2024年3月14日木曜日

デッドポイントの仕組み

デッドポイントの仕組みについて、自分なりの理解を書きます。
99%自己満足の文章です。

もともと出来ている人は、復習ぐらいには使えるんじゃないかと思います。

常々、この仕組みについて講習したいとは思っているのですが、岩場リード講習卒業以上ぐらいのレベル感の講習生でも、たぶんムーヴ講習を全10回ぐらいは掛かると思うので、なかなか実現しづらいですね。
他にも、フォームやらスタティックやら、講習すべきことは山ほどありますから、これだけ徹底的に行うのも非現実的ですし。

何人かの講習生には、触り程度は講習しているので、是非とも続けていただければと思います。


A:分類
①回転制御系
右手を離すと扉が回転する仕組みのときに、どうやって右手を離すか?というタイプ。
意図的に扉を揺らすことで、右手が無荷重になるタイミングを作る。このタイミングで、右手を出すことを基本とする。

広い意味では、コンプレッションで片手を離すときに、両手の力の釣り合いが崩れるためにスタティック不可能というパターンも含める。
正確には、後者は回転(モーメント)制御というよりも、「力の釣り合い」が無い状態の制御にあたる。
そういう意味では、物理的静止不可能系とでも言った方が正確。

ちなみに、物理的に静止不可能な状態で、かつタメも全く作れず、片手を離した瞬間に身体が振られる中で、その手でターゲットホールドを捉えて振られに耐える、というムーヴもある。
原理としては、タメを作るコツが分からない初級者のデッドポイントと同じになってしまうのだが、これが止むを得ないケースも、時々出てくる。

②強度補完系
物理的にはスタティックに手を出せるバランスだが、筋力不足などの影響で、スタティックが不可能(or非常に疲れてしまう)場合に行うタイプ。
初級者が「どっかぶりガバガバルート」で、「全てのムーヴがダイナミックで無いと手が出せない」という状態が典型。

一方で、片腕懸垂や片腕ロックができない私がキャンパムーヴを行う、完全保持ができないホールドで片手になれないためにスタティックを諦める(片手デッドポイントの練習と似た動き)など、ある程度のレベル感になっても(たぶん一生)、このムーヴから逃れることはできない。
ただ、経験上は故障と紙一重なムーヴであり、少しずつ減らしていく努力が必要。

B:様々なコツ
①腕の曲げ伸ばしだけで反動を作り出すことは難しいため、体幹部を効率的に揺らすことが原則。

足の移動時に使う「壁から身体を離す姿勢」と、手を出すときに使う「腰を入れた姿勢」を切り替えを主たる動力にすると、前後方向のスピード(本当に欲しいのは、発射時の慣性力)が付きやすく、発射の瞬間に足に力も込めやすくなるため、推進力が得やすい。また、この動きだとタメの際に体幹部の筋肉を軽く脱力することが行いやすいため、止める瞬間に体幹部に力を込めやすい。また、止める瞬間に腰も入り、胸も張り、背筋も伸びるため、あらゆる意味で良い。

ただ、実際問題として、ムーヴによって上記の手法が使えないことも多く、限られた部位だけでタメと発射の振り子軌道を作ることも多い。
胸の張りだけで軌道を作るイメージ、骨盤だけで、場合によっては腕だけで、サイファーの要領でフラッギングしている脚も連動させて、最終手段は首で、といったケースも起こりうる。ホールドやスタンスが悪くなったり、配置が悪くなると、タメを大きくすると手足がすっぽ抜けてしまうため、どんどんと状況は厳しくなる。その中でも、体幹部を一時的に脱力してタメる、ということが一つのポイントになる。

②前後軌道が重要なのは、何も考えずに手を出すと後ろ方向に飛んでしまうから。
そのため、横方向に出るデッドだとしても、斜め後方にタメを作る。真横にタメを作ると、ターゲットのホールドに届く頃には身体が相当後ろに流れてしまう。
この理屈は、ランジ(特にダブルダイノ)や横に歩くコーディネーションでも、顕著に感じられる。

③保持手は、発射のしやすいホールディングよりも、最終的に止めやすいホールディングを選択することが多い。ラップよりも普通のガバ持ち、オープンよりもピンチ気味、など。
取り手は、オープン気味にしておくことが多い。カチ持ちだと、タイミングよくホールドを離すことが難しい。

④発射前にスイングする回数は、小さいスイングで軌道を確かめるぐらいなら数回降っても良いが、大きめにタメるのは原則1回に限る。2回以上振ると疲れてしまうし、完璧なタメ軌道を作りに行くことよりも、発射するまでの最後の進行方向での軌道の中で、姿勢の微調整を行った方が良い。特に、スタティック主体のクライミングスタイルの我々は、恐怖心もあって完璧なタメ軌道を無限回数でも求めてしまう傾向にあるので注意。

⑤腕は軽く曲げておく。肩は下げておく。足は棒立ちを避けて、軽く曲げておく。全ては、スイング中の器用さを最大化すること、止める瞬間にフルパワーを出しやすくすること、に繋がる。

C:最後に
取れなかった場合のフォール姿勢のイメージ、リードであれば墜落距離の計算やロープと足との絡み解除、などは、スイング前(ジムのようにムーヴが見えるならばオブザベ中)のイメージ作りに含まれる。これが不安だと、結局は出られなかったり、出ても落ちることばかりイメージした発射になってしまう。