決。
<これは、割と一般的なムーヴ?>

トラバース課題なので、休憩してからトップロープでフォロー回収も。
そこで、おおよそムーヴも固めます。
<トップロープで、カム回収>

2人とも1トライを終えて、昼寝する私を横目に、掃除を開始するN山くん!!

掃除って体力を使うんで、こういう課題のレスト中にやるなんて、どんだけ元気なんですか!?
<掃除中>

聞くと、彼の師匠格の先輩は、リード中でもワイヤーブラシで掃除を頑張るとか・・・。
恐るべし、三倉スピリット。

「自分、全然登れないんで、こんなことだけでも。」
と、のたまう彼。
<結構、本格的に>

聞くと、クライミング歴は5年なので、フリークライミングのオールラウンダーでこのぐらい登れれば、結構な成長スピードに感じます(笑)。
イメージでは私の3倍速なんで、5年後は凄い人かもかれません。
<まだやってます>

そして、2人とも頑張ってワイドクライマー返しをR.P.。
一応、2擊なのかな。
<2トライ目>

掃除してたのに!本当に元気!
まるで、長門さんのようだ!

すごいっす!
<気合のR.P.>

私は、なんだか疲労していたので、15時で中途半端な時間でしたが、早上がりで勘弁してもらいました。
まぁ、前後予定からしてベストコンディションが望めなかったので、アプローチ0分のワイドクライマー返しにしてもらったのですが!!!

彼は、この後はナイトクライミングの約束があるとか・・・。
25歳の若手と比べ、老獪系になったなと我ながら思うのでした。

まぁ、コツコツ自分のペースで生きましょう。

2018年5月22日火曜日

あなたの自由

5月19日(土)、20日(日)は、クラックリード講習。
1日目は、男性TNさん、復習参加のNSさん夫妻。
2日目は、女性Mさん、女性ISさんのペア。
<ジャミングと足位置で四苦八苦>

MKさんのオンサイトトライのこと。

2mほど上がったところにテラスがあり、そこから5mほどのクラックを登るというルート。(下の写真)
持っていくカムを悩んでおり、最初の2mを偵察に登ろうかと思案しておりました。

そこで、
「とりあえず、最初の2mは多めにカムを持って行って、テラスでオブザベして不要なカムを置いていっても良いですよ。」
とアドバイス。

すると、テラスでプロテクションとは無関係なカムを1つ適当に決めて、それに不要カムをまとめてぶら下げることを思いついた様子。
「こうやっても良いんですか?」

もちろんO.K.です。
<こんな登り方もアリ>

そして、次のトライでは下部がワイドっぽかったので、
「もし、下部でワイドギアを使わなかったら、途中で(さっきみたいに)置いていっても良いんですか?」

はい。どうぞ。
<ツムツムをO.S.するNS奥様>

これらのやり取りやら、NSさんのリード時の様々なプロテクションの逡巡(1回決めたのを、もう1つ決めてから間引くなど、様々な手法)を見てから、MKさんの感想。

「フリークライミングっていう最低限のルールさえ守れば、変な話ですが何やったって良いんですね。」
と、何やら納得した様子でした。

「ただ、自由すぎて難しいな。」
とも、何やら考え込んでいました。
<フラッシュする旦那様>

<曲がり煎餅をオンサイトトライするMKさん。そして、途中敗退することに。>

2日目は、クラックは初めての2人。

ジャミングの仕組みに感嘆しつつ、一方で形状に合わせることの自由さに驚きを禁じえない様子。
「手って、色んな形で引っかかるものなんですね!」
<2日目>

一方で、最初に体験してもらうのがコーナークラックということもあって、ムーヴの選択肢は様々。

レイバック、ステミングのみならず、片手ジャミングで片手はガストンってのもあります。
スタンスの配置によっては、バック&フットに近い感覚で肩や腰などが決まって安定することも多いです。そして、その状態は素晴らしいレスト態勢になることも。
<興奮気味>

「こんだけ色々選択肢があったり、人によって手のサイズも違ったりすれば、人によって本当にムーヴはバラバラになるでしょうね!」
と感動しておりました。

「でも、自由ってチョームズイ!」
もう、頭はパニック気味です。
<ステミング>

図らずも、2日間連続で似たような感想が出たことが、私にとっては印象的でした。
プロテクションにせよ、ムーヴにせよ、自由度があるからこそ戦略という言葉を使うんでしょう。

こんなクライミングは、私は好きですねー。
<左右のオフセットを利用して、バック&フットっぽいムーヴで安定させる>

ところで・・・。

残置トポの効果は大きいようで、再掃除を含む紹介9ルートのうち半分くらいは、今日も多くの人に登られていてビックリしました。
なんと、鹿の湯も登られていました。
阿羅漢を登っている人も、久々に見ました(笑)。

ちなみに、利用頻度は大和屋がNO.1、評価が高いのは草餅みたいです。
こんなに褒めてもらえるなら、“すあま”にすべきだったか!?

2018年5月21日月曜日

イエローフェスティバル

ここ2週間で、自分のクライミングはジム含めて、ほぼ全くしておりません。
備中の疲労がすごすぎて、指が激しく腫れてしまったことによります。
<イエローフェスティバルを登る私>

ただ、せっかく外に行けるチャンスもあるので、合計3日間を湯川の掃除に使ってみました。

1日目:1人
1人で新ラインの掃除。以前に、大雑把にはやってあるので、仕上げ的に。
15mほどのフィンガーのうち、上半部は完成。
<フィンガーです>

2日目:1人
そのラインの続き。下半部を終えて、一応は登れる状態。
<阿羅漢>

3日目(5月17日、木曜日):with KSさん
そのルートを、朝イチでリードして完登。
1トライ目だけど、主要なホールドや、上部のクラックのサイズ感は知った状態でのトライなので、R.P.なんでしょう。
最終掃除日から、一度も雨が降っていなかったので、まだ掃除跡の砂が酷かったです。
イエローフェスティバル(5.10c)とします。
一雨降れば、そこそこ快適になることでしょう。
場所は、黄昏の舞姫のすぐ右横です。

午後は、前々から気になっていた阿羅漢(5.10d)の終了点付近の再掃除。
何年か前に登って、「もうちょっと、こうなれば人気ルートになりそうなのに・・・。」と思っていた記憶があったので。
<阿羅漢の上部>

とりあえず、これで一段落です。
掃除も、一気にやっちゃうと毎回の準備は楽です。が、さすがにクライミングしなさ過ぎに陥るので善し悪しですねー。

まぁ、気になるラインは色々あるので、そのうち機会があれば。
<新ラインを掃除するKSさん>

<リニューアル、阿羅漢>