2019年12月27日金曜日

トップロープ回収におけるヒヤリハットを考える

12月24日(火)は、岩場リード講習にて、湯河原。
女性YIさん、男性HGさん。

今回にて、YIさんは岩場リードは卒業といたしました。復習受講であれ、クラックリードであれ、今後もよろしくお願いします。
ここ5年くらいの、割と身近な例だけでも、トップロープ回収の事故は数件あります。
知らないもの、死亡に至らなかったものを含めたら、倍以上はありそうです。
ヒヤリハットを考えると、どれだけあるか不明です。

で、今回の講習生から、
「(自分がリードしたルートをトップロープでやりたい)パートナーに支点回収させるにあたって、最終ボルトにビレイヤー側のロープをクリップしておくのはアリですか?」
という質問がありました。
トップロープ回収時の失敗を、2つに分類します。

①エイトノットが、ハーネスに接続されていない。(湯河原の事故は、環付きビナがハーネスに接続されていない。)
②エイトノットは接続されているが、ロープがラッペルリング(or残置ビナ)を通っていない。

提案の方法だと、②に対してはリスク軽減になります。いわゆる、トップロープ回収の結び替えよりも、リードの結び替えの方がリスクが低くなるケース。
一方で、①のケースには、意味がありません。
また、この方法はビレイヤー側のロープが、クライマーの登るラインに干渉することになります。不快なのもありますが、ムーヴ練習がしにくい可能性があります。
(典型的には、クラックでジャミング不可能になりそう。)

それでも、この方法を採用するというなら、それはそれで1つの判断かもしれません。
ここから、話をリードの結び替えも含めた終了点作業全般に広げます。
自分の経験上、ヒヤリハットになった状況を考えてみます。

①テンションチェック(テンションの移行)をしてからセルフビレイを外す、という習慣が無い人は、見ていて不安になる。

②テンションチェックをしたら、セルフに干渉してしまって、「1回ゆるめてー。」のコールをすることがある。このとき、もしもロープをセルフビレイのカラビナに通してしまっていたら、セルフビレイを外したときに、無確保になりそうで不安になる。

③足場の良いテラスだと、ついついセルフビレイからテンションを抜いてしまうので、作業に夢中になってセルフビレイを外してしまうという不安がある。(トップロープ回収ではないが、これで事故を起こした知り合いも居る。)

④手順が固定化されているがゆえに、全く恐怖心を感じずに作業を終えてしまうことがあり、作業を終えた自分にゾクッとすることがある。

⑤ゼエハアしながら終了点に着いて、そのまま手元がブレながら作業を始めてしまって、反省したことが何度もある。同じことをしている講習生を見て、注意したことも何度もある。

この中で、
・テンションチェックを義務化
・足場が良くてもセルフビレイになるべくテンションを掛けること
の2点だけはルール化できます。

他のことはルーティンとして、対策を打つことが難しいと感じています。
意識すればゼロに近づけるリスクと、意識しても相当なリスクが残る部分がある、という話かと思います。
<本気トライは、アボリジニ(5.10a)。1箇所、A0で
ムーヴ割愛して、トップアウト。>

最後に、“トップロープでやりたがる人“に回収作業を任せることがリスクだ、と感じた方もいるでしょう。

例Ⅰ)初級岩場で見かける男女ペアで、女性の回収作業をイライラしながら指示している男性の図は、見飽きるほどの光景です。“連れられ”の人が、マリオネット状態にされているのは、見ていて不安です。

例Ⅱ)トップロープ専門に近いガイド講習会。
a)ガイドorアシスタントが必ず回収する
b)ガイドが、「この人なら」と思った人に限って回収作業を任せる
c)ガイドから作業している様子が見える終了点に限って、回収作業を任せる
これを、ガイドが判断しているはずです。

常にa)なら安心ですが、小雨が降って来た、暗くなりそう、バスの時間が気になる、他のクライマーが待っている、といった状況もあります。
リスク管理を考えられそうな常連さんに最後に登ってもらば時間短縮になる、などの判断も十分考えられます。
(それは絶対に嫌だ、というガイドも居るでしょう。)

リスク管理を学ぶ姿勢として、下記のイメージがあります。
ガイドのお客さん < 連れられ気味の人 < 一般のリードクライマー

(ガイドのお客さんでも、5.11を登る人はおります。連れられ気味でも、下駄をはかせてもらって5.12を登る人もいます。一般のリードクライマーでも、5.10aがギリギリの人も居ます。リスク管理に向き合う姿勢と、グレードは、逆転が起こり得ます。「あの人は、イレブン登るベテランさんだから。」という言動に注意。)

さて、毎度結論の無い話にお付き合いいただき、ありがとうございます。
これだけ色々書いておいて、次に事故るのは私かもしれない訳です。
それでも、考えない人よりはリスクは軽減されていると信じて、考え続けるのです(笑)。

2019年12月22日日曜日

バタバタ登りはダメだが、それでも強い人は何なのか

12月18日(水)は、リード2回目で、男性AHさん、男性SHさん。
19日(木)は、リード1回目にて、男性MBさん、男性MSさん。
近所のボルダージムに行くと、常連さんとの間でセッション(辛くないジムで3級ぐらい)になることが多いです。
3級ぐらいだと、クライミング歴1~3年ぐらいの若い男性、キャリアの長い(10年前後orそれ以上)中年男性、ときどき女性、というパターン。

で、一見バタバタ登りの若い男性が、着実に完登していくのを見ていて、彼らにあって自分に無いものを突き付けられる感じがします。

バタバタ登りの例。
・スタンスのどこの部分に置くのか決めていない。例えば、ポケットホールドの上面に置くのか、内部に置くのかが、やる度に違って、それを意識していない。
・ホールディングがやる度に違う。(カチるのか、オープンなのか、ピンチなのかが毎回違って、それを意識していない。)
・手順足順(シークエンス)が記憶できていなくて、やる度に迷っている。
・そもそも、足を置くときにスタンスから目線を切るのが早過ぎて、まともに置けていない。
・脇が開いていたり、あまり力が入らなさそうな動きが多い。
・3級の中の、5級ぐらいのセクションでも落ちたりしているが、それに対して問題意識は無さそう。

1つの課題に打ち込んでも、現場処理でムーヴを変更するのは、よくあることです。
が、それに本人が気づいていない、というのは衝撃を受けます。(5級を最近やり始めた、とかなら普通なんでしょうけど。あるいは、3級は今の時代は初級レベルなんでしょうか(笑)。)

もちろん、バタバタ登りでは、リードではすぐに力尽きます。
R.P.のためにムーヴを覚えることも出来ませんし、岩場じゃ危ない人になってしまいます。
一方で、キャリアの長い中年男性は、同じ3級でもその辺は安定していることが多い印象です。
(キャリアが浅そうでも、ジムの初段とかをやっている人は、さすがに安定して見えます。)

一般的には、そういうときは「筋力が違う。」、「フィジカルが違う。」という結論に
なるのだと思います。
でも、ほんとにそれだけなんですかねー。「僕の目には見えていない何か」が上手いんじゃないか、という疑問を感じざるを得ません。それとも、本当にフィジカルだけなんでしょうか?
よく分かりません。

個人的な思いを書きましたが、講習生におかれましては、バタバタ登りを解消していくことを重視して練習してくださいませ。
リードで力尽きない登り、岩場で危なっかしくない登り、それが最低レベルに達していないと、事故予備軍になってしまいます。
実際、そういった丁寧な登りを向上させていくだけでも、初級者は必ずグレードも伸びますので、ご安心ください。

2019年12月20日金曜日

習ったことを練習する生徒の気持ち

12月15日(日)は、岩場リード講習にて、湯河原。
女性STさん。
<ムーヴ練習>

ムーヴ練習で、飽きのタイミングは人それぞれです。

少し、極端な例を挙げましょう。
<4b>

ムーヴ講習で、足を土踏まずなどでベッタリ置いて登っている初心者が何人かいたとします。

「足は爪先周辺で置くことが多い。」、「指の付け根が凹んでいるので、そこがホールドにフィットすると心地良いし、安心感がある。」といった説明をしたとします。

Aさん:
「ちょっと、色々なホールドで試してみても良いですか?」
(やってみたら、色々感じたり、質問が出て来そうだし。)

Bさん:
「とはいえ、土踏まずとかでベッタリ置いた方が楽じゃないですか?爪先は疲れます。」

Cさん:
「ヒールフックとかは、どうなんでしょう?あと、すごく小さいスタンスとかは付け根は無理じゃないですか?」

Dさん:
1つだけホールドに足を馴染ませてみて。
「ふーん。分かりました。」
Aさんが、当塾講習としては模範生徒の1タイプです。
ここで、なんだか楽しくなってきて、時間を忘れるぐらい実験にのめり込めるなら最高です。

Bさんは、素朴な感想です。
実際に、そう感じるのも理解できます。
「たしかに、そういうこともありますね。では、どういうケースでしょう?」
といった会話で、どうにかAさん型の学びに誘導したいところです。

Cさんは、ある程度のクライミング知識がある感じです。
「ヒールフックもあるんですが、今回は爪先周辺で置くケースだけを掘り下げるってことで良いですか?」
とか、お話しする感じでしょうか。
(ヒールフックも丁寧にホールドに馴染ませるように意識すると、爪先で置くのと近いぐらいに繊細な感覚があると思いますが、その話は深すぎるので割愛。)
<シルクロード(5.7)>

Dさんは、なぜそうなるんでしょうか?

①飲み込みが天才的で、次のルートからは爪先周辺で置くことが出来る。
(実際には、サンプル数0人。世の中には、たまに居るらしい。)

②講習は、知識伝授の場であり、反復練習の場だとは思っていない。
(もしかしたら、自主練習で反復練習するつもりなのかも。)

③理解すれば、次から出来ると思っている。
(自分が天才だと思っているわけではないが、漠然と。)

④講習初参加などで、先の展開が読めずに受け身にならざるを得ない。
(これは、私の失敗でもあるし、ある程度仕方ない部分もあります。)

と、Dさん側に立って釈明を考えてみるんですが、実は意外と多いのが
⑤特に、深い考えはなくて、受け身で説明を聞いていた。

②~⑤の比率は不明ですが、どれもそれなりの数は居ました。

さて、もうちょっと経験を積んだSTさん。
本日のムーヴ練習では、別内容を練習。

「練習しなきゃ身にならないのは分かるんだけど、飽きちゃうんだよねー。ピアノの練習曲みたいなもんで、効果は知っているんだけどねー。」

いや、すっごく分かります。そして、過去にも何人もそういう人は居ました。
そういう人は、時間をかけて学べば良いと思います。
そのうち、意識も変わって来そうですし。
実践本気トライ
・インチキするな(5.8) O.S.
・蟻さんルート(5.8) O.S.(上部は、インチキするなと共有)

ムーヴ練習も実践で活かせるようになってきたし、墜落距離も意識して行動できるようになってきたので、相当分かってきたと思いますよ。
あとは、本当に落ちる可能性大の本気トライとか、終了点が立木の場合の対応とかですね。

2019年12月16日月曜日

リード以前に何が必要か?

12月10日(火)は、ムーヴLv.0にて、女性NDさん、女性NGさん、女性MTさん、女性SNさん。
12月13日(金)は、ムーヴLv.0にて、女性Tさん、女性SNさん。
12月14日(土)は、リード講習にて、女性HNさん、男性THさん、復習参加の女性KDさん。
リードを応援する、という気持ちで講習は行っています。

前段として、ムーヴ講習を行っていますが、悩みは尽きません。
大きなものとして、「何をもって、リードは時期尚早。」とするか。

例①
レスト出来ない。
→クリップ態勢に苦労して、危なっかしい。
※強いボルダラーが「スタティック態勢は作れるけど、レストは苦手。」という場合は、危なくはない。これは例外。ただし、持久系ルートやオンサイトが苦手になるはず。

例②
足置きが雑。
→見ていて怖い。手繰り落ちのリスクあり。

例③
ロワーダウンの姿勢が苦手で、トップロープで降りるのでも恐々やっている。
→リードの落ちる態勢は、その姿勢が前提になっているので、習得困難。
例④
オブザベを全くしていない。
(右手で取るべきホールドを左手で取っても、それ自体に気づいておらず、本能的な持ち替えorクロスで乗り切っている。)
→リード中に、ランナウト具合を考える以前の問題ではないか?という風に見える。

例⑤
脇が閉まっていないなど、フォームが悪い。
→故障しそうに見えるので、「早めに矯正したら良いのに」という老婆心が働く。
例⑥
トップロープのビレイが、いま一歩。(肩に力が入りまくり、テンションコールに上手く対応できない、張り具合が良く分からない、などなど。)
→リードのビレイは、そのハイレベル版なので、習得困難。

例⑦
5.7のガバでも、がっちりと握り締めている。
→リードだと、めちゃくちゃ大変そう。
私のような仕事でなくても、ジムでリード初心者を見たら、
「うーむ、もうちょっと下積みが要るんじゃ・・・。」と感じることは多いと思います。

一方で、リードしているうちに危機感とか緊張感で色々分かってくるから、老婆心で色々と先回りし過ぎるのも、と思います。
特別な指導を受けなくても実践で改善していく人もいるし、ずっと気づかない人も居るので、ますます悩ましい感じです。
答えの無い問題なんですが、考えざるを得ない機会に私ほど恵まれている人も居ないでしょうか。
考え抜いた挙句、①、②、③だけは最低限覚えてからリード講習という流れは変わりません。(結局、この仕事を始めて1年ぐらいの結論と大差ない・・・。)

理想的に下積みを終えて次のステップに至ることは、たぶん不可能です。
講習生におかれましては、こういう風に将来像を想像されている、という程度のイメージで受講していただければ十分です。
辞めなければ、必ずや出来るようになります。

2019年12月11日水曜日

何から登ろうか

ほぼ独り言です。

ランナウトのリードエリアは、ホールドの色分け(ラインセット)ではなく、テープ課題(ランダムセット)です。
僕にとっては大変ありがたく、多数のルートに取り組むことが出来ます。
最近、メイン壁がホールド替えされたので、いつもの悩みが浮上。

①ほぼ一撃できるルートを、順次登っていく。
②万全に準備して3割~8割で一撃できるぐらいの、「最もエキサイティングなルート」をトライする。
③ルートを作る。

これを、どのような順序で行うべきか?

①を先にやると、壁に慣れて、徐々に感覚もつかめて来ます。
下積みを再構成していく感覚で、楽しいです。常連さんと、感想を言い合うのも楽しいです。また、これを後回しにすると、他の人のトライを見ないのが結構な労力です。9割一撃(課題によるけど、5.11前半ぐらい)というルート数が多いだけに・・・。

②を先にやると、実に緊張します。
①や③を先にやると、重複するホールドを触ってしまうので、オンサイト要素がどんどん減ってきます。ホールドの掛かりの記憶が曖昧だと、ムーヴの選択肢も増えるので、オブザベーションが樹形図のように複雑になります。第1候補で押し切るのか、レストポイントから行きつ戻りつして探るのか、8割一撃できそうであっても戦略的には非常に面白くなります。ただし、もちろん①や③から先にやる場合に比べると、一撃成功率は下がります。

③を先にやると、一部の人が喜んでくれます。作る側としても、どのホールドにもテープを張るスペースが十分にあり、好きにホールドを選べます。まだ壁が空いているので、似たようなルートを避けるのも、比較的簡単です。
ただし、目検討でルートを作ったとしても、僕の場合は登ってみての修正が多いので、色々なホールドを触ってしまいます。

ちなみに、第4の選択肢として、「(ほぼ一撃できない)必ずR.P.になりそうなルート」もあります。が、これは①~③でホールドを触りまくった後にやっても、十分に面白いし、トレーニングにもなりそうなので、いつも後半回しです。

こう書くと、②をやるのが一番正統派な気もしますが、①も③もダメではないし、そのときの自分の調子とかで色々と変えて良いような気もします。
それだけに、毎回毎回考えるのに忙しいです(笑)。

まぁ、特殊な悩みだと思います。
ランダムセットのボルダーでファイル課題をやるときは、ホールドの掛かりは知っていて当たり前。ラインセットのリード壁なら、ルートは独立していますからね。

2019年12月9日月曜日

12月1日(日)は、クラックリード講習にて、城ケ崎。
男性STさん、男性FTGさん、復習参加の女性MJさん、復習参加の女性ARさん。
北陸から浜松に戻ってきて、クライミングを再開することとなったMJさん。

浜松でクライミング仲間を探す一方で、4年前の仲間たちに声を掛けて集っております!
<ジャミング練習>

4年で、皆さん色々と状況も変わっております。

仕事が変わって、クライミングの頻度が落ちた人。
リードの怖さと年々強く感じ、離れるとさらに怖くなる人。
クライミングの中でも、少し異なるジャンルに邁進している人。
変わらず、パンプ2とクラックを求める人。
近郊岩場で、スポートルートの短期間R.P.を中心にやっている人。
ジムボルダーが中心になった人。
山とクライミングは続けていて、様々な意味で迷える子羊状態に見える人。

他にも、心境の変化で、様々な方がいらっしゃいますが。
そんな中、MJさんのモチベーションは熱く、聞いていてもとても楽しくなります。

「私は、別にやりたくなくなった訳じゃないので。ついに再開することが出来た!」
「楽しくて、何をやってもニヤニヤしてしまう。」

久々のロープワークなどで、色々と失敗した後にて。
「恥をかいて学ぶものですからね。」

良いですねー!
“MJの風”、ビンビン感じます
<初リード>

そんな中、同期に近いARさんも久々に色々と感じた様子でした。
実際には、MJさんよりも出来ることも多く、地道に練習してきた過去の自分を思い出したようです。

以前より怖いのは、不自然なことではありません。

例)
今の方が、事故例などを色々知っているからこそ、怖い。(正しいリスク認知)
以前の方が、実際に安定的なムーヴに長けていたので怖い。(正しいリスク認知)
久々過ぎて、なんとなく出来る気がしない。(過剰反応の部分もあり)

ゆっくりと、復帰して欲しいものです。
<エイド練習>

<楽しそう!>

<こちらは、普通に楽しそう!>

<「やりますか?」(MJさん)→「やります!」(ARさん)>

2019年12月6日金曜日

リーチ問題の続編

11月28日(木)は、ムーヴLv.0にて、新規女性HGさん。
11月30日(土)は、女性NSさん、男性KBさん、男性THさん。
またまた、本日の講習とは関係ないのですが、よくよく話題に上がるリーチ問題。

「届かない→私はリーチが無い」という会話を聞いていて、「そこは、リーチの問題っていうか、ムーヴが違うんじゃないか?」と思うことも多々あります。

反対に、デカい私に対して、「狭くて大変そうだね。」と気遣ってくれる人もおりますが、「実は、ここは狭いことでヒールフックの効きが良くなるパターンだから、むしろ大丈夫。」などと思うこともあります。

とかく、他人のリーチを想像することは難しく、突き詰めるとムーヴへの理解度そのものを問われているような気持ちになります。
おおむね、デカい人が有利だとは思うのですが、どの場面でどのように有利に働くのかを理解しておくことは、誰にとってもプラスだろうと思います。

例えば、自分と全く違うリーチの人のムーヴをコピーできるか、別ムーヴを考えるべきかのヒントになるからです。
さて、上の図で、縦リーチと横リーチ。

例えば、私は身長185cmです。
先ほど簡易的に計測したところ、つま先立ちして、指先が届くという意味では、250cmぐらいある感じでした。
横リーチは、指先から指先で188cmぐらい。

仮に小さい人として、身長155cm、縦リーチ200cm、横リーチ155cm、ぐらいの人を想定しておきましょう。

パターンAは、縦リーチの9割ぐらい(体は、まだ直線ではない。)が発揮されるパターンです。
50cmのリーチ差が、45cmぐらいになって現れるイメージです。
(ただし、左足を別のものに変える選択肢がある、左足無しでも乗り込めそう、右足が大きい人にとって狭い、などの条件があると、話は全く変わってきます。)

パターンBは、テラスに立ってガバに届くか勝負、という場面。
これは、縦リーチの差が10割出ます。つまり、50cm差。

パターンCは、サイドホールドから遠いサイドホールドへ。
まだ、横リーチの8割程度しか出せていない状況なので、リーチ差も8割出るはずです。
つまり、約24cm差。
(ただし、足位置などのムーヴ選択で、小さい人の方がフルリーチが出しやすいというホールド配置も有り得るので、その場合は話は変わってきます。)

パターンDは、ロックして次のホールドを取りに行く場面。足位置の選択肢は多く、リーチによって好きに選べる設定です。
この場合は、片腕の長さ分のリーチ差が出るかどうか、ということになります。
このケースだと、10~15cmの差かもしれません。
(この手のケースだと、小さくて軽いクライマーが保持手の持ち感が良く感じたり、ロック能力が高かったりするために、この程度のリーチ差は逆転するというケースも、よく見かけます。)

パターンEは、レイバックからの引き付け方向への一手。
これは、私もよく分かりません。
左手のロックだけの問題なら、パターンDと同じとみなせます。
が、左手をロックして、右に近づこうとすればするほどバランスが悪くなるケースも多いのです。そうなると、デカい人は一層左方向に離れる状態になるため、リーチを活かすことは困難に見えます。
あとは、足位置がどれだけ狭いかとか、足がどれだけ良いか、などの条件に大きく左右されるので、このパターン自体には結論は出せないと思います。

パターンFは、強傾斜での狭いスタンスからの遠い一手。
これも、私もよく分かりません。
経験上は、デカい人が少し有利なんですが、ある程度「巧くやる」ことが要求されていると感じます。
「巧く」やれないと、スタンスが狭いと感じないリーチの人の方が、距離が出せたりします。

と、ここまで書いておいて何ですが、そもそも大きくリーチが違うと同じ課題と思えないぐらいムーヴが異なることも多いものです。
あくまで、ムーヴ選択の参考程度の話です。

これとは真逆に、狭さ問題に関する比較検討も面白いかもしれません。狭いように見えて、実はそうでもないパターンとかも多いので。

2019年12月3日火曜日

1月分の予約受付

明後日の12月5日(木)の夜21時から、1月分の予約受付を開始いたします。

岩場リード講習は湯河原、クラックリード講習は城ケ崎を予定しております。
特に、城ケ崎には湯川や小川山には少ない易しいクラックがあるので、ここから始めたいという方が是非ともどうぞ。


2019年12月2日月曜日

岩場では足音はしない

11月27日(水)は、マルチ体験の予定が、天候の都合で岩場リード講習を古賀志山。
女性YIさん、結果的に復習参加となった女性Mさん。
<トポに載っていない5.8>

本日最後に、競技会ルート(5.9)をO.S(YIさん).、FL(Mさん)。

15mぐらいの80°(垂直より、少し寝ている印象)とあって、難しさが分散されております。
初心者でも、ガバやテラス等で大レストしながら行けば、一撃はしやすいタイプかと思います。
<少し脆そうなので、慎重に>

その際、動画を撮って、帰りの車中で見ていたら・・・。

Mさんが、自分の登りの下手さに愕然。
「5.9がギリギリ登れるぐらいの人に見える。」
「良く見積もっても、5.11aを通いまくってR.P.したことが1本あるぐらいにしか見えない。」

実際にはMさんは、もうちょっと登れます。
垂壁~薄被りぐらいのエリアなら、5.10中盤ぐらいも頻繁にO.S.しているし、5.11前半を1日~数日でR.P.することも多いぐらいの戦績。
<無事にO.S.>

「レストポイントで行きつ戻りつしているだけなのに、周りから心配されちゃうのが、分かった。」
(ホールドやムーヴ探しをしている状況が、困っているように見られてしまい、下からアドバイスされやすいのが一つの悩みらしい。)

もちろん、たとえ困っているように見えても、危険行為以外はクライマー本人に考えさせるべきだと思います。
傀儡政権は、かえってリスクを増大させますし、上達も妨げます。

そもそも、オンサイトトライに口を出すのは、クライマーとしてどうかと思いますが。
<鼻カンテ(5.10b)>

しかし、そう見られがちだという現実が客観視できたことは、Mさんにとって大きなプラスだったと思います。

レストも、ムーヴ探りも、もうちょっとサマになっていれば、心配もされにくいことでしょう。
<ガンバ!>

心配されちゃう件とは逸れますが・・・。

ジムの5.9ぐらいだと、足音を立ててドカドカ登ることが下手さの証明みたいなところがあります。
コンパネの板を蹴ることで、自分のムーヴがコントロールされていないことを戒めてくれます。

しかし、岩場では足置きのコントロールを失敗しても、音は鳴らないものです。
<レスト戦略は、かなり上達を感じます>

つまり、自分が易しいルートを、「いい感じ」で登れているかどうかは、なかなか評価が難しいのです。
まぁ、ジムでも足音以外は、なかなか自己評価が難しいものですが。

とりあえず、今回は良い気付きがあって何よりです!
<無事にO.S.!>

実践本気トライ
YIさん
・100岩に載っていないルート(5.8) O.S.
・競技会ルート(5.9) O.S.

Mさん
・100岩に載っていないルート(5.8) FL
・鼻カンテ(5.10b) O.S.
・競技会ルート(5.9) FL

偵察の続き

11月25日(月)は、越沢バットレスの偵察。
バットレスキャンプ場経由のアプローチは、「来ないでください。」とのことなので、ガーデンキャンプ場経由のアプローチを。

結論からすれば、行けます。
ただ、数年前まで使っていた木橋は、相当に朽ちていて、別ラインを通過する感じでした。
<この周辺は、高巻きの道を使って割愛できた>

リングボルトで整備されたフィックスロープ。(抜けているのもあるが、軽い荷重だけでトラバースすることが可能な個所ではある。)
ちょっと気を付けた方が良い高巻き。
人によっては、靴を脱ぐであろう転石渡渉。

など、ちょいちょいアクセントはあります。

が、崩れそうな斜面などの“不確定要素”は無さそうだったので、気を付ければ大丈夫という感じでした。
<この日は、大変暖かい>

12月前半まではマルチ講習も出来ると思います。

次は、3月からの予定です。
<木橋は朽ちているが、使わないで行けることが分かった>

2019年11月30日土曜日

3点支持は出来ますか?

12月24日(日)は、林智加子さんとのコラボ企画にて、岩場基礎トレ。
雨予報にて、ストーンマジックにて。
3点支持というのは、
「両手両足の4つの支点(岩と接する部分)を、同時に2つ動かすべからず。」
という教えです。

4点支持 → 3点支持 → 4点支持 → 3点支持 → ・・・

という具合です。
<膝も、足と同様に1点と数える>

「そんなの、意識しなくたって出来る。」
「2点支持や1点支持を覚えることこそ、上達の道だ。」
ぐらい思っている人もいるでしょう。

実際、クライミングの練習方法として、2点支持しばりで登ってみるというのはアリだと思います。
(ダイアゴナルやフラッギング主体で登ることになる。)
<ロープ無しのボルダー練習>

ただ、林智加子さんは私の講習に来る中で、
「3点支持とかって、意外と皆全然できないけど、これが出来ないと岩場歩きが危ない!」
という危機感から、この講習を企画して集客してくださっております。

他にも、ダイナミックとスタティックとか、登山者にも知って欲しいクライミングの概念は色々あります。
これは、クライマーでも曖昧な理解で登っている人は多そうなものですが。

林さんのお客様だけあって、皆さま真面目に聞いてくださいました。
さてさて、これも1日にしてならず。

ある程度の理解に達した人には、林さんがガイド中に「ここは、慎重に行くために3点支持をしっかり守って行きましょう!」などの指示が飛んでいるようなので、色々と聞いていて興味深いです。
<強い要望により、フットジャムの解説>

次回は、春以降の予定です。
ではでは。
<そうそう、そんな感じです!>

<こんな感じです>

<最後に、8級のボルダーを少々>

2019年11月28日木曜日

指摘することを考える

11月23日(土)は、ロープワーク講習にて、ストーンマジック。
女性Mさん、女性YIさん、女性KIさん。

またもや、今回の講習とは関係ないのですが。
<終了点作業の復習やら、マルチピッチのシステム質問会>

クライミングをやっていると、パートナーや友人の安全管理が気になるという場面は、多々あります。
「こうやった方が良いんじゃない?」、「それは、~~だから止めた方が良いよ。」ぐらいの表現で、事が収まれば問題ありません。

が、しかし。
それでは意図が通じないことも、多いものです。

この場面で、なぜ通じないのかを深く考えることは、とても良いことだと思います。
①自分が間違っている。
②自分の言い方が分かりにくい。
③相手が、そのディスカッションの前提となる知識が不足している。
④相手が、何か受け入れがたい心理的抵抗がある。「それを、そうしなきゃいけないことにすると、色々と不都合が・・・。」
など。

ただし、この考察そのものは、伝えたい相手にぶつけるべきものでは無いかもしれません。
また、「なんで分かってくれないの?」ぐらいの勢いで、熱くなることも、逆効果になることも多いです。(これは、私も100回ぐらい失敗している気がしますが。)

考察を終えて、それでも相手を変えたいという強いモチベーションが尽きなければ、後日作戦を練って伝えるようにしたいところ。
それこそ、いかに人を動かすかのノウハウ本が役立つかもしれません。

経験上、まずは自分が落ち着いた方が良いです。
<KIさんは、ユマーリングなど>

これって安全意識のみならず、練習方法の提案とか、パートナーシップにも言えることなんでしょうけどね。

意識のズレはストレスになりやすく、最終的にパートナー解消などにもなりうるので、うまくコミュニケーションを図りたいところです。

書いてみて思いましたが、
「本気で人を動かしたいなら、まずは内省的になれ。」
という感じでしょうか。
何か、そういう諺でもありそうな話ですね。

2019年11月25日月曜日

レスト態勢を掘り下げる

11月21日(木)は、ムーヴLv.0にて、男性MBさん、復習参加の男性NMさん。
MBさんは、ジムリード講習に進んでO.K.といたしました。
<このレスト態勢>

レスト態勢について、色々と考えることは、なかなか興味深いものです。
例えば、上の写真を見て、どう思うでしょうか?

ホールドの向き、スタンスの形状が見えないのですが、態勢からある程度は予測できます。
左手は右斜め下向き、右足はほぼ真下に踏んでいる、左足は左斜め下方向に押している、という状況です。

ちなみに、ルートは5.7(足自由)なので、持ち手はガバです。傾斜は85°(わずかに垂直以下)ぐらい。

①足位置が不自然に感じる人もいるでしょう。
「もっと、~~の方が楽なんじゃない?」

②上半身など、力が入り過ぎだと感じる人もいるでしょう。
「ガバなんだから、もっと脱力して良いんじゃない?」

③ガバ足なんだったら、腰を入れた方が楽なんじゃないかと思う人もいるでしょう。
「腰入れて、上半身を壁から離したら?」

④真っすぐな良いフォームだと感じる人もいるでしょう。
「骨盤も立っているし、背筋も伸びていて、カッコいいよ。」

(②、③と④は、相反する部分もあるので、どちらを優先して指摘すべきかは難しい問題ですが。)
<こちらは、どう見る?>

静止している態勢は、どちらの方がベターかの比較検討は、初心者でも実感しやすいようです。
これを通じて、レストが上手くなるのみならず、ムーヴそのものへの理解が進むことを願っております。