2019年12月27日金曜日

トップロープ回収におけるヒヤリハットを考える

12月24日(火)は、岩場リード講習にて、湯河原。
女性YIさん、男性HGさん。

今回にて、YIさんは岩場リードは卒業といたしました。復習受講であれ、クラックリードであれ、今後もよろしくお願いします。
ここ5年くらいの、割と身近な例だけでも、トップロープ回収の事故は数件あります。
知らないもの、死亡に至らなかったものを含めたら、倍以上はありそうです。
ヒヤリハットを考えると、どれだけあるか不明です。

で、今回の講習生から、
「(自分がリードしたルートをトップロープでやりたい)パートナーに支点回収させるにあたって、最終ボルトにビレイヤー側のロープをクリップしておくのはアリですか?」
という質問がありました。
トップロープ回収時の失敗を、2つに分類します。

①エイトノットが、ハーネスに接続されていない。(湯河原の事故は、環付きビナがハーネスに接続されていない。)
②エイトノットは接続されているが、ロープがラッペルリング(or残置ビナ)を通っていない。

提案の方法だと、②に対してはリスク軽減になります。いわゆる、トップロープ回収の結び替えよりも、リードの結び替えの方がリスクが低くなるケース。
一方で、①のケースには、意味がありません。
また、この方法はビレイヤー側のロープが、クライマーの登るラインに干渉することになります。不快なのもありますが、ムーヴ練習がしにくい可能性があります。
(典型的には、クラックでジャミング不可能になりそう。)

それでも、この方法を採用するというなら、それはそれで1つの判断かもしれません。
ここから、話をリードの結び替えも含めた終了点作業全般に広げます。
自分の経験上、ヒヤリハットになった状況を考えてみます。

①テンションチェック(テンションの移行)をしてからセルフビレイを外す、という習慣が無い人は、見ていて不安になる。

②テンションチェックをしたら、セルフに干渉してしまって、「1回ゆるめてー。」のコールをすることがある。このとき、もしもロープをセルフビレイのカラビナに通してしまっていたら、セルフビレイを外したときに、無確保になりそうで不安になる。

③足場の良いテラスだと、ついついセルフビレイからテンションを抜いてしまうので、作業に夢中になってセルフビレイを外してしまうという不安がある。(トップロープ回収ではないが、これで事故を起こした知り合いも居る。)

④手順が固定化されているがゆえに、全く恐怖心を感じずに作業を終えてしまうことがあり、作業を終えた自分にゾクッとすることがある。

⑤ゼエハアしながら終了点に着いて、そのまま手元がブレながら作業を始めてしまって、反省したことが何度もある。同じことをしている講習生を見て、注意したことも何度もある。

この中で、
・テンションチェックを義務化
・足場が良くてもセルフビレイになるべくテンションを掛けること
の2点だけはルール化できます。

他のことはルーティンとして、対策を打つことが難しいと感じています。
意識すればゼロに近づけるリスクと、意識しても相当なリスクが残る部分がある、という話かと思います。
<本気トライは、アボリジニ(5.10a)。1箇所、A0で
ムーヴ割愛して、トップアウト。>

最後に、“トップロープでやりたがる人“に回収作業を任せることがリスクだ、と感じた方もいるでしょう。

例Ⅰ)初級岩場で見かける男女ペアで、女性の回収作業をイライラしながら指示している男性の図は、見飽きるほどの光景です。“連れられ”の人が、マリオネット状態にされているのは、見ていて不安です。

例Ⅱ)トップロープ専門に近いガイド講習会。
a)ガイドorアシスタントが必ず回収する
b)ガイドが、「この人なら」と思った人に限って回収作業を任せる
c)ガイドから作業している様子が見える終了点に限って、回収作業を任せる
これを、ガイドが判断しているはずです。

常にa)なら安心ですが、小雨が降って来た、暗くなりそう、バスの時間が気になる、他のクライマーが待っている、といった状況もあります。
リスク管理を考えられそうな常連さんに最後に登ってもらば時間短縮になる、などの判断も十分考えられます。
(それは絶対に嫌だ、というガイドも居るでしょう。)

リスク管理を学ぶ姿勢として、下記のイメージがあります。
ガイドのお客さん < 連れられ気味の人 < 一般のリードクライマー

(ガイドのお客さんでも、5.11を登る人はおります。連れられ気味でも、下駄をはかせてもらって5.12を登る人もいます。一般のリードクライマーでも、5.10aがギリギリの人も居ます。リスク管理に向き合う姿勢と、グレードは、逆転が起こり得ます。「あの人は、イレブン登るベテランさんだから。」という言動に注意。)

さて、毎度結論の無い話にお付き合いいただき、ありがとうございます。
これだけ色々書いておいて、次に事故るのは私かもしれない訳です。
それでも、考えない人よりはリスクは軽減されていると信じて、考え続けるのです(笑)。