2020年2月14日金曜日

健全な判断力は、健全なレストに宿る

2月9日(日)は、クラックリード講習にて、城ケ崎。
男性NMさん。
「安定したレストは、焦りの少ない正常な判断力を担保する。」
という点が、私は大事だと思います。

特に、クラックやマルチなど、安全管理要素が強くなるほど大事な印象です。
とはいえ、ジムでも焦って登る人ほど・・・、と結局は同じかもしれません。
次に、
「安定したレストは、焦りの少ない正常な判断を担保する。」
という点に着目して、持久力を評価してみます。

最上の大レストとして、
“レストポイントに戻れば、何度でも全回復に近い状態になれる。“
と置きます。

「ノーハンドで立てるテラスじゃなきゃ無理。」
と感じる初心者も居ます。

「垂壁で、マッチできるガバ、足もフラットで奥行き5cmもあれば。」
と感じるぐらいになれば、垂壁の易しいルートは相当落ち着いて登れるでしょう。

一方で、トップクライマーのオンサイトトライで、ルーフのような形状でも、ホールドを探ってはレストポイントに何度も戻るシーンを見たこともあります。
さすがに全回復かは分かりませんが、相当程度の回復が見込めているから戻るんでしょう。
<岩場でお会いした>

続けて、次善の大レストとして、
“レストポイントで、悠然と左右交互にシェイクやチョークアップを繰り返せる。時間的制約は、それほど無い。しかし、数手進んでから戻ってきた場合は、完全回復は難しい。”
とします。

戦略的には、
「行きつ戻りつには向かない(orせいぜい1回や2回)だけれど、ムーヴを完全に固めたレッドポイントトライにおいては、十分なレストポイントになり得る。」
というイメージです。
<彼こそは>

そして、最下位の大レストとして、
”両手交互にシェイクは出来るけれど、時間的制約が大きい。”
とします。

これは、手はガバだけど足が悪い場合など、数回だけのシェイクで出発する感覚です。
最後に、この観点で自己評価してみます。

イメージしやすくするために、条件を整えます。
・ジムの大ガバで、持ち替えが容易なハンドホールド。
・スタンスは、奥行き5cmのフラットホールド。
・ステミング、ヒールフックなどで傾斜を殺す技は、使わないこととする。

70°以下(ノーハンドレスト可能)、80°、90°(垂壁)、100°、110°、120°、130°、と10°毎に評価。

例えば、Aさんは
・90°では、最上のレスト(戻り可能)が出来る。
・100°では、次善のレスト(悠然だが、戻り不向き)なら出来る。
・110°では、最下位のレスト(時間制約)のみ可能。
という感じです。

安全管理について、私の個人的見解。
・90°(垂壁)では、初級者でも正常な判断を下しながら登れる可能性が高まります。
・110°では、少なくとも初級者には無理でしょう。オンサイトならオブザベで読み切る能力、レッドポイントでもムーヴを固める能力、安全なトライをする上での必須条件だと思います。
ちなみに、ジムでのリード成果予測にも応用できます。

Aさんの場合。
・90°(垂壁)なら、オンサイト成功率が高め。本人にとって易しいグレードを、取りこぼすことが少ない。レッドポイントも、結構いける。
・100°では、オンサイト成功率はオブザベ能力と運頼み(戻れないから)。レッドポイントは十分に楽しめて、最高レッドポイントグレードはこの傾斜で出すこともある。
・110°では、オンサイトは相当単調なルートだけしか出来ない。レッドポイントでも、少し厳しいムーヴが出てくると、繋げられないことが多くなる。
・120°以上では、ほぼ全ガバのルートしか登れない。

私自身で言えば、「120°になると、ほぼレッドポイントしか出来ない。130°以上は、ほぼ全ガバのルートしか登れない。」印象です
終わりに。
持久力にも、色々な要素があって、それに対応したトレーニングもあります。

今回挙げた持久力は、突き詰めると
「傾斜壁でも、ガバで大レスト出来ますか?」
という問いになります。

これを鍛えるという意味だと、実は最大筋力が大事なんじゃないかと思います。
「最大筋力の何%以上だと、毛細血管が収縮してしまって、徐々に酸素不足に陥る。」という話に戻ります。

強傾斜で十分なレストが出来ないのは、最大筋力が足りないという可能性があります。
「あれ?持久力の話じゃなかったの?」
という突っ込みがありそうですが、今回はスルーします。
<本日は、落ちる練習、懸垂回収、エイド、などの安全管理メイン>

今回は、「レストしたくても出来ない。」というフィジカル限界値のイメージで書きましたが、多くの講習生はそれ以前の問題であると感じています。
ガバを持ったら、すぐに足を上げてしまって、レストポイントを通過してしまうなど。
この場合は、最大筋力よりもテクニック習得に重きを置いて欲しいところです。

実際の岩場だと、ステミングやワイドムーヴで傾斜を殺してレスト出来る場面も多いので、フィジカルよりもテクニックが勝ることも結構あります。(ジムでも、ヒールフックやニーロックで大レストできる場合が結構あります。)
ですから、「自分が対応できていない」傾斜でも、何とか登れることも多々あります。

そんな感じで、実際には他の要素も盛りだくさんで、むしろ講習中そちらをメインにアドバイスすることになります。
参考程度に。
<鬼ころし(5.7)をR.P.>

<懸垂回収>