前回の続きです。
今回は、過去最高にマニアな内容なので、興味のある人だけでどうぞ。
最近、お客様のブログを読んだりしていると、持久力で悩んだりしている人がチラホラ。
先の文章3つ目の「パンプした状態でムーブを起こすことへの体の慣れ」について、補足します。
この能力の差がハッキリ出る場面を、2つ挙げます。
① ジムのボルダリングで、5級をトライするくらいの人の場合
5級のトライでヨレヨレになり、「終わった」と感じてから6~7級でトレーニングして帰る。
このときに、自分は5本と持たないのに、一緒に登っていたはずの友人が、「無限のパワーか?」と思うくらい量を登っている。
② ジムのルートで、5.10dをトライするくらいの人の場合
「本気トライは無理だ」ってくらい疲れてから、5.10aを10回登れる人もいれば、2回くらいが限界で帰る人もいる。
この能力の差は、先の文章1つ目の筋力的なものだけではありません。
クライミングのムーブは、頭で分かっているだけでなく、「こなれる」ということが大事です。
瞬発系でも、限界に近いムーブは「こなれ」ないと出来ません。
また、持久力系のルートを登るなら「こなれた」ムーブの連続で、無意識の自然な省エネで登りたいところです。
しかも、この「こなれる」という作業は、ムーブ1つを覚えるのに比べて、無限に長い道のりです。
まず、同じハイステップというムーブ1つとっても、ホールドの形や悪さ、スタンスの配置、傾斜の違いだけで微妙に違い、最初は体がブレます。
で、練習すると、このブレが無くなって来る訳です。
しかし、この「こなれた」動きも、実はストレスが掛かると簡単に狂います。
寒さ、緊張などは、ストレスの代表選手です。
そして、クライミングの場合は、パンプがストレスの代表選手だそうです。
初心者のころ、パンプしてクリップに猛烈に苦労したことを思い出してください。
地面や5.8では、あんなに「こなれて」いたハズなのに!
つまり、まずは多少「こなれた」動きを、パンプした状態で出せるようにストレス耐性を付ける練習をするという流れです。
もし、これをサボると・・・
「パンプしてくる」~「そこから先のムーブがブレて、ますます疲れやすくなる」~「さらにパンプ」~「ムーブがブレているので、核心はこなせずに落ちる」
という悪循環になります。
というわけで、「こなれる」ことが一応終わっているはずの、限界より下のグレードで「ムーブのストレス耐性」を付けるべく登りまくれば良い、という理論です。
さらにマニアックな補足。
・この能力は、ムーブ「こなれ」度みたいなものなので、ルートのオンサイト能力に直結する。
・理想的には、「疲れながらも、なるべくブレないように」とか意識して頑張るのが良い。
・5.10前半の人や、ボルダー能力の割にルートが“極度に”苦手な人などは、そもそもキレイに登ることが、実感できない人が多い。
そういう場合は、疲れた状態で「こなれる」ことが、逆に悪い癖を定着させる可能性もある。
そんな方には、「1日の最初に元気な状態で、省エネのテクニック練習が最優先」という意見もある。
・持久力はあるのに、瞬発力は無い人もいる。こういう人は、逆に、普通のボルダーを頑張ると良い。
例えば、6~7級は30本以上も登れるのに、5級は1本もムリ。
最後に
あくまで個人的な印象ですが、持久力は練習量が報われます。
ボルダーなどで、ムーブのコツや瞬発力は、才能のある人がビックリするような速度で伸びて、悲しくなる日もあります。
「才能7割か?」なんて思う日もありますが、持久力は「練習量7割」と感じます。
あなたも伸びる!
この手の話に興味津々な方は
『パフォーマンスロッククライミング』という本を読むと良いと思います。
「クライミング中級者向け」と銘打っただけあって、読み応えがあります。
理論が苦手な方も、かるーく意識する程度でO.K.です。
結局やることは、「パンプした状態で、頑張れば登れるくらいのルートを登る」ということだけですから。