2018年6月29日金曜日

暗記便

6月27日(水)は、自分のクライミングにて、瑞牆のカンマンボロン。
K君と。
<宿題のボロンボロンに挑むK君>

岩の殿堂(5.12c)。
2年前の宿題です。

当時、トライした感覚では、自分にとっては一際厳しく、カムの位置やおおよそのムーヴを暗記するぐらいでないとレッドポイントできないという印象。
<岩の殿堂>

天気の関係で、ここに来ると決めたときから、私の心は揺れまくりでした。

PLAN1
1トライ目を、本気トライとして頑張る。フォールしたら、そこからハングドッグ。

PLAN2
ハングドッグ前提で早め早めにテンションを掛けて、疲労せずにムーヴ暗記作業に専念。夕方の最終トライに、勝負を賭ける。
<ボロンボロン>

PLAN1は、普段のオンサイトやフラッシュトライと全く同じ流れなので、自分としては何の後ろめたさもありません。
ただ、2年前の経験から、1トライ目で勝負にならないだろうと知ってしまっているので、あまり気合いが入らなさそうです。
正直、この2年での成長分を考慮しても、岩の殿堂は真っ向勝負できることは無さそうだという冷静な自分・・・。

「対人競技のスポーツ選手とかって、そんなときでも絶対頑張るんだろうなー。」とは、常々思うのですが、そうはなれない私。
PLAN2は、とにかく全く疲れずにムーヴ暗記することが目標です。
そして、夕方の1本だけに全てを賭けると。

で、結局私はPLAN2を選びました(笑)。
<ハング下>

本日登ったルート
・砂の塔(5.12a、ボルト) 岩の殿堂のアプローチに相当する。ヌンチャクがけを兼ねて、ほぼ全てのボルトでテンションを掛けて、ホールドやムーヴ暗記活動。ウォームアップも兼ねる。
ちなみに、過去に何度も再登できているだけに、意図的にテンションを掛ける行為に心がチョットずつ痛む。

・岩の殿堂(5.12c、NP) 
1トライ目(トライとは呼べないが・・・):
砂の塔を、再度に渡り全ボルトテンションで暗記活動。さらに、岩の殿堂部分も、全カムでテンションして、暗記活動。
最大のコツは、「まだ粘って考えられる」と感じていても、さっさとテンションして体力温存すること!(笑)。

2トライ目:
ギリギリR.P.。
(岩の殿堂セクションは、2日間。ただ、砂の塔、Eternal Wishは、それぞれ別の日に登っているので、通算トライ日数はもっと多い。)
<穴レスト>

実際、正々堂々と勝負したところで、結局ムーヴが固まるまで登れないとすると、無駄に便数を重ねるだけになって、何日も通うことになってしまったと予想しています。

ただ実際、暗記便の出発前は、あんまり緊張しないんですよね。テンションで何十回も休憩する予定だし。
<K君も、無事に宿題回収>

とはいえ、1テン地獄になりそうな課題では、この手法が劇的に効果を発揮しますよ。
劇薬として、頭の片隅に置いてはいかがでしょう?

オブザベか、カンニングか?

6月24日(日)は、岩場リード講習にて、小川山。
女性MKさん、男性FMさん。
先日、講習生からオブザベに関して、色々と質問を受けました。

「(オンサイトの)ルール上、これはアリなんでしょうか?」という観点で。
図1は、通常のオブザベ。
図2は、地上の立木に立って、少しでも高さを稼いでオブザベ。
図3は、向かいの高台に上がってオブザベ。
図4は、その高台が実はルートと同じぐらいの高さがある場合。
図5は、5.8のラインをロワーダウンしながら、5.10aのラインをオブザベ。

他にも、「双眼鏡は?」なんていう話も出ました。
先に断っておきますが、正解というのは無いと思います。

その質問者の感覚を尋ねると。
木に登る(図2)は、アリ。
ロワーダウン中に横から見る(図5)は、ダメ。
双眼鏡は、ダメ。

だそうです。
ちなみに、双眼鏡は開拓や辺境のアルパインなどでは、オブザベに重要なアイテムとして、一般的という印象です。

そんな話をしたら、「じゃぁアリかなぁ。」と揺れる質問者(笑)。
その場合、壁の大きさや、距離感も違うので、いわゆるショートルートのオブザベと同じに考えるべきかは難しい問題ですが。
クライミングの技術書によっては、図5のロワーダウン中のオブザベを推奨しているものもあったりします。
図4は、滅多に無いケースかもしれません。
オンサイトとは、下から登ることに重点があるのか。
それとも、一発で登ることに意義があるのか。

なんとなく、その人の感覚が反映されそうですね。

最後に、私個人の感覚。
隣のルートのロワーダウン中はナシ。
それ以外は、アリ。
双眼鏡はナシ。
図4みたいに終了点近くから見えちゃう場合は、自主規制するか悩む。
岩場でのクライミングには、詳しいルールブックが存在しないので、細かいことは自分次第だと思います。

でも、オンサイトの意味とか、楽しさを再考する上では、良い質問だったかなと思いました。
実践本気トライ
MKさん:Song of Pine(5.8) O.S.
     穴があったら出たい(5.10a) R.P.。3トライ。
FMさん:Song of Pine(5.8) フラッシュ

2018年6月28日木曜日

落ちるべきか、落ちざるべきか

6月23日(土)は、雨中止にてロープワーク講習。
NSさん夫妻。
ロープワークとは関係ないのですが、旦那さんがフォールすることに対する問題意識が大きい奥様。

ケース①
「(ジムボルダーで)ムーヴ間違ったり、足の位置が変だったりして落ちる。」

ケース②
「(ジムリードで)周りの人が驚いて、こっちを見るような感じで落ちる。」
(男女における、体重差の問題もある)

ケース③
「(岩場のリードで)落ちる。」
さてさて、どうなんでしょうね。

ちなみに、旦那さまはチョット不用意に見えるムーヴが、奥様に比べると多めでしょう。
奥様は、正反対で落ちても平気そうな場面でも、なかなか思い切りよく手が出せないタイプです。(最近、トップロープ状態よりチョットだけリード気味に進んだ状況でも、落られるようになってきたぐらい?)

今一度、基本を振り返っておきましょう。
・リードにおいて、不意落ちは良くないと思います。(落ちないメリット)
ボルトルートでもクラックでも、ランナウトしていたら危険なこともあります。そういうときの丁寧な登り、危険そうならクライムダウンして策を練り直すのは、大変重要なスキルです。

・安全な環境で、落ちるかもしれないムーヴを試すことが、今日のクライミング技術を生んでいます。(落ちるメリット)
だから、落ちずに上達することも、なかなか難しい。
ケース①~③が、不意落ちなのか、それとも幾つかの方法を考えた上で「ここは落ちても平気だから。」と思って、勝負に出て落ちたムーヴなのかは分かりません。

実際、ここまで真剣に検討している訳ではないかもしれません。
お互いに「落ちることへの抵抗感が、違いすぎ!」と、違和感があるだけかもしれません。

すぐには解決しない問題だと思いますが、何か考えるキッカケになればと思います。

具体的な講習内容
・ロープの畳み方の洗練
・手畳み、コイル巻き、など
・懸垂下降の仮固定
・ロワーダウン中に実際に起こったトラブルへの対処方法を検討する(ロープスタック、など)

2018年6月25日月曜日

ワイドの季節

6月22日(金)は、自分のクライミングにて、瑞牆。
カメチヨ先生と。
<魔天岩の近くの沢。ここは、好きな景色。>

土竜の投稿に対するページビューの数が、普段の3倍以上で驚嘆しています。
300以上です。

どうやら、ワイドクラックの波は本当に来ているようです。
<小春日和(5.10b)をフラッシュトライする、カメチヨ>

思うに、夏はワイドクラックに適しています。

まず、そもそもワイドは涼しいです。
瑞牆、小川山のように標高が高いのは、この時期には有難い話。
<スクイーズ>

第2に、そよ風が抜けるチムニー、肌寒さすら感じる洞窟、それ程じゃなくても日陰のルートが多いです。
<迫力あります>

そして、さらに瑞牆の稜線近くまで1時間ちょっとのアプローチを歩くと、すごく涼しい岩場に辿り着きます。
不動沢の摩天、弁天などなど。
この時期でも、ビレイはダウンが必要だったりします。

で、そういう岩場は登っている人数が少ないので、細かいホールド(5.11aの垂壁とかに出てくるようなカチとか)は安定していないようなイメージです。

ただ、そういう状況で影響を受けにくいのが、ジャミング、ニーロックなどのオポジション系のテクニックです。
なんせ、ホールドが欠けにくいし、小さなスタンス1つ掛けたぐらいじゃぁフォールに繋がらなかったり(笑)。
<2時間のトライにて、フラッシュ成功。が、その後はカムスタックでハマる。>

「そんなのは、所詮5.10台だからでしょ。」
と思うかもしれませんが、侮るなかれ。
信じられないほどの充実感、ときには途方も無い敗北感を味あわせてくれるのが、ワイドクラックです。

ワイドに限った話ではありませんが、5.10台を安定して登ることは私の生涯目標の1つです。
<めちゃくちゃ涼しい道祖岩の裏>

具体的に登ったルート
・小春日和(5.10b、OW~スクイーズ) O.S.。
30mということもあり、1時間の長丁場トライにて、ようやっと終了点へ。辛いという評判を、何人かから聞いて警戒心たっぷりで取り付いたせいか、遅いけど登れた。「傾斜が垂直以下に殺せるので易しそうに見えるけど、やってみると意外と難しい」という点には、強く共感した。グレードは、ちょっと辛めかな?
カメチヨ先生のカムスタックなどが発生して、トップロープでもう1回登ることに。ムーヴ練習に充てたかったが、安心感から雑になってしまい、普段以上に擦り傷を増やしてしまった。

・家路ルート(5.10b、ハンド~フィンガー) O.S.。
夏向きの涼しいルート。ただし、人気が無いのでポロポロ。例によって、グレードの割に苦労しました。

・ダッコちゃんクラック(5.9、ハンド~フィスト主体) フラッシュ。
これまた夏向き。やっぱりグレードの割に苦労しました。

3本で、もう満腹。
以前に増してヘタレかもしれませんが、ご容赦を。
<ダッコちゃんクラック(5.9)>

<無事にO.S.する、カメチヨ>

それぞれのタイミング

6月20日(水)は、ムーヴLv.0。
男性STさん、女性NMさん、男性AKさんの3人組、女性KDさん。
講習後、KDさんには「ジムリードに進んで良いですよ。」と言いました。

STさんも、そのレベルに達していると判断したのですが、あとの2人がしばらくトップロープで学んだ方が良さそうに見えたので、3人でムーヴLv.0の継続をオススメしました。

すると、STさんのみがリード講習を進級希望。あとの2人は、当面はリードという気持ちにもなりそうもないので、ムーヴ講習の継続は丁度良い、とのことでした。

という訳で、3人組がバラバラになってしまいます(笑)。
ですが、それはそれで本人次第のタイミングですからね。

NMさん、ATさんも、技術が付いてきたらリードしたいと思えるようになると嬉しいことです。
ところで、ゆっくり続けていただいたKDさんも、だいぶ安定して来ましたねー。いよいよリードを教えられそうで、嬉しい限りです。

ではでは、皆さま引き続きよろしくお願いいたします。

2018年6月23日土曜日

レッツ、土竜

6月19日(火)は、自分のクライミングにて、瑞牆。
N山くんと。
<リアス式エリアのちょっと上>

2シーズン前に、真理さんから貰って初登したルーフクラックの“土竜”。
真理さんに聞くと、あれから誰も登って(触ってすら)いないという話(笑)。

N山くんが興味を持ってくれたので、行ってみることにしました。
最近、巷ではワイドブームが到来しているようですし、乗っかってみましょう!
<天井チムニーのような取り付き>

1~2mほどの張り出しでも、
「おー、被ったワイドだ!」
と喜々としまう皆さま。

これは、結構デカいです。
5mぐらいはルーフっぽく張り出してます。
<オンサイトトライ中>

洞窟っぽい取り付きなので、夏でもトライ可能です。
<粘る>

当時は、摩天楼(5.11a)より易しく感じるので5.10dとしました。
が、今回フォローしてみて、ワイドクライマー返し(5.11b)、岩戸(5.11)を最近R.P.した印象では、大差ないかもとも思いました。

ただ、清盛クラック(5.11b)、ワイドマスター(5.12a)は、全く歯が立たずに敗退しているので、おおよそ自分の実力を推し量るとして。

あとは、N山くんの体感グレードとも相談して、5.11aに格上げしてもらうことにしました。
まぁ、大抵の初登者が「ワイドクラックのグレードは、自信が無い。」風なことを仰っているので、「それをベースに議論されても」と思われるかもしれませんが(笑)。
<惜しい>

まだ、人づてで登られるのを待つような状態ですが、かなり綺麗なクラックだと思いますよ。
リード&フォローで登るので、ちょっとしたマルチピッチの気分も味わえます。
<いかにもルーフ>

レッツ土竜。

登る方には、場所も詳しく説明しますよ。
<フォロー中>

<ルーフの抜け口>

<傾斜が伝わらないのが残念・・・>

<ぐったり倒れる>

<最後まで、天気は持ちました>

具体的に登ったルート
・ピノコ(5.8) O.S.
・裏ブラックジャック(5.10a) O.S.
・土竜(5.11a) フォロー回収。
・ケイビングルート2P目(5.8) たぶん再登。
・ブラックジャック(5.10d、フィンガー系) やや脆いので、かなり本気になった。十分に安定すれば、グレードダウンになるような気がします。

2018年6月21日木曜日

どこでピッチを切るか

6月17日(日)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性IUさん、男性NSさんのペア。
<1P目のフォロー>

マルチピッチにおいて、どこにビレイ点を作るかというのは、なかなか難題です。

最近のブログで、複数支点で構成する場合のリスク分散についても書きました。
カム、ナッツ、ハーケン、細い立木、などなどでの話です。

今回は、十分に太い立木があって、それでも初心者を惑わせるケースについて。
さて、毎度のアナログ図で失礼します。

図1が、マルチピッチの入門書とかに書いてある状態。
1P目と2P目の間に、程よいテラスがあり、そこでビレイ点も運良く構成できるというパターンです。

図2が、1P目と2P目の間に緩傾斜があり、そこに複数の立木があるパターン。
Aをビレイ点とすれば、フォローのビレイをするときには姿が見えて安心です。
Cをビレイ点とすれば、2P目のリードのビレイで良い位置に立つことが出来ます。

他の選択肢として、Aをビレイ点としておき、何らかの方法でCにビレイ点を移して2P目をスタートすることもあるでしょう。
ただ、何らかの方法が、案外巧い方法が見つからず、手数が多くなるかリスクを取るかになりがちです。

また、Cをビレイ点にしておいて、セルフビレイをAあたりまで延長してフォローのビレイを行い、終わったらセルフを短くするという方法もあります。

図3は、大きなテラスはあるんだけど、立木がテラスの落ち口にあるパターン。
フォローのビレイは落ち口付近で行い、リードのビレイに移る前にテラスに移るのが吉かもしれません。その際、念の為に立木からセルフは取っておくと安心です。

図4は、2P目に2ラインの可能性があるパターン。どちらもプロテクションが取りやすいクラックなら、どちらの取り付きでもカムでビレイ点を作ることが出来ます。
ただ、Aラインを登るなら、その真下付近でビレイした方が良いなどの事情が発生するので、どちらでビレイ点を作るか迷うところです。
<ワイド好きになってきたIUさんによる、2P目リード>

講習で行くエリアだと、図1のようなケースは斜度がほぼ一定な越沢バットレスに多い印象です。
小川山、瑞牆だと図2、図3のようなケースが多い印象です。
三ツ峠の残置無視だと、図4が多い印象です。
<3P目に挑むパイセン>

ビレイ点作りは、
①そもそもの支点の信頼度
②フォローのビレイのしやすさ
③リードのビレイのしやすさ
④足場の安定(精神的、体力的な負担の軽減につながる)
⑤ビレイ点作成に掛かる時間
などを総合的に判断して決める必要があります。

講習生を見ている印象だと、焦りがちな人は④とか⑤にフォーカスするイメージがあります。
その都度ごとに最適解も異なりますし、人によって意見が別れる場面もあるでしょう。

それでも、原則論は皆同じ。
ムーヴを考えるのと同じようなもんで、考える時間が必要です
<4P目をルートファインディング>

 焦らず、時間を掛けて検討していきましょう。
<初めてのカムビレイ点>

<4P目のフォロー>

<景色も上々>

<5P目のクラック>

<ウィニングロード>

<ここでトップアウト!>

<懸垂下降で、どハマリ中>

<余った時間で、クラックを少々オンサイトトライ>

<ハンドクラック>