2022年9月12日月曜日

「頭が良いのに、なぜ考えないんだろう?」

ジムリードの下部(例えば、1本目と2本目の間)で、フォールして怪我を負ったとします。
事故原因を知りたいなら、下記のことを質問すると思います。

・2本目のクリップのタイミングが遅すぎたのか?
   →ビレイヤーがどう頑張ってもグランドする状況だったのか?

・1本目の後に大きくトラバースする設定だったので、ロープに安全確保されるということ自体が無理筋だったのか?
   →同上
  ※落ちてはいけないルートorボルダーとして着地するべきルートor1本目をあえてトラバース進行方向側にクリップすべきルート、などの可能性考慮

・2本目に対して手繰り落ちだったのか?
   →同上

・本来的には安全圏でのフォールだったけれど、ビレイヤーがロープを弛ませていたり、何らかの問題があったのか?

・そもそも、上述の状況を理解せずにトライしていたのか?
   →現状のリスク把握が足りていたか?

・その他、ミスを誘発する複合要因はあったのか?

同じ事故があったとしても、
「下部で落ちるのは危ないよねー。」
で会話を終える人もいます。

私が疑問なのは、
「とは言え、下部が難しいルートは世の中に無数に存在するので、ムーヴ選択・着地姿勢・ビレイ技術などを磨くしかないんじゃないか?」
ということです。
岩場だと、1本目直後に核心というルートも数多くあります。

また、そういった発言をしている人も、一定期間クライミングをしているなら、その事実を知らないとは思えません。
つまり、自己矛盾に気付いていない状態です。

では、なぜ自己矛盾に気づかないのでしょうか?
興味深いことに、いわゆる頭の良い人にも起こるようです。
(大学教授、医者、コンサル、ITエンジニア、などなど。私のイメージでは、相当頭の良い方々。実際、そういう方はビレイ技術や墜落距離の予測などの理解が早い傾向にあるため、講習していてイメージが強化される部分も大きい。)

経験上の回答は、以下になると思います。

①興味がない。
  →本人の興味は、〇〇ルートの完登、グレード、岩場の状態、誰が何を登ったか、核心のムーヴ、など。

②下部が難しいルートは、色々めんどくさいので、避ければ良いと思っている。
  →どうしてもやる場合は、2本目にプリクリップして、トップロープ状態でのリハーサルでムーヴを固める派。
  ※オンサイトトライにおけるリスク管理、グラウンドアップの放棄をすれば、大体事故は無いでしょう、という考え方

人間は見たいものしか見ないので、特定分野以外は分析力が働かないのでしょうね。
クライミングのスポーツ的な側面で言えば、「フィジカル不足」を毎日のように口にしながら、トレーニング方法を分析しない人と、同じ構図でしょうか。