2022年2月9日水曜日

ボルトルートの本気トライ&敗退戦略

12月31日(金)は、雪上訓練Lv.1-Aにて、谷川岳指導センター裏あたり。男性TGさん、女性YDさん。
1月1日(土)は、雪上訓練Lv.1-Bにて、大峰沼〜大峰山。男性TGさん。
1月2日(日)は、雪上訓練Lv.2にて、ノルン水上スキー場〜大峰山、吾妻耶山。男性TGさん、男性HDさん、男性KBさん。
1月4日(火)は、岩場リード講習にて、男性HDさん、男性YMさん、女性YZさん、男性NNさん。今回で、YZさんは岩場リードを卒業といたしました。
1月6日(木)は、ムーヴLv.1にて、男性TGさん、男性MBさん。
1月7日(金)は、リード3回目にて、男性NOさん、女性AMさん、男性KTさん、女性MDさん。今回で、NOさんとAMさんはジムリードを卒業といたしました。
1月9日(土)は、アドバンスクラック講習にて、NSさん夫妻、女性HSさん、女性ISさん。

この期間、ラッセルを要する雪山での講習もしました。部分的に、登山道の無いラインを地形図を読みつつ登ってもらうこともしました。
いつものように、ボルトルートの岩場での講習もしました。
城ヶ崎では、懸垂下降してアプローチするクラックエリアにも行きました。終了点含めて、残置物はありません。
これらは、私の中では全て繋がっています。

さて、どんなエリアであれ、自立して登れるようになって欲しいと思う訳です。
今回は、ボルトルートを例にとって、私が考える普通(※)の取り組み方を考えてみます。

※トップロープリハーサル、自分より強い人に回収してもらうことを前提、チョンボ棒による回収といった行為を、原則禁止した範囲での取り組み。
(自分で十分に回収できる状況で、強い人が好意で回収してくれるならば、問題はない。)

それの背後にある精神性、細かいリスク管理、ムーヴの安定性を上げる練習方法などが、本来は最も大切です。
ただ、敢えてハウツーだけを述べます。

今回は、本気トライ(自分が落ちる可能性が十分あるルートのトライ)にフォーカスします。

①まずは、オンサイトトライ(フラッシュトライ)しよう
ポイント
●他の人のトライを見てからトライしたがる傾向は捨てたい。そこにも、岩への恐怖心から来る依存癖が潜んでいる可能性が高い。
ただし、パートナーをビレイするとオンサイト権が無くなり、フラッシュになることも多いが、それは仕方ない。

●マスターを嫌がる傾向も捨てたい。そこにも、依存癖が潜んでいる可能性が高い。ただ、ヌンチャクが掛かっていれば使う。

●トップロープでの練習後のリード(チョンボ棒も同様)は、慎みたい。(仮に、隣のルートから自力で、チョンボ棒も使わずにトップロープが掛けられるとしても、様々な上達習慣の向上という意味合いから避けたい。端的に言えば、精神性、リード中のリスク管理、ムーヴの安定性などについて思考停止に陥りやすい。)

●敗退を恐れすぎない。落ちてはいけないセクションで、安定したムーヴで行きつ戻りつできないならば、1つ下のボルトまで戻って敗退すれば良い。しつこく再トライしても良いし、封印しても良い。この場面で、安易なトップロープに流れないように注意したい。

②登れなかった場合
ポイント
●まずは、ハングドッグによるムーヴ解決。
初心者の場合は、とりあえずトップアウトしてヌンチャクを回収したい気持ちに駆られるが、できれば冷静に「良いムーヴによる解決」を探りたい。
また、ヌンチャクを掴む(いわゆるA0)などで、ワンポイントだけの核心を割愛することで、トップアウトできることもある。
(心情的には嫌なものだが、チョンボ棒、自分より強い人頼みのような、全パターンをそれで解決できてしまう“悪魔の誘い”感は無いため、ギリギリセーフとする。)

注:「ハングドッグはなるべく嫌だ」という考えの場合、下に進む。

●ハングドッグで抜けられない場合、再トライする予定ならばヌンチャク残置をしてロワーダウンしても良い。
(マスターを嫌がる傾向は、他人への依存癖や「ヌンチャクが掛かっていれば・・・」という言い訳癖を生むように思えるため、推奨しない。ただ、ヌンチャクが掛かっていること嫌がるほどの拘り派は、クライミング業界には稀少レベルに思える。つまり、ヌンチャクが掛かっていれば普通に使うけど、目的なルートに掛かっていないからと言って、「今日はやらない。」とかの判断にはならないぐらいが、普通のリードクライマーではないか。、ヌンチャクを掛けながら登ることが好きだという人自体は、知り合いにも時々いるが。)
 
●ハングドッグで抜けられず、かつ再トライしない場合、敗退方法を検討する。
A:最終ボルトに残置ビナ1枚を捨て、ヌンチャクを全て回収する。(ケミカルの場合、懸垂下降などでビナを残さない方法もある。)
B:クライムダウン回収(ボルトが近く、難しいセクションが連続していた場合は、飛び降り回収も可能。)
C:ルートが近い、終了点が共有などの理由から、隣のルートからヌンチャクを回収できることもある。
D:終了点に歩いて行ける場合など、裏から回り込んで懸垂回収ができることもある。

こういった行動が普通にできれば、自分に適正グレード(※)のルートならばトライできます。
※オンサイト率8割〜オンサイトはほぼ無理だけどハングドッグすればムーヴはできそう。ぐらいの間を、自分にとっての本気トライグレードと考えます。岩質、ボルト間隔、得意系苦手系、などによって大幅にグレードは異なるため、5.10b〜5.13aまで全て本気トライになり得る人もいます。

この考え方には、自立という当塾コンセプトに加えて、なるべくグラウンドアップ(下から攻める。この場合は、上から下見、ムーヴ探りの排除の意味。)でというコンセプトが入っています。
すでに岩場に通っていて、こういったリードの流れが厳しいと感じる方は、何が苦手で自立やグラウンドアップができないのかを真剣に考えてみて欲しいと思います。

●ボルトにクリップされた安全圏で、落ちることが苦手なのか?
●落ちてはいけないセクションを、安定して登ることが苦手なのか?
●上述のような戦略を、冷静に考えるのが苦手なのか?

これを一つ一つ埋めていく作業を、講習でも行いたいと考えています。
そもそも、こんなに細かく考えるのが苦手という方も、是非とも講習に来て欲しいです。
岩場でのムーヴから様々な戦略に至るまで、ゆっくり1つずつ実感できるように、考えて行きたいと思っています。