2022年8月30日火曜日

岩場が苦手を克服したい人のジレンマ

10月分の予約受付は、8月31日の夜21時スタートです。

8月15日(月)は、林智加子ガイドとのコラボ企画にて、岩場基礎トレ。
小川山にて。
登山道で岩場が苦手、という方は多いです。
でも、槍穂や剱岳など、有名な岩山への憧れはあるという方。

そんな方に、「クライミングをやった方が良いですよ。」と、僕も含めて多くの人がオススメすると思います。

ただ、これには多くのジレンマがあり、実践できる人が少ないのも周知の事実です。
①クライミングを楽しいと思うかどうかは、人による。
(義務感で練習することは、上達が非常に遅くなる上に、言い訳がましくなり、続かない。一方で、あるとき突然or時間をかけて徐々に好きになる人もいる。)

②ジムでのクライミングと、登山道における岩場とで、大きな隔たりを感じてしまい、役立っているのか分からないという迷路に入る。
僕の立場で考えると、①はコントロールできないと諦めています。
どんなに工夫を凝らしても、いわゆる「クライミングにハマった」人の熱量には、かないません。

ただ、講習生として参加していただいているときは、
「その場は、楽しんでもらう。」
「嫌いになる可能性がありそうなことは、なるべく段階を踏んで徐々に慣れてもらう。」
くらいは心がけます。
②については、結構議論があると思います。
こういったモチベーションの方が、ジムに行って感じるであろうギャップを列挙してみると。

登山靴 ↔︎ クライミングシューズ
岩場 ↔︎ ジム
ロープクライミングの方がそれっぽい? ↔︎ ボルダリングジムは近所にもある
80度以下の緩傾斜 ↔︎ ジムは垂壁以上がメイン
歩きの延長のような動作 ↔︎ 飛びつき系の動き

それぞれに一理あるものの、一番本質的だと思うのは、以下だと思っています。

A:登山道の岩場は、怖いながらも初心者でも通過はしている。ただ、本人なりに「自分は危なっかしい。落ちたら死ぬ。」というのを感じており、これを「あとはメンタルを強く持って、押し切ろう!」とは思えない。

⇨これを改善したい。
⇨すでに登れるぐらいのルートを、よりバランス良く、確実性を持って登る練習をすべき

B:スポーツとしてのクライミングは、落ちても99%以上は安全な環境で、登れるか登れないかの瀬戸際のルートをトライする。だからこそ、完登を目指すことにゲーム性がある。

⇨一撃できるかギリギリのルートor何回も練習したら登れそうなルート、のどちらかを攻略対象にする。
⇨まぐれだとしても、完登できたら終了。次のルートへ。
Aの練習は、初心者が自力で行うことは非常に難しいです。
今回の講習のような形でないと厳しいでしょう。

Bの練習は、ボルダリングジムに行って、「できない課題について、スタッフにアドバイスを求める」といったことから簡単に始めることができます。
そして、クライミングを趣味として長年楽しんできた人は、岩場に行くと
「クライミング、めっちゃ役立っている。」
「よく考えたら超簡単なフリーソロじゃん。登山者全員がクライミングをやるべきだ。」
と痛感したりします。
つまり、Bの練習も、突き詰めるとAの役にも立っています。
色々と分析してみても、クライミングが好きになりきれない人の悩みには何も答えられません。

また、クライミングが好きになった方にも、練習方法の悩みは続きます。
① Bをひたすら頑張る
② Aを学びに講習会に参加する
③ BをやりつつAを模索する

あるいは、②と③を併用するという練習方法も有り得ます。
この話って、岩場でのクライミング(リード、ボルダー、マルチ、なんでも)において、

A:今の自分が本当に身に付けるべき技術やフィジカルは何か?(安全面、効率面、より難しいルートを登るための何か)
B:目の前の課題を攻略することによって、得られるものは何か?
C:目の前の課題を攻略するための方法は?

という構図に似ています。

AとBは、雑談レベルでボンヤリ考えるだけで、基本的にはCだけを真剣に考える(人によっては尋ねて回る)という方も、多いでしょう。

「これが上手ければ、今ごろは私も1桁ぐらいは難しいのを登っていただろうし、連れられクライマー(orトップローパー的な弱さ)に甘んじることも無かった。」
と感じる方も多いと思います。

何一つ答えが提示できないのは、残念です。
ただ、初心者のジレンマに付き合うことが多いため、色々考えているうちに少しずつ思慮深い回答ができるようになった、という自分なりの進歩は感じるので、良いことにしましょう。