2020年10月7日水曜日

安定とは何か、岩場での具体例を交えて考えてみる

9月8日(火)は、ムーヴLv.0にて、男性YKさん。
9月10日(木)は、ムーヴLv.1にて、男性KKさん。
9月12日(土)は、雨中止にてムーヴ講習で、NSさん夫妻。
9月15日(火)は、ムーヴLv.0にて、男性YKさん、新規女性OMさん、新規男性ONさん、新規男性KJさん。
初心者(例えば、5.10aがギリギリ登れる、6級で登れるものが一部ある、など)は、ジムの入門ルート(5.8とか8級)のガバガバを登っているときに、相当なバタバタ登りであっても「安定しています。」と言います。

この場合の安定は、
「ガバを持っているから、落ちそうもありません。」
という意味です。

実際、初心者の筋力(人によって大きく異なる)でも、大きなモーメントを食らったり、足ブラにならない限り、なかなか落ちないのでしょう。
一方で、リードするようになった人や、登山をイメージしている人、ボルダラーでも一定レベル以上の人は、「安定」という言葉に対する意識が違います。

・足置きやホールディングが落ち着いて出来るぐらいの余裕がある
・完全なスタティック、もしくはフワッとしたデッドポイントなどだけで構成されており、ムーヴの完成度が高い
(この基準だと、完全な安定というのを手に入れる日は訪れず、常に目指すべき目標となる)

もちろん、岩場で登るなら、これを目指した方が良いと思います。
しかしながら、安定を意識していても、「グラッ」とバランスを崩しかけたとき、手がガバであることは重大なバックアップになります(笑)。

例えば、クリップ中とか、岩場で際どいランナウトを強いられるときなど、そのバックアップの効果は馬鹿にできません。
しかし、ビレイヤー目線だと、クリップ中とかランナウト中にバランスがグラついているのは、本気で肝を冷やすこともあります。
その後で、クライマーから「全然平気だよ。」などと言われると、リスク感覚の相違からパートナー解散がチラつきます。
(せめて、「ビレイヤー怖がらせちゃってゴメンね。ただ、ガバだったから落ちる気はしなかったんだよ。」ぐらいは言って欲しい。)
さて、突然ですが実践編。
今回の講習生の方は、分かりにくいので読み飛ばしてください。

先日岩場でこんなことがありました。

チムニー(5.6ぐらい)を登っているクライマーがいます。プロテクションは取れず、フリーソロ状態(下部は階段上なので、本格的なチムニーは上部の実質2mぐらい)です。
バック&フットだけでも何とか止まれそうな形状ですが、随所にカチがあり、スタンスやプッシュに使えます。

このとき、クライマーが足をスタンスから滑らせました!
が、バック&フットで止まっていました。
(本人的には、絶対そうなるほどの自信はなかったようですが、「あ、やっぱり。」ぐらいの心持ちで、割と落ち着いていました。クライミング続行するつもりだったようです。)

その際、下で見ている仲間の方が心配して、「危ないから、もう降りた方が良いよ。」という指示を飛ばし、クライムダウンしてもらいました。
(その人としては、クライマーが焦り始めたように見えたそうです。)

こういうこと、ありますよねー。
「クライマーが一番自分のことを分かっている」というのは大半は正しいことでしょうが、ときどき下からの方がよく見える部分もあり、ビレイヤーがクライミングを中断させることを完全否定もしにくいです。

さて、これといった回答はありません。

・バックアップのガバ(このケースでは、バック&フット)をどうみなすか?
・2人の意識のズレをどう考えるか?(その場での判断と、降りてからの話し合いも)
といったことに、ある程度の共通認識があると、今後に繋がりそうですね。

マルチとか登山の話し合いみたいな1コマでしたが、色々な要素が詰まっていて、なかなか奥深いです。